報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「特急スノーパル2355」

2022-02-20 20:52:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月22日23:30.天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅→特急“スノーパル2355”(列番不明)1号車内]

 集合時刻になった。
 全部の人数は120人くらい。
 中等部は40人のクラスで編成されていたので、全部合わせて120人ほど。
 中には中等部を卒業してから、別の高校や高専に行ってしまった生徒もいるので、本当に全員が集まったわけではない。
 そして、当時の担任教師や副担任も合せて130人くらいになるだろうか(同行の私達も含む)。
 確かにこの人数なら、在来線特急3両編成分くらいかもしれない。
 フル規格の新幹線なら2両分くらいか。

 教頭:「えー、本日は1年ぶりに皆さんとお会いできて、本当に嬉しいです」

 見送りには中等部の教頭先生と、高等部の副校長先生が来た。
 あくまでも中等部の代替修学旅行なのだからと、挨拶は中等部の教頭先生が行い、高等部の副校長先生は注意事項を話す程度であった。

 大沢:「ただいま御紹介に預かりました妙観光の大沢と、こちら愛国清澄です。本日より皆様のお世話をさせて頂きます。よろしくお願い致します」

 それにしても、同乗する聖クラリス女学院の生徒達はどこに集合しているのだろう?
 と、思いきや……。

 愛原:「ん?」

 その時、私のスマホにメール着信があった。
 見ると、相手は善場主任。
 メールを見てみると、聖クラリス女学院のことだった。
 善場主任の情報によると、彼女らは一旦学校に集まり、そこからバスで浅草駅に向かい、直接ホームまで行くというプランなのだそうだ。

 大沢:「それでは早速列車に乗りたいと思いますが、ちょっと今、別の団体さんが乗車中とのことで、今しばらくお待ちください」

 私は彼女らの様子を見に行くことにした。
 改札口まで行くと……。

 ケンショーブラック:「それでは、聖クラリス女学院の皆様がホームに入ります。皆様、お願いします!」
 ケンショーグリーン:「クフフフフフ……。皆さん、美少女揃いですね。嗚呼、私、とても功徳を実感しております。……嗚呼、そこのあなた、銀髪と白い肌が美しい……。ハーフでいらっしゃいますか?」
 銀髪の女生徒:「……!!」(ギロッとケンショーグリーンを睨み付ける)
 ケンショーグリーン:「ハァ、ハァ……!も、もっと睨んでください!」(*´Д`)

 やっぱり危なっかしい旅行会社だ。
 そういった意味では、まだ妙観光の大沢さん達は誠実で安心できる。
 それにしても、あの銀髪のコ……。
 何だか気になるなぁ……。

 愛国清澄:「そろそろ乗車が終わりましたかね?」
 愛原:「あっ、はい!そのようですね!」
 愛国清澄:「それでは東京中央学園の皆さんにも乗車してもらいましょう」
 愛原:「そ、そうですね!そうしましょう!」

 私と女性エージェントは、先ほどの集合場所に戻った。

 大沢:「トイレが済みましたら、ここに戻って来てください。あと、飲み物は今のうちこの駅の自販機で購入しておいてください。車内販売や列車内に自販機はございません。また、新藤原駅まで車外に出ることはできませんので、ご注意ください」

 どうやら待っている間、トイレに行かせるなどしているようだ。
 確かにホームにトイレは無いし、あとは電車のトイレしか無いので、広いトイレを使いたければ今の内かもしれない。

 愛原:「高橋は?」
 リサ:「タバコ。わたしもサイトーとトイレ行ってくる」
 愛原:「行ってらっしゃい」

 こうして、私達がホームに入ったのは、発車の10分ほど前だった。

 

