報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「受験前夜の魔の嵐」

2022-02-01 19:59:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月21日22:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 凛:「明日早いので、そろそろ寝ます。おやすみなさい」

 風呂から出た上野凛は、セーラー服からジャージに着替えていた。
 しっとりと濡れた黒髪は、リサよりも短く、パールよりも長い。
 中学校では女子陸上部だったというのも頷ける。

 愛原:「ああ。その方がいいな。リサも寝ろ」
 リサ:「BOWは夜の方が元気なんだよ」
 愛原:「人間に戻りたくないのなら、このまま起きててもいいが?」
 高橋:「人間に戻れなかったら、先生と結婚できねーぞ?」
 リサ:「う……。そ、それはイヤだ」
 愛原:「人間に戻る為には、より人間らしい生活規則が大切だ」
 凛:「それは言えてると思います」

 凛も愛原に同調した。

 リサ:「しょうがない。寝ます」
 愛原:「おっ、そうしろ。……っと、その前に……。凛さん、明日は7時50分に学校に着けばいいんだな?」
 リサ:「はい。受付は7時50分から8時20分までですので」
 高橋:「えっ?それなら、8時20分に着けばいいんじゃ?」
 愛原:「アホだな。そんなギリギリの時間狙うから、何かあった時にすぐ遅刻確定になるんだ。その30分前に着こうとすれば、ちょっとくらいアクシデントがあっても、何とか立ち回れるし、気持ちに余裕が出る」
 高橋:「それが一流の探偵の秘訣ですね!メモっておきます!」

 高橋は急いで手帳を出して、ババッと書き込んだ。
 高橋……手帳……。
 手帳……高橋……いや、何でも無い。

 愛原:「ここから車で行くから、7時半くらいに出ればいいかな。幸い土曜日だから、平日みたいな朝ラッシュの混雑は無いはずだ。6時半に起きて、朝食を食べ、それから学校へ向かう。これでいいかな?」
 凛:「はい。よろしくお願いします」
 愛原:「高橋も、それで頼む」
 高橋:「分かりました!」

 リサの部屋に入る凛。
 夏はTシャツと短パンのリサも、冬はパジャマを着ている。

 リサ:「先生の言う事は絶対だから、さっさと寝るよ」

 リサは自分のベッドに潜り込みながら言った。

 凛:「先輩ほどの方が素直に命令を聞くなんて、愛原先生、かなり凄い方なんですか?」
 リサ:「凄いよ。そもそも、あの霧生市のバイオハザードを生き延びただけでも凄いのに、ハンターやらリッカーやら蠢くお寺でも生き延びて、しかも自爆装置で爆発する直前の研究所から、私を救い出してくれたんだから」
 凛:「え?でも、愛原先生って、元自衛隊や警察の人とかじゃないんですよね?」
 リサ:「違うよ。だから、凄いって言ってるんだよ。リンも死にたくなかったら、あの先生の命令は素直に聞くことだよ」
 凛:「そんなに……?分かりました」
 リサ:「パンツ見せろって言われたら素直に見せて、ヤらせろって言われたら、ヤらせてあげること。分かった?」
 凛:「え?え?え?どういうことですか!?」
 リサ:「なんてなw」
 凛:「じょ、冗談ですか……」
 リサ:「先生とヤるのはこの私。オマエにはヤらせない」
 凛:「え?え?え?」
 リサ:「じゃ、電気消すよ。私の姿を見て、ビビるなよ」

 リサはリモコンで室内の照明を消した。
 ボウッと闇夜に浮かび上がる赤色の目。
 消灯と同時に第一形態に戻ったのだ。
 もっとも、凛の瞳も金色にボウッと浮かび上がっていた。
 但し、どちらかというと片目だけが鈍く光っている感じ。
 明るい所では、どちらも黒い瞳なのだが……。

 リサ:「片目だけ?」
 凛:「私は、鬼と人間のハーフなので……」
 リサ:「ふーん……。きれいに半分なんだ……。そうか……」
 凛:「完全に人間に戻れる見込みのある先輩が羨ましいです。私は、遺伝子レベルで鬼の血が入っているので、先輩とは違って、完全な人間にはなれないらしいです」
 リサ:「そうなの!?……あー、確かに違うかも……」

 リサは元々人間だったものを、人体改造で鬼になったようなもの。
 しかし、凛は違う。

 リサ:「なるほどねぇ……」

 他にも満月を見ると食人衝動に駆られる、あるいは見ていなくても、そういった衝動で体がムズムズする。
 新月の時でも、似たような現象に見舞われるなどの弊害があるという。
 きっかけが予め分かっているものの、避けようが無い弊害。
 リサの場合は決まったタイミングがあるわけではないが、ふとしたきっかけで食人衝動に見舞われる弊害。
 果たして、どちらが良いのだろうか。

 リサ:「ま、人を食ったりはしない方がいい。食ったりしたら、もうあの世行きだ」
 凛:「はい……」

[1月22日01:10.天候:晴 愛原のマンション・リサの部屋]

