報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「雪の八王子」

2022-02-04 20:24:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[同日19:30.天候:雪 東京都八王子市三崎町 ホテル東横イン八王子北口]

 八王子ラーメンを堪能したリサ達は、今だに雪の舞う中をホテルに戻って来た。

 愛原:「明日は8時11分発の電車に乗るから、寝坊しないように」
 リサ:「うん、分かった!因みに朝食は何時から?」
 愛原:「6時半からだそうだ」
 リサ:「リン、6時半だって!」
 凛:「分かりました」

 先ほど八王子ラーメンを食べたばかりだが、リサの食欲は明日の朝食に向けられた。

 凛:「朝食があるんですか?」
 愛原:「あるよ。東横インの場合、このロビーが朝食会場になるから」
 リサ:「バイキング、食べ放題だよね?」
 愛原:「……多分な」

 コロナ禍の影響で、同じ東横インであっても、ビュッフェ形式を継続したり、或いは定食形式にしたり、弁当形式にしたりと対応は様々である。
 恐らく、店舗ごとの支配人の判断に任されているのだろう。

 愛原:「それじゃ、おやすみ」
 リサ:「おやすみなさー」
 凛:「おやすみなさい」

 部屋に戻るリサと凛。

 凛:「先輩、ちょっと洗濯してきていいですか?」
 リサ:「コインランドリーか」
 凛:「はい。1階の奥にあったみたいなんで」
 リサ:「わたしも行く。ジュース買い忘れた」
 凛:「一緒に行きましょう」

 再び部屋を出るリサ達。

 凛:「先輩、カードキー忘れてます!」
 リサ:「おっと。……『リサ・トレヴァーのカードキー』で開かないかな?」

 リサは日本アンブレラの研究所で入手済みのカードキーを取り出した。
 金色に輝くゴールドカードは、日本アンブレラに関係した施設で、カードキーで開けられる物は何でも開けられるグランドマスターカードだ。

 凛:「多分、ムリだと思います」

 試しにリサ、そのカードキーを当ててみたが、エラー音が鳴って開錠されることはなかった。

 凛:「……一応、反応はするんですね」
 リサ:「でも開かない。このホテルは、アンブレラとは関係無い」
 凛:「……でしょうね」
 リサ:「あ、でもリンのホテルは?天長会って、結局アンブレラと繋がってるし」
 凛:「白井伝三郎を介しての間接的繋がり、ですけどね。うちのホテルはカードキー形式じゃないですから、そもそもムリです」
 リサ:「なんだ」

 エレベーターに乗って1階に下りる。

 凛:「都会にあるホテルなのに、随分と寂しいですね」
 リサ:「確かに。他の宿泊客と会わない」

 外観から見た時、いくつかの客室には照明が点いていたから、他にも宿泊客はいるのだろう。
 しかし、週末の割には利用者が少ないように見えた。
 元々流行っていないのではなく、それだけオミクロン株の脅威が蔓延してきたということだろう。
 東京駅に行っても、先ほど新宿駅から電車に乗っても、明らかに団体客や外国人旅行客の姿は殆ど無かった(個人客や家族連れなら、それなりに見かけた)。
 つまり、週末の行楽客がまた自粛するようになったということだ。

 リサ:「1つ空いてる」

 コインランドリーに行くと、2つある洗濯機のうち、1つが既に使用されていた。
 当然これは宿泊客専用。
 やはり、他にも宿泊客はいるのだ。

 凛:「ここを使わせてもらいます」

 凛は自分の下着やTシャツなどを洗濯機に入れた。
 洗剤もここで買える。

 リサ:「終わるのに40分近く掛かるんだ。しょうがない。また来よう」
 凛:「はい」
 リサ:「もう換えの下着は無いとか?」
 凛:「いえ、まだ一着あります。けど、その一着しか無いので……」
 リサ:「なるほど」

 リサはロビーの自販機でジュースを買った。

 凛:「そういえば、愛原先生達に黙って部屋から出ちゃいましたけど、いいんでしょうか?」
 リサ:「ホテルから出なければ大丈夫だろう。実際、マンションでも、たまにわたし、単独で部屋から出て、郵便物取りに行くから」
 凛:「行動が制限されてる割には、学校へは単独で行っていいんですね」
 リサ:「制限されてるわけじゃないよ。ただ、監視されてるだけ。学校の行き帰りは、多分、サイトーが一緒にいることで『監視』ってことにしてるんだろう。あと、スマホのアプリがある」

 スマホには元々GPSが付いているが、デイライトが開発したGPSは更にBOWの変化を読み取る優れ物だ。
 もしもリサが無断で第3形態以降に変化したら、デイライトとBSAAに緊急信号が発信されるというもの。