 愛原:「ここだ、ここまで行くんだ」

 私は路線図を指さしながら行った。

 リサ:「末端の会津田島まで行ったことのある私達としては、あまり驚きは無い」
 愛原:「ま、まあ、そうなんだけどな!」

 現在、“スノーパル”は3両編成で運転されている。
 だが、ホームにはその3両編成の前に、同じ編成が連結されており、東京中央学園はその増結車両に乗るようだ。

 愛原:「ふーん……」

 後ろ3両の編成のうち、真ん中の車両と最後尾車両(6号車と5号車)に聖クラリス女学院が乗り込んでおり、4号車に一般客が乗るという形らしい。
 なので側面の行き先表示も、後ろ3両は『スノーパル 会津高原尾瀬口』となっているのに対し、東京中央学園の貸切編成側は、『修学旅行』という表示がしてあった。
 これらの表示、どうも日によって(編成によって?)違うらしい。
 私が下調べした時、ネットの画像では、『臨時 SPECIAL TRAIN』という表示であった。
 また、修学旅行列車の場合も、『臨時』だったり、『貸切』だったりとバラバラだ。
 その為か、普段の“リバティー会津”の時は6両編成時、前編成と後ろ編成が貫通扉で行き来できるようになっているのだが、今回は行き来できないようになっていた。

〔「4番線に停車中の列車は23時55分発、特急“スノーパル2355”号、会津高原尾瀬口行きです。専用の乗車券をお持ちでないお客様は、ご乗車になれません。また、途中の停車駅で降りることはできませんので、ご注意ください。……」〕

 東武浅草駅は日本のターミナル駅では、特殊な構造をしている。
 まず、1番線以外は6両編成までしか入れない。
 それどころか、下り方向、前の車両はホームが細い為に、ドアカットしなければならないほどだ。
 特急ホームもそう。
 前編成の所の時点で、既に車両とホームの間の幅が半端無く広い為に、ドアカットまではしないものの、渡り板が置かれている有り様だ。
 その為か、前編成の後ろの車両(3号車)のドアから乗るよう案内される。
 車両は新型の500系と呼ばれる車両で、これも“リバティー会津”の時に乗った車両だ。
 シートピッチは新幹線の普通車くらいなので、けして狭くはない。

 大沢:「会長代理と助手の方は、こちらへどうぞ」
 愛原:「どうも」

 私達は1番前の席へ案内された。
 テーブルは壁から出す方式だが、座席のテーブルより大きい感じだ。
 また、肘掛けの中にもテーブルが収納されている。
 更には充電用のコンセントや、Wi-Fiもあった。

 リサ:「私達はここでいい?」
 絵恋:「そうしましょう!」

 リサと絵恋は私達の後ろに座った。
 どうやら、席までは決まっていないようである(何組が何号車に乗るかまでは決まっているようだが)。

〔「ご案内致します。この電車は23時55分発、特急“スノーパル2355”号、会津高原尾瀬口行きです。尚、前3両、1号車から3号車は修学旅行専用車両となっております。お手持ちのキップに書かれております座席番号をお確かめの上、指定の席にお掛けください。……」〕

 私と高橋はテーブルの上に、お茶や水のペットボトルを置いた。
 リサ達もそうしている。
 ホームから、発車メロディが聞こえてくる。
 “Passenger”という曲名だ。
 ドアが閉まると、電車はゆっくりと走り出した。
 ゆっくりなのは、この先には90度に近い直角カーブがあり、その制限速度は15キロだからである。
 さしもの新型車両も、車輪を軋ませて進む。

〔♪♪♪♪。「お待たせ致しました。本日も東武鉄道をご利用頂き、ありがとうございます。23時55分発、特急“スノーパル2355”号、会津高原尾瀬口行きです。停車駅は北千住、新越谷、春日部です。……」〕

 特急停車駅のとうきょうスカイツリー駅は止まらず、逆に特急通過駅の新越谷駅に止まる辺り、スキー列車らしいと言える。
 まだ発車したばかりということもあって、車内は賑やかだ。
 本当なら仲の良い友人同士、座席を向かい合わせにして、減光時刻まで盛り上がりたいだろうに、コロナ対策の為に、向かい合わせは禁じられている。
 また、寝る時もマスクを外さないようにという御達しが出ていた。
 車内は暖房が効いて温かい。
 本当なら、寝酒を煽って寝たいところだが、自分も引率者の1人だということを忘れてはいけない。
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“私立探偵 愛原学” 「代替修学旅行出発の夜」

