報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夢に閉じ込められた愛原」

2021-11-09 19:51:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 天候:風雨 場所:不明だが、何かの大型船内]

 こ、ここはどこだ……?
 船の中……?
 船は大きく揺れている。
 薄暗い船室だ。
 とにかく、外に出なければ……。
 私は起き上がると、部屋のドアを開けようとした。
 だが、開かない。
 どうやら、4桁のナンバーロック式の鍵になっていて、番号を合わせないと開かないようだ。
 ドアノブの下には、メモ書きが貼られていた。

 『大石寺の番地』

 愛原:「な、何だこりゃ……?」

 その時、丸窓の外からバシャーッという水の音がした。
 まるで、外からバケツ一杯の水を思いっ切りブッ掛けられたかのようだ。
 外は嵐だった。
 それで船が大きく揺れているのだ。
 小型船なら、ひとたまりも無い中をこの大型船は航行を続けている。
 船室にいた方が安全なのかもしれないし、実は甲板で既に避難が開始されているのかもしれない。
 とにかく、船員を捕まえて何が起きているのか聞いた方がいいだろう。
 私は船室内を探し回った。
 どうして私はここにいるだろう?
 それ以前に、ここは私の船室なのだろうか?
 テーブルの下に散乱した書類には、『夏期講習のお知らせ』とか書いてあった。
 そして、そこには大石寺の住所が。

 愛原:「富士宮市上条2057か。これだ!」

 私は4桁のシリンダーを回した。
 すると、カチッという開錠音が聞こえた。

 愛原:「よし!」

 私がドアを開けた時だった。

 乗客A:「火事だ!爆発だ!」
 乗客B:「逃げろーっ!」

 船室前の廊下が大騒ぎになっていた。
 乗客と思しき人達が何人も、私の前を右から左へと走って行く。
 そして、ボンッという音と共に、右側の廊下の奥で爆発が起き、そこから炎が見えた。
 火事か?!
 こりゃまずい!
 私も他の乗客と共に、左方向へと逃げた。

 ゾンビA:「アァア……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」

 途中の船室のドアから、それを開けてゾンビ化した乗客達が襲って来る。
 バイオハザードが起きていたのか!?
 私はゾンビ達の攻撃を交わした。
 ゾンビ達は足を引きずったり、酔っ払いの千鳥足のような感じで私を追って来る。
 もちろん、そんな足取りでは速く追い掛けることはできない。
 私は彼らを振り切ると、廊下の角を曲がった。

 愛原:「あっ!?」

 しかし、そこは行き止まりになっていた。
 厳密に言えば行き止まりではないのだが、エレベーターがあった。
 豪華客船よろしく、シックな装飾が施されたドアがある。
 今、船内は非常事態だろうに、エレベーターなんて動いているのだろうか。
 私が呼び出しボタンを押すと、ランプが点いた。
 しかし、すぐにドアは開かない。

 ゾンビA:「アァア……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」
 ゾンビC:「ゥアアッ……!」

 ゾンビ達は動きは遅いながらも、私を追いかけて来た。
 しかも、何か増えている。
 更に言えば、今の私は丸腰だ。
 とてもじゃないが、今の状態ではゾンビと戦えそうにない。
 早く……!早く来てくれ!
 エレベーターにはインジゲーターが無いので、カゴが今どこにいるのかは分からない。
 ボタンを押したらランプが点いたので、動いてはいるようだが……。

 チーン!

 おおっ、やった!
 ようやくやってきたのか、古めかしいチンベルが鳴ってドアが開いた。
 まるで、仏壇の鈴のような音色だ。
 幸いエレベーターには、誰も乗っていなかった。
 どこへ行けばいいのか分からないが、上に行けばいいだろうか?
 どっちみち、船橋(ブリッジ)とかは上にあるだろうし、船が沈没する時、船底から水が溜まる。
 うん、上に行くのがいいだろう。
 私は最上階のボタンを押した。

 愛原:「!?」

 そして、『閉』のボタンを押そうとした時、ゾンビ達の集団の先頭に目をやった。
 そこで私は固まった。
 先頭にいたのは……。

 愛原ゾンビ:「アァア……!」

 え……?何で……?
 何で私がいるの……?
 え?ドッペルゲンガー???
 そ、それとも、私のそっくりさん?

