報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「京王ライナー1号」

2022-02-03 20:28:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月22日16:46.天候:曇 東京都新宿区西新宿 京王新線新宿駅→京王線新宿駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新宿、新宿です。お出口は、右側です。この後、京王新線、笹塚行きは、降りたホーム4番線でお待ちください。49分の発車です。今日も都営地下鉄新宿線をご利用頂き、ありがとうございました」〕

 私達を乗せた電車は、ダイヤ通りに地下ホームへと滑り込んだ。
 京王電鉄の新宿駅は、少し変わった構造をしている。
 1番線から5番線まであるのだが、4番線と5番線だけ別線扱いだ。
 都営地下鉄新宿線と相互乗り入れをしており、地下鉄に直通するのが新線新宿駅なのである。
 京王線のホームと連番になっていることからも想像が付く通り、新線新宿駅は京王電鉄が管理している。
 なので、立ち番の駅員も東京都の職員ではなく、京王の社員である。

〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。4番線の電車は、回送です。ご乗車になれませんので、ご注意ください。各駅停車の笹塚行きは、この後すぐに参ります」〕

 私達は電車を降りた。
 到着した電車は、このホームで折り返すのではなく、一旦引き上げ線まで引き上げる。
 それから折り返して、新宿始発の本八幡行きになるのである。
 で、私達はここから京王線のホームに移動しなくてはならない。
 同じ京王新宿駅ながら、新線と本線とでは行き来か少し面倒なところがある。
 別に、改札口を通ったり、最悪駅の外に出るとか、そういうことではない。

 愛原:「エスカレーターで上がって、地下1階へ。……で、改札口手前の通路を通ると……3番線と」
 高橋:「先生?俺達が乗る電車ってのは、この3番線からなんですか?」
 愛原:「いや、向こうの2番線w」
 高橋:「は!?」
 愛原:「いや、どうしても京王新線から移動しようとすると、この3番線にしか出れないんだって。しょうがないから、ぐるっと回る必要がある」

 京王線1番線から3番線ホームは櫛形の頭端式ホーム。
 つまり、車止めの後ろに通路があるので、そこから回れば階段の昇り降りはしなくても良い。

 高橋:「先生、キップは?」
 愛原:「心配するな。“京王ライナー”は、俺がチケットレスサービスで予約済だ」
 高橋:「いつの間に会員登録を……」
 愛原:「わはは!天才と呼びなさい!」
 高橋:「メモっておきます!」

 因みに私と高橋は、菊川駅からSuicaやPasmoで乗っているが、リサと凛さんにはキップを買い与えている。
 これは一応、引率者は私だからだ。
 あと、高橋は業務で乗っている為。

[同日16:55.天候:曇 京王線新宿駅→7001電車1号車内]

 

 2番線に“京王ライナー”が入線してきた。
 京王線内における、全席指定有料特急である。
 車両は都営新宿線に乗り入れて来る新型車両であったが、それはロングシート状態で運転されるのに対し、“京王ライナー”としてはクロスシート状態(車端部を除く)で運転される。

 

 また、通常の電車として運転する時は昼白色、この座席指定車として運転する時は暖色と、照明の色を変えているという。

 

 車両は4ドア車だが、新宿駅を発車する時は車端部の2つのドアしか開かない。

 愛原:「BOW輸送の為、先頭か最後尾に乗れってことになってるけど、この場合は最後尾の方が良かったかな?」
 高橋:「そうかもしれませんね」

 https://www.youtube.com/watch?v=eZc2F2GL3HA

 乗り込むと、車内にはBGMが流れていた。
 まるで離陸前・着陸後の旅客機内で流れる、壮大なオーケストラだった。

 愛原:「シートベルトは無いか?このまま離陸しそうなBGMだ」
 高橋:「無いみたいっスね。BSAAのヘリに乗る時も、後ろに乗る時はシートベルト無しですもんね」
 愛原:「とんでもない乗り物に、俺達は乗ってたんだな」
 高橋:「いや、全くです」

〔「本日も京王をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は17時ちょうど発、“京王ライナー”1号、京王八王子行きです。停車駅は明大前、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野、終点京王八王子の順に止まります。全車両座席指定となっております。……」〕

 リサ:「ここ、Wi-Fi入るよ」
 凛:「ホントですね。あと、充電コンセントもあります」

 リサと凛さんは私達の後ろに座っている。

 愛原:「このBGMいいなぁ。仕事開始前のBGMで流すか?」
 高橋:「それって一流の探偵に必要なものっスか?」
 愛原:「……それを言われるとなぁ……」

 平日なら帰宅客で満席になるのだろうが、土曜日はそうでもなかった。
 まだ空席がある状態で、発車の時刻が迫っている。
 平日ダイヤだと府中駅までノンストップだが、土休日ダイヤでは明大前駅にも止まる。
 そうすることで、集客しようというのだろう。

