報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサ達の体育」

2023-01-11 20:47:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月20日13時30分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 保護者の私は基本、学食は利用できない。
 一時退校して、昼食を食べに行った。
 それから、再び学校に戻る。
 予定通り、リサ達のクラス、女子は校庭で授業を行うようだ。
 私の母校の高校は地方の県立高校で、ダートの校庭だったが、ここは東京都心にあることもあって、舗装されている。
 なるほど。
 ダートの校庭よりも、地熱がこもりやすいので、それで真夏では授業ができないのか。
 9月も下旬になり、まだ暑いことは暑いのだが、授業ができなくもない。
 しかも、走り幅跳びをやるらしく、さすがにそこだけは砂地になっている。
 リサ達のクラス、『魔王軍』は当然の事だが、それ以外の女子を含めても、3分の1程度がブルマを穿いていた。

 

 改めて斉藤早苗が生前に穿いていたブルマと比べると、今のは緑色が鮮やかである。
 とはいえ、彼女や白井の記憶の中では、くすんだ緑色が彼らにとっての思い出なのだろう。

 坂上「愛原さん、どうかなさったのですか?」
 愛原「何だか、リサが『せっかく来たんだから、体育の授業を見て行け』っていうものですから……」
 坂上「愛原さんは優しいんですね」
 愛原「リサが普通の人間なら、ちょっとだけ見て帰るところなんですが、彼女は違いますので……」

 リサの担任の坂上先生は、リサの正体を知る数少ない人物だ。
 副担任の倉田先生とはこの学校の卒業生かつ同窓生で、現役生だった頃は数々の怪奇現象に巻き込まれた経験を持つ。

 坂上「なるほど。それにしても、懐かしい光景ですね」
 愛原「坂上先生が現役生の頃も、ブルマでしたか?」
 坂上「ええ。ギリギリそうでした。副担任の倉田先生は、実際に穿いていた人物です。まあ、彼女自身はあんまり良い思い出は無いようで、『どうしてわざわざ復活させるの?』と、首を傾げてましたが」
 愛原「まあ、それが女子生徒の大部分の意見なんでしょうな」

 酔っ払ってリサに言った余計な一言が、まさかここまで大騒動になるとは思わなかった。
 ……となると、やっぱり私にも責任の一端はあるのだろうな。

 坂上「その後、大学生になって、教育実習生としてこの学校に戻ってきた時、ちょうど過渡期になっていました」
 愛原「過渡期?」
 坂上「1年生と2年生が短パンで、3年生は一部を除いてブルマという時期でした」
 愛原「それはそれで貴重ですね」

 状況的には今のと似ているのだろうが、坂上先生の時は『事実上の廃止』に向かう途中であり、今現在は『事実上の復活』に向かう最中である。

 愛原「あっ?」
 坂上「えっ?」

 走り幅跳びをする彼女達だが、どうしてアスリート達はレーシングブルマを穿くのか、その理由が分かった。

 愛原「隙間の多い短パンだと、砂が中に入りやすいんだ。それで、女子陸上の走り幅跳びも、選手達は皆ブルマなんですね」
 坂上「全く入らないというわけではないでしょうが、隙間が無い方がいいでしょうからね。……しかも、あれだな……」
 愛原「えっ?」
 坂上「雨が降った後ですから、砂が湿っているんですよ、まだ」
 愛原「あっ、本当だ!」

 その為、明るい緑色のブルマや短パンに染みができたのが分かった。

 愛原「まあ、我々の頃は、よく雨上がりの体育で、体操着を汚したものですが……」
 坂上「まあ、そうですね」

 とはいえ、今のコ達はそう思わないのか……。

 淀橋「あーもうっ!ビチョビチョして気持ち悪い!砂付いちゃったし!」
 小島「まあ、雨上がりの外の体育なんて、こんなもんだよ」
 リサ「でも、ブルマで良かった。砂が入りにくい」
 小島「それは確かに。この辺もPRするといいかもね」
 リサ「ん」
 淀橋「ちょっと、お尻拭いてくる!砂とか付いて気持ち悪いし!」
 小島「カナコ(淀橋の下の名前)は、潔癖症だねぇ……」
 リサ「んーんー。……ん?おー、愛原先生~!」

 リサが私に気づいて、手を振ってきた。

 愛原「いいから、授業に集中しろ」
 坂上「ハハハ……。あ、私は次の授業の準備がありますので、これで……」
 愛原「あ、どうもすいません。もう少ししたら、私も帰りますから」

 よくよく考えてみたら、担任の先生が体育の先生というクラスもある。
 基本的に授業参観は、クラスの担任教師の授業を参観するのが恒例だ。
 坂上先生は現代国語の教師なので、この授業を参観することになる。
 しかし、体育の授業参観ってあんまり聞いたことがない。
 まあ、そういう意味では、他の特別教科の授業参観自体、あまり見聞きしないのだが。

