報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「元公民館の地下へ」

2021-12-07 20:27:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日13:00.天候:曇 宮城県遠田郡美里町 愛原公一の家・仏間→地下室]

 リサ:「1たす2は3……」

 リサはそう呟いた。

 愛原:「! それだ!」

 私は改めて『壱』の引き出しを開けた。
 そして、隣の『弐』を開ける。
 すると、1+2で『参』の引き出しが開くわけだ。
 すると、『肆』を開けたければ……。

 愛原:「『弐』の引き出しを閉める。すると、『壱』たす『参』で、『肆』!」

 その通り、『肆』の引き出しが開いた。
 足し算とは、このことだったのだ。
 『肆』の引き出しには何も入っていなかったが、『伍』の引き出しにはショットガンの弾が入っていた。
 足し算になればいいわけなので、『弐』たす『参』で『伍』でも良い。

 愛原:「『陸』を開けるには……」

 『伍』の引き出しを開けっ放しにしておき、『壱』の引き出しを開ける。
 すると、『陸』が開いた。

 愛原:「これは何だ?」

 中に入っていたのは、棒状のヒューズであった。
 どこかで使うのだろうか。
 もらっておくことにした。
 それから今度は、『七』の引き出しを開ける。
 『七』の引き出しには、USBメモリが入っていた。

 愛原:「何だこれ?」
 高橋:「USBメモリっスね」

 中に何かのデータが入っているのかもしれない。
 私は書斎に移動すると、そこにあった伯父さんのPCを借りることにした。

 愛原:「動画が入ってるぞ」
 高橋:「何ですって?」

 その動画を再生してみた。
 それは、どこか薄暗い場所であった。
 丸いテーブルを挟んで、2人の男が向かい合って座っている。
 1人は、公一伯父さんであった。
 もう1人は分からない。
 顔立ちからして、外国人……それも欧米の白人か何かであろう。
 伯父さんも年配者だが、その男も伯父さんと同じくらいの年齢であった。
 つまり、70代だということだ。
 伯父さんと同じように眼鏡を掛けていたが、そちらは白い髭を生やしていた。
 その2人が会話しているのだが……。

 愛原:「おぃ、英語だで!」
 高橋:「マジっスか!」

 伯父さん達は英語で会話していた。
 しょうがないので、私は手持ちのスマホの翻訳アプリで2人の会話を翻訳した。

 男:「……約束の100万ドルだ。その前に、ブツを見せてもらおうか」
 公一:「良かろう。これじゃ」

 公一伯父さんは、ジュラルミンケースをテーブルの上にドンと置いた。
 そして、男の方に向けて中を開ける。
 その中には、500mlのペットボトルくらいのサイズのアンプルが5本ほど入っていた。

 公一:「私の発明品だ。あくまでも試作品なので、正式な名前は無い。まだな」
 男:「まあ、そうだろう。これだけの量で、幾人もの人間の死体を復活させることができるというわけだ」
 公一:「それをするのは、オマエさん方の依頼人じゃろう?ジャック・シュラ・カッパー殿」
 男:「ヤング・ホーク団は、今やヴェルトロの信任厚き精鋭軍団。上手く行けば、あなたも私もCGC♪……もとい、永遠の命を手に入れられるかもしれんよ?功徳~~~~~~!」
 公一:「下らん。永遠の命など。200年も生きれば、生きるのに飽きるというぞ」
 男:「怨嫉謗法はいかんぞ。正にその200年だ。まずはそこまで、人間の寿命を無理なく伸ばす。それが、今まで消えて行った『悪役』の望みだ」
 公一:「話は終わった。失礼するぞ」
 男:「誰も想像つかないだろうな。我々忌むべきテロリストに力を与えたのが、日本農業学の権威、愛原公一博士であるとは……」

 そこで映像が切れた。

 愛原:「くっ!」

 私は悔しさのあまり、机に拳を叩きつけた。

 愛原:「伯父さんが、こんな悪役だったなんて……!」
 高橋:「先生……」

 高橋が私の肩に手を乗せる。

 高橋:「お気持ちは分かりますが、まずは姉ちゃんに報告しては如何でしょう?」
 愛原:「そ、そうだな……」

 私はスマホの翻訳アプリを閉じた。
 そして、それで通話しようとした時だった。
 突然、PCの画面が変わった。
 どうやら、この部屋らしい。
 PCのカメラで、伯父さんが自撮りしているようだ。