2022-02-20 16:19:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月22日22:45.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所→タクシー車内]

 出発当日の夜になって、私達は一旦、事務所に移動した。
 ここで合流するのは、斉藤絵恋さんとパール。
 但し、パールはあくまで見送りだけである。

 リサ:「先生、タクシー来た」

 事務所の窓から外を見ていたリサが言った。

 愛原:「よし。それじゃ、行くとしよう」

 私は最後に出て事務所を閉め、エレベーターに乗った。

 パール:「御嬢様、どうか気をつけて」
 絵恋:「分かってるわよ。リサさんや愛原先生も御一緒なんだから大丈夫よ」
 パール:「いえ、その逆です」
 絵恋:「逆?」
 パール:「旦那様が愛原先生方に依頼されたということは、それほど危険な事なのではないかと」
 愛原:「さすがパール、伊達に修羅場を潜ってないな。まあ、大丈夫だよ」
 高橋:「そうだぜ。先生なら安心だ」
 パール:「そうですか」
 高橋:「俺……無事に帰れたら、先生に婚姻届の保証人にサインしてもらうんだ……」
 愛原:「何さらっとフラグ立ててるんだよ!?」
 パール:「ほお……」
 愛原:「パールも本気にしない!」

 そしてビルの外に出て、予約したタクシーに向かう。

 愛原:「すいません、予約した愛原です」
 運転手:「お待ちしておりました。どうぞ」

 荷物はハッチを開けてもらって、そこに積む。
 助手席には高橋に乗ってもらい、私とリサと絵恋さんは後ろに乗る。

 愛原:「東武浅草駅までお願いします」
 運転手:「はい、東武の浅草駅ですね」

 パールの見送りに手を振る絵恋。
 車は深夜の新大橋通りを走行した。
 種別表示は、『予約』から『割増』に変わった。

 愛原:「これで行けば、だいたい発車の1時間前に着けるだろう」
 絵恋:「かなり早いですね」
 愛原:「しょうがない。早めに行って、集合場所の確保をしないといけないからな」
 リサ:「それを本当は、サイトーのお父さんがやるはずだったんだ?」
 愛原:「そ、そうだな。一応、慣例的にPTA会長がやることになってるから……」

 コングロマリット企業の社長が、深夜の浅草駅で修学旅行生の集合場所の案内とか……シュールだな。
 そのうち、この慣例も廃れるのだろう。

[同日23:00.天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅]

 深夜の空いている道路を進み、私達は無事に東武浅草駅へと到着した。

 

 運転手:「こちらでよろしいですか?」
 愛原:「あ、はい。ここでいいです」

 私はタクシーチケットで料金を払った。
 これは斉藤社長からの頂き物である。
 さすがに、完全に丸投げすることになったお詫びの意味も込められているのかもしれない。
 因みに、帰りの分もあるというw
 私が料金を払っている間、他の3人は先に降りて、後ろに積んだ荷物を降ろしていた。

 愛原:「よし、中に入ろう」

 控えと領収証をもらった私は、最後にタクシーを降りた。
 そして、駅の中へと入る。

 リサ:「お店、やってない」
 愛原:「もうこんな時間だからな。あとは、コロナ禍による時短というのもあるだろう」
 絵恋:「リサさん、もしかしてお菓子とか全然買ってないとか?」
 リサ:「お菓子は買っている」
 愛原:「そうだろうそうだろう。昼間、あんなに買ってたもんな」
 リサ:「少しは食べたけど……」
 愛原:「食べたんかーい!」
 リサ:「ちょっとだけ」
 愛原:「自販機は稼働してるから、飲み物くらいなら自販機で調達できるだろう」