 ブーッ!

 まるで私の予想がハズレであるかのように、ブザーが鳴ってドアが閉まった。
 ドアが閉まると同時に、ゾンビ達が外側のドアに辿り着き、バンバン叩いて喚いている。
 しかし、エレベーターが上に動くと、そんな喚き声も聞こえなくなっていった。
 よし、何とかこれで逃げ切ったぞ。
 問題は上に着いてからだ。
 上が安心安全であることの保証なんて、どこにも無いからな。
 案外、下よりも危険だったりして。
 そんなことを考えていた時だった。

 ドォーン!

 愛原:「うわっ!?」

 突然、何かが爆発するような音がして、エレベーターが大きく揺れた。
 しかもその衝撃でエレベーターが止まってしまった。
 お、おい!冗談じゃないぞ!こんな所で止まるなんて!
 私が非常ボタンを押しても、何の反応も無い。
 『開』のボタンや他の階のボタンを押しても、うんともすんとも言わない。
 そうこうしているうちに、もう一度爆発が起きた。

 愛原:「わあっ!?」

 そして、その爆発の衝撃のせいか、今度はカゴ内が停電してしまった。
 次に、今度はエレベーターが下に落ちて行く。

 愛原:「や、やばい!!」

 これはロープが切れたか何かして、最下部まで落下するパターンだ!
 私はジャンプして、落下の衝撃に備えた。
 そして、ジャンプした瞬間、エレベーターは最下部まで落ちた。
 た、助かったか……?

 愛原:「お、これは?」

 落ちた時のショックのせいか、ドアが少しだけ開いた。
 その隙間から、明かりが漏れてくる。
 だが、ただの明かりではないようだ。
 オレンジ色の光だが、何となく熱くて焦げ臭い。
 そうだった!
 船内は火事を起こしているのだった。
 船底に落ちたのかもしれないが、急いで脱出しないと、ここで焼け死んでしまう。
 私はドアをこじ開けた。

 愛原:「ん!?」

 だが、おかしいことに気づいた。
 エレベーターのドアは内側(カゴ側)と外側(フロア側)に分かれている。
 で、どちらも引き戸のはずだ。
 内側のドアは確かに両開きの引き戸だったが、外側のドアは更に外側に開けるタイプのドアだったのだ。
 こ、これはあれだろうか?
 最下層のフロアどころか、更に下の機械室まで落ちたということなのだろうか?
 その割には何だか古めかしい木製のドアだ。
 私がそれを開けると、とんでもない光景が広がっていた。
 それは……。
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“愛原リサの日常” 「都心のバイオハザード」

2021-11-09 11:07:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月20日01:30.天候:晴 東京都江東区白河 地下鉄清澄白河駅]

