報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の学校訪問」 2

2023-01-01 21:43:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月15日12:00.天候:晴 東京都台東区上野 某喫茶店]

 私はリサの担任の坂上先生と、昼食を食べながら話をすることにした。

 愛原:「へぇ!さすが坂上先生は、こんなオシャレなカフェで昼食を取られるんですね!」

 向かった先は、学校近くの喫茶店。

 坂上:「いつもじゃないですよ?こういう時だけです」
 愛原:「なるほど……」
 坂上:「でも、会計は別でお願います」
 愛原:「ええ。それはもちろん」

 私はミックスサンド、坂上先生はカレーを注文した。
 さすがは喫茶店のカレーということもあり、学食のカレーよりも個性的に盛り付けられてくる。

 愛原:「話というのは、リサのことですね?」
 坂上:「そうです。今のところ、リサには何の証拠も無いんですが、ただあまりにも偶然過ぎて……」
 愛原:「でしょうね。リサと意見が真っ向から対立する相手が自殺するのは……恐らく、リサが直接手を下してはいないでしょう」

 リサのようなBOWは、例え知能犯でも、自分で手を下すことが多い。
 リサもそのタイプのはずだ。
 もちろん、『魔王軍』を使って、自殺に追い込むようなことまではやったのだろうが、これとて証拠が無い。
 自殺した生徒会長をイジめる者はまずおらず、やはりその直前にあったお漏らしを気にして自殺したのだろうと思われる。
 お漏らしさせたのは、私はリサだと思っている。
 他にもヒドい便秘に悩まされていながら、突然の下痢でお漏らししたのは、他にもいるからだ。
 それも、その全員が生徒会の女子役員である。
 証拠は無いが、偶然が過ぎる。
 しかし、リサは認めていない。
 リサが寄生虫を使えば、そのような嫌がらせは可能だということは私も知っている。
 だが、死滅すれば寄生虫も消滅する。
 一部のBOWのように。
 リサが得意気になるわけである。

 坂上:「そうですか。せめて、遺書でも見つかれば……」
 愛原:「でも、見つかってないんですよね?」
 坂上:「そうなんです。真面目なコでしたから、遺書を残すと思うんですよ」
 愛原:「書く暇も無いくらい、追い詰められていたとか?」
 坂上:「それも、ちょっと違うと思うんです。靴はキチンと揃えられていたと言います。つまり、ちゃんと覚悟を決めていたわけですから、遺書も書いたと思うんです」

 ヤケに詳しいなと思ったが、坂上先生はリサが入学する前、城ヶ崎会長の担任をしていたことがあったという。

 愛原:「風で飛ばされた?」
 坂上:「警察はそれも考えて、捜索しているようですが、まだ見つかっていません」
 愛原:「城ヶ崎さんが飛び下りた後で、誰かが屋上に入って持ち去ったとか?」
 坂上:「ところが、屋上へ出るドアは、外側からつっかえ棒がされていました。警備員と1年生の学年主任が体当たりして、ようやくこじ開けたくらいです。しかも、つっかえ棒には城ヶ崎の指紋しか付いていませんでした」
 愛原:「遺書は自宅にある。または、学校のロッカーとか机の中とか……」
 坂上:「それも探し尽くしました。自宅は御遺族が、学校は警察が調べてましたが……」
 愛原:「うーん……」

 私は首を傾げた。
 こんな時、リサならどうするだろうと思った。

 愛原:「! そうか……」
 坂上:「分かりましたか!?」
 愛原:「いや、それでも推測の域を出ません」

 リサには触手がある。
 それで天井からぶら下がることも可能だ。
 だが、それとて証拠が無いとダメだ。
 学校内にも監視カメラはあるが、もしもリサがそんな異能を使ったのなら、とっくにバレているだろう。
 一体、どうすれば……。

[9月15日15:00.天候:晴 同地区内 東京中央学園上野高校]

 私は午後、学校の調査をしてみることにした。
 こういう時、PTA会長代行という肩書は使える。
 あいにくと、屋上は立入禁止となっていた。
 あの事件以降そうなったわけだが、尚更今は警察の捜査中というのもあるからだ。
 体育館に行ってみると、今度は3年生の女子が体育の授業を受けていた。
 3年生なら、生徒会長と同級生だから、何か話が聞けないかと思ったのだ。
 しかし、驚いたのは、3年生にさえブルマを着用している者が数名ほど見受けられたことだ。
 しかも、そのうち1人は栗原蓮華だった。

