報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹の依頼」

2022-02-14 20:16:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月24日09:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 久しぶりに、事務所に電話が掛かって来る。
 高橋が電話を取った。

 高橋:「お電話あざーす!愛原学探偵事務所っス!」
 ボス:「私だ」
 高橋:「渡田さんっスか!どうもっス!」
 ボス:「仕事の依頼だ。愛原君に換わってくれ」
 高橋:「お待ちください。先生、ワタシダさんから電話っス!」
 愛原:「ええっ?もう正体バレてるだろうが……」

 私は自分の机の電話を取った。

 愛原:「もしもし。お電話換わりました。愛原です」
 ボス:「私だ」
 愛原:「斉藤社長、もう正体バレてるのに、どうなさったんですか?」
 ボス改め斉藤秀樹:「いや、ハハハ。たまに、やってみたくなるものでしてね」

 斉藤社長は、世界探偵協会日本支部の理事でもある。

 秀樹:「世界製薬企業連盟の理事も、BSAAに対して似たようなことをしているらしいですよ」
 愛原:「暇人の集まりじゃあるまいし……」
 秀樹:「それより、依頼書は見て頂けましたか?」
 愛原:「はい。今日にでもお伺いできますが、如何でしょう?」
 秀樹:「ありがとうございます。午後に来て頂けると助かります」
 愛原:「午後ですね。それでは、13時にお伺いさせて頂くということで、如何でしょうか?」
 秀樹:「結構です。お待ちしております」
 愛原:「……また、お嬢さんのお守りですか?」
 秀樹:「それに近いのですが、今回は少し違います。それまでは、うちの娘に付きっ切りでお願いしていたのですが、今回は少し違うのですよ」
 愛原:「そうなんですか」
 秀樹:「詳細は後程お話し致します」
 愛原:「わかりました。それでは午後、よろしくお願い致します」
 秀樹:「お引き受け頂き、ありがとうございます」

 私は電話を切った。

 愛原:「うーん……。どうやら、社長の娘さんのことだけではないらしいな」
 高橋:「不祥事のせいで、脅迫状でも送りつけられましたかね?」
 愛原:「それだったら警察に通報すればいいだろう。いくら不祥事を起こしたとはいえ、脅迫状を送り付けて良いってわけじゃない」
 高橋:「それもそうっスね」
 愛原:「ま、とにかく午後に行くぞ。オマエもスーツに着替えろ」
 高橋:「分かりました」

[同日13:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 大日本製薬本社]

 遅れてはいけないので、私達は事務所からタクシーで丸の内に向かった。
 丸の内に林立する超高層ビルの1つに、大日本製薬の本社がある。
 受付で来訪した旨を伝えると、ゲストカードを渡される。
 他の来訪者と違い、色がゴールドなのは、役員室エリアへの立ち入りが許可された証拠。
 その為、セキュリティゲートも普通のエレベーターではなく、役員室エリアへ直行するエレベーターホールを通る。
 一般のセキュリティゲートは、駅の自動改札口みたいな雰囲気だが、役員室エリアの方は金属探知機まで設置されている。

 警備員:「こちらへどうぞ」
 愛原:「ありがとう」

 ビー!(金属探知機が鳴る音)

 高橋:「あぁ?!」

 高橋が金属探知機に引っ掛かる。

 警備員:「失礼、お客様、こちらへ」
 高橋:「あぁ?何だァ?裏に連れ込んでボコす気か!?」
 愛原:「違うよ。何に引っ掛かったのか確認するんだよ」

 高橋のヤツ、何に引っ掛かったのかというと……。

 警備員:「お客様、これは?」
 高橋:「見りゃ分かんだろ!プラスドライバーだ!」
 愛原:「分かってるよ。問題は、どうしてこれをオマエが持っているんだってことだ」
 高橋:「本当はマイナスドライバーがいいんスけど、あれはサツに見つかったらパクられるって聞いたんで、それでプラスドライバーなんスよ」

 マイナスドライバーは、バールの代わりになる為であるという。
 いや、それにしても……。

 愛原:「だから、必要の無い工具を持ち歩く時点でアウトなの!分かった!?」
 高橋:「探偵の心得っスね!メモっておきます!」
 警備員:「恐れ入りますが、退館までこれは防災センターで預からせて頂きます」
 愛原:「すいませんねぇ、お手間取らせてしまって……」

 そしてようやく、私達はエレベーターに乗ることができた。

 愛原:「全く。いらん不始末しやがって!」
 高橋:「さ、サーセン。いや、すいません……」

〔ピンポーン♪ 30階です〕

 役員室エリアに到着する。

〔下に参ります〕

 秘書:「お疲れ様でございます。ご案内させて頂きます」

 斉藤社長の女性秘書がエレベーターまで迎えに来てくれた。
 スラッと背の高い、美人秘書だ。

 秘書:「こちらへどうぞ」
 愛原:「ありがとうございます」
 高橋:「先生、あまりジロジロ見てるのがリサにバレたら、ブチギレますよ?」
 愛原:「み、見てないって」

