報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「台風の週末」 3

2023-01-06 20:42:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月18日18:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 リサは窓を開けて、ベランダに出た。

 リサ「台風……行っちゃった」

 雨は止み、暴風圏も抜けたが、まだ強風圏内なので、風がビュウビュウ吹いている。
 天気予報によれば、この台風は進路を北に変え、東北地方を一気に駆け抜けるのだそうだ。
 そして、北海道に到達する頃には低気圧に変わると。

 高橋「おい、リサ!さっさと窓閉めて、こっち手伝え!」
 リサ「んー!」

 リサは物凄く速く移動する雲を見ていたが、高橋に呼ばれて室内に入った。
 そして、ピシャッと窓を閉める。
 高橋は夕食を作っていた。

 リサ「今日の夕食は?」
 高橋「トンカツ定食だ。先生の為に働くんだろ?だったら、先生の為の料理も手伝え」
 リサ「うん、分かったっ!」

 リサは高橋の横に立って、包丁を手にした。
 私はというと、事務作業も終わり、リビングのソファに座ってニュースを観ている。
 確かに、沖縄中央学園にBOWが現れたという通報を受けて、BSAAが出動したというニュースは流れていた。
 だが、彼らが駆け付けた時には、既にBOWの姿は無かったという。
 念の為に校内やその周辺を捜索したが、見当たらなかったとのこと。
 それはそれで仕方の無いことだが、私が気になったのは、『どんなBOWか?』なのだ。
 最初の一報では、『BOWが暴走している』というものだった。
 この辺、情報が錯綜しているような気がしてならない。
 リサの調査については、あれから詳しいことは分かっていない。
 ただ、1つ分かったのは、東京からの転校生だという斉藤早苗。
 これは、東京中央学園に長年巣くっていた亡霊、“トイレの花子さん”の生前の名前と同姓同名なのである。
 彼女は白井伝三郎と同級生で、新興宗教“天長会”の信者だった白井の勧誘を断っていたらしいが……。
 イジメの被害者であり、ある日、旧校舎2階の女子トイレで首つり自殺をしている。
 そこは初めてイジメられた時、閉じ込められたトイレであったという。
 その後、遺体は火葬され、墓地に埋葬されていたが、白井伝三郎によって強奪されている。
 そして、農学者であった私の伯父の愛原公一が発明した化学肥料(枯れた苗も蘇るという触れ込み)と、白井が開発した何がしかの薬を融合させた物を使って、その遺骨を生きている人間にしたという。
 ここからは憶測だが、白井はその斉藤早苗の肉体を使用しているのではないかとされている。
 しかし、沖縄中央学園にいるという斉藤早苗は写真が嫌いらしく、写ろうとしないのだという。
 それでも生徒手帳に写真くらいはあるだろうから、それを入手できれば……と思っているようだ。
 善場主任にメールは送っているのだが、いかんせん3連休だ。
 返信はまだ無い。
 もっと、驚くことがある。

 
(転載元より使用許可済み)

 これはリサが我那覇絵恋さんより送ってもらった、沖縄中央学園の体育祭の練習風景だという。
 まるで当たり前であるかのように、皆して緑色のブルマを穿いている。
 まさか、ここまで復活しているとは……。
 写真写りのせいなのか分からないが、東京中央学園の物より、だいぶくすんだ色合いになっている。
 東京の方は、もっと鮮やかな緑色である。
 沖縄の方は、青緑って感じだろうか?
 JR相模線のラインカラーのようである。
 それに対して東京の方は、本当の緑。
 JR埼京線とか東京メトロ千代田線の緑と言った方が良いか。

 

 東京中央学園の方はこんな感じ。
 上の体操服は沖縄と共通しているが、下のブルマの色合いが違う。
 しかも、沖縄の方は元々水色だったのだという。
 JR京浜東北線みたいな色か。

