[9月18日18:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
リサは窓を開けて、ベランダに出た。
リサ「台風……行っちゃった」
雨は止み、暴風圏も抜けたが、まだ強風圏内なので、風がビュウビュウ吹いている。
天気予報によれば、この台風は進路を北に変え、東北地方を一気に駆け抜けるのだそうだ。
そして、北海道に到達する頃には低気圧に変わると。
高橋「おい、リサ!さっさと窓閉めて、こっち手伝え!」
リサ「んー!」
リサは物凄く速く移動する雲を見ていたが、高橋に呼ばれて室内に入った。
そして、ピシャッと窓を閉める。
高橋は夕食を作っていた。
リサ「今日の夕食は?」
高橋「トンカツ定食だ。先生の為に働くんだろ?だったら、先生の為の料理も手伝え」
リサ「うん、分かったっ!」
リサは高橋の横に立って、包丁を手にした。
私はというと、事務作業も終わり、リビングのソファに座ってニュースを観ている。
確かに、沖縄中央学園にBOWが現れたという通報を受けて、BSAAが出動したというニュースは流れていた。
だが、彼らが駆け付けた時には、既にBOWの姿は無かったという。
念の為に校内やその周辺を捜索したが、見当たらなかったとのこと。
それはそれで仕方の無いことだが、私が気になったのは、『どんなBOWか?』なのだ。
最初の一報では、『BOWが暴走している』というものだった。
この辺、情報が錯綜しているような気がしてならない。
リサの調査については、あれから詳しいことは分かっていない。
ただ、1つ分かったのは、東京からの転校生だという斉藤早苗。
これは、東京中央学園に長年巣くっていた亡霊、“トイレの花子さん”の生前の名前と同姓同名なのである。
彼女は白井伝三郎と同級生で、新興宗教“天長会”の信者だった白井の勧誘を断っていたらしいが……。
イジメの被害者であり、ある日、旧校舎2階の女子トイレで首つり自殺をしている。
そこは初めてイジメられた時、閉じ込められたトイレであったという。
その後、遺体は火葬され、墓地に埋葬されていたが、白井伝三郎によって強奪されている。
そして、農学者であった私の伯父の愛原公一が発明した化学肥料(枯れた苗も蘇るという触れ込み)と、白井が開発した何がしかの薬を融合させた物を使って、その遺骨を生きている人間にしたという。
ここからは憶測だが、白井はその斉藤早苗の肉体を使用しているのではないかとされている。
しかし、沖縄中央学園にいるという斉藤早苗は写真が嫌いらしく、写ろうとしないのだという。
それでも生徒手帳に写真くらいはあるだろうから、それを入手できれば……と思っているようだ。
善場主任にメールは送っているのだが、いかんせん3連休だ。
返信はまだ無い。
もっと、驚くことがある。
(転載元より使用許可済み)
これはリサが我那覇絵恋さんより送ってもらった、沖縄中央学園の体育祭の練習風景だという。
まるで当たり前であるかのように、皆して緑色のブルマを穿いている。
まさか、ここまで復活しているとは……。
写真写りのせいなのか分からないが、東京中央学園の物より、だいぶくすんだ色合いになっている。
東京の方は、もっと鮮やかな緑色である。
沖縄の方は、青緑って感じだろうか?
JR相模線のラインカラーのようである。
それに対して東京の方は、本当の緑。
JR埼京線とか東京メトロ千代田線の緑と言った方が良いか。
東京中央学園の方はこんな感じ。
上の体操服は沖縄と共通しているが、下のブルマの色合いが違う。
しかも、沖縄の方は元々水色だったのだという。
JR京浜東北線みたいな色か。
愛原「ん!?」
その時、私のスマホが震えた。
通話の着信である。
画面を見ると、善場主任であった。
私は急いで自分の部屋に入った。
愛原「もしもし、お疲れ様です!」
善場「お疲れ様です。申し訳ありません。自宅にいたのですが、台風による停電で、身動きが取れなくなってしまいまして……」
愛原「えっ、停電だったんですか!?」
確かに、首都圏であっても台風による停電は発生していた。
それは、都内もである。
さすがに今は、ほぼ復旧しているようだが……。
善場「はい。先ほど、ようやく復旧しました」
愛原「大丈夫でしたか?」
善場「はい。私自身にケガなどはありません」
愛原「そ、そうですか……」
私自身に、とわざわざ入れたのだから、別の所で影響はあったのだろう。
善場「それより、メールを拝見しました。実はBSAAが出動したのは、正にその斉藤早苗の件に関してです」
愛原「ええっ!?」
善場「ところが、BSAAが踏み込んだところで、逃げられてしまいました」
愛原「逃げたんですか!?」
善場「彼女は特異菌の使い手です。恐らく、アメリカのエブリンを凌ぎ、ルーマニアのイーサン・ウィンターズ氏に匹敵する強さかもしれません」
愛原「ええっ!?」
故イーサン・ウィンターズ氏は、世界で唯一、特異菌100%の適合者だとされている。
コンマ以下、寸分違わずの適合者だ。
適合し過ぎて、本人すらBOWだと気づかなかったほどである。
適合している、ということは化け物になんか一切ならない。
見た目は人間、中身も……驚異的な回復力や体力を除けば人間のままである。
但し、そこは特異菌BOW。
大きなダメージを与えられ続ければ、その回復力は落ち、最後には石灰化して死ぬ。
Gウィルス100%適合者とされるうちのリサが見下すのは、そこに理由がある。
但し、Gウィルスは100%適合者でも、化け物になる。
善場「厄介なのは、ウィンターズ氏と違い、中身は白井伝三郎だということです。恐らく、ウィンターズ氏のような正義感は無いでしょう」
愛原「マジですか……」
も、もしかして、彼女が驚異的な早さで、ブルマを復活させたのは……もしかしたら、特異菌の力を使ったのだろうか?