 善場主任を見るだけでも、嫉妬してくるリサだったが、最近はそういうことはない。
 リサ・トレヴァーの先輩に睨まれるだけで、おとなしくなるからだ。
 強さやコールド・スリープ期間はリサの方が上だろうに、どういう序列なのだろうか。

 秀樹:「やあ、愛原さん。御足労ありがとうございます」

 社長室に通されると、斉藤社長がにこやかに迎えてくれた。

 秀樹:「ささ、どうぞ、こちらへ」

 そして、室内の応接セットを勧められる。

 愛原:「失礼します」

 私はソファに腰かけた。

 秘書:「失礼致します」

 秘書さんがお茶を持ってきてくれた。

 愛原:「それで、仕事の依頼の件なんですが……」
 秀樹:「はい。単刀直入に申し上げます。……あ、いや、その前に……」

 斉藤社長は咳払いをした。
 そして、机の上から1枚のプリントを持ってくる。
 それは、昨日リサが私に見せてくれたものと同じだった。

 秀樹:「娘達の学校で、中等部の時にできなかった修学旅行の代わりを行うということは聞いていますね?」
 愛原:「はい」
 秀樹:「当然、先生方が引率することになっていますが、PTAの役員も若干名同行することになっています」
 愛原:「あらま。すると、PTA会長の秀樹社長も?」
 秀樹:「そういうことになりますが、あいにくと年度末に近い為、多忙で行けないのです。何しろ……役員人事が大きく動くことになりますので……」

 斉藤社長は不祥事の責任を取ることになる。
 本当だったら年度末を待たずに解任されるところだが、それまでの功績を考慮され、年度末までは社長の席に座ることが許された。
 解任後は、関連会社の社長の椅子に座ることになるという。

 秀樹:「ただ、それは他のPTA役員も同じです」

 東京中央学園は、比較的裕福な家庭の子女が通うことが多い。
 その親も、会社や役所ではそれなりの地位に就いている事が多い為、年度末の忙しさは皆同じなのだろう。

 愛原:「それで私に依頼とは?」
 秀樹:「私の代役をお願いしたいのです」
 愛原:「ええっ!?私はPTA役員じゃありませんよ?」
 秀樹:「会則には、こう記されています。『会長はPTA役員または保護者会の中から、その代役を選任することができる』と」
 愛原:「『但し、代役は祭事や旅行の監督のみとする』って、ええっ!?」
 秀樹:「修学旅行の監督者として、ですから、愛原さんでも大丈夫です」

 役員は誰でもなれるわけでもないが、保護者会は生徒の保護者は必ず入らなければならないことになっている。
 だから私も、リサの保護者として、そこに名前を連ねているわけだ。

 秀樹:「委任状なら既に作成してあります。これなら他の役員、教員も文句は言えません」
 愛原:「いや、ですが……」
 秀樹:「報酬なら、弾ませて頂きます!」

 斉藤社長、バンとテーブルの上に契約書を置いた。
 そこに書かれている報酬は……。

 愛原:「私で宜しければ、お引き受け致します」
 秀樹:「その言葉を待っていましたよ」
 高橋:「せ、先生!?」

 後に高橋は、自分の手帳にこのやり取りの感想を書いた。
 『PTA会長も外部委託とか、どんだけ!』と。
コメント (6)
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“私立探偵゛愛原学” 「代替修学旅行の話」

2022-02-14 11:36:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月23日15:41.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前バス停→愛原学探偵事務所]

 善場主任との話が終わった私と高橋は、新橋バス停から都営バスに乗った。
 これなら乗り換え無しで、菊川まで帰ることができる。

〔「菊川駅前です」〕

 バスが三ツ目通り上のバス停に到着する。
 中扉から降りるのだが、最近の中扉はブザー式からチャイム式へと変わった。
 電車のドアチャイムと同じである。

 愛原:「この時間だと、リサが帰って来る頃かもしれないな」
 高橋:「そうかもしれませんね」

 バスを降りて、事務所へ向かう。
 その際に、菊川駅前の交差点を渡ることになる。

 リサ:「あ、先生」

 交差点で信号待ちをしていると、コンビニからリサが出て来た。

 愛原:「やっぱりリサ、このタイミングだったか」
 高橋:「下校中に買い食いとは、いい身分だな?」
 リサ:「暴走を抑える為だよ」
 高橋:「また都合のいいこと言いやがって」
 愛原:「まあ、いいさ。さっさと事務所に戻ろう」
 高橋:「先生、俺は夕飯の支度がありますので……」
 愛原:「ああ、そうだったな」
 リサ:「わたしも帰る」
 愛原:「ああ」

 事務所には、私だけが先に帰ることになった。

[同日18:00.天候:晴 同地区内 愛原のマンション]

 愛原:「ただいまァ」
 高橋:「お帰りなさい」
 リサ:「お帰りなさいませ。御主人様」
 愛原:「メイドか!」
 リサ:「ノンノン!性奴隷でーす!」
 愛原:「それはメイドですらねぇ!」
 リサ:「まあまあ。後で、話があるから」
 愛原:「話?」

 今夜の夕食は、トンカツ定食だった。
 どうやら今日は豚肉が安かったらしい。
 その代わりパン粉と食用油は値上がったと聞く。
 リサは食べるのに夢中であったが、食べ終わると思い出したかのように言った。

