報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「両親の来訪」 2

2021-11-22 20:03:38 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月20日12:15.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 山道を走っていたかと思った車が、突然脇道に入った。
 それは何かの林道のような道であったが、未舗装の道であった。

 稲生宗一郎:「おいおい!どんどん辺鄙な場所に入って行くぞ!?大丈夫か?!」
 稲生佳子:「随分とガダガタの道ねぇ……」
 稲生勇太:「いつもこんなもんだよ」

 そして、車はレンガ造りのトンネルに差し掛かる。
 道自体は1車線しか無いものだったが、トンネルもまたそうだった。
 旧天城トンネルなども石造りのトンネルで、洞内もガス灯を模したナトリウムランプが灯っているが、こちらは洞内には一切照明が無い。
 ロンドンタクシーはトンネルに入ると同時に、ヘッドランプを点灯した。
 ハイビームで前方を照らすが、それでも出口は見えない。

 宗一郎:「随分長いトンネルなんだな?」
 勇太:「若干カーブしているからというのもあるけどね」
 佳子:「何だか気味が悪いわね。こんな所で事故にでも遭ったら大変よ」
 勇太:「大丈夫だよ」

 そう話しているうちに、ふわっと浮くような感覚に襲われる。

 宗一郎:「おわっ、何だ!?」

 急な下り坂に入ったのだ。
 そして、突然目の前が明るくなる。
 出口が見えなかったのは、下にあったからである。
 急坂を降ったら、出口が現れた。
 そして、その出口を出ると……。

 佳子:「わぁ……!立派な御屋敷……!」

 3階建ての洋館が現れた。

 宗一郎:「まるでヨーロッパの貴族の屋敷だ。まさか、ここに?」
 勇太:「そう。ここに住み込みの弟子をやらせてもらってるの」
 佳子:「イリーナ先生がお住まいというのは納得だけど、こんな立派な御屋敷に勇太が住んでご迷惑じゃないの?」
 マリア:「そんなことないですよ」

 車は正面玄関前のロータリーをぐるっと回り込み、エントランス前で止まった。

 マリア:「到着です。お疲れさまでした」
 宗一郎:「本当に、こんな凄い邸宅に滞在させてもらっていいのかい?」
 マリア:「はい。師匠も歓待しております」

 エントランスからメイド服を着たマリアの人形達が数人やってくると、車のドアを開けた。

 勇太:「さあ、降りて降りて」
 ダニエラ:「お帰りなさいませ」
 ミカエラ:「いらっしゃいませ」
 クラリス:「遠路遥々、ようこそお越しくださいました」

 白馬駅では緊張していたマリアだったが、今度は勇太の両親が緊張する番だった。

 宗一郎:「ど、どうも……」

 そして、正面エントランスから中に入る。

 イリーナ:「やあやあ、よく来てくれましたねぇ……」

 イリーナはいつもの服装のままであり、いつもそうしているように、両目を細めて宗一郎達を出迎えた。

 佳子:「お、お世話になります」
 宗一郎:「先生程の御方であれば至極当然でしょうに、しかしあまりにも想定外の大豪邸に、少々緊張しております」
 イリーナ:「そうですねぇ……。今思えば、何もこんなに大きい家建てなくても良かったかなと、少々後悔しておりますのよ」
 勇太:「父さん。この屋敷は、何も先生方が住むだけのものじゃなくて、ダンテ一門が日本で何か儀式を行なおうとする時の拠点でもあるんだ。確かに通常なら、かなり広すぎる屋敷だけど、このキャパが必要な時は必要なんだよ」

 そしてもう1つ。
 魔界王国アルカディアとの出入口にも使用される。

 イリーナ:「勇太君、御両親は長旅でお疲れでしょう。まずは、ゲストルームに御案内致しましょう。そこでゆっくりお寛ぎください」
 宗一郎:「お心遣い、恐れ入ります」
 マリア:「ミカエラ」
 ミカエラ:「かしこまりました」
 佳子:「あら?あなたは、たまにマリアさんと一緒に来る……」
 ミカエラ:「メイド人形のミカエラでございます。求めに応じ、人形形態でも人間形態でも対応させて頂きます」

 現在はメイドの勤めの為、人間形態である。

 ミカエラ:「ご案内させて頂きます。お荷物、お預かり致します」

 ミカエラが両親の荷物をヒョイと両手で持ち上げる。

 勇太:「2階にゲストルームがいくつかあるんだ。そこだよ」
 宗一郎:「そうなのか」

 屋敷の東側2階に向かう。
 因みに勇太の部屋も、この界隈にある。
 ミカエラが持っていた鍵で、とある客室の鍵を開錠した。

 ミカエラ:「こちらでございます」

 中に入ると……。

 勇太:「僕の部屋より立派だ」

 さすがの勇太も、全部の部屋に入ったわけではない。
 勇太の身分は住み込みの弟子であるからして、けしてこの屋敷の管理を任されているわけではないのだ。

 宗一郎:「これはまた立派な部屋だ」
 佳子:「本当ね。クラシカルなデラックスツインって感じね」

 確かに、シティホテルのクラシックな雰囲気をモチーフにした部屋といった感じだった。
 それとて宿泊費はそれなりにするだろうが、さすがにスイートルームほどの部屋ではなかった。