 栗原蓮華:「愛原先生!」
 愛原:「や、やぁ。珍しいね。キミもブルマを穿いているなんて……」
 栗原:「あ、あの人食い鬼が、『愛原先生は、ブルマがお好みだ!』なんていうものですから……」
 愛原:「うちのリサが、本っ当、申し訳ない!……だが、とても似合うのは事実だ」
 栗原:「そ、そうですか?」
 愛原:「剣道着もいいが、ブルマも似合うよ」
 栗原:「良かった。リサのヤツ、『義足にブルマは似合わない』なんて言うものですから、ちょっと不安でした」
 愛原:「リサには後で、『言葉には注意しろ』って言っておくよ。それと、1つ聞きたいことがあるんだ。授業が終わったら、ちょっと話いいかな?」
 栗原:「分かりました」

 それから30分くらいして、全ての授業が終了した。
 リサは美術部で絵のモデルの仕事があるので、下校時刻ギリギリまで学校にいるだろう。
 その前に、蓮華から話を聞く必要があった。

 栗原:「お待たせしました」

 蓮華は体操服のままだったが、さすがに下はジャージに穿き替えていた。
 制服に着替えなかったのは、これから剣道部の部室に行くからである。

 愛原:「ああ、悪いね。実は、生徒会長が自殺した時の状況を聞きたいんだよ」

 私がそう言うと、蓮華は話してくれた。
 地面に叩き付けられて血の海を作った会長に対し、リサは涎を垂らしていたこと。
 急いでリサを現場から引き離そうとしたが、自分は義足が人混みに引っ掛かって抜け出すのに苦労したこと。
 ようやく抜け出した時には、リサは既にいなくなっていたことをだ。

 栗原:「リサの仲間に聞いたら、急いでどこかに走って行ったそうです。そのコ、生徒会長が直接落ちて来た所を目撃してしまったコなんですけどね。会長が屋上から落ちてきたことを話すと、急いでどこかに走って行ったそうです」

 それは屋上ではないのか。

 愛原:「それで、リサはどっちの方へ走って行ったって?」
 栗原:「向こうの方だそうです。試しに私も行ってみましたが、リサはいませんでした」
 愛原:「一体どこへ?」
 栗原:「私も捜そうと思ったんですが、その時、臨時のホームルームが行われるから、教室に戻るように、先生に言われて……」
 愛原:「なるほど。そうか……」

 リサは……本当に屋上に行ってないのか?
 私は首を傾げた。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原の学校訪問」

2023-01-01 13:59:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月15日11:45.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 私はまだ残暑の厳しい中、東京中央学園に到着した。
 正門では警備員が立哨していて、『御用の方は、通用門から入りください』という看板が掲げられていた。
 私が通用門に回ると、今度はそこに、『御用の方は、必ず事務室で入構手続きをしてください』という看板が立っている。

 愛原:「こんにちは。PTA会長代行の愛原です」

 かつては事務員が直接応対していたが、今では警備員が応対している。
 もっとも、私がかつて勤めていた警備会社とは違う会社だ。

 警備員:「お疲れ様です。それでは、こちらに御記入を」

 PTA会長代行ともなれば、アポ無しで入構はできる。
 もっとも、このように手続きはしないといけないが。
 学校関係者に配布される入構証があり、これを提示すれば、このような簡単な入構手続きで入れてしまう。
 そして、入構証は事務室に預け、代わりに入構許可証(ビジター)が渡される。
 これを持って、ようやく校内に入れるというわけだ。
 私はそれを首に掛け、持って来た上履きに穿き替えて中に入った。
 表向き、学校は通常運転のようだった。
 リサ達のクラスは体育の授業ということで、体育館に行ってみた。
 猛暑日を記録することもある都内ということもあり、9月一杯までの体育はプールか、空調の効いた体育館と決まっているからだ。
 リサはスク水を持って行かなかったから、恐らく体育館にいるのだろう。
 プールの方を見ると、男子生徒が授業を受けていた。
 今日は男子がプールで、女子が体育館らしい。
 すると……。