 リサ:「そういえば、中等部の修学旅行の代わりをやるって話があったよ」
 愛原:「やっぱりやるのか?」
 リサ:「人数制限して、日替わりでね」

 そう来たか。
 学年全員で一気にやるわけではない、と……。

 リサ:「これが資料」
 愛原:「えーと……なになに?」

 そこに書いてあったのは……。

 愛原:「た、確かにこれは……普通ではない」
 高橋:「何スか?」
 愛原:「東武の夜行列車で行く、スキーツアーだ」
 高橋:「マジっスか!」
 愛原:「まさか、スノーパル貸切で行くとはなぁ……」

 どうやって予算を使い切るか、悩みに悩んだ結果だというのは分かるが……。

 リサ:「サイトーが雪だるまになる所、また見れる!」

 リサは鼻息を荒くしている。
 リサとしては、楽しみなのだろうが……。

 愛原:「いや、やめなさいって。命に関わるから」
 高橋:「でも先生、リサが参加しちゃって大丈夫なんスか?」
 愛原:「学校行事なんだから大丈夫だろ?」
 リサ:「それと、『リサ・トレヴァーのリラクゼーションサロン』、またオープンするよ?」
 愛原:「昨日、老廃物を吸い取ってもらったばかりだから、まだそんなに溜まってないよ?」
 リサ:「今日は軽くでいいから」
 愛原:「しょうがないな。じゃあ、また頼むよ」
 リサ:「おー!また後で準備するね!」

 今度は一体、何を企んでいるのやら……。

[同日19:00.天候:晴 愛原のマンション(リサの部屋)]

 再びリサの部屋に入ると、リサはジャージに着替えていた。

 リサ:「フフフ……。ようこそ……!」
 愛原:「リサ、第0形態なのに、何だその不気味な笑みは?」
 リサ:「ちょっと見てみらいたいものがあるの」

 リサはそう言うと、ジャージを脱ぎ始めた。
 そして、上は体操服のTシャツ、下は短パン……ではなかった。

 愛原:「こ、これは……!?」

 短パンと同じ色合い(グリーン)のブルマーだった。

 リサ:「先生、こういうのがいいんでしょ?ほら、見て見て!」
 愛原:「いや、オマエ、これ……ええっ!?本当にあったのか!?」
 リサ:「高等部ではもう全廃だから無いんだって。だから、中等部に行ってきた。そしたらあった」
 愛原:「中等部にはあるの!?」

 しかし、中等部でもリサを含めて、みんな短パンだったような気がするが……。

 リサ:「実質的には廃止だけど、明確に校則には書かれてないから、購買に在庫はあったみたいだよ」
 愛原:「で、わざわざ買って来た?」
 リサ:「むふー!」

 リサは鼻息を荒くしていた。

 リサ:「それにしても、昔はこんなパンツで体育やってたんだね」
 愛原:「そ、そうだな」
 リサ:「短パンよりも動きやすいじゃん。……ちょっとキツいけど」
 愛原:「そりゃ、中等部の時のサイズじゃ……」

 何だかんだ言ってリサの体も、少しずつ成長しているということだ。
 この辺も、他のリサ・トレヴァーとは違うのかもしれない。

 リサ:「お尻に食い込んじゃう……」
 愛原:「短パンよりも密着するからね。だから、短パンよりもワンサイズ上のを買うのが正解らしいぞ?」

 その為、私の同級生の女子で、男兄弟のいるコはそれで失敗したのか、よくハミパンするコがいた。
 親が短パンと同じ感覚で、ブルマーのサイズを選んでいたからである(その為、兄がいるコがよく失敗していた。親としては、まずは息子の体操着を買う為、その感覚で次の娘の体操着を買っていたからだろう)。

 リサ:「わたしのセクシーショットを見ながら、マッサージをどうぞ!」
 愛原:「そりゃあ眼福だ……」

 確かにセクシーっちゃセクシーなんだが、それで第1形態に戻られちゃあね……。

 リサ:「おっ、そうだ。注文票もらったから、今度はサイトーのも買ってあげよう。サイトー、どういう反応するかな?うへへへ……」
 愛原:「そりゃもう、思いっ切り恥ずかしがるだろうなぁ……。イジメは良くない。ダメだぞー」
 リサ:「分かってるよ。花子先輩、どうしたんだろう?」
 愛原:「“トイレの花子さん”か。まだ遺骨が見つからないんだ。こうも見つからないと、やっぱり白井がガメて、何らかの実験に使ってるんだろうなぁ……」
 リサ:「死んでから実験に使われるのも、何かヤだね」
 愛原:「まあな。早いとこ見つけてやらないと……」

[1月24日09:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所]

 翌朝になり、事務所に行くと、1枚のファックスが来ていた。
 見ると、それは仕事の依頼書であった。
 クライアントは斉藤社長。
 社長直々に、私に仕事を依頼してくるのは久しぶりだ。
 また、絵恋さんのお守りでも以来してくるのだろうか。
 詳細は、社長の会社で直接話すとあったので、それを受けることにした。
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