 小島「ちょっと、カナコ!これじゃ、余計にビチョビチョだよ?!」
 淀橋「ヤベッ!」
 リサ「お尻全体が濡れまくってる」
 淀橋「ミスッた、どうしよ……!魔王様の力で、何とかなる?」
 リサ「いや、無理だって」
 体育教師「ちょっとそこ!何してるの!?」

 女性体育教師がリサ達の行動を見咎めた。

 小島「先生。小島さんの体操服が濡れまくったんで、ちょっと着替えて来ていいですか?」
 体育教師「もう、何やってるの!替えのブルマはあるの?」
 淀橋「えっと……」
 体育教師「保健室に予備の短パンとかならあると思うから、急いで行ってきなさい」
 淀橋「はーい……」
 小島「カナコ、行くよ」
 リサ「! そっか。保健委員、コジマだった」
 小島「そういうこと」
 リサ「予備のブルマとか、持ってきてない?」
 淀橋「今は、これしか無いの」
 リサ「ふーん……」

 淀橋さんと小島さんが保健室に向かって行った。

 リサ「こういう時、予備用に短パンは廃止せずに、1枚くらいは持って来てた方がいいのか」

 と、リサは後ほど思ったという。
 尚、淀橋さんはブルマだけでなく、下着まで濡らしてしまった為、下着ごと替える必要があったとのこと。
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“私立探偵 愛原学” 「お別れ会とその後の調査」

2023-01-11 14:58:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月20日07時30分 天候:雨 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はリサの高校のPTA会長代行として、この学園にやってきた。

 高橋「先生、着きましたよ」
 愛原「ありがとう」

 高橋に車で送ってもらう。
 リサもついでに乗せてきた。

 愛原「ほら、着いたってよ。降りろ」
 リサ「はーい」

 今日は今朝から雨が降っていた。
 昼までは、降ったり止んだりの天気らしい。

 愛原「それじゃ、俺は職員室に行って来るからな」
 リサ「分かった」
 高橋「先生、また迎えに来ましょうか?」
 愛原「いや、どうせ昼頃には終わるからいいよ。もしまた夕方まで掛かってしまうようなら、その時よろしく」
 高橋「分かりました。じゃあ、俺は事務所に戻ります」
 愛原「よろしく」

 私はを降りると、通用門に向かった。

 リサ「先生、わたしは向こうだから」
 愛原「分かった。くれぐれも、俺の言った通りにするんだぞ?」
 リサ「うん……」

 リサは小さく頷くと、正門に向かって行った。

[同日09時00分 天候:雨 同高校体育館]

 体育館のステージを祭壇代わりに、献花台と大きく引き伸ばした城ヶ崎生徒会長の遺影が掲げられている。
 私はPTA会長代行として、臨席していた。

 校長「……このように、我が校にあっても、多大な人材であった生徒会長が、あのような形で若い命を散らせてしまったことは、真に遺憾の極みでございまして、当校のみならず、学園全体の……」

 校長先生が弔辞を読み上げる。

 リサ「ふわ……」

 しかし、リサは退屈そうに欠伸をするだけだった。
 幸いコロナ対策でマスクを着用している為、それが周りにバレることはなかったが。

 教頭「ありがとうございました。それでは次に、各自の献花に入りたいと思います」

 全校生徒数百人の生徒が全て献花をしていたのでは、時間が足りなくなる。
 そこで、生徒からは生徒会役員と、各クラスの代表であるクラス委員長がまとめて献花することとなった。
 幸いリサは、クラス委員長では……あれ!?

 リサ「……!」

 憮然とした表情で、リサが立ち上がる。
 左腕には、『代理』と書かれた腕章を着けていた。
 なにぃっ!?リサのクラス、委員長が休みなのか!?
 リサは『魔王』のはずだが、委員長の代わりでも押し付けられたのだろうか。
 リサが陣頭に立って、『ブルマ復活計画』を推進したことが、このような事件を招いたということは、学校関係者は知っている。
 リサが生徒会長を自殺に追いやったという証拠は無いので、誰も口に出しては言わないが……。
 生徒会長亡き後、繰り上がるようにして就任した新生徒会長が男子生徒だっただけに、リサがその生徒会長や男子生徒会役員を丸め込んで、ブルマ復活を生徒会案として了承させたことも噂になっている。
 その為、『魔王軍』メンバーや多くの男子生徒達以外からは、リサに対して冷ややかな目を向ける女子生徒達も多くいた。
 リサが壇上に上がると、一気に空気が変わる。

 愛原「!?」

 更に不思議なことが起こった。
 『魔王軍』のメンバーが席を立つと、ステージの前に一列に並んだのである。
 それはまるで、リサのことを守るSPのようだった。
 リサに責任を取らせたいと思っている者もいて、それらからの非難を防止する為だろうか。

 教頭「ちょ、ちょっと!勝手に席を立つのはやめなさい!直ちに席に戻りなさい!」

 進行役の教頭も呆気に取られていたが、すぐにマイクで『魔王軍』に注意した。

 リサ「大丈夫です。わたしが席に戻ったら、みんな戻ります」

 リサの言葉通り、リサが席に戻ろうとすると、『魔王軍』メンバーに前後を挟まれた。
 そして、彼女らに守られるようにして、席に戻って行ったのだった。
 まるで本当にVIPだ。
 なるほど。
 リサはヤンキーではない。
 ノリ的には、昭和時代のスケバンに近いのかもしれないが、それともまた違う。
 『令和のスケバン』とは、あんな感じなのだろうか。