特異菌は、感染者に幻覚を見せたり、洗脳することができる。
リサのGウィルスでもできなくはないが、特異菌の方がより自然に心に侵食することは、アメリカのルイジアナ州の事件で明らかになっている。
愛原「リサよりも、厄介なのでは?」
善場「はい。リサは愛原所長によって監視・制御されていますが、斉藤早苗は違います。中身は白井伝三郎です。BSAAでは、沖縄県警や在日米軍と協力して彼女を捕縛します」
捕縛できるのか?
エブリンだって結局、倒したのは同じ特異菌BOWのイーサン・ウィンターズ氏だというではないか。
かといって、特異菌の使い手とGウィルスの使い手が、ガチバトルしたら……どっちが勝つんだろうなぁ???
善場「ややもすれば、所長方に協力をお願いするかもしれません。その時は、よろしくお願いします」
やっぱり、そう来たか。
しかし、業務委託を受けている身としては、断るわけにはいかない。
愛原「分かりました」
私は頷く他、無かった。
リサは窓を開けて、ベランダに出た。
リサ「台風……行っちゃった」
雨は止み、暴風圏も抜けたが、まだ強風圏内なので、風がビュウビュウ吹いている。
天気予報によれば、この台風は進路を北に変え、東北地方を一気に駆け抜けるのだそうだ。
そして、北海道に到達する頃には低気圧に変わると。
高橋「おい、リサ!さっさと窓閉めて、こっち手伝え!」
リサ「んー!」
リサは物凄く速く移動する雲を見ていたが、高橋に呼ばれて室内に入った。
そして、ピシャッと窓を閉める。
高橋は夕食を作っていた。
リサ「今日の夕食は?」
高橋「トンカツ定食だ。先生の為に働くんだろ?だったら、先生の為の料理も手伝え」
リサ「うん、分かったっ!」
リサは高橋の横に立って、包丁を手にした。
私はというと、事務作業も終わり、リビングのソファに座ってニュースを観ている。
確かに、沖縄中央学園にBOWが現れたという通報を受けて、BSAAが出動したというニュースは流れていた。
だが、彼らが駆け付けた時には、既にBOWの姿は無かったという。
念の為に校内やその周辺を捜索したが、見当たらなかったとのこと。
それはそれで仕方の無いことだが、私が気になったのは、『どんなBOWか?』なのだ。
最初の一報では、『BOWが暴走している』というものだった。
この辺、情報が錯綜しているような気がしてならない。
リサの調査については、あれから詳しいことは分かっていない。
ただ、1つ分かったのは、東京からの転校生だという斉藤早苗。
これは、東京中央学園に長年巣くっていた亡霊、“トイレの花子さん”の生前の名前と同姓同名なのである。
彼女は白井伝三郎と同級生で、新興宗教“天長会”の信者だった白井の勧誘を断っていたらしいが……。
イジメの被害者であり、ある日、旧校舎2階の女子トイレで首つり自殺をしている。
そこは初めてイジメられた時、閉じ込められたトイレであったという。
その後、遺体は火葬され、墓地に埋葬されていたが、白井伝三郎によって強奪されている。
そして、農学者であった私の伯父の愛原公一が発明した化学肥料(枯れた苗も蘇るという触れ込み)と、白井が開発した何がしかの薬を融合させた物を使って、その遺骨を生きている人間にしたという。
ここからは憶測だが、白井はその斉藤早苗の肉体を使用しているのではないかとされている。
しかし、沖縄中央学園にいるという斉藤早苗は写真が嫌いらしく、写ろうとしないのだという。
それでも生徒手帳に写真くらいはあるだろうから、それを入手できれば……と思っているようだ。
善場主任にメールは送っているのだが、いかんせん3連休だ。
返信はまだ無い。
もっと、驚くことがある。
(転載元より使用許可済み)
これはリサが我那覇絵恋さんより送ってもらった、沖縄中央学園の体育祭の練習風景だという。
まるで当たり前であるかのように、皆して緑色のブルマを穿いている。
まさか、ここまで復活しているとは……。
写真写りのせいなのか分からないが、東京中央学園の物より、だいぶくすんだ色合いになっている。
東京の方は、もっと鮮やかな緑色である。
沖縄の方は、青緑って感じだろうか?
