報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「一夜明けて」

2021-12-04 19:59:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月21日01:28.天候:雷 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 ホラー洋館に都合良く雷が鳴るのは、ベタ過ぎる法則であろう。
 しかし、そんな展開ができるのは魔女の屋敷ならではある。
 これが吸血鬼の館だと、そうはいかない。
 何故なら、雷が鳴っている中、吸血鬼が獲物を求めて飛行しようものなら、落雷の直撃を受けるからだ。
 また、彼らは満月の夜だからこそ、血を欲する。
 だから、吸血鬼が出てくるホラー映画では、本来ホラー演出の為とはいえ、雷が鳴るのは間違いである(雷が鳴るような悪天候では、満月は確認できないだろう?)。

 侵入者A:「見つけたぞ。魔女の屋敷」
 侵入者B:「ここに住んでいる魔女は、2~3人ほどだそうだ」
 侵入者C:「捕えて、司祭様の所へお連れするのだ」
 侵入者A:「どこから入る?」
 侵入者B:「あそこの煙突から入れそうだ」
 侵入者C:「気を付けろ。こんな大きな屋敷に住める魔女だ。一筋縄ではいかないぞ」
 侵入者A:「分かってるって。じゃあ、行くぞ」
 侵入者B:「待ってろよ、神を恐れぬ魔女ども。捕まえて火あぶりに……」

 魔女狩り3人組、煙突から3階屋根裏部屋へと侵入する。

 クラリス:「…………」
 ミカエラ:「…………」
 ダニエラ:「…………」
 ナンシー:「…………」
 シンディ:「…………」
 エミリー:「…………」
 侵入者A:「……へ?」

 ジャキッ!(メイド人形達、手持ちの銃器を構える)

 侵入者B:「……ちわ」
 侵入者C:「くそっ、魔女共め!」

 屋敷内に銃声がこだましたことは、言う間でもない。

 クラリス:「死肉は吊るして、魔獣の餌に」
 ミカエラ:「魂は悪魔への生贄に」
 ダニエラ:「かしこまりました」
 ナンシー:「了解しました」
 シンディ:「承知しました」
 エミリー:「分かりました」

[同日08:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側大食堂]

 稲生宗一郎:「昨夜、凄い雷だったねぇ……」
 イリーナ:「季節の変わり目ですわね。今週中には、もう雪が降ると予知しております」
 宗一郎:「さすが長野の山奥。もう雪が降るんですか」
 イリーナ:「毎年いつも、このくらいですわ」
 稲生佳子:「その雷に混じって、銃声のような音が聞こえたんですが……」
 イリーナ:「ああ、それですか。確かに、うちのメイド人形が猟銃を使いましてね」
 佳子:「猟銃ですか?」
 イリーナ:「この時期、冬眠前の熊などが屋敷の敷地内に侵入してくることがございましてね。それを追い払う為に、メイド人形には猟銃を持たせてあるのですよ」
 宗一郎:「た、確かに熊などがいてもおかしくはないですが……」
 イリーナ:「この他にも猪とかもいるのです。鹿とか狐くらいならまだかわいいものですが、さすがに熊や猪は、こちらから追い払ってやりませんと」
 宗一郎:「確かに。しかし、あんな夜中に熊が出たのですか」
 イリーナ:「熊ではなく、夜行性の猪とかかもしれませんわね。とにかく、家の安全を守る為の防衛ですので、どうかお気になさらず……」
 宗一郎:「はあ……」
 佳子:「ライフルとかショットガンのような音がしたのですが……」
 イリーナ:「ですから、猟銃です」
 稲生勇太:「母さん、猟銃にライフルとかショットガンはあるでしょ?」
 佳子:「それもそうね」
 マリア:(実際は軍用のライフルとショットガン……。あとは、マシンガンとグレネードランチャーとかもあったっけ)

 哀れな魔女狩り3人組の死体は、2度と見つかることはないだろう。

 勇太:(日蓮正宗関係者だったらさすがにマズいけど、キリスト教系カルト新興宗教の連中なら別にいいや)