 栗原「こ、これは……!」

 しばらくして、3年3組のクラス委員長でもある栗原蓮華が献花台に向かった。
 そして、そこで彼女は見たそうだ。
 2年5組の花だけが枯れていることを。
 2年5組といえば、リサのクラスである。

 栗原「あの人食い鬼……!」

 私の言い付けを見た目は守ったが、見えない所で反発したようである。

[同日11:00.天候:曇 同高校]

 お別れ会が終わり、業者がやってきて、献花台の片づけなどを始める。
 私はPTA会長代行として、それの立ち合いを行っていた。
 それも終わり、体育館は、また元の静かな空間に戻る。
 午後には、体育の授業として使われるそうである。

 愛原「坂上先生。教育資料館に保管されていた資料とかは、今どこに保管されていますか?」

 私はリサの担任の坂上先生に訪ねてみた。

 坂上「それなら、北校舎の地下倉庫です」
 愛原「ありがとうございます」

 私は許可をもらい、地下倉庫に向かった。
 教育資料館は修理を行って、それからまた資料を展示するのだそうだ。
 工事している間は、その展示物を地下倉庫に保管しているそうである。

 愛原「えーと……ここだな」

 私は職員室から借りた鍵を手に、倉庫の入口の鍵を開けた。

 愛原「えーと……あった」

 それは東京中央学園の歴代の制服や体操服を展示してあるショーケース。
 セーラー服には、見覚えのある物がある。
 “トイレの花子さん”として、長らく学園の怪談話の頂点に君臨していた女子生徒の幽霊だ。
 名前を斉藤早苗という。
 1990年代半ばまで着用されていたセーラー服を着ている。
 1960年代半ばに改正された制服だそうだから、斉藤早苗にとっては、改正されて10年目くらいの制服だったと言える。
 それの夏服が日本版リサ・トレヴァー達が研究所で着せられていたセーラー服に似ているのは、研究所の責任者だった白井伝三郎がこの学校の卒業生だったからだろう。
 斉藤早苗に対して、歪んだ恋愛を抱いていたと言われる。
 それの極みが、かつて歪んだ恋愛を抱いた相手の体を乗っ取ることであったとは……。

 愛原「……あった!」

 展示されているのは、制服だけではない。
 体操服なども展示されている。
 他にも野球部やバレー部、陸上部などのユニフォームもある。
 女子バレー部も、かつてはブルマだったことが分かる。

 

 愛原「いたよ、ここに……」

 体操服だけでなく、その時の体育祭の写真とかも展示されているのだが、そこに斉藤早苗はいた。
 ゼッケンを着けて、後ろを向いている。
 ブルマが今のピッタリとしたショーツタイプの緑に変わって間もない頃だと思われるが、写真が古いのか、それとも今のメーカーと違うのか、今の鮮やかな緑のブルマと比べると、くすんだ色合いになっている。

 愛原「この中に、白井もいたわけだな……」

 恐らく、好きな人だった斉藤早苗の方を見ていただろう。
 男として、ブルマの方もよく見ていたと思われる。
 その印象が強く残り、死後、斉藤早苗の体を乗っ取った後、沖縄中央学園にブルマを復活させた時も、似たような色合いにしたのだと想像がつく。

 
(沖縄中央学園に復活したブルマ。上記のと比べると、写真写りの具合の違いで色合いが違うように見えるが、くすんだ色合いとしては似たように見える)

 愛原「ここからも、斉藤早苗は白井伝三郎が乗っ取った奴と見て、間違いないな」

 私は写真を撮りながら、そう呟いた。

 リサ「何が?」
 愛原「えっ!?」

 すると背後から、リサの声がした。
 振り向くと、いつの間にかリサがいた。

 愛原「お、オマエ、いつの間に!?どこから!?」
 リサ「そこからw」

 リサは天井のダクトを指さした。

 愛原「ウソつくな!」
 リサ「エヘヘ……。本当は、普通にドアから。鍵かけてなかったでしょ?」
 愛原「あ、ああ、そうか。あれ?授業は?」
 リサ「今、休み時間。次の授業で、昼休み」
 愛原「そうなのか」
 リサ「何してるの?」
 愛原「沖縄にいる斉藤早苗が、本当にここの斉藤早苗だったのか、調査してるんだよ」
 リサ「ブルマで分かるんだw」
 愛原「いや、そこに写ってるだろ」
 リサ「……後ろ姿だと分かんないね」
 愛原「まあ、髪を後ろで結んでいるからな」
 リサ「ブルマで思い出したけど、午後一の授業、体育なの。久しぶりに校庭でやるから、良かったら先生、見て行って」
 愛原「そんな時間までいるかなぁ……?」

 私は首を傾げた。
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