報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原家のクリスマス」 2

2021-12-25 22:51:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日20:04.天候:晴 東京都墨田区江東橋 JR錦糸町駅南口→都営バス錦11系統車内]

 リサは本当に焼肉食べ放題で、注文できるメニューを全部コンプリートした。
 驚異的ではあるが、しかしこのように広く薄く注文することで、逆にそんなに目立たないということができる。
 それに、リサには思惑があるようだ。

 リサ:「ケーキの分、お腹を空けておかなきゃ」

 ということだ。
 同じくテルミナ内で購入したクリスマスケーキを手に、私達は帰りのバスの列に並ぶ。

 リサ:「♪~♪」

 リサは上機嫌であった。
 これなら、今の第0形態(人間形態)から変化することなく帰れそうだ。

 愛原:「うん、バスが来たな……」

 比較的時間通りにバスが来た。
 バスはこの停留所始発ではなく、亀戸駅前から来たバスである。
 なので、先客が数人乗っていた。
 数人程度で済んでいるのは、錦糸町駅前~亀戸駅前間の本数が少ないからである。
 本数が少ないということは、それだけ利用者が少ないというわけだ。

 愛原:「お前達、そっちな」

 1番後ろの席は先客達で塞がていたので、リサと高橋は空いている2人席に座ってもらい、私はその前の1人席に腰かけた。
 往路とは同じノンステップバスであったが、車種が違うので、座席配置も微妙に違う。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは乗客を全て乗せると、ようやく発車した。
 この時点で、ほぼ全ての座席が埋まっている。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。この都営バスは菊川駅前、浜町中の橋経由、築地駅前行きです。次は錦糸堀、錦糸堀でございます〕

 リサ:「♪~♪」
 愛原:「リサ、“エブリンのテーマ”を歌うんじゃない」
 リサ:「ん?」

 “バイオハザード7 レジデントイービル”のテーマ。

 愛原:「リサにはリサのテーマ(https://www.youtube.com/watch?v=BayW7aXI0zI 原曲:終焉の始まり)があるだろうが」
 リサ:「そうだった」

 リサはわざと自分の頭をコツンと叩いた。
 窓ガラスに映るリサの瞳は、今は人間と同様の黒であるが、それでも時折、金色に光ることがある。
 あくまでも時折なので、『光の反射や加減でそう見える』という言い訳ができる程度。

 愛原:「あまりリサは、鼻歌は歌わない方がいいかもな」
 リサ:「わたし、音痴?」
 愛原:「いや、そうじゃないんだが……」

 BOWのボスクラスの中には、何だか歌で手下のクリーチャーを操るヤツとかいなかったっけ?
 リサがそうなりそうで怖いのだ。
 もっとも、学校でも音楽の授業とかあるわけだから、リサの歌がどこまで危険なのかは分からない。

[同日20:12.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川一丁目バス停→斉藤絵恋のマンション]

〔「菊川一丁目です」〕

 バスは特に渋滞にはまることもなく、無事にバス停に到着した。
 中扉からバスを降りる。
 ここからマンションは、目と鼻の先である。
 そしてそれは、今の斉藤絵恋さんが住んでいるマンションも同じである。
 何しろ、新大橋通りを挟んだお向かいさんなのだから。

 リサ:「ん?」
 愛原:「どうした?」
 リサ:「サイトーの家……」
 愛原:「絵恋さんの家がどうした?」

 私が絵恋さんのマンションの方を向いた。

 リサ:「誰もいないはずなのに、電気が点いてる」
 愛原:「そうなの!?」

 絵恋さんの部屋は、確か7階だと聞いた。
 この辺りは地価のせいなのか、あまり高層マンションは建っていない。
 ましてや、タワマンにあっては【お察しください】。
 10階未満の高さのマンションが殆どである。
 そして、私のマンションみたいに5階建てというパターンも珍しくはない。
 7階を見ると、いくつかの部屋から明かりが漏れていた。
 しかし、どの部屋が絵恋さんの部屋なのかは分からない。