 公一:「学よ、これを観ているか?いや、学でなくとも良い。この動画を観ている、正義の者に伝えておきたいことがある。先ほどの動画は、ワシの本心ではない。今までも、ワシの発明品を狙って、怪しい者達が近づいてくることはしばしばあった。しかし、今度は世界を震撼させたテロ組織の下部組織が近づいてくるようになった。そこで、ワシは一計を案じることにした。連中の言いなりになったフリをし、偽物の発明品を渡す。しかも、ケースにはGPSを忍ばせておいて、奴らのアジトを発見するというものだ。奴が捕まるまで、ワシはこの家のどこかに隠れておこう。それでは……」

 そして、画面は消えた。

 高橋:「先生……」
 愛原:「今のは……どちらが本当の伯父さんなんだ?」
 リサ:「取りあえず、地下に行ってみようよ」

 と、リサ。

 リサ:「まだ、最後の引き出しを開けてないでしょ?」
 愛原:「そ、そうだな」
 高橋:「でも、ヘタすりゃ、この家にヴェルトロが来るかもしれないってことですか?」
 愛原:「そうかもな。しかし、善場主任がBSAAに通報してくれている。もうすぐ、BSAAもここに来るだろう。そしたら、ヴェルトロなんて簡単に捕まるさ」
 高橋:「それもそですね」

 私達は再び仏間に移動した。
 そして、最後の『八』の引き出しを開けた。
 果たして、そこにはエレベーター鍵が入っていた。

 愛原:「よし、これで……」

 私達は再び、エレベーターのある小部屋に移動する。
 1つ気が付いたのだが、エレベーターの鍵があっても、そもそも電源が落ちていれば動かないのだ。
 通電させるには電源ボックスを開けて、取り外されているヒューズを取り付ける必要があった。
 ここでそれが必要なのである。
 私はヒューズを取り付けて、エレベーター鍵でエレベーターを起動させた。
 すると、ランプが点灯する。

 愛原:「よし、これで行ける」

 ボタンを押すと、薄暗い電球の明かりが点いたエレベーターのドアが開いた。

 愛原:「準備はいいな?行くぞ」
 高橋:「はい」
 リサ:「うん」

 私は地下階のボタンを押して、閉めるボタンを押した。
 ガラガラという扉が閉まる音が響き、バンと勢い良く閉まるのは、古いエレベーターならではだ。
 昔の電車のドアも、随分と乱暴に閉まったものだ。
 そして、ガクンという大きな揺れでエレベーターが降下を始めた。

 高橋:「いざ、地獄の底へ」

 高橋は手持ちのマグナムをリロードして言った。
 本当に伯父さんは、無事でいるのだろうか。
 そして、盗まれた“トイレの花子さん”の遺骨の行方は?
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“大魔道師の弟子” 「視察の終わり」

2021-12-07 16:03:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月21日14:30.天候:曇 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 帰りの(というか旅行のついでに乗る)列車の時間が近づき、勇太の両親達は出発の準備をした。
 玄関前で、宗一郎とイリーナが最後の挨拶をしている。

 稲生宗一郎:「お世話になりました」
 イリーナ:「何のお構いもできませんで……」
 宗一郎:「いえ、とんでもない。泊めて頂いた上に、食事や酒なども御馳走になり、身に余る光栄です」
 イリーナ:「喜んで頂けて、何よりですわ。これで勇太君が、普段どのような生活をしているか、少しでも理解いただければ幸いです」
 宗一郎:「はい。こんな立派な御屋敷に住み込みで修行できるなんて、素晴らしいです」
 イリーナ:「それはそれは……」
 宗一郎:「先生も是非、関東へいらっしゃることがあれば、我が家に。狭い家ですが」
 イリーナ:「ありがとうございます。この家が大き過ぎるだけであって、御宅も立派な新築が建ったようでありますね」
 宗一郎:「おかげさまで」

 そう言うと、宗一郎は周りを見渡した。
 それから、懐から小切手の入った封筒を渡す。

 宗一郎:「これは少ないですが、占いの見料です。銀行で、すぐに換金できるようになっておりますので」
 イリーナ:「まーいど。それでは、こちらに占いの結果が書かれています」