 夜行列車のお供に、ペットボトルは欠かせないからな。
 大きな階段を挟んで、両側にエスカレーターがある。
 これで改札口の前まで行くと、その左後ろ側に待合室がある。
 そこが集合場所となる。

 リサ:「自販機はある」
 愛原:「そう、自販機はあるんだ」
 リサ:「お菓子の自販機はある?」
 愛原:「それはどうだろう?」

 エスカレーターを上がって、左後ろにあるので、初見だと分かりにくいかもしれない。
 私は荷物の中から、腕章と幟を取り出した。
 腕章は緑色に白抜き文字で、『東京中央学園上野高校PTA』と書かれている。
 私と高橋は左腕にその腕章を着けた。
 そして幟は、『東京中央学園上野高校 集合場所』と書かれている。

 愛原:「よし、高橋。オマエはこの幟を持って、そこの待合室の前に立っててくれ。俺はエスカレーターの前で立哨・案内する」
 高橋:「は、はい!」

 警備員時代の名残か、つい立哨という言葉が出てしまった。

 リサ:「わたしも行くー」
 絵恋:「わ、私も!」
 愛原:「こらこら、高橋を1人にしてやるな」
 高橋:「いや、俺は別にいいっスけど……」

 エスカレーター前に行くと、2人のスーツ姿の男が上がってきた。

 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。こんばんは。先般の始業式における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 ケンショーブラック:「ただいまより、修学旅行を開催致します」
 愛原:「な、何ですか、あなた達は?」
 ケンショーブラック:「それでは、グリーンが自己紹介を致します」
 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。この度は顕正ツーリストをご利用頂き、真にありがとうございます。私共、本日より皆様のお世話をさせて頂く、顕正ツーリストの横田と申します。コードネームはケンショーグリーン。以後、お見知りおきを」
 ケンショーブラック:「それでは、私が自己紹介をさせて頂きます。私も同じく、顕正ツーリストから派遣されました矢島と申します。コードネームはケンショーブラックであります。あっつぁブログでは、『アデランス』という不本意な渾名を与えられましたが、この度、『ケンショーブラック』というコードネームを名乗らせて頂くものであります。何卒、よろしくお願い申し上げます」
 愛原:「りょ、旅行会社の人!?そんな怪しい名前の旅行会社だったかなぁ?」
 ケンショーグリーン:「クフフフフフ……。さすがは、御嬢様学校の聖クラリス女学院の生徒さんですね。早速美少女2人とお会いでき、大変な功徳です。クフフフフフ……」
 リサ:「キモっ!」
 絵恋:「何このオヤジ……!」
 大沢:「ちょっと待ったぁーっ!!」

 階段をバタバタと駆け上がって来る、これまたスーツ姿の男女2人が走って来た。

 大沢:「アンタ達は違うだろ!この人達は東京中央学園の関係者だぞ!」
 愛国清澄:「そうよ!ケンショーは去りなさい!」
 ケンショーブラック:「それでは私共は、これにて終了致します。ご苦労さまでした!」

 脱兎の如く逃げて行くケンショー2人。
 私が唖然としていると、1人がにこやかに名刺を差し出して来た。

 大沢:「大丈夫でしたか?私達は妙観光の者です。本日より東京中央学園の皆様のお世話をさせて頂く、大沢と申します」
 愛国清澄:「同じく愛国清澄です。よろしくお願い致します」
 愛原:「そ、そうでしたか。あなた達が本物の……。私は愛原と申しまして、PTA会長の代理を務めさせて頂くことになりました。もう1人、助手に高橋という者がいまして、彼は今、待合室の方にいます」
 大沢:「顕正ツーリストは偽物ですからね。私共、妙観光は本物です。是非ともお任せください」
 愛原:「よろしくお願いします」