 リサ:「うん、点いてる。誰かいるみたい」
 愛原:「パールか?」
 高橋:「いや、そんなことないっスね。さっきからパールのヤツ、社長んち……つまり、絵恋の実家の写真を送って来てますから」
 愛原:「じゃあ、電気の消し忘れ?メイドさんらしくない」
 高橋:「案外あいつは、そういうのキッチリしてるタイプですよ。ストイックでサイコパスながら、メイドは務まるだろうとは思います」
 愛原:「ということは……」
 リサ:「侵入者!?」
 愛原:「ま、まさか……!」
 リサ:「ちょっと確認しに行こう」
 愛原:「確認しに行こうったって、向こうもオートロックだろう?どうやって入るんだよ?」
 リサ:「はい、カードキー!」

 リサは定期入れから、絵恋さんのマンションのカードキーを取り出した。

 愛原:「そんなもん、どうしてオマエが持ってるんだよ?」
 リサ:「サイトーがくれた。『これでいつでも遊びに来ていいからね』だって」
 愛原:「な、なるほど。じゃあ、まあ、行ってみよう。高橋、オマエは一応、パールに連絡しといてくれ。何かの間違いかもしれないからな」
 高橋:「了解っス」

 私達は絵恋さんのマンションに入った。
 エントランスのオートロックは、リサのカードキーで開錠する。
 それで中に入り、エレベーターに乗る。

〔上に、参ります。ドアが閉まります〕

 エレベーターで7階に上がった。
 エレベーターは途中階で止まることはなく、どんどん上に上がって行く。
 そして……。

〔ピーン♪ 7階です〕

 7階に着いて、エレベーターを降りた。
 そして、リサの先導で絵恋さんの部屋に向かう。

 リサ:「あっちあっち!」

 私達はリサの後を追った。

 リサ:「この部屋だよ」
 愛原:「分かった」

 私は、まずドアの向こうの様子を伺った。
 具体的には、ドアに耳を当て、向こうから物音がしないか確認したのである。

 リサ:「うん、何か聞こえる」

 リサは第1形態に戻り、長く尖った耳をドアに当てて聞いていた。

 愛原:「オマエ、こんな所で変化……」
 リサ:「ゴメン。この方が聞き取り易くて……」
 愛原:「いいから早く戻れ!」

 バンッ!(玄関のドアが思いっ切り開けられる音)

 泥棒A:「よし、今だ!ずらかるぞ!……って、何だオマエら!?」
 愛原:「しまった!」
 リサ:「ど、どろぼー!」
 泥棒A:「うるせっ!!」

 バーン!(泥棒A、手持ちの拳銃をリサに発砲する)

 泥棒B:「バカ!なに撃ってんだ!」
 泥棒A:「し、しかし……!」

 至近距離で頭を撃たれたリサ。
 普通の人間なら即死確定だろう。
 しかし、BOWたるリサが、たかが普通の拳銃程度で死ぬとは私は思っていなかった。
 とはいえ、さすがに至近距離で撃たれたことで、衝撃で尻もちをついた上、持っていたケーキを落としてしまった。

 泥棒B:「動くな!動くと撃つぞ!」
 泥棒A:「よし!そのまま動くな!……邪魔だっ!!」

 泥棒Aは、リサの落としたケーキの箱に足を引っかけた。
 そして、そのまま踏み潰した上に廊下の向こうに蹴っ飛ばしてしまった。

 愛原:「あ……オワタ……」

 2人組の泥棒はそのままエレベーターに乗って行ったが……。

 泥棒B:「Cが今、車で迎えに来たらしい。まさか、あのダイニチ(大日本製薬の通称)の御嬢様が暮らしているというマンションだから、金目の物が一杯あると思ったら、ドンピシャだったな」
 泥棒A:「あとは晴海埠頭から船で逃亡するだけだ」

 ズシン!