 イリーナは2つ折りの厚紙のボードを宗一郎に渡した。
 2つに折ると、B5版くらいの大きさになる。

 宗一郎:「ありがとうございます」
 稲生佳子:「あなた、そろそろ行くわよ」
 宗一郎:「うむ。今行く」

 玄関の外では、車が待機していた。
 行きはマリアの魔法で出した車だったので、まんまロンドンタクシーのような車だったが、今度は勇太の魔力を使っている。
 そうなると、今度は日本のタクシーみたいな車が出てくるわけだ。
 最近流行りのジャパンタクシーに酷似していた。
 ロンドンタクシーと違ってリアシートがボックスシートになっていないので、荷物は後ろに積むことができる。
 この場合、マリアが助手席に乗り、稲生家の面々が後ろに乗ることになる。

 マリア:「じゃ、出して」

 マリアが運転手に言うと、黒スーツに白い帽子を深く被った運転手が頷いて車を走らせた。
 屋敷の前はコンクリートの舗装がされているが、そこを過ぎてトンネルの手前辺りから未舗装となる。
 往路と同じ、照明の無い長いトンネルをヘッドライトのハイビームにして走行する。

 勇太:「父さん、先生から占い受けてたの?」
 宗一郎:「バレてたか。実はそうなんだ。このコロナ禍、どのようにして会社の運命を左右させるかをだな……」
 勇太:「先生の見料、高いよ?もちろん、百発百中だけど」
 宗一郎:「しかし、当たれば後に見料を上回る高い収益が得られる。万年専務から、副社長を目指すぞ!」
 勇太:(万年でも、長年取締役にいられることの方が凄いと思うけど……)
 マリア:「東京都内には住まわれないのですか?ダディの会社は、都内にあると聞きましたが……」
 宗一郎:「北関東エリアを任されているものでね。その拠点である埼玉県に住んでいた方が、色々と便利なんだよ。もちろん、本社は大手町にあるがね」
 マリア:「そうですか……」

 さいたま市にある埼玉支社長を万年勤めているのも事実だ。
 もっとも、今は都内の本社に赴くことが多い為、都内とさいたま市の間という意味で川口市に新居を建てた由。
 さいたま市の旧居が、マリアの母親アレックスに爆破されたのを機に……。

[同日15:30.天候:曇 長野県北安曇郡白馬村 JR白馬駅]

 勇太達を乗せた車は、JR白馬駅前のロータリーに到着した。
 傍から見れば、タクシーが到着しただけのように見えるだろう。
 運転手に荷物を降ろしてもらい、車を降りる。
 少し時間があったので、駅前にある足湯に浸かった。

 勇太:「そうそう。お使いの度に入ろう入ろうと思ってたんだけど、ダニエラに邪魔されてさぁ……」
 マリア:「寄り道は許さないってことだ。……けど、足湯くらいはいいような気がするな。後でダニエラに言っとく」
 勇太:「お願いしますよ」

 人形の製作者兼管理者はマリアであるので、人形達は全てマリアの命令で動いている。
 もっとも、グランドマスターのイリーナはマリアを飛び越えて人形達に命令できる。

 宗一郎:「そろそろ出ようか」
 マリア:「はい」

 マリアが足湯から出ようとした時、佳子がマリアのスカートの裾を押さえた。

 佳子:「気を付けて。見えちゃうよ」
 マリア:「あっ……!Sorry……」

 今日のマリアは昨日みたいなワンピースではなく、いつものブレザーとプリーツスカートを穿いていた。
 ワンピースはロングスカートだが、ブレザーの方は違う。

 佳子:「このくらいの歳の外国人さんだと、もうラフにジーンズとか穿いてるイメージだけど、マリアさんは違うのね。魔法使いだから」
 マリア:「……あまりそんなことは無いですね。勇太が、この恰好が好きみたいなので」
 佳子:「あらあら」
 マリア:「私の友人で、別の組の魔女は、日本に来るまで、Tシャツにジーンズというラフな格好でした」
 勇太:「ルーシーのことか」
 マリア:「ですが、私のこの服を物凄く気に入ったので、わざわざ原宿に買いに行ったくらいです」
 佳子:「ああ。確かに、原宿で売ってるもんね。制服系ファッション。ていうか勇太、いくらマリアさんが似合うからって、いつまでもこんな格好させるのやめなさい」
 勇太:「ええっ!?い、いや、でも……!」
 マリア:「いいんですよ。私もこの服、気に入ってますから」
 宗一郎:「そろそろ列車が来る。早いとこ駅に入ろう」
 佳子:「はいはい」

 勇太達は駅構内に入った。

 宗一郎:「よし。車内で退屈しないよう、何か買って行こう」

 列車はまだ到着しておらず、宗一郎は待合室にあるキヨスクに入った。

 宗一郎:「えーと……」
 佳子:「何してるの?」
 宗一郎:「旅のお供に」

 宗一郎はドヤ顔して、缶ビールとおつまみを手にした。

 佳子:「昼間っから飲むんじゃないの!」
 宗一郎:「いいじゃない。旅行気分はこう……」
 佳子:「ダーメ。血糖値が云々って言われたんだから、控えなさい!」
 宗一郎:「今日だけでもォ……」
 佳子:「あなた……!!」(佳子がキレる3秒前)
 宗一郎:「はーい……」(´・ω・`)ショボーン
 マリア:「…………」(←稲生夫妻のやり取りに、笑いを堪えている)
 勇太:「おおっ、来た!“リゾートビューふるさと”!」

 勇太は両親そっちのけで、ホームに入線してきた2両編成のハイブリット気動車に、スマホのカメラを向けた。

〔「1番線に到着の列車は、15時35分発、快速“リゾートビューふるさと”号、長野行きです。2両編成、全ての車両が指定席です。停車駅は信濃大町、信濃松川、穂高、松本、姨捨、篠ノ井、終点長野の順に止まります。……」〕

 観光客向けのリゾート列車だが、大糸線内ではワンマン運転のもよう。
 また、気動車であるのだが、エンジン音が静かなのは、ハイブリット車だからだろう。

 勇太:「入場券買って来る!」

 勇太は有人窓口の横にある自動券売機に行くと、そこで入場券2枚を買った。

 勇太:「はい、マリアのも!」
 マリア:「私もいいの?」
 勇太:「いいのいいの!」

 改札口は自動化されておらず、ホームの入口には駅員が立って鋏(スタンプ)を入れている。

 勇太:「どっちの車両?」
 宗一郎:「前の車両だな」

 宗一郎は手持ちの指定席券を見ながら言った。
 車両は普通車ながら、そのシートピッチは特急のグリーン車並みである。

 マリア:「どうか、お気をつけて」
 宗一郎:「マリアさんも、勇太をどうかよろしく」
 マリア:「分かりました」
 佳子:「勇太、年末年始は帰省するの?」
 勇太:「あー、そうだねぇ……」
 宗一郎:「冬は雪に閉ざされるんだろう?イリーナ先生も連れて来たらどうだ?」
 勇太:「まあ、先生に聞いてみる」
 マリア:「師匠はむしろ屋敷内で冬眠するのが好きな人ですから」

 マリアは苦笑して言った。

 マリア:「勇太の弟子入り前は、よく師匠は年末年越し飲み会をしたものです。不健康極まりないですね」
 宗一郎:「ハハハ……」

〔「1番線から、“リゾートビューふるさと”号、まもなく発車致します」〕

 駅長が出て来て、ホームの監視を始めた。
 ワンマン運転で車掌がいない為、客終合図は運転室に向かって行う。

 宗一郎:「それじゃ、帰省のことが分かったら教えてくれ」
 勇太:「分かった」

 勇太の両親は列車に乗り込んだ。
 駅長の合図で、ドアが閉まる。
 そして、ハイブリット気動車の特長である、静かな走りを見せた。

 勇太:「よし、出発したな」
 マリア:「あのまま帰られるのだろうか?」
 勇太:「なーんかあの様子じゃ、長野市内で一泊しそうだね。明日は平日だけど、休み取ってるって言うし」

 大企業の場合、前後が休日に挟まれている1日だけの平日は『有給休暇取得奨励日』に指定されていることが多い(呼称は企業によって違う)。
 役員はこの限りではないが、ただ、部下を休ませなければならないのに役員が出勤してしまうと、企業によってはその部下が休みにくくなってしまうので、やはり役員も休むことが多い(もちろん、その企業の業務内容や役員が担当している部門にもよる)。

 マリア:「なるほど」
 勇太:「じゃあ、帰ろうか」
 マリア:「ちょっと待って。せっかく駅まで来たんだから、少し買い物してから帰りたい。夕食までに戻れば、師匠も何も言わないはずだ」
 勇太:「それもそうだね」

 勇太達は駅を出た。
 そして車に乗り込むと、運転手に村内のスーパーに行くように伝えた。
 総合スーパーなら、食料品だけでなく、日用品も売られているからだ。
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