 宗一郎:「こんな感じの部屋、シティホテルで泊まったら一泊数万円もするよ。本当にいいの?」
 マリア:「構いませんよ。気に入ってもらえたようで良かったです」

 しかし、ホッとするマリアの横で勇太がそっと耳打ち。

 勇太:「ホテルモントレの客室デザインを参考にしたって言わなくていいの?」
 マリア:「シッ、黙ってろ!」
 宗一郎:「えっ、何が?」
 マリア:「な、何でもありません!」
 クラリス:「皆様、昼食の用意ができてございます。荷物を置かれましたら、1階の大食堂で御案内させて頂きます」
 宗一郎:「そ、そうか。確かに、先生をお待たせしてはいけないね。佳子、行こう」
 佳子:「ええ」

 勇太達は部屋を出ると、今度は1階西側大食堂へ移動した。

 宗一郎:「こりゃまた大きな食堂だ。まるでバンケットホールみたいだ」
 イリーナ:「さあ、こちらへどうぞ」

 イリーナは最も上座である、長方形のテーブルの短辺部分且つ暖炉の前には座らなかった。
 座ったのは、その横の次席部分。

 宗一郎:「他に、どなたかいらっしゃるのですか?」

 宗一郎は空席となっている上座を見て言った。

 イリーナ:「恐らく本日は空席のままでしょう」
 宗一郎:「本日『は』?」
 イリーナ:「私はこの屋敷を預かっているだけに過ぎません。この屋敷の本当のオーナーは別にいるのです。言わば、私は表向きのオーナーなのです」
 勇太:「その席は大師匠様の御席なんだよ。ダンテ流魔法門の創始者、ダンテ・アリギエーリ様は、イリーナ先生の先生なんだ。僕達は孫弟子ということになる」
 宗一郎:「イリーナ先生でさえ凄い御方なのに、その御師匠様がいらっしゃるとは……」
 イリーナ:「私は1期生の中でも落ち零れでして、よくダンテ先生からは『お説教』されてますの。1期生の中では、『最も説教されている者』として有名だったりしますわ」
 宗一郎:「そ、そんな御謙遜を……」
 佳子:「そうですよ。うちの勇太や、マリアさんという御弟子さんを抱えていらっしゃるではありませんか」
 イリーナ:「『お前もいい歳だし、いつまでも自由気ままにやるんでなくて、弟子の1人や2人くらい取れ』と尻を叩かれまして……」
 宗一郎:「あ、はは……。そ、それはそれは……」
 イリーナ:「それより、昼食にしましょう」

 こうして、まずは昼食会が始まった。
コメント (7)
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“愛原リサの日常” 「鬼の見た夢」

2021-11-22 15:53:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日06:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 ホテルグリーンウエル4F客室]

 枕が変わったことで、リサは変な夢を見た。
 かつて日本アンブレラの研究所に閉じ込められていた時の事だ。
 キツキツのスクール水着を着せられ、実験動物としてのホオジロザメと戦闘実験をさせられたり、水着を破られて全裸になった所でプールに電気を流されて、それにどれくらい耐えられるかの実験をさせられたりした。

 リサ:(それと比べたら、ここは天国……)

 リサは大きな欠伸をして、スマホのアラームを止めた。
 部屋備え付けのワンピースタイプの寝巻を着ている。
 裾が大きく捲れて、白いショーツが丸見えになっていた。
 もちろん、今はこの部屋に1人だけなので、全く気にしない。
 リサは起き上がると、着ていた寝巻を脱ぎ捨て、ショーツ1枚の状態でバスルームに入った。
 LINEの通知音がベッドから聞こえて来たが、恐らく斉藤絵恋からのものだと思い、そのままスルーして顔を洗い始めた。

[同日07:00.天候:晴 同ホテル B1Fレストラン]

 昨日とは違うTシャツを着る。
 昨日と違って、黒いTシャツである。
 前面に、“Biohazard”のロゴマークが入っている。
 これは、リサがBOWとしての気合を入れる時に着ることが多い。
 愛原や高橋と合流して、朝食会場に行った。

 愛原:「朝食はパンとゆで卵が食べ放題か。なるほど」
 高橋:「先生、あっちにドリンクバーありますよ?」
 愛原:「よし。モーニングコーヒーと行くか」
 リサ:「食べ物……パンとゆで卵だけ……?」
 愛原:「食べ物はそうだな」
 リサ:「もっと食べたい……」
 愛原:「パンとゆで卵を食べればいいだろ」
 高橋:「昨夜、あんなに食っといて、もう腹減ったのかよ」
 リサ:「夕食と夜食は別腹。朝食はもっと別腹」