 泥棒A:「おわっ!?」

 エレベーター内に衝撃が走り、2階で停止してしまう。

 泥棒B:「な、何だ!?地震か?故障か!?」

 泥棒達はエレベーターに閉じ込められてしまった。
 が、その直後、天井の蓋がこじ開けられて、そこから第2形態まで変化したリサが現れた。
 具体的には第1形態よりも爪は鋭く長くなり(“エルム街の悪夢”のフレディみたいな感じ)、背中からは赤黒くて長い触手が数本生えている。

 リサ:「キサマらァァァッ!よくも私のケーキを!!楽しみにしてたのにィィィィッ!!」
 泥棒A:「ぎゃーーーーーー!!ばけものーーーーーーー!!!」
 泥棒B:「う、撃てっ!撃てっ!」

 泥棒Aは完全に失神。
 泥棒Bはそれでも果敢に拳銃を発砲するが、人間形態の第0形態でもその程度は屁でもないリサ。
 ましてや、最終形態の2つ前の状態ではもっと効くはずがなかった(第3形態や最終形態まで変化すると、理性を失う恐れがある為、変化を禁止されている)。

 愛原:「リサ、殺すなよ!殺しちゃダメだぞ!絶対だぞ!」

 私は非常階段で2階まで駆け下りると、エレベーターのドアをバンバン叩いてリサを注意した。
 そうこうしている間に、拳銃の発砲音を聞いた住人からの通報を受けて駆け付けた警察や、リサの暴走(の恐れ)を察知したBSAAが出動してきたりと、現場は大騒ぎとなったのであった。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家のクリスマス」

2021-12-25 15:33:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日17:08.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川一丁目停留所→錦11系統車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はクリスマス・イブということで、事務所を早めに閉めて、錦糸町に繰り出すことにした。
 夕食を食べに行くところだが、リサにクリスマスプレゼントを買ってやるというのもある。

 リサ:「お、バス来た」
 愛原:「そうか」

 今や都営バスは観光バス以外、全ての路線バスがノンステップバスになっている。
 私達の前で止まったバスは、グライドスライドドア式の前扉を開けた。
 リサが嬉々とした様子で、バスに乗り込む。
 かつては秘密の研究所の地下室に閉じ込められていたBOW(生物兵器)も、今や電車やバスに普通に乗れるようになった。
 資料映像を見せてもらったのだが、外国ではリサと見た目年齢が大して変わらない人間型BOWがいて、彼女も普通に路線バスに乗っていた。
 夕方ラッシュが始まる頃なので席は空いておらず、中扉を背にするようにして吊り革と手すりに摑まる。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスが走り出す。
 尚、リサのBOWとしての身体能力では、電車よりも揺れるバス車内であっても、掴まらずに立つことができる。
 もっとも、私はちゃんと周りに合わせるように言っておいた。

〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営地下鉄新宿線、都営バス、とうきょうスカイツリー駅前、新橋、東京駅丸の内北口方面はお乗り換えです。次は、菊川駅前でございます〕

 リサはあまりファッションには拘りは無く、むしろゲームやヘッドホンなどを欲しがった。
 BOWには、まま見られる傾向だそうである。
 実際、ここにいる『2番』のリサ以外のリサ・トレヴァーの中にはジャージを着ている者もいたので、正にそうなのだろう。
 今のリサもクリーム色のジャンパーの下は、パーカーとデニムのショートパンツ姿である。
 BOWは暑さや寒さに強く、この冬でも厚着はしなくても良い。
 だがさすがに違和感が無いよう、出掛ける時は制服の時はコートを着させている。
 今は私服なので、ジャンパーである。

 愛原:「高橋も残念だったな」
 高橋:「何がですか?」
 愛原:「パールも一緒に出掛けちゃったんだろ?斉藤家の高飛び」
 高橋:「ああ。まあ、しょうがないっスね。俺も仕事が忙しいんで」
 愛原:「伯父さんの件以来はヒマだったけどなw」