 勇太は朝食のコーヒーをズズズと啜りながら思った。

 勇太:「父さん達、今日帰るんだよね?」
 宗一郎:「せっかく来たんだから、観光して帰ろうかと思う」
 勇太:「大糸線の普通列車に乗るの?」
 宗一郎:「いや、快速“リゾートビューふるさと”のキップが取れた」
 勇太:「何で鉄ヲタの僕も乗ったことの無い列車、しれっと予約してんの?」
 佳子:「終点が長野駅だから、そこから新幹線で帰れるしね」
 勇太:「実際は大宮で、京浜東北線乗り換え」
 宗一郎:「まあ、そうだな。とにかく、勇太がどういう所に住んでいて、どういう修行をしているのか分かったから、それで十分だよ。先生、ありがとうございます」
 イリーナ:「いえいえ。私の方こそ、色々とお土産頂いちゃって、どうもありがとうです」
 マリア:「スイーツ以外に、何かありました?」
 イリーナ:「“日本全国!温泉の素”詰め合わせ。体のコリに効きそうだねぇ……」
 マリア:「本物の温泉には負けるかと」
 宗一郎:「それもそうですね。今度、温泉旅行にでもご招待させて頂きましょう。コロナの状況次第ですが」
 イリーナ:「大丈夫ですよ。少なくとも、ここにいる私達は、何があっても大丈夫です」
 宗一郎:「先生の占いはよく当たると評判ですからなぁ……」
 イリーナ:「お褒めに預かりまして」

 だが、イリーナは一瞬冷たい目をした。

 イリーナ:(新型コロナウィルスねぇ……)

 イリーナ達、大魔道師は何か真相を知っているようだが、それに照らし合わせてみて……。

 イリーナ:「とにかく、大丈夫ですので」
 宗一郎:「かしこまりました」
 佳子:「あなた、目玉焼きのお代わりですって」

 因みに、いつもではないが、こういう来客があった時に、キッチンメイド達が行っている演出。
 それは、目玉焼きやスクランブルエッグを目の前で作るというものである。
 一部、観光地のホテルなどでも行われている演出だ。

 宗一郎:「そうか。じゃあ、もらおうかな」
 マリア:「“リゾートビューふるさと”とやらの発車時刻は?」
 勇太:「確か、午後だよ。15時台。新宿行きの特急の後だったね」
 宗一郎:「さすが詳しいな。乗ったことはないのに」
 勇太:「うるさいな」
 佳子:「今度の帰省の時にでも、乗ってみたら?」
 勇太:「うーん……。でも、僕の趣味にマリアを付き合わせるのは……」
 マリア:「私は別に構わないよ。列車でもバスでも……」
 勇太:「そもそも、帰省できるかどうか分かんないし……」
 イリーナ:「だから、何も心配無いって言ったでしょ?」
 勇太:「前向きに検討します」

 実現できるかどうかは、先行き不透明である。
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“私立探偵 愛原学” 「いきなりの中ボス戦」

2021-12-04 07:54:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月2日11:00.天候:曇 宮城県遠田郡美里町某所 愛原公一の家]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 仙台市内からレンタカーで、同じ宮城県内にある私の伯父の家に向かった。
 だが、その途中……。

 愛原:「ん!?」

 パンパンバンバンと銃声の音が遠くから聞こえた。
 銃声からして、マシンピストルの音のようである。

 愛原:「今、銃声がしたよな!?」
 高橋:「しましたね!」
 愛原:「ここから先は危険かもしれんから、警戒して行くぞ」
 高橋:「はい!」

 私達の車は、林道のような狭い町道に入り、そこから伯父さんの家に向かう。
 と!

 リサ:「人間の血の匂いがする」

 リサは風に乗って漂って来る人間の血の匂いを感じ取った。
 垂れて来る涎を抑えようと必死である。

 愛原:「そこだ!」

 車は元公民館だった伯父さんの家の敷地に入った。

 愛原:「あっ!」

 玄関の前で、誰かが血だらけで死んでいた。
 しかも、その死体に食い付くモノがいる。

 ジョン(ティンダロス):「ガゥゥゥ……!!」

 伯父さんが飼っている柴犬のジョンが、3つ首のティンダロスに変化していた。
 大きさも普通の柴犬から、馬くらいのサイズになっている。

 愛原:「BOWだ!」
 リサ:「ジョン!?どうして!?」

 車を止めて、私達は銃を構えて車から降りる。
 リサも第1形態に変化した。
 よく見ると、死体のそばには銃が落ちている。
 先ほどの銃声は、そこから発せられたものだろう。