 リサは箱に入っているパンをまるっと取ろうとした。

 愛原:「チッチッチッ」

 愛原がリサの腕を掴んで、右手の人差し指を振る。

 リサ:「それじゃあ……」

 リサは箱に入っているゆで卵をまるっと取ろうとした。

 高橋:「チッチッチッ」

 高橋がリサの腕を掴んで、右手の人差し指を振る。

 リサ:「食べ放題じゃないじゃん!」

 リサ、瞳を金色に光らせ、口から牙を覗かせた。
 もっとも、牙に関しては、まだマスクをしているので傍目には分からない。

 愛原:「まあまあ。腹8分目って言うだろ」
 リサ:「こんなんじゃ、すぐにお腹空いちゃうよぉ……」

 リサはそれでも食パンやロールパンを二桁枚数に達するほど食べ、ゆで卵も10個くらい食べたという。

 愛原:「すげぇ……」

[同日07:30.天候:晴 同ホテル4F客室]

 愛原:「8時になったら出発だから」

 愛原にそう言われて、リサは一旦自分の部屋に戻った。
 パーカーを羽織る為、荷物の中からグレーのパーカーを取り出す。
 フードが付いているので、角が生えた時や耳の形が変化した時は被って隠す。

 リサ:「う……」

 リサに便意が訪れた。
 別に腹を壊した感じではなく、ただの生理現象である。
 先ほどの朝食がきっかけとなって、消化器官が元気良く稼働しているようである。
 だが、リサはトイレに行こうとしなかった。

 リサ:「ここで出したら、またお腹空いちゃう。昼食まで愛原先生から断食命令出ちゃってるから……」

 そんな短いスパンを断食というのは、大きな間違いであろう。
 だが、ますますリサの腹からはトイレを促す警報音が鳴り響いた。

 リサ:「思い出すな……」

 リサは研究所で受けさせられた過酷な実験を思い出した。
 人間に対して行えば、間違いなく人権無視の非人道的なものとして糾弾されること請け合いである。
 しかしリサ達はBOW(生物兵器)であり、人間ではないから人権は無いという理屈で、メチャクチャな実験であった。
 500ml浣腸され、どのくらい耐えられるかというもの。
 当然、人間から改造されたリサ・トレヴァー達は、全員が脱糞した。
 『2番』のリサもその1人であった。
 後になってリサは、その研究員を捕まえて重傷を負わせた。
 しかし、とどめを刺したのは、他のリサ・トレヴァーだった。
 なので、『2番』のリサは傷害の経験はあっても、殺人や食人の経験は無い。

 リサ:「うっ……くっ……!ダメ……!漏れそう……!」

 リサは無念の思いで、トイレに行った。

 リサ:「あはぁ……!」

 トイレが詰まるのではないかというほど、腹の中から中身が出た。
 だが、その快感は性感を刺激されたみたいであった。
 しかし、その次には絶望が訪れた。
 これで昼食まで、また空腹を耐えなければならないのだ。
 自分もまた、常に食欲に駆られる化け物に過ぎないのだと思い知らされることになる。

 リサ:「……やっぱり化け物なんだ……わたし……」

 リサは長く尖った両手の爪を見て、自己嫌悪の思いで呟いた。

[同日08:17.天候:晴 同ホテル→仙台市地下鉄仙台駅]

 ホテルをチェックアウトしたリサ達は、地下鉄の駅へと向かった。

 リサ:「え……地下鉄で行くの?」
 愛原:「そう。なるべく高速道路の近くがいいだろうと思って、地下鉄で移動するよ。なぁに、泉中央駅からはすぐだから」
 リサ:「地下の薄暗い所、やだな……」
 愛原:「まあまあ。市街地部分だけは我慢してよ」
 リサ:「市街地部分?」
 愛原:「ここの地下鉄は、郊外に出ると地上に出るんだよ。終点までずっと地下というわけじゃない」
 リサ:「そう、なんだ……」

 但し、東西線の東部を覗く。

 愛原:「だから、ちょっとの間、我慢してくれよ?」
 リサ:「でも、気を張り詰めると、お腹空いちゃうし……。さっきもね、いっぱい出ちゃったの」

 リサは腹をさする仕草をした。

 愛原:「腹壊したのか?」
 リサ:「そうじゃない。ただのお通じ。でも私、いっぱい出しちゃうと、その分お腹空いちゃうの。我慢したけど、我慢できなかった」
 愛原:「食べた分、ちゃんと出るなんて、健康的じゃないか!」

 愛原はリサの肩を叩いた。

 リサ:「え……?」
 愛原:「それでいいんだよ。だからリサの肌、つやつやなんだな?若いだけじゃないんだ」
 リサ:「そ、そう?」
 愛原:「別に、おやつくらい食べていいよ」
 リサ:「ほんと!?」

 リサはパッと顔を明るくした。

 愛原:「それでいいか?」
 リサ:「うん!」

 リサは断食から解放されたことに安心した。
 ……のか、今度は空腹を知らせるアラームが腹から鳴った。

 高橋:「早ェだろ!」
 リサ:「……ごめんなさい」

 リサもさすがにこれはそうだと思い、素直に謝った。

 愛原:「駅の中で、食べ物くらい買えるだろ。とにかく、早く行こう」

 リサ達は地下鉄の入口から駅の中に入って行った。
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