JR相模線のラインカラーのようである。
それに対して東京の方は、本当の緑。
JR埼京線とか東京メトロ千代田線の緑と言った方が良いか。
東京中央学園の方はこんな感じ。
上の体操服は沖縄と共通しているが、下のブルマの色合いが違う。
しかも、沖縄の方は元々水色だったのだという。
JR京浜東北線みたいな色か。
愛原「ん!?」
その時、私のスマホが震えた。
通話の着信である。
画面を見ると、善場主任であった。
私は急いで自分の部屋に入った。
愛原「もしもし、お疲れ様です!」
善場「お疲れ様です。申し訳ありません。自宅にいたのですが、台風による停電で、身動きが取れなくなってしまいまして……」
愛原「えっ、停電だったんですか!?」
確かに、首都圏であっても台風による停電は発生していた。
それは、都内もである。
さすがに今は、ほぼ復旧しているようだが……。
善場「はい。先ほど、ようやく復旧しました」
愛原「大丈夫でしたか?」
善場「はい。私自身にケガなどはありません」
愛原「そ、そうですか……」
私自身に、とわざわざ入れたのだから、別の所で影響はあったのだろう。
善場「それより、メールを拝見しました。実はBSAAが出動したのは、正にその斉藤早苗の件に関してです」
愛原「ええっ!?」
善場「ところが、BSAAが踏み込んだところで、逃げられてしまいました」
愛原「逃げたんですか!?」
善場「彼女は特異菌の使い手です。恐らく、アメリカのエブリンを凌ぎ、ルーマニアのイーサン・ウィンターズ氏に匹敵する強さかもしれません」
愛原「ええっ!?」
故イーサン・ウィンターズ氏は、世界で唯一、特異菌100%の適合者だとされている。
コンマ以下、寸分違わずの適合者だ。
適合し過ぎて、本人すらBOWだと気づかなかったほどである。
適合している、ということは化け物になんか一切ならない。
見た目は人間、中身も……驚異的な回復力や体力を除けば人間のままである。
但し、そこは特異菌BOW。
大きなダメージを与えられ続ければ、その回復力は落ち、最後には石灰化して死ぬ。
Gウィルス100%適合者とされるうちのリサが見下すのは、そこに理由がある。
但し、Gウィルスは100%適合者でも、化け物になる。
善場「厄介なのは、ウィンターズ氏と違い、中身は白井伝三郎だということです。恐らく、ウィンターズ氏のような正義感は無いでしょう」
愛原「マジですか……」
も、もしかして、彼女が驚異的な早さで、ブルマを復活させたのは……もしかしたら、特異菌の力を使ったのだろうか?
特異菌は、感染者に幻覚を見せたり、洗脳することができる。
リサのGウィルスでもできなくはないが、特異菌の方がより自然に心に侵食することは、アメリカのルイジアナ州の事件で明らかになっている。
愛原「リサよりも、厄介なのでは?」
善場「はい。リサは愛原所長によって監視・制御されていますが、斉藤早苗は違います。中身は白井伝三郎です。BSAAでは、沖縄県警や在日米軍と協力して彼女を捕縛します」
捕縛できるのか?
エブリンだって結局、倒したのは同じ特異菌BOWのイーサン・ウィンターズ氏だというではないか。
かといって、特異菌の使い手とGウィルスの使い手が、ガチバトルしたら……どっちが勝つんだろうなぁ???
善場「ややもすれば、所長方に協力をお願いするかもしれません。その時は、よろしくお願いします」
やっぱり、そう来たか。
しかし、業務委託を受けている身としては、断るわけにはいかない。
愛原「分かりました」
私は頷く他、無かった。