 きっとこの分では、ヒマなまま年末年始に突入するのだろうな。
 はぁ~……。
 あ、そういえば……。

 愛原:「もしかしすると、栃木の上野さんの娘さん。こっちに来たら、彼女の監視も頼むって言われるかもな」
 リサ:「地方在住者は、基本的に寮に入ることになってるよ?」
 愛原:「学校にいる時は、リサが監視するんだよ、きっと」
 リサ:「監視されてる私が監視するの」
 愛原:「かもな。……1度、再び那須塩原に行く必要があるかもしれない」
 リサ:「おー!旅行!」
 高橋:「いいんスか?本来はあそこ、宗教施設らしいじゃないスか。のこのこ行って勧誘でもされたら、メンド臭いっスよ」
 愛原:「その時はその時だ」

 まあ、大丈夫だと思うけど。

[同日17:30.天候:晴 東京都墨田区江東橋 テルミナ内ヨドバシカメラ錦糸町]

 バスで錦糸町駅に到着した私達は、駅ビルに向かった。
 テルミナという名前のビルなのだが、そこのテナントにヨドバシカメラが入っている。
 そこでリサへのクリスマスプレゼントと、仕事で使う道具を購入することにした。

 愛原:「ゲームやヘッドホンについては、高橋に任せた」
 高橋:「うっス!任されました!」

 リサのヤツ、前にノートPC買ってあげたら、ゲームはPCゲームをやるようになった。

 リサ:「パソコンゲームの方が面白いソフト揃ってる」

 と、リサがチョイスしたのが……。

 愛原:「全部ホラーかい!」
 リサ:「わたし自身がホラーだから、どうやったら上手い演出ができるか、これで勉強する」
 愛原:「人間に戻りたいんなら、むしろ演出されて怖がる方にならないと……」
 リサ:「ムリ。お化け屋敷とか、全然怖くない」
 愛原:「あ、そう。あれは参考にならないの?」
 リサ:「なんないね」

 さすがは元ラスボス。
 で、ヘッドホンの方は……。

 高橋:「BOSEのヘッドホンなんか高品質だぞ」
 リサ:「ずーん……」
 高橋:「何だよ、その顔!?」
 リサ:「かわいくない……」
 高橋:「あぁっ!?」
 リサ:「もっとかわいいのがいい。キュートなの」
 愛原:「……と、仰ってますが?」
 高橋:「しょうがねぇなぁ!じゃあ、このピンク色のヤツはどうだ!?」
 リサ:「む!かわいい!これがいい!」
 愛原:「BOSEよりはだいぶ安くなったな……」

 リサ、どういう時にヘッドホンを使うのかというと、正にゲームをやる時である。
 リビングにある据え置きゲーム機の場合はそのままなのだが、部屋でパソコンゲームをやる時に使う。
 それと、コロナ対策で行われているリモート授業の時。

 店員:「ありがとうございまーす」
 愛原:「どうも」

 リサはPCゲームソフトとヘッドホンの入った箱を、大事そうにリュックの中にしまった。

 高橋:「先生、しっかり領収書切りましたね?」
 愛原:「シッ、黙ってろ。あくまでも、仕事で使うカメラとかライトとか……そのついでだ」
 リサ:「先生、この後は?」
 愛原:「夕飯にしよう。何がいい?」
 リサ:「肉!」
 高橋:「……言うと思ったぜ」
 愛原:「まあまあ、とにかく行こう。また焼肉になるかな?」

 焼肉なら食べ放題コースがあるので、それにすれば、私の財布はそんなに痛まない。
 だが、店側が想定外の在庫減に悩まされるという……。

 リサ:「ケーキは!?」
 愛原:「生ものだから、帰り際にするさ」

 そう言って私達はヨドバシカメラを出て、レストラン街のあるフロアへと向かった。
 
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