 高橋:「先生。やはり、黒幕はあの教授……」
 愛原:「まさか伯父さんが……」
 ジョン:「ガァァァッ!!」

 ジョンは次の獲物を私達に定めると、飛び掛かって来た。
 首が3つもあってバランスが悪そうなのに、動きは俊敏だ。

 愛原:「何て奴だ!狙いが定められない!」
 高橋:「ショットガンが必要でしたか!?」
 愛原:「都合良くあるわけないだろ!」

 私達が持っているのは、ハンドガンとマグナムである。

 リサ:「はーっ!」

 リサは両手の爪を長く鋭く尖らせており、それでジョンに向かって行った。
 リサもBOWの中では動きは素早い方だが、やはり獣のジョンの方が上手である。
 リサの爪は空振りに終わっている。
 当たれば、大きなダメージが与えられると思うのだが……。
 と、それは高橋のマグナムも同じか。
 私達が苦戦している時だった。

 ジョン:「ギャアッ!」

 どこからともなく、何かが飛んで来た。
 そして、それはジョンに突き刺さる。

 愛原:「ボウガンか!?」

 しかも、ただのボウガンではない。
 ピッピッという電子音がしており、その後、爆発した。
 つまり、爆矢である。
 もちろん、それだけで倒せる化け物ではないが、少しダメージを与えたのは事実だ。

 リサ:「今だ!」

 リサは怯んだジョンに対して、鋭い爪で引っ掻き攻撃をした。
 引っ掻かれた所から、大量の血が噴き出す。

 愛原:「高橋、撃て!」
 高橋:「うス!」

 高橋がマグナムを撃ち込む。
 私のハンドガンはパンパンという音だが、大型拳銃たるマグナムの銃声がドゴンドゴンという音だ。
 当然、その威力はハンドガンの比ではない。
 何しろ、あのタイラントに大ダメージを与えることができるくらいだ。
 ……ということは、それすらあまり効かないリサは、本当の化け物なのだろう。
 敵に回さなくて良かった。

 ジョン:「ギャアアアアアッ!!」

 そして、ついにジョンは断末魔を上げて倒れたのである。
 致命傷を受けたジョンは、3つ首のティンダロスから普通の柴犬に戻った。
 もちろん、死んでいたが。

 リサ:「ジョン……。ゴメンね……」

 私は人間の死体の方に駆け寄った。
 うつ伏せで死んでいたので、仰向けにしてみる。
 幸い、顔はそんなに食い荒らされていなかった。

 愛原:「秋葉さん!?」

 それは先日、新宿で会った同業の秋葉氏であった。
 秋葉氏もここを嗅ぎ付け、訪れたのか。
 そして、ティンダロス化したジョンに襲われたか。
 私はスマホを取り出して、善場主任に連絡した。

 愛原:「……というわけです」

 私は状況を説明した。

 善場:「分かりました。すぐにBSAAに出動要請を行います。警察にはこちらから通報しますので、愛原所長は探索を続けてください」
 愛原:「分かりました」
 善場:「愛原公一名誉教授の姿は無いのですね?」
 愛原:「今のところは……」

 これだけの騒ぎで、家の中から出てくる様子は無い。
 家にはいないのかもしれない。

 愛原:「善場主任から、探索を続けるように指示があった」

 私は電話を切ってから高橋達に言った。

 高橋:「この死体は?」
 愛原:「このままにしておけ。後で警察が来る」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「もちろん、BSAAも後で来るそうだ」
 高橋:「それなのに、俺達は先へ進むんですか」
 愛原:「この家のことは、BSAAよりもまだ俺達の方が詳しいからな。露払いシクヨロってところだろう」
 高橋:「了解です」

 私達がそうしている間、リサはジョンの死体から何かを見つけた。

 リサ:「先生、これ……」

 第1形態のままなので、爪はまだ長くて尖っている状態である。
 だが、常識的な長さだ。
 場合によっては、“エルム街の悪夢”のフレディのような爪みたいになる。
 そんなリサが、私に鍵を渡した。

 リサ:「ジョンの腹の中から出て来た」
 愛原:「おー、ありがとう。これは、玄関の鍵だと思う」

 私はこれで玄関のドアを開錠した。

 愛原:「やっぱりだ。防犯の為、玄関の鍵はジョンの犬小屋の中に隠してあるって、前に伯父さんが言ってたからな」

 それをティンダロス化したジョンが飲み込んだのかもしれない。

 愛原:「いきなりの中ボス戦だった。家の中にも、化け物がいるかもしれない。油断しないで行くぞ」
 高橋:「はい」
 リサ:「うん」

 私と高橋は銃を構えながら、リサは爪を立てながら薄暗い家の中に入った。
コメント (2)
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