 愛原「ん!?」

 その時、私のスマホが震えた。
 通話の着信である。
 画面を見ると、善場主任であった。
 私は急いで自分の部屋に入った。

 愛原「もしもし、お疲れ様です!」
 善場「お疲れ様です。申し訳ありません。自宅にいたのですが、台風による停電で、身動きが取れなくなってしまいまして……」
 愛原「えっ、停電だったんですか!?」

 確かに、首都圏であっても台風による停電は発生していた。
 それは、都内もである。
 さすがに今は、ほぼ復旧しているようだが……。

 善場「はい。先ほど、ようやく復旧しました」
 愛原「大丈夫でしたか?」
 善場「はい。私自身にケガなどはありません」
 愛原「そ、そうですか……」

 私自身に、とわざわざ入れたのだから、別の所で影響はあったのだろう。

 善場「それより、メールを拝見しました。実はBSAAが出動したのは、正にその斉藤早苗の件に関してです」
 愛原「ええっ!?」
 善場「ところが、BSAAが踏み込んだところで、逃げられてしまいました」
 愛原「逃げたんですか!?」
 善場「彼女は特異菌の使い手です。恐らく、アメリカのエブリンを凌ぎ、ルーマニアのイーサン・ウィンターズ氏に匹敵する強さかもしれません」
 愛原「ええっ!?」

 故イーサン・ウィンターズ氏は、世界で唯一、特異菌100%の適合者だとされている。
 コンマ以下、寸分違わずの適合者だ。
 適合し過ぎて、本人すらBOWだと気づかなかったほどである。
 適合している、ということは化け物になんか一切ならない。
 見た目は人間、中身も……驚異的な回復力や体力を除けば人間のままである。
 但し、そこは特異菌BOW。
 大きなダメージを与えられ続ければ、その回復力は落ち、最後には石灰化して死ぬ。
 Gウィルス100%適合者とされるうちのリサが見下すのは、そこに理由がある。
 但し、Gウィルスは100%適合者でも、化け物になる。

 善場「厄介なのは、ウィンターズ氏と違い、中身は白井伝三郎だということです。恐らく、ウィンターズ氏のような正義感は無いでしょう」
 愛原「マジですか……」

 も、もしかして、彼女が驚異的な早さで、ブルマを復活させたのは……もしかしたら、特異菌の力を使ったのだろうか?
 特異菌は、感染者に幻覚を見せたり、洗脳することができる。
 リサのGウィルスでもできなくはないが、特異菌の方がより自然に心に侵食することは、アメリカのルイジアナ州の事件で明らかになっている。

 愛原「リサよりも、厄介なのでは?」
 善場「はい。リサは愛原所長によって監視・制御されていますが、斉藤早苗は違います。中身は白井伝三郎です。BSAAでは、沖縄県警や在日米軍と協力して彼女を捕縛します」

 捕縛できるのか?
 エブリンだって結局、倒したのは同じ特異菌BOWのイーサン・ウィンターズ氏だというではないか。
 かといって、特異菌の使い手とGウィルスの使い手が、ガチバトルしたら……どっちが勝つんだろうなぁ???

 善場「ややもすれば、所長方に協力をお願いするかもしれません。その時は、よろしくお願いします」

 やっぱり、そう来たか。
 しかし、業務委託を受けている身としては、断るわけにはいかない。

 愛原「分かりました」

 私は頷く他、無かった。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「台風の週末」 2

2023-01-06 16:24:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月18日11:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 外はまだ強い雨風である。
 私は自分の部屋に籠ると、パソコンで事務作業をしていた。

 高橋「失礼します、先生」

 高橋が部屋に入ってきた。

 高橋「昼飯ですが、何にしましょう?」
 愛原「何ができる?」
 高橋「ホットドッグでいいですか?」
 愛原「おっ、いいね。そうしよう」
 高橋「了解でーす!」

 リビングの方からはゲームのBGMが聞こえてくるので、リサがゲームでもしているのだろう。

 愛原「ん?」

 すると、スマホに通知が来る。
 それはBSAAの方のアプリからだった。
 私がそれを確認すると、『北緯○○・東経○○地点にて、BOWの暴走を確認につき、出動中』とあった。