 リサ:「うーん……」

 リサは夜中にふと目が覚めた。
 どうも、同室内に他人が寝ているということで、落ち着かない所がある。
 日本アンブレラに捕らわれていた時も、個室に監禁されていたからだ。
 これは研究所側が1人1人監視する為と、リサ・トレヴァー同士でトラブルが起きたり、逆に協力して造反するのを防ぐ為である。
 その為、部屋には1人というのが当たり前の生活が長かった為、同室者がいるというのに不慣れであり、自分の眠りが浅くなっているようだ。
 隣のエアーベッドでは、凛が寝ている。
 こちらは、特にリサが隣にいても気にならないようだ。
 聞けば学校では部活の合宿で、大部屋で寝ることが多かったり、或いは天長会の合宿でも似たような生活をしていたことがあったりで、他人と同室で寝ることに、そんなに抵抗感は無いらしい。

 リサ:(ちょっとトイレ……)

 リサは凛を起こさないよう、そっとベッドから出てトイレに向かった。
 闇夜でも目が利くリサは、照明など点けなくても、暗視カメラで見ているかのように、はっきりとよく見える。
 そして、また部屋に戻って来ると……。

 リサ:「ん?」

 凛が、何か呻き声を上げるのが聞こえた。
 よもや、今さらゾンビ化するというわけでもあるまい。
 それにしては、前兆が無さ過ぎる。
 よくよく耳を傾けてみると、どうやら寝言を言っているように聞こえた。

 凛:「お母さん……どうして……お父さん……食べちゃったの……」
 リサ:「! (そうか。こいつの母親は……やっぱり人食い鬼だったんだ……。まあ、分かってたけど。愛原先生への、あの襲いっぷりといい……)」

 やはり、凛は親元を離れ、独立した方が良いのだろうとリサは思った。
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“私立探偵 愛原学” 「上野凛の上京」 2

2022-02-01 16:04:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月21日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 ジョナサン菊川店]

 愛原:「はい。上野凛さんと東京駅で合流しまして、今は自宅に向かっているところです」

 私は移動中の車の中で、善場主任と連絡を取った。
 土曜日の夕方にも関わらず、善場主任は勤務のようだ。
 表向きはNPO法人職員、実は政府機関のエージェント。
 それが善場主任の顔だが、勤務体系は今一つ分からない。
 もっとも、裏の仕事だから、表の仕事をしている私達に知られてはマズい部分もあるのだろう。
 平日会わない時や全く連絡をしない日があるので、そういう日に休んでいると思っている。

 愛原:「……で、その前に、近所のファミレスに向かっています。そこで夕食にしようかと。……ええ、そうです。……分かりました。それじゃ、また明日。はい、失礼します」

 善場主任への定時連絡はこれで終わり。
 そうしているうちに、車はファミレスの駐車場へ入った。

 愛原:「定時連絡、終わり。飯にしよう」
 高橋:「はい」

 高橋がハンドルを切って、車を駐車場に止めた。

 愛原:「じゃあ、ここで夕食にするぞー」
 リサ:「はーい」
 上野凛:「ありがとうございます」

 店内に入り、空いている席に座る。
 高橋が注文用のタブレットを取った。

 愛原:「遠慮しないで、好きな物頼んでいいぞ。俺はまずビールだな」
 高橋:「俺も先生と同じので」
 リサ:「オレも先生と同じので」
 リン:「ええっ!?」
 愛原:「こらぁ、お前ら!高橋は飲酒運転の現行犯、リサは未成年飲酒の現行犯だな」
 リサ:「実年齢は50歳だよ?」
 愛原:「アンブレラに年齢止められて、ブレザー制服着て高校に通っているあなたが何言いますか」
 リン:「そ、そうでした。リサ先輩は、私の伯母さん……」
 リサ:「誰がオバさんだぁ?!」

 リサ、瞳の色を赤く光らせ、牙を剥き出して凛さんにツッコむ。

 リン:「す、すいません!」

 普通の人間の女の子なら、失神するくらいの威嚇だっただろうが、凛さん自身も半分はBOW(生物兵器)であるせいか、そこまで怖くはなかったもよう。
 普通に年上の先輩に怒られた、って感じだ。

 愛原:「リサ。凛さんは、単に『お母さんのお姉さん』という意味で言ったんだと思うぞ」
 リサ:「でもねぇ……」
 愛原:「まあまあ。とにかく、本物のビールを頼めるのは俺だけだ。お前らは別なの頼め」
 高橋:「じゃあ、ノンアルビールでいいです……」
 リサ:「じゃあ、ドリンクバーでいいです……」
 愛原:「凛さんもドリンクバー付けていいからね」
 凛:「あ、はい。ありがとうございます」
 愛原:「飯は何にしようかな?」
 リサ:「ステーキ」
 高橋:「リサはちっとは遠慮しろや」
 リサ:「えー?」
 愛原:「別にいいよ。凛さんも、好きなの頼んでいいからね。何しろホテルじゃ、サイコロステーキ御馳走になったくらいだから」
 リサ:「うん。あれは美味しかった」