[同日17:00.天候:曇 京王電鉄京王線7001電車1号車内]

 電車はダイヤ通りに発車した。
 ドアチャイムなども、他の京王電車と同じもの。
 同じようなチャイムは、JR東海の在来線電車にも搭載されていたか。
 発車してからも壮大なBGMは流れていたが、車内放送でそれは終わった。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。京王をご利用くださいまして、ありがとうございます。“京王ライナー”、京王八王子行きです。途中、明大前、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野に止まります。次は、明大前です。明大前の次は、府中に止まります〕

 他の季節なら、夕日が差し込む時間帯だと思うが、この季節ではもう真っ暗である。
 また、雲っているので、もしも今日が満月であったとしても、凛さんが間違えて見てしまって、発狂する恐れも無い。
 そういった意味では、まだリサの方が安全と言える。

 高橋:「Wi-Fiが繋がるのはいいっスね」
 愛原:「この辺はJRも同じだったかな」
 高橋:「そうっスね」

 JR中央線の特急“はちおうじ”とは、競合している。
 その為、JR側は特急を東京駅発着にすることで、差別化を図っているようだ。
 正直、それは大きい。
 もしもその特急が土休日ダイヤも運転するのなら、私はそっちに乗る選択をしていただろう。
 この“京王ライナー”も、都営新宿線に乗り入れたら面白いだろうなと思う。
 もっとも、乗り入れたところで、急行すら止まらない菊川駅には止まらないだろう。

 高橋:「先生、夕飯はどうしますか?」
 愛原:「せっかく八王子に行くんだから、八王子ラーメンでも食べるか」
 高橋:「いいっスね!」
 凛:「八王子ラーメンですか?何ですか、それ?」
 リサ:「八王子ラーメンっていうのは……」

 実際に食べたことのあるリサ、先輩ヅラして得意げに説明した。
 どれ、今のうちにどのラーメン屋にするか、検索しておくか。
 私は、自分のスマホを取り出した。
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“私立探偵 愛原学” 「受験当日」

2022-02-03 14:24:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月22日07:30.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 朝食を食べた私達は、マンション駐車場へ向かった。

 愛原:「今から行けば間に合うな」
 上野凛:「はい」

 運転を高橋に任せ、私は助手席、リサ達はリアシートに座る。

 愛原:「リサは家にいていいんだぞ?」
 リサ:「いや、わたしも行く!」

 と、リサは主張した。
 恐らく家のいるのが寂しいのではなく、私と一緒にいたいのだろう。
 車に乗り込むと、すぐに出発した。
 土曜日なので、同じ時間の平日と比べても、道路は空いているだろう。

 愛原:「今日は頑張るんだよ」
 凛:「はい」
 愛原:「今日頑張ったら、御褒美があるから」
 凛:「何ですか?」
 愛原:「せっかく上京したんだ。お母さんと会いたくはないか?」
 凛:「まさか……!」
 愛原:「私から善場主任に頼んで、キミとお母さんが面会できるようにしたよ」
 凛:「本当ですか!?」
 愛原:「本当は土休日は面会できないらしいんだが、特別にな」
 高橋:「これも先生だからできることだ。感謝の気持ちを忘れるなよ?」
 リサ:「先生の言う事は絶対!」
 凛:「ありがとうございます!」

 まあ、話を持ち掛けて来たのは、実は善場主任の方だったりする。
 物は言いようだと、んっ?さんも仰っている。

 愛原:「頑張り具合を、後で迎えに行った時、聞かせてもらうよ?俺から話をすれば、善場主任は面会許可を出してくれるだろう」
 高橋:「おい、先生への態度!」
 凛:「はい、頑張ります!」
 愛原:「まあまあ……」
 リサ:「先生への態度!」

 リサは凛さんの制服のスカートを捲り上げた。

 凛:「きゃっ!」

 しかし、凛さんのスカートの下はすぐにショーツではなかった。
 恐らく、陸上部で穿いていると思われる短パンを下に穿いていた。

 リサ:「おい、こら!何で短パン穿いてんだよ?」
 愛原:「ご、ごめんなさい!」
 リサ:「先生のPCのエロ動画では、皆そんなもの穿いてないぞ?」
 凛:「ええっ!?」
 愛原:「だから勝手に観るなって言ってんだろ!」
 高橋:「リサ、アウトー!」
 愛原:「リサ、帰ったら説教な!」
 リサ:「し、しまった!」

 何回パスワードを変えても、リサは解読して私のPCを勝手に観るのだよ。
 BOW以外にも、才能はありそうだ。

[同日15:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上間高校前]