 愛原「こ、これは……」

 さすがに外国の情報までは要らないので、設定を日本国内にしておいた。
 なので、これは日本国内での情報である。
 北緯と東経では具体的に分からないので、ネットで調べてみた。
 すると……。

 愛原「沖縄中央学園……だと?」

 東京中央学園の姉妹校の1つである、沖縄中央学園であった。
 確か、斎藤絵恋……もとい、我那覇絵恋が転校した学校ではなかったか。
 ここにBOWが現れたというのか。
 今日は日曜日で、学校は休みのはずだが……。

[同日12:00.天候:雨 同マンション]

 高橋「できました。ホットドックです」
 愛原「おー、ありがとう」

 昔ながらの喫茶店で出してくるホットドックのように、キャベツの千切りとウィンナーをフライパンで炒めて、背割りコッペパンに挟んでオーブンで焼いた、本格的なものであった。

 高橋「先生、コーヒーをどうぞ」
 愛原「すまんね」
 リサ「わたしはミルク」
 高橋「自分で用意しろよ」
 リサ「はーい」

 リサは相変わらず、体操服とブルマであった。
 冷蔵庫から牛乳を持って来て、テーブルに置く。

 愛原「ところでさっき、BSAAから通知が来たの、気づいたか?」
 高橋「あー、気づいてはいたんですけど、まだ見てないっス」

 高橋は昼食の準備中だったから、しょうがないか。

 リサ「エレンから聞いたけど、何か学校らしいよ」
 愛原「やっぱりか!どうなんだ?被害は?」
 リサ「分かんないって。今日、日曜日だから。で、沖縄は台風が過ぎ去った後なんだけど、今日は部活も一切ダメだって。学校に来ちゃダメだって通達が来たんだって」
 愛原「そうか。今は関東を通過中で、沖縄は通過した後だもんな」
 リサ「そう」
 愛原「絵恋さんとは話をしてるのか?」
 リサ「うん。向こうでも、友達ができたみたい。何か、わたしみたいなのがいて、寂しくないって」
 愛原「そりゃ良かった」
 高橋「オメーみたいなのがいたら、怖い学校になるんじゃねーのか?」
 リサ「そうかもね」
 愛原「そうかもねって何だ?」
 リサ「あのね、わたしが東京中央学園で、『ブルマ復活計画』を実行中だってエレンに言ったの。そしたら、『うちでも実行中なのよ』だって」
 愛原「ええっ!?」
 リサ「何か、沖縄中央学園に、東京からの転校生がいて……?そのコの学校がブルマだったから、沖縄中央学園でもブルマを復活させる計画なんだって」
 愛原「ちょっと待て。東京じゃ、どんなに遅くても、2000年代に入ったら全廃だろうが。東京中央学園のブルマ廃止も、その辺りだろ?」
 リサ「そうだよね……」

 女子陸上部のユニフォームとしてのブルマのことを言っているのだろうか?

 愛原「どういうやり方をするのかは不明だが、また反対者の代表が自殺なんてことにならなければいいがな……」
 リサ「うん、そうだね……!」

 リサはニタリと笑った。

 愛原「ん、待て。その計画は、どこまで進んでいるんだ?」
 リサ「ちょっと待ってね。エレンに聞いてみる」

 リサはスマホを手に取ると、それですぐに我那覇絵恋にLINEを送った。
 すると、すぐに帰ってきた。

 リサ「エレンは既に1着持ってるからね。ほら、この前の代替修学旅行の時の……」
 愛原「ああ!」

 その時の写真は、リサの部屋だけでなく、私の部屋にも飾ってある。
 撮ったのはデジカメだが、プリントアウトした。

 リサ「既に昔ブルマを作っていた業者に、製造再開させるところまで行っているらしいよ」
 愛原「そんなに!?」

 こちらでさえ、まだ在庫品の確保と、足りない分はネットで購入している程度だというのに。
 東京中央学園にブルマを卸していた業者は既に撤退している為、今は在庫品の確保でさえ困難なのだそうだ。
 仕方なく、今は別のメーカーが学販品とほぼ同品質のブルマを製造し、ネットで販売しているので、それを購入して使用しているくらいだ。