 びっくりした。
 これまた聞いたことの無い旅行会社であるが、こちらは誠実そうな2人だし、大丈夫だろう。
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“愛原リサの日常” 「代替修学旅行出発当日の昼」

2022-02-20 11:42:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月22日15:00.天候:晴 東京中央学園上野高校1年5組]

 坂上:「……それでは今夜、中等部3年生当時、1組から3組に所属していた人は気をつけて行ってください」

 期末試験が終わった後、最後のホームルームで、担任の坂上がリサ達を前にして言った。

 リサ:「最後のテストが終わった後、すぐ修学旅行なんて、なかなかハード」
 絵恋:「ねー?」

 もっとも、テスト前に行くよりはマシだろう。
 春休み期間中に行くことも考えられたが、ただでさえ年度末は忙しいので難しいとされた。
 期末試験終了後から春休みに入る前が良いということになった。

 坂上:「あくまでも中等部時代、行けなかった修学旅行の代わりという形になりますので、引率は中等部の先生が行います」

 なので、中等部の都合も考えなくてはならない。
 中等部もまた、最後の期末試験が終了した現在においては、それ以降、事実上の春休みとなる為。

 リサ:「沼沢先生が引率かぁ……」
 絵恋:「あの先生も大変ねぇ」
 坂上:「皆さんは中等部時代、コロナ禍の影響で、様々な行事が削られてしまいました。修学旅行まで中止になって、さぞかし悔しい思いをしたでしょうが、今回行き先を変更することにはなったものの、ようやく実行されることになりました」

 中高一貫校だからできることだろう。
 中高一貫校の場合、学校によっては、正式な修学旅行は高等部の1回のみという所もあるようだ(野外合宿などという形で、宿泊を伴う行事は別にある)。
 東京中央学園では、あくまでも中等部や高等部の節目という意味合いを持たせるという形で、中等部に1回、高等部で1回の修学旅行が行われている(それとは別に、それぞれ1回ずつ野外合宿が行われる。中等部1年生の時のスキー合宿など)。

 坂上:「というわけで、うちのクラスにはいませんが、あいにくと高等部から入学した人は対象外となります」

 但し、中学時代に、その学校でも修学旅行が中止になって行けなかった場合は応相談。

 坂上:「その人達にあっては、自宅または学校で自習です」
 リサ:「リンは修学旅行、行けたのかなぁ……?」
 絵恋:「リンさんって、上野凛さんのこと?」
 リサ:「そう」
 絵恋:「栃木の中学校は、修学旅行どこに行くんでしょうね?」
 リサ:「東京か仙台?」
 絵恋:「近くない?やっぱり一応、私達と同じで関西じゃないの?」
 リサ:「そうかぁ……」
 坂上:「えー……出発は23時55分ですか。で、集合は23時30分ですね。集合場所は東武浅草駅です。皆さん、遅れないように……」
 ギャルA:「渋谷からザギン線で一本じゃね?」
 ギャルB:「原宿からはどう行く?」
 ギャルC:「表参道っしょー?」
 ギャルD:「ググッてんじゃねーよw」
 坂上:「何でしたら帰り際、浅草駅に行って、集合場所を確認しても構いません」
 リサ:「浅草駅、前に行ったから大丈夫だよね」
 絵恋:「そもそも私達、愛原先生と一緒だしね」
 リサ:「あ、そうか」

[同日13:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 リサと絵恋は学校から帰ると、愛原の事務所に立ち寄った。

 リサ:「ただいまぁ」
 絵恋:「お邪魔します」
 善場:「あら?直接来たのね」
 リサ:「と、善場さん!?な、何ですか?わたし、まだ人を食べてませんよ?」
 絵恋:「でも、私は是非リサさんに食べられたいので、私を食べる分には、リサさんの罪は不問にしてくださーい
 善場:「違う違う。そういうことではありません。確かに、あなた達の旅行の件について、愛原所長に話があったのは事実ですが」
 絵恋:「何の話ですか?」
 善場:「そこは秘密です。でも、リサがどうのって話ではないので、御心配無く」
 絵恋:「気になりますねぇ……」
 愛原:「それより2人とも、期末テストはどうだったんだ?」
 リサ:「わたしは大丈夫」
 絵恋:「わ、私も何とかなるかとォ……」
 愛原:「それならいいんだがな。お昼は食べたのか?」
 リサ:「買ってきた」