 試験が終わる時間を見計らい、私達は再び東京中央学園上野高校に向かった。
 受験人数が少ないせいか、疎らに出てくる受験生達。
 その中に凛さんを見つけ、私は手を振った。

 愛原:「よお、ご苦労さん」
 凛:「お迎え、ありがとうございます」
 リサ:「おつ」

 再び車に乗ってもらう。
 凛さんが車に乗ると、高橋はすぐに車を出した。

 愛原:「一旦、事務所に戻ってくれ」
 高橋:「了解です」
 愛原:「試験、どうだった?」
 凛:「まあまあ、できたと思います。集団討論がちょっと難しかったですけど……」
 愛原:「集団討論?」
 リサ:「最近の高校の推薦入試は、そういうのがあるの」
 愛原:「そうなのか。俺の中じゃ、小論文と面接っていうイメージだったけどな」
 凛:「それもありました。何とか上手くできたと思います」
 愛原:「そりゃあ良かった」

 因みに私は、高校は一般入試で入ったので、推薦入試がどんなものだったのかは知らない。
 ましてや公立高校だったので、試験内容は私立の東京中央学園と毛色が違うかもしれない。
 そもそもが中高一貫校の東京中央学園にとって、高校入試とは、中等部からの入学者とは別の、定員補充の為のものに過ぎない。

 凛:「それで、お母さんとは……?」
 愛原:「明日会えることになったよ。今日、前乗りで八王子まで行くよ」
 凛:「……っ!ありがとうございます……!」
 高橋:「先生への感謝を忘れるなよ?」
 リサ:「先生への感謝を忘れるなよ?」
 愛原:「何で2人同時に言うんだ?……とにかく、帰ったら凛さんは荷物まとめて。俺達は一泊分の準備だ」

[同日16:27.天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1627T電車最後尾車内]

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが、短い8両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 出発の準備を整えた私達は、地下鉄の駅に行った。
 車にしなかったのは、車のリース契約が今日で切れる為、一旦返却しなくてはならなかったからである。
 定期的に車を使うような仕事が受注できていれば、定期的に更新するのだが、そうではなかったので、更新するのはやめておいた。

 リサ:「うう……。地下はヤだな……」
 凛:「そうなんですか?」
 リサ:「うん。何か、研究所を思い出しちゃって……」
 凛:「そうですか」

 トンネルの向こうから、轟音と強風を伴って電車がやってくる。
 強風でリサの髪が靡き、凛さんの制服スカートとリサの私服フレアスカートが靡いた。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 黄緑色が目に付く、都営の車両が来た。
 短い8両編成ながら、週末午後の上りということもあり、車内は空いている。
 少し硬めの座席に腰かけた。
 すぐに、短い発車サイン音が鳴る。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車のドアとホームドアが閉まる。
 1番後ろの車両の為か、車掌の視差歓呼の声や発車合図のブザー音が僅かに聞こえた。
 そして、エアの抜ける音がして、電車が走り出す。
 インバータの音が、トンネル内にこだまする。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S11.Please change here for the Oedo line.〕

 リサ:「リンは地下とか怖くないの?」
 凛:「不気味だと思うことはありますけど、地下鉄って何だか都会じゃないですか。私、ずっと栃木の田舎に住んでたものですから、都会に来たって感じですよ」
 リサ:「そうか……」

 親元を離れる不安は如何ばかりかと思っていたが、そもそも今は、親の方が子から離れているのだ。
 そもそも、そういう不安は無いのかもしれない。

 高橋:「先生。今回は、いつもと違うルートのようですが?」
 愛原:「そうだな。前回、八王子に前泊した時は、JRで行ったんだよな?」
 高橋:「はい。確か、夕方の特急……」
 愛原:「特急“はちおうじ”だな。あれは平日限定なんだ。で、今日は土曜日だから運行しない」
 高橋:「あっ、そうっスね」
 愛原:「それなら今日は、京王で行こうと思ったんだ。凛さん、JRは乗る機会があるかもしれないが、こっちの私鉄や地下鉄は乗る機会が無いだろうと思ってね」
 高橋:「さすが名探偵!名推理です!」
 愛原:「いや、推理でも何でもないぞ」

 まあ、広義の鉄道ダイヤトリックの見破りではあるか?
 犯人が『その特急で八王子に向かったから、アリバイは成立している』と証言しようものなら、『いや、その特急は平日ダイヤ限定だ。事件があった日は土曜日。平日ダイヤ限定の特急が運転されているはずがない。よって、アリバイは崩壊だ!』ってな感じ?

 愛原:「とにかく、これで新宿まで行って、そこから乗り換えるから」
 高橋:「了解です」
 リサ:「分かった」
 凛:「分かりました」
コメント (2)
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