 リサ:「ホテルから出たら警報が鳴ると思うけど、今は鳴ってないから大丈夫」

 アプリを立ち上げると、『リサ・トレヴァー(2番)は、安全に制御されています』『現在の状態:第0形態』『現在地:東京都八王子市三崎町……』という表示が出て来た。

 凛:「なるほど。……私も、こういうスマホを持たされるんでしょうか?」
 リサ:「と、思うよ。ただ、リンはわたしと違うから、そこまで監視しないかもしれない」

 またエレベーターに乗る。

 凛:「違いますか?」
 リサ:「リンは半分人間だから。そこまで厳しく監視はしないかもしれない」
 凛:「そういうものですか」

 部屋に戻ってテレビを点ける。

 凛:「さすが東京はチャンネル多いですね」
 リサ:「テレ東くらい、栃木でも見れるでしょ?」

 那須塩原市にもテレ東の送信所がある。

 凛:「でも、Tokyo MXは観れないです」
 リサ:「そうなのか」

 凛はライティングデスクの椅子に座って、テレビを観ている。
 リサはベッドに寝転がって、スマホをイジっていた。

 リサ:「このホテル、Wi-Fi入る」
 凛:「パケット制限されてるんですか?」
 リサ:「高校生のプランじゃね……」
 凛:「ああ、そうですね」

 なので、ギガ数を節約しながら使わないと、すぐに上限に達してしまうのだ。
 先ほどの“京王ライナー”もそうだが、このホテルのようにWi-Fiが入る所は有り難いと思っている。
 因みにマンションでも、愛原はWi-Fiのルーターを導入して、Wi-Fiでネットができるようにしていた。
 なので、マンションではギガを気にしないで使用できる。

 リサ:「あと、意外なのが、藤野の研修センター。あそこもWi-Fi使える」
 凛:「そうなんですね」

 表向きは国家公務員の研修センターとして使用されているからだろう。

 リサ:「サイトーからLINEがガンガン来て大変だ」
 凛:「斉藤……先輩は、普通の人間なんですね?」
 リサ:「うん、今はね」
 凛:「今は?」
 リサ:「一時期、BOWになりかけた」
 凛:「ホントですか!?」
 リサ:「うん。あれにはわたしもビックリした」
 凛:「普通に人間の匂いしかしなかったので、意外でした」
 リサ:「うん、だろうな」

 リサは窓側のベッドに横になっている。
 今はカーテンを閉めているが、少し開けてその隙間から外を覗いて見た。
 上階の部屋にいるので、八王子市の夜景がよく見える。
 だが、どうも雪が強くなってきたようだ。

 リサ:「マズいな。あまり雪が強いと、電車が止まるかもしれない」
 凛:「ええっ!?」

 リサは自分のスマホで、天気予報を見た。

 リサ:「『山沿いは積雪、交通機関の乱れに注意』だって」
 凛:「八王子とか、藤野とかって山沿いですよね?」
 リサ:「うん。藤野とか、普通に山に囲まれた場所」

 一応、鉄道運行情報とか見たが、中央本線については何も無かった。
 上越線とか、もっと雪深い所を走る路線は、さすがに雪で遅れているようだが……。

 リサ:「まあ、何とかなるだろう」
 凛:「で、ですよね」
 リサ:(それよりも……)

 リサはカーテンを閉め直しながら思った。

 リサ:(近くのビルの屋上に、スナイパーみたいなのがいたぞ。本当に監視してるみたいだな……)

 カーテンを閉めていれば、外から見えないはずだが、それでも狙い撃ちできる何かがあるのだろう。

 リサ:(まさか試しに外に出て、本当に警報を鳴らしたら、撃ってきた?)

 そう思うと、リサはヘタな悪戯はできないと思うのである。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「雪降る八王子」

2022-02-04 17:09:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月22日17:39.天候:雪 東京都八王子市明神町 京王八王子駅→東横イン八王子駅北口]

 私達を乗せた“京王ライナー”は、順調に八王子に向かっていた。
 それは良いのだが……。

 リサ:「先生、雪降ってきたよ」

 後ろに座っていたリサがそう言った。

 愛原:「なに?」

 もうすっかり暗くなった車窓。
 そこから目を凝らして外を見ると、街灯に照らされて、ちらつく小雪が見えた。

 愛原:「マジか。八王子は雪降るんだなぁ」
 高橋:「まあ、高尾山もありますしねぇ……」

 積もりそうな感じはしないが……。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。次は京王八王子、京王八王子、終点です。出口は、右側です。京王をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔The next stop is Keio-hachioji.KO34.This is the last station this line.The doors are right side will open.Thank you for using the Keio line.〕

 地下ホームを起点に出発した“京王ライナー”だが、終点も地下ホームである。
 京王八王子駅は、通称『京八』と呼ばれている。
 京王線新宿駅と同様、京八もまた櫛形の頭端式ホーム。
 しかも、有効長がギリギリということもあり、入線速度は厳しく制限されている。
 地下トンネルに入ると、電車はゆっくりとした速度でホームに入る。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、京王八王子、終点、京王八王子です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 愛原:「それじゃ、降りるよ」