 リサ「その転校生、凄く動きがいいんだって」
 愛原「でも、ブルマ廃止になった後だから、それを復活させようとすると、反対派も出てくるだろう?」
 リサ「そうだと思うんだけど、転校生の動きが余りも早いものだから、外堀が埋められた状態になっているんだって」

 なるほど。
 メーカーの製造再開を先にさせることで、外堀を埋める……って、そんなこと簡単にできるのか???
 というか、その転校生、何故そうした?
 リサの場合は私に頼まれたから、というのが大きな理由だが……。
 その転校生も、誰かに頼まれたのだろうか?

 愛原「リサ。その転校生が誰なのか、調べてくれないか?まあ、絵恋さんに頼むことになると思うが……」
 リサ「うん、分かった。……まずは食べてからね」
 愛原「もちろん」

[同日13:00.天候:雨 同マンション]

 リサは昼食を食べ終わると、すぐに絵恋に転校生の正体について調べさせた。
 もっとも、絵恋とはクラスが違うらしい。
 その為、あまり詳しい情報が入らないのだそうだ。

 リサ「名前は斉藤早苗。東京から転校してきたって言うけど、どこの学校から来たのかまでは知らないって」
 愛原「絵恋さんは、その転校生と仲良くないのかな?」
 リサ「いや、そんなことないみたい。わたしみたいなコって、その転校生のことらしいから」
 愛原「そうなのか」

 何だかんだ言って、ブルマ復活計画が進んでいるところは、確かにリサと似ているかもしれない。

 リサ「ただ、おかしいことが1つあって……」
 愛原「おかしいこと?」
 リサ「沖縄中央学園って、元は別の経営だったの」

 以前は違う学校法人だったようだ。
 それを東京中央学園が買い取ったか何かして、姉妹校化したらしい。

 リサ「その時に穿いていたブルマは、水色だったんだって」
 愛原「水色……」
 リサ「だけど転校生が、『東京じゃ緑のブルマだったから、緑のブルマにする』って言って、それを導入しようとしているんだって」
 愛原「まあ、前の学校法人と今ではなぁ……」

 東京中央学園のスクールカラーは緑なので。
 ただまあ、かつてのメーカーに製造再開させようとするならば、以前に製造していたものを再開させた方が早いような気はする。

 リサ「それが、そんなことないんだよ」
 愛原「ん、どういうことだ?」
 リサ「仙台にも中央学園があるんだよね」
 愛原「そうだな」
 リサ「あそこも、東京中央学園が姉妹校化した所なんだよ」
 愛原「……なるほどな」
 リサ「あそこはまだ『ブルマ復活計画』は無いけど、資料で見たら、昔は紺色のブルマ、今は紺色の短パンなんだって」
 愛原「緑じゃないんだ!」

 恐らく、取引業者をそのまま使っているのだろう。
 地方ともなれば、東京中央学園と取引している業者の営業エリア外ということも考えられ、別の業者と契約せざるを得ないということもあるだろう。
 そういう意味では、仙台中央学園の方が当たり前なのかもしれない。
 にも関わらず、沖縄の方は……。

 リサ「一応、わたしも調べた」
 愛原「そうなのか」
 リサ「絵恋に色々と調べさせてみる」
 愛原「悪いな。あくまでも、無理はさせるなよ?本当に分かる範囲でいいから」
 リサ「分かった」

 リサは大きく頷いた。
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