 リサはマクドナルドの袋を持っていた。

 リサ:「そこで食べていい?」

 そして、給湯室を指さす。

 愛原:「ああ、いいよ」
 リサ:「サイトー、行こう」
 絵恋:「はーい」

 給湯室でハンバーガーを食べてる間、愛原と善場は応接室で話をしていた。
 人間形態でも、微かに話し声が聞こえるが、どうしても気になったリサは、第1形態に戻る。
 これは見た目は鬼のような姿になるが、長くて尖った耳は聴力が格段に向上するのだ。

 リサ:「ふーん……」

 リサの耳がピクピク動く。
 それを見た絵恋は……。

 絵恋:「(か、カワイイ!!)萌えぇぇぇぇぇぇっ!!」

 悶絶するのだった。

 リサ:「サイトー、大丈夫か!?」
 絵恋:「萌えへへへへへ!!」
 高橋:「オメェらうるせぇっ!電話中だ!」

 事務室にいた高橋は、電話機片手に給湯室にいるリサ達を怒鳴りつけた。

 リサ:「兄ちゃん、ゴメン。サイトー、落ち着け!」
 絵恋:「……はっ!ご、ごめんなさい!」
 リサ:「いきなり悶絶するなよ」
 絵恋:「ゴメンなさーい……」
 リサ:「おかげで愛原先生達の話を聞き洩らした」
 絵恋:「先生達の話が聞こえるの?」
 リサ:「うん。何か、聖クラリス女学院がどうのこうのって聞こえた」
 絵恋:「聖クラリス女学院は、六本木にある私立校ね。うちと違って女子校の」
 リサ:「サイトーはそっちに行けば良かったんじゃないの?男は嫌いなんでしょ?」
 絵恋:「うーん……リサさんと出会えたから、私は東京中央学園で良かったわぁ~!」
 リサ:「『1番』に可愛がってもらえたのに。『1番』はわたしと違ってアホ小心者のクソ臆病だから、サイトーの方がマウント取れたかもよ?」
 絵恋:「でも、ゾンビにされちゃうんでしょ?」
 リサ:「いやいや、『リサさんになら、ゾンビにされても本望ですぅ!』とか言ってたの、どこのどいつだ?」
 絵恋:「はーい!私でーす!」
 リサ:「『1番』もわたしと同じ、リサ・トレヴァーなんだけどね?臆病者で卑怯者だけど」
 絵恋:「私は正々堂々とした強いリサさんが好きだから」
 リサ:「そりゃどうも」
 絵恋:「その聖クラリス女学院がどうしたの?」
 リサ:「……どうも、わたし達と一緒の電車らしいな」
 絵恋:「ええっ!?東京中央学園の貸切じゃないの?」
 リサ:「どうやら違うみたいだ」
 絵恋:「嫌だわ!ゾンビ達と一緒だなんて……」
 リサ:「いや、一応ワクチンは打って、全員ゾンビから人間に戻れたらしいぞ?今はそういうワクチンがあるんだな」
 絵恋:「不潔だわ!リサさんのきれいなウィルスを汚いワクチンで排除するなんてっ!」
 リサ:「いや、わたしはばら撒いてないって!あそこにウィルスばら撒いたのは『1番』!」
 絵恋:「東京中央学園にはリサさんがばら撒いてくれる?」
 リサ:「やろうと思えばできるけど、そんなことしたら、わたしはBSAAに蜂の巣にされる」
 絵恋:「美味しいハチミツが取れそうね!」
 リサ:「そういうことじゃねぇ!」
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