 愛原:「こ、これは……!」

 体育館の中を覗いてみると、女子生徒の3分の1がブルマであった。

 

 その3分の1の中に、リサ達がいた。
 リサのヤツ、本当にブルマを復活させるとは……。

 リサ:「あっ、愛原先生!」

 リサは私に気づくと、ワザと尻を向けて、ブルマの裾を直す仕草をした。
 私は苦笑しつつも、アイコンタクトで、

 愛原:「いいから、授業に集中しろ」

 と言った。
 少なくとも、リサのクラスは通常運転のようだな。
 私は外に出ると、教育資料館の方に向かってみた。

 坂上:「いいですか?慎重に運び出してくださいね」
 業者:「はい!」

 すると、半壊している教育資料館に業者が何人も出入りしていた。
 この暑いのに、防塵メガネやマスクをしている。
 本当に大変だ。
 どうやら、館内にある資料を外に運び出しているらしい。
 そして、その立ち会いをしているのは、リサの担任の坂上修一先生であった。
 リサ達のクラスは体育の授業中であるが、坂上先生は体育教師ではない。

 愛原:「坂上先生」
 坂上:「おっ、これはこれは愛原さん」
 愛原:「何をされてるんですか?」
 坂上:「この時間は私の授業が無いもので、教頭から、『それなら業者の立ち会いをしてくれ』って言われましてねぇ……」
 愛原:「それは大変ですね。依頼してくれれば、探偵という名の何でも屋の私達でやりましたのに……」
 坂上:「あっ、その手があったか!……でもまあ、今日はいいです」
 愛原:「館内の資料を運び出しているんですか?」
 坂上:「そうなんです」
 愛原:「ついに取り壊しが決定しましたか」
 坂上:「いえ、その逆です」
 愛原:「えっ?」
 坂上:「理事会で再建が決まったそうです。その工事の為に、資料達を避難させているところです」
 愛原:「そ、そうなんですか?」
 坂上:「幸い、保管場所が確保できたということでね」
 業者:「はい、ちょっとすいません!大きいの通ります!」

 中から大きなショーケースが出て来た。
 それは歴代の制服などを展示しているショーケースだった。
 あの、“トイレの花子さん”が着ていたセーラー服もある。
 今でこそ東京中央学園の女子の制服はブレザーだが、昔はセーラー服だった。
 今のブレザーはモスグリーンだが、セーラー服の方は、くすんだ緑色である。
 冬服は陸上自衛隊が着ている物と色合いが似ているが、夏服の方は襟が明るい緑色だった。
 スカートの色は、今も昔も変わらない。
 展示物の中には体操服もあって、ブルマが数種類あった。
 リサが言っていたのは、これだったのだ。
 1番古いのが、いわゆる『提灯ブルマ』だが、その時はただの紺色だったようだ。
 スクールカラーの緑色になったのは、3代目になってから。
 学園との納入業者が替わる度に、業者が取引しているメーカーも変わる為か、ブルマのデザインも若干変わったりした。
 デザインといっても、細部や色合いがやや変わっただけで、無地であることに変わりは無い。
 スカートの下に穿いても違和感が無いようにする為、あえて横にラインは入れなかったとのこと。
 全盛期には中等部はローカット、高等部はハイカットという風に一時期固定化されたが、衰退期に入ると、その垣根が無くなり、高等部でもローカットを穿く者がいたという。
 そして、2000年代に入り、校則が改正されて、ブルマは『事実上の廃止』となる。
 それをリサが2020年代で、『事実上の復活』を成し遂げた。
 リサがローカットブルマを穿いている為、それを『魔王軍』が真似し、それに追随することを判断した一部の女子も……といった感じだ。

 業者:「すいません、先生。大きいのを運び出したところで、昼休憩に入りたいのですが、よろしいでしょうか?」
 坂上:「あ、はい。構いませんよ」
 業者:「午後イチにはトラックが来るので、それで全て運び出す予定です」
 坂上:「分かりました。御苦労さまです」

 業者の責任者は、坂上先生から昼休憩の許可をもらうと、他の作業員達にそれを伝えに言った。

 愛原:「坂上先生、この後、お時間ありますか?」
 坂上:「ええ。私もそう思っていたところです」

 私と坂上先生は、校舎内に戻ることにした。
 尚、午前中最後の授業は、もう少し続く。
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