 ドアが開いて、私達は電車を降りた。
 地下にいるからか、外は雪が降っているだろうに、そんなに寒くは感じない。
 だが、地上に向かうと、確かに冷たい風が吹き込んで来るのが分かった。

 愛原:「こんなに寒いんじゃ、確かにラーメンでも食べたくなるなぁ」
 リサ:「ラーメン食べよ!ラーメン!」
 愛原:「まあまあ。まずは、ホテルに荷物を置いて行こう」

 駅を出る前に、ホームの駅名看板を撮影する。
 これは別に趣味ではなく、報告書に添付するもの。
 今は凛さんの同行・監視を任されているので、予定通りの電車に乗り、予定通りの駅で降りたことを証明する為のものだ。
 他にも、車内でリサと凛さんの写真も撮っている。
 JKらしく(……っと、凛さんはまだJCか)、2人はポーズを撮っていたが、デイライトに提出されると知っているのだろうか。
 駅を出て、JR八王子駅の方向に歩く。
 それから、宿泊先のホテルに向かう。
 その間にも、ラーメン店は何軒かあった。
 しかし、当然ながら、市内に出店しているラーメン店全てが『八王子ラーメン』を提供しているわけではない。
 どのラーメン店が八王子ラーメンを出しているのか、事前に情報を得なければならない。
 小雪が舞う中を進むが、やはり都心より寒く感じた。
 天気予報では都心は相変わらず曇だが、八王子は雪マークが付いている。
 小雪程度なので、積もることはないだろうが、しかし路面凍結には注意とのこと。

 愛原:「よし、着いた」

 ホテルは繁華街の中にあった。
 東横インの場合、立地条件が繁華街という所もまま存在する。
 隣近所が『夜のお店』ということだ。
 この例は埼玉の西川口でも見られる。
 ロビーはさすがに暖房が効いて暖かった。

 フロント係:「いらっしゃいませ」
 愛原:「ちょっと行って来る。ちょっと待ってて」
 リサ:「あい」
 高橋:「うス!」
 凛:「はい」

 私はフロントに行った。

 愛原:「4名で予約している愛原ですが」
 フロント係:「はい、愛原様ですね」

 会員証を渡し、女性スタッフが取り出した宿泊者カードに記入する。
 そして記入が終わると、フロント係の女性はカードキーを持って来た。

 フロント係:「ツイン2部屋、御用意させて頂きました」

 カードキーは人数分あった。
 軽く館内の説明を受けて、それから3人の所に戻る。

 愛原:「はい、お待たせ。まずは部屋に行こう」
 リサ:「わたし、先生と一緒の部屋~!」
 愛原:「おい!」
 高橋:「おい!」
 愛原:「さすがにそれはダメだって」
 リサ:「え~」

 私はリサではなく、高橋にカードキーを渡した。
 あとは……。

 愛原:「ほい、凛さん」
 凛:「ありがとうございます」
 愛原:「リサが変な行動をしないよう、見張っていてくれ」
 凛:「わ、分かりました。先輩のことですから、ダクトを通って、先生方の部屋に行くことは可能だと思いますが……」
 愛原:「それを阻止してくれればいい」
 凛:「わ、分かりました」
 リサ:「ぶー……」

 エレベーターに乗って、客室フロアへ向かう。
 繁華街にあるせいか、セキュリティはしっかりしている。
 エレベーターに乗る際、カード読取機にカードキーを当てないと、エレベーターが動かせない仕組みになっている。
 そしてエレベーターを降り、部屋に向かう。
 やはりというか、部屋は隣同士になっていた。

 高橋:「最近はカードキーですね」
 凛:「うちのホテルも、カードキーにしようかっていう話はあります」
 愛原:「あ、そうなの」

 ホテル天長園は、まだ普通の鍵だ。

 愛原:「それじゃ、荷物置いたらラーメン食いに行こう」
 リサ:「分かった」
 凛:「分かりました」

 私と高橋も、今宵の寝床に入る。

 高橋:「やっと着きましたねぇ」
 愛原:「ああ。オマエ、タバコ吸うだろ?机側で寝ろよ」
 高橋:「了解っス!」

 灰皿置き場が、机の上しか無いため。
 と言いつつ、私も今日の分の報告書を作成したいので、机の上にノートパソコンを置いた。
 これは帰ってきたら、使うことにする。

 高橋:「でも、どこの店がいいか、決まったんスか?」
 愛原:「こういう時は、フロントで聞く。ホテルは周辺情報に詳しいからな」
 高橋:「これも探偵の心得ですね!」

 高橋は手帳を取り出して、今の私の言葉をババッと書き込んだ。


 愛原:「それじゃ、行くぞ」
 高橋:「はいっ!」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする