報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「BOWの北紀行」 3

2021-12-02 19:56:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日09:50.天候:曇 宮城県大崎市古川千手寺町 道の駅おおさき]

 パールの予想通り、リサを乗せた車は泉インターから東北自動車道に入り、古川インターで降りた。
 車は国道108号線を東進し、大崎市(旧・古川市)の市街地に入る。
 入った所で、2019年にオープンしたばかりの道の駅おおさきに立ち寄った。
 新しくできたばかりということもあり、建物や設備などは真新しい。

 愛原:「取りあえず一旦ここで休憩」
 高橋:「ういっス」

 高橋は空いている駐車スペースに車を止めた。
 週末のせいか、どちらかというと行楽客が多い。
 コロナ禍のせいか、大型駐車場には観光バスの姿は無かった。
 大型トラックが何台か止まっているだけである。

 リサ:「ちょっとトイレ」
 愛原:「よし。一緒に行こう」

 車を降りたリサと愛原は、建物の中にあるトイレへ向かう。

 リサ:「ん!」

 しかしリサは、男女トイレの間にある多目的トイレを指さした。

 愛原:「某お笑い芸人じゃないんだからな……」
 リサ:「一緒に行こうって言った」
 愛原:「途中までは、な。ここからは別々だ」
 リサ:「えーっ」
 愛原:「えーじゃない。じゃな」

 愛原はそう言うと、さっさと男子トイレに入って行った。

 リサ:「ぶー……」

 リサは少しむくれた感じで、女子トイレに入って行く。

 パール:「御嬢様、リサ様がお手洗いに入られました」
 絵恋:「よし。じゃあ、私達も行くよ!」
 パール:「お待ちください。このままでは、鉢合わせになってしまいます。恐らくリサ様は、お手洗いから出られた後、食事を所望されるでしょう。しかし、今はまだ10時前。食事の時間ではございません。愛原先生に窘められるものの、しかしリサ様は諦められず……」
 絵恋:「要は、すぐにはこの道の駅を出ないってことね」
 パール:「さようでございます」

 パールと絵恋の乗ったバイクは、二輪車用駐車場に止めている。
 少し離れているので、愛原達に見つかる恐れは小さいが、しかし監視するのに双眼鏡を使うほどであった。
 何故か持っていたのだ。
 気にしないで頂きたい。

 絵恋:「リサさん達は一体、何しに来たのかしら?」
 パール:「私の分析によりますと、隣町の美里町という所に、愛原先生の御親戚が住んでいらっしゃるようです。その方に会いに行かれる公算は大きいかと」
 絵恋:「その親戚の人に、何しに行くのかしら?」
 パール:「そこまでは分かりかねます。そこから先は愛原先生の御身内の事でございますし、あまり他人の私共は立ち入らない方がよろしいかと」
 絵恋:「その割には、リサさんやゲイ野郎も一緒なのね」
 パール:「御嬢様。お嬢様とあろう方が、汚い言葉を使ってはなりませんよ」
 絵恋:「もちろん、リサさんや愛原先生にはそんなことしないわよ。ただ、あいつだけは私に汚い言葉を何度も使いやがってるの!……あー、何だか腹が立ってきた……!!」
 バール:「御嬢様、お気持ちは分かりますが、どうか今は御辛抱を。マサのことに関しましては、この私めにお任せくださいませ」
 絵恋:「うぅ……!分かったわよ」
 パール:「御理解が早く、助かります。……そうしているうちに、リサ様方がお手洗いから出られましたね。私達も参りましょう」
 絵恋:「分かったわ」

 2人もまた駐車場からトイレへと向かった。
 で……。

 リサ:「おー、ご当地グルメ!」

 施設内にある食事処を見つけ、メニューを眺めるリサ。

 愛原:「ダメダメ。今、何時だと思ってる?こんな時間に食べちゃダメだよ」
 リサ:「えーっ!?だって私、今朝はパンと玉子しか食べてないよ?」
 高橋:「ポッキーとプリッツも食ったじゃねーかw」
 リサ:「あれは別腹!」

 パールの予想通りの展開になったのだったw
 で、リサの粘り強い交渉の結果……。

 リサ:「ソフトクリーム!」

 本格的な食事はさすがにダメだったが、おやつならOKということになった。
 結局リサは食事処で買ったソフトクリームだけでなく、産直販所で売られていたパンなども購入して食べていた。
 更には屋外で出店しているキッチンカーで、たこ焼きやらカレーパンやら……。

 リサ:「よし!元気出た!」
 愛原:「さよで」

 リサの食欲に当てられたか、結局、愛原と高橋も産直販所で売られていた団子を購入して食べた。
 あとは、自販機で紙コップのコーヒーを買って飲んだり……。

 愛原:「もう10時半だ。そろそろ出よう」
 高橋:「そうっスね。あんまりサボってると、善場の姉ちゃんに何言われるか分かんないっス」
 リサ:「善場さん……」

 日本版BOWリサ・トレヴァーの先輩の荒ぶる姿を想像したリサは、顔を青ざめた。
 怖い物知らずのリサだが、やはり怖い物は少なからず存在する。
 3人は出たゴミを片付けると、速足で駐車場へと向かった。