 結局2人のBOWは、ステーキを注文した。
 まあ、ここで肉を食わせておけば、後で人肉を所望することはないだろう。
 凛さんは半分人間であるが、それでも食人衝動が無いわけではないらしい。

[同日19:30.天候:晴 同地区内 愛原のマンション]

 夕食が終わり、マンションに到着する。
 リース中の車は明日、凛さんの送迎に使うので、マンションの駐車場に止めた。

 愛原:「はい、着いたよ。ここが俺達の家だ」
 凛:「お、お邪魔します……」
 愛原:「遠慮しなくていいよ。入って。高橋、あれを持って来てくれ」
 高橋:「はいっ!」

 高橋は車の後ろに積んでいたエアーベッドを持って来た。
 これは事務所で使うように購入していたものだ。
 万が一、何か事務所に泊まり込むことがあった時の事を想定して購入したものだが、殆ど使用していない。
 結局、住居が近くにあるのと、そもそも泊まり込むような仕事を受注していないのが理由だった。
 他にも寝袋もあるが、エアーベッドの方がいいだろう。

 愛原:「リサ、入るぞ」
 リサ:「うん。ゆっくりしていってね」

 リサの部屋に入る。
 リサのベッドの横にエアーベッドを置いて、電動で膨らませた。

 リサ:「おー!そうやって膨らませるの?」
 愛原:「そうだよ。結局、事務所じゃ使わなかったなぁ……」

 リサが最初ここに来た時、事務所に寝泊まりしていたが、この時はまだエアーベッドは無く、リサはソファに横になっていた。
 膨らませた後は、上にマットを敷いて、その上にシーツを敷く。
 あとは毛布と枕だが、何と凛さんは枕を家から持ってきたという。

 凛:「枕が変わるとあんまり眠れないので、家から持って来ました」

 と、ボストンバッグの中から枕を取り出した。

 愛原:「さすがだな」

 あとは自由時間だが、さすがに勉強の時間に当てるようだ。
 私達はリビングに移動した。

 リサ:「わたし、高校受験やったことないんだけど?」
 愛原:「当たり前だろ。中高一貫校なんだから。凛さんは高等部への編入試験を受けに来たんだから」

 編入試験ではあるが、実態は他の一貫校ではない普通の高校の入試と大して変わらない。
 入試時期が他の推薦入試を行う私立高と同じ日であることも、それを物語っている。

 愛原:「オマエはオマエで、中学校入る時に受験受けただろうが」
 リサ:「あー、そうだっけ?」
 愛原:「受けただろうが。そしたらオマエ、殆どの教科が満点近かったから、皆でビックリしたもんだ」
 リサ:「あー!そんなこともあったね!」

 その為、リサの知能指数は普通の人間よりも高いことが、後に行われた知能検査で判明している。
 往々にして知能指数が下がることが多いBOWの中では、異例と言える。
 探せば知能指数そのものは落ちないBOWもいることはいるが(最近の“バイオハザードシリーズ”に登場するボスクラス達など。多くは見た目、人の姿を保ったままである)、人間時代よりも上がった例はここにいるリサだけだという(ローズマリー・ウィンターズ氏については、現在調査中とのこと)。

 愛原:「明日、学校まで送って行ってあげよう。そして、迎えに行くのも依頼されているからな」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「もしも合格した場合、凛さんは寮に入るらしいが、リサは知ってるか?」
 リサ:「うーん……。何でもねぇ、学校から徒歩圏内にあるらしいよ。浅草の方向に歩く途中」
 愛原:「随分と都心にあるものだ。まあ、学校自体が都心にあるからかな」

 東京中央学園の大学や短大の寮は別にあるが、そもそも大学や短大自体が全く別の場所にある為。
 大学や短大の寮は学生会館並みに大きな物らしいが(というか、まんま学生会館なのではないかと思われる)、高校はそこまで人数が多くない為、小規模なものだという(凛さんのような越境入学はそんなに多くないからか)。

 リサ:「わたしも縁が無いから、寮があるというだけで、どういうものかはあまり知らない」
 愛原:「まあ、そんなもんだろうな」
 リサ:「一応、後で調べてみる」
 愛原:「ああ、頼むよ。もちろん、あれだよな?男女別の寮だよな?」
 リサ:「それはもちろん」
 愛原:「それは良かった」
 リサ:「どっちも徒歩圏内だとは聞いたことがあるね。でも、寮に入っている人に知り合いはいないから……」

 まあ、そうだろう。
 恐らく、スポーツ特待生とか、何らかの家庭の事情でとか、そういう生徒が入るものだと思う。

 愛原:「きっと受験前は不安だろうからリサ、色々とフォローしてやってくれな?」
 リサ:「分かった。先生の命令は絶対!」
 愛原:「よし、偉いぞ」
 高橋:「先生!俺には!?俺にも何卒ご命令を!」
 愛原:「明日の朝、ちゃんと朝食を作って、凛さんを安全に送迎してくれれば、それでいいよ」
 高橋:「了解です!」
 凛:(いいなぁ……)

 この時、凛さんは、ファミレスの時から私達のやり取りを面白く見ていたという。
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