報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔女達の降霊会」

2021-12-20 20:17:58 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月18日23:00.天候:雪 長野県北部山中 マリアの屋敷東側2Fゲストルーム]

 エレーナ:「よし、皆集まったな?」

 勇太とマリアは、ゲストルームに集まった。
 そこはツインルームであり、エレーナとリリアンヌが泊まる部屋だった。
 ポーリンはイリーナと一緒に、西側のオーナーズルームに宿泊している。

 勇太:「一体、何をしようってんだい?」
 エレーナ:「降霊会をやろうって魂胆だ」
 マリア:「こりゃまたベタなマネを……」
 勇太:「降霊会って、幽霊を呼び寄せるヤツ?」
 リリアンヌ:「フヒヒヒ……。先輩、まるで魔女ですね」
 エレーナ:「魔女だぜ。それも、今回やる降霊会は、ただの降霊会じゃないぜ」
 勇太:「というと?」
 エレーナ:「簡単に言えば、稲生氏の体験発表だ」
 勇太:「体験発表!?まだ、発表できるほどの功徳は無いけど……」
 エレーナ:「違う違う。稲生氏は魔界の出入口に位置した為に、霊現象の多かった高校に通ってただろ?」
 勇太:「東京中央学園か。そうだね」

 マリアが普段着ている緑色のブレザーやグレーのプリーツスカートは、その高校の制服をモチーフとしたものである。
 緑色はマリアの契約悪魔のシンボルカラーである為、ちょうど良かったのだ。

 勇太:「それで?」
 エレーナ:「日本には百物語という儀式があるんだってな」
 勇太:「よく知ってるね!?」
 マリア:「百物語?」
 勇太:「怪談を100話一気に話すんだ。もちろん、何人かで何話かずつ」
 マリア:「そんなに!?」
 勇太:「そう。そして、100本のローソクを用意する。1話話すごとに、ローソクの火を1本ずつ消していく。そして、100話目を話して100本目のローソクを消すと、怪奇現象が起こるというものさ」
 マリア:「それは本当なのか?」
 勇太:「分かんないね。でも、僕の高校はともかく、大学でその実験を行ったゼミがあったんだ」
 マリア:「なに?詳しく」
 勇太:「うん。そのゼミは……」
 エレーナ:「ちょっとタイム!」
 勇太:「何だい?」
 エレーナ:「語り部は稲生氏専門でお願いしたいと思っているんだけど、準備がまだあるから、ちょっと待っててくれだぜ」
 マリア:「話の腰を折るなよ……」
 エレーナ:「トイレ行きたいヤツは今のうちに。それと、喉が疲れると思うから、水かお茶を用意しておくんだぜ。それと……」

 エレーナは小さなグラスに入ったローソクの火を点けた。

 エレーナ:「さすがにローソク100本は用意できないから、これ1本で代用だぜ。心配すんな。別に、最後消したりはしないぜ。そんじゃ……」

 エレーナは照明を消した。
 室内の灯りがローソク一本だけの明かりとなる。

 エレーナ:「それで稲生氏、そのゼミが何だって言うんだぜ?」

 準備が終わってからエレーナが振る。

 勇太:「あ……うん。そのゼミは民俗学を研究するゼミだったんだけど、ある年の夏、百物語について研究することになったんだって。その時のゼミ生の人数は10人。だから、単純計算で1人10話話すことになる」
 エレーナ:「1人で10話なんてキツくね?」
 勇太:「キツいと思う。僕でさえ……5~6話がせいぜいだな。あの東京中央学園に所属していて、毎月のように何らかの現象に見舞われていた僕でさえ、だよ?ましてや、皆が皆、霊感があるわけでもないのに、10話も話せるわけがない。最初はテンポ良く話せていたメンバーも、段々ネタ切れになってしまってね。それでも、何とか100話話し終えて、最後のローソクを消したんだ。その後、何があったと思う?」

 1:何も起こらなかった。
 2:幽霊が現れた。
 3:悪魔が現れた。
 4:殺人鬼が現れた。
 5:そんなことより折伏だ!

 エレーナ:「幽霊が現れたってことにしておきたいぜ」
 マリア:「素人達の集まりだろ?何にも起こらなかったんじゃないか?」
 リリアンヌ:「フフフ……。あ、悪魔が現れたに一票……」
 勇太:「その時は……何も起こらなかったんだ」
 エレーナ:「なーんだ!」
 マリア:「だろうな。そういうものだと思う」
 リリアンヌ:「悪魔は出ませんでしたか……」
 勇太:「で、後日談になるんだけど、ゼミ生達はあの話をもう一度聞き直してみたんだって。話は全部録音していたからね。ところが、だ。怖いのはここから」
 エレーナ:「ん?」
 勇太:「因みに会場は、幽霊が出るという噂の旅館の客室で行われていたんだ。……最後の100話目を誰が話したのか分からなかったそうだ」
 エレーナ:「メンバーに確認したのか?」
 勇太:「したそうだ。そしたら誰もが、『自分は話していない』『聞いていただけだ』と答えた」
 マリア:「誰かが面白がって、ウソついてるんじゃないか?」
 勇太:「普通はそう思うよね。そこで今度は、『100話目はどんな話だったか?』を確認した。ところが、確認した本人も、されたメンバーも内容を覚えていなかったんだ」
 エレーナ:「どういうことだ?」
 勇太:「もっとも、夜通し行われたイベントだ。100話目が終わる頃には、夜明けを迎えようとしていた。だから、メンバーの全員は眠かったし、中には居眠りしている人もいたくらいだから、それも無理は無かったんだと思う。そこでメンバーは、録音した内容を確認することにした。ところが、録音はされているんだけど、声が小さくてよく聞こえない。ボリュームを最大にした時、メンバーは全員が凍り付いた」

〔100話目の語り部:「これは私が昨夜、死んだ時の話なんですがね……」〕

 勇太:「しかも、数を数えてみると、全部で112話もあったんだ!」

〔91話目の語り部:「私はこの旅館に括られている者です。ねぇ皆さん……地縛霊が目の前にいるって、どんな気持ち……?」〕
〔84話目の語り部:「僕は……お母さんを捜してるんだ。ねえ……お母さん……どこ……?」〕
〔74話目の語り部:「功徳を話します。今月から売り始めたワックスが飛ぶように売れて、功徳~~~~~~~!!」〕

 エレーナ:「しれっと幽霊が参加していたんかい!」
 マリア:「その旅館、幽霊が何体いたのやら……」
 リリアンヌ:「フヒヒヒ……。日本のゴースト、侮りがたし……」
 エレーナ:「稲生氏の大学のゼミの話か。しかし、その話は又聞きなんだろう?」
 勇太:「まあね」
 エレーナ:「稲生氏の実体験を聞きたいんだぜ」
 勇太:「うーん……。実体験と言ってもなぁ……。色々とあるからなぁ……」
 エレーナ:「その中でも、飛び切り怖いヤツで頼む」
 勇太:「飛び切り怖いヤツか……」

 勇太は少し思案した。

 勇太:「分かった。じゃあ、話すよ」

 勇太がした話とは、どんなものだったのだろう?
コメント (2)
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