 パール:「御嬢様、リサ様達が移動されます。急いでお戻りください」

 パールはスイーツを食べに行っている絵恋に、電話を掛けた。

 絵恋:「わ、分かったわ」

 絵恋は急いでパールの所に戻った。

 パール:「どうやら次は、美里町に向かわれるようです。私達は立ち入らず、どこか適当な場所で待機することをオススメします」
 絵恋:「何でよ?」
 パール:「愛原先生は、身内の親戚の所に向かわれ……」
 絵恋:「まだそうと決まったわけじゃないじゃない!それが分かるまで、とにかく後を追うのよ!」
 パール:「……かしこまりました」

 そんなことを話している間、スーッとリサ達を乗せた車が国道へ向かって行く。

 リサ:「! 今、サイトーとメイドさんにそっくりな人達がいた!」
 愛原:「えっ、そうなのか!?」
 高橋:「……気のせいじゃないっスか」

 車の中で唯一事情を知っている高橋だけは、わざと知らんぷりした。

 リサ:「何か、大きいバイクの横に立ってた」
 愛原:「バイクぅ?」
 高橋:「じゃあ、違いますよ。パールはバイクなんて持ってませんし」
 愛原:「……だよな」
 リサ:「ちょっとLINEしてみる」

 リサは自分のスマホを取り出した。
 しかし、LINEする前に、車は国道に入ってしまっていた。

 リサ:「兄ちゃん、さっきの人達、本当にサイトーかどうか確認するから戻って」
 高橋:「ざっけんじゃねぇ!時間が無ェんだ!さっさと行くぞ!……ですよね、先生?」
 愛原:「まあ……そうだな」
 高橋:「ほら、先生もそう仰ってる!」
 リサ:「むー……!」

 リサの疑念をよそに、高橋は車を東に向けて走らせた。
コメント (1)
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“大魔道師の弟子” 「両親の来訪」 4

2021-12-02 15:11:48 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月20日16:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 マリアは自分の作業部屋に、勇太の両親を案内した。

 マリア:「少し散らかっていますが……」
 稲生佳子:「生地がいっぱいねぇ」
 稲生宗一郎:「これが人形の材料か。主に、フランス人形に近いのかな?」
 マリア:「見た目はそうですね」
 勇太:「この前、マリアさんと一緒に探した“青い目の人形”に似てるね」
 宗一郎:「おお、あれな。向こうの稲生さんも驚いてたよ」
 勇太:「だよね」
 宗一郎:「しっかしあれ、ヘタすりゃヴィンテージものだで?“青い目の人形”は歴史的価値もあるから、もしかしたら大騒ぎになってたかもな」
 勇太:「マスコミが嗅ぎつけたりしなければね」
 佳子:「ミシンは業務用の足踏み式を使ってるの?」
 マリア:「はい。家庭用のものですと、レバーやボタンの操作の時に、どうしても片手を取られてしまうので、足踏み式がいいのです」
 佳子:「なるほどねぇ……」
 宗一郎:「ん?こっちの部屋は何ですか?」
 勇太:「父さん、そっちはダメ!マリアの寝室!」
 宗一郎:「おっと、失礼!」

 ドアノブから手を放す宗一郎。
 しかし、何故かそのドアが向こうから開けられた。

 イリーナ:「何だか賑やかだわねぇ……」

 そこから、眠い目を擦りながらイリーナが出てきた。

 勇太:「先生!?そこにいらしたんですか!?」
 マリア:「師匠!また私の部屋で寝て!自分の部屋で寝てください!」
 宗一郎:「し、ししし、失礼しましたーっ!!」

 平身低頭の宗一郎。

 マリア:「今では書斎で寝るのがブームなんでしょう?」
 イリーナ:「原点回帰よ、原点回帰。昔はこの部屋で一緒に寝てたじゃない」
 マリア:「昔の話です!」
 佳子:「一緒に寝てた?」
 勇太:「ツインルームになっていて、ベッドはそれぞれ別だよ」
 宗一郎:「オマエも詳しいなw」
 イリーナ:「もっとも、ここ最近は勇太君の部屋で寝て……」
 マリア:「師匠!!」
 宗一郎:「え?」
 佳子:「え?」
 イリーナ:「まもなく息子さんが免許皆伝されたら、お2人に朗報が舞い込むと思いますわ」
 宗一郎:「もうすぐ免許皆伝されるのですか」
 マリア:「師匠。うちの法門に免許皆伝の考えは無いですが?」

 要は一人前と認められたら、という意味だろう。
 実際にはダンテ一門は、例え一人前と認められても、そこで終わりというわけではない。
 今度は弟子持ちになれるよう、精進することが求められる。
 イリーナはそこをサボろうとした為、師匠のダンテから叱責を受けたのだという。

 イリーナ:「いいじゃない。カッコいい日本語だわ」
 マリア:「すぐ真似したがるんだから……」

[同日17:00.天候:晴 マリアの屋敷1Fエントランス]

 エレーナ:「お届けものでーす!イリーナ先生宛てだぜ!」
 勇太:「ご苦労さん」
 佳子:「本物の“魔女の宅急便”だわ!」
 宗一郎:「本当にホウキに跨って空飛ぶんだねぇ!」
 エレーナ:「んぬ?どちら様だぜ?」
 勇太:「僕の両親。この屋敷の視察に来てるの」
 エレーナ:「初めまして。私、エレーナ・M・マーロンと申します。こちらの稲生勇太氏と結婚を前提にお付き合いさせて頂いている者です」

 そう言って、エレーナが勇太の腕を組んだ。

 勇太:「は!?」
 宗一郎:「えっ、そうなのかい!?」
 佳子:「ダンテ一門という所は一夫多妻制を認めていらっしゃるの!?」
 マリア:「くぉーらぁーっ!!」

 チュドーン!!(マリアの爆発魔法がエレーナに直撃する音)

 エレーナ:「あ~れ~……!」

 エレーナ、屋敷の外に飛ばされる。

 マリア:「たまに、ああいうフザけたアホがいるんです。全く。迷惑なことですよ」
 宗一郎:「違うんだね?」
 勇太:「父さん、僕が結婚したいのはマリアさんだよ」
 佳子:「良かった。お父さんの若い頃みたいに、浮気癖が移ったのかと思ったわ」
 マリア:「え?そうなんですか?」
 宗一郎:「こ、コホン……!」
 勇太:「そ、そういえば、威吹が初めて家に来た日って、父さんの浮気発覚で家の中が大荒れになっていたんだった」
 宗一郎:「い、いやあ、今でも威吹君には仲裁に入ってもらって、非常に感謝している」

 これもまた、威吹が妖狐であるにもかかわらず、すんなり稲生家に受け入れられた理由でもある。.

 エレーナ:「ま、マリアンナ……!ハンコくれ……!」(ボロボロになった伝票を差し出して来る)
 マリア:「早よ帰れ!!」
 宗一郎:「あんな爆発食らったのに、マンガみたいなダメージで済むんだねぇ……」
 勇太:「まあ、魔法使いだし」
 佳子:「そういうもん?」

[同日18:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側大食堂]

 夕食は大食堂で取る。

 イリーナ:「マリアのキッチンメイドが腕によりを掛けましたので、どうぞごゆっくり召し上がってくださいね」
 宗一郎:「はい、ありがとうございます」
 佳子:「いただきます」

 パーラーメイド役の人形達が食事を運び、食卓にいる4人にワインやビールを注ぐ。

 勇太:「おっ、ローストビーフだ」
 宗一郎:「今日はイギリス料理ですかな?」
 イリーナ:「今日はそうですわね」
 勇太:「ロシア料理が出てくることもあるよ」
 宗一郎:「おっ、それは美味そうだ」
 イリーナ:「ここまで御覧になって、如何でしたか?」
 宗一郎:「大きなお屋敷に住んでいるとは、息子から聞いてましたが、まさかここまで大きな屋敷とは思いませんでした」
 佳子:「まるで大貴族の御屋敷ですわね」
 イリーナ:「いやあ、私なんか、人間だった頃は奴隷階級でしたもので……。それが日本に来た際、ダンテ先生から、『アジアの拠点に相応しい規模の家を建てるように』というリクエストを頂きましたが、それがどんなものなのかは分かりませんで。それで、色々と調べて行きまして、このくらいの規模なら良かろうと建ててみました」
 宗一郎:「それで、どうなりました?」
 イリーナ:「『誰がこんな公爵邸みたいな家を建てろと言った!』と、後で怒られました」
 マリア:「ニューヨークのプラザホテルみたいな感じを、大師匠様はお求めだったのでは?」
 イリーナ:「あれだって大きいでしょう?」
 マリア:「階数くらい、師匠の魔法で自由に変えられるじゃないですか」
 イリーナ:「あ……!」
 マリア:「それがこんな、貴族屋敷みたいな、階層が固定された物を建てたので、大師匠様は呆れられたのではないでしょうか?」
 イリーナ:「アメリカの情報なんて無いからねぇ……」
 マリア:「普段は2階建てのプラザホテルみたいな感じにしておいて、大師匠様がいらっしゃる時だけ、本物のプラザホテル並みの階数にすればいいんですよ」
 イリーナ:「その手があったか!いやぁ~、貧乏生活が長かったものでねぇ……」
 宗一郎:「今ではブラックカードを何枚もお持ちなのでしょう?」
 イリーナ:「まあ、確かに報酬でもらうことはありますけど、実際はプラチナカード1枚か2枚で十分ですわ」

 かつては移動の交通手段に、貨物船や貨物列車に便乗していたというのは本当のようである。
 今ではビジネスクラス(日本ではグリーン車)で移動できて当たり前の身分であるが……。
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