 まだテレビクルーは到着していないが、たまたまテレビ局の記者が駅にいた為、その記者は手持ちのスマホで動画撮影をしながらリポートをしている。

 テレビ記者:「私は今、地下鉄の清澄白河駅前にいます。私は、たまたま都営地下鉄大江戸線の最終電車で帰宅したところです。私は先頭車に乗っていたのですが、最後尾の車両で、乗客達が暴れ出し、駅員達に襲い掛かったというのです。その様子は、さながら○×県霧生市等で起こったバイオハザード事件に酷似していることから、車内にゾンビウィルスが撒かれたものと思われます。今、駅は完全に閉鎖され、警視庁の機動隊が辺りを封鎖しており……」
 機動隊員A:「はい、危ないから下がって!」
 軌道隊員B:「封鎖域を拡大します!離れてください!」
 テレビ記者:「えー、たった今、封鎖区域が拡大されました。警察の話によりますと、まもなく現場にはBSAA、国連組織の1つであります対バイオテロ特殊部隊が到着する見込みです。対バイオテロ組織としましては、民間レベルでは最大の組織“ブルーアンブレラ”が存在しますが、日本国内での活動が認められていない為、BSAAのみとなります。この為……あっ、えー!御覧頂けますでしょうか?駅のシャッターが一部開けられ、そこから突入した機動隊員に護衛されながら、救急隊員が出てきました。どうやら、まだ中に生存者がいたもようです。ここから生存者の様子は分かりませんが、ストレッチャーに乗せて救急隊員が駅構内から出てくる様子は分かります。今のところ生死は分かりませんが、駅構内に取り残されていたと思われる人が救助されたもようです。……あっ、現場にヘリコプターが到着しました!どうやら、BSAAが到着したもようです!BSAA極東支部日本地区本部の部隊と思われます。ヘリで現場に到着し、そこからロープを使って次々と降下して来ます」

[同日03:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション→愛原学探偵事務所]

 リサは高橋と一緒にマンションを出ると、まずは事務所に向かった。
 事務所の駐車場に止めてある車を使う為だ。
 高橋が運転席に乗り込み、車を出そうとした時だった。

 リサ:「あっ!鬼斬りの栗原センパイ!」
 高橋:「なにっ!?」
 リサ:「栗原センパイ!」

 リサが声を掛けると、栗原蓮華が駆け寄ってきた。

 蓮華:「やっぱり愛原先生に何かあったの!?」
 リサ:「やっぱりって……」
 高橋:「何か知ってるみてぇだな?先生がバイオテロに巻き込まれて、意識不明の重体だ。これから、病院に向かうところだ」
 蓮華:「やっぱり、あの鬼が……」
 高橋:「知ってるんだったら、善場の姉ちゃんに話してやれ」
 リサ:「善場さんも病院に行くから、一緒に行こう!」
 蓮華:「分かった」

 蓮華は高橋にスライドドアを開けてもらい、そこからリアシートに乗り込んだ。
 そして、やっと病院に向けて出発する。

 リサ:「一体、何があったの?」
 蓮華:「森下駅の近くで鬼を発見したので、斬り捨てた。だけど、その鬼は453番で、私達の捜している鬼じゃなかった」
 高橋:「オマエの言う『鬼』とは、リサ・トレヴァーのことだな。そいつが現れたのか?」
 蓮華:「ええ」
 リサ:「453番ってことは、完全に亜種だね。ただ単にウィルスばら撒くことしか能の無いヤツ」

 亜種には3ケタの番号を付けるようである。

 高橋:「そいつが先生の電車を襲った犯人か!?」
 蓮華:「分からないけど、鬼なんてそうそういないはずだからね」
 リサ:「だけど、亜種とかは誰かの命令が無いとウィルスをばら撒いたりしないはずだよ。誰が命令したんだろう?」
 高橋:「白井とか、ヴェルトロの奴らか?」
 リサ:「……なるほど」

 リサの発言からして、『最も危険な12人の巫女たち』の1人であるリサは、命令無しでウィルスをばら撒くことができるということになる。
 が、愛原の手前、そのようなことはしないだけのことだ。
 但し、学校では【お察しください】。

 蓮華:「愛原先生はどこの病院なの?」
 高橋:「豊洲の病院だってよ。いくら現場が江東区で、搬送先も江東区内とはいえ、ちょっと遠いぜ」
 蓮華:「江東区は東京23区でも大きい方だからね」
 リサ:「でも、バス1本で行ける」
 蓮華:「ああ。とうきょうスカイツリー駅前から出てる都バスか。だったら、私もお見舞いに行けるかも」

 業10系統のこと。
 蓮華の家の最寄り駅の本所吾妻橋駅の近くを通り、菊川駅前を通り、豊洲駅前を通って、終点の新橋へ至る。

 高橋:「今はコロナで、面会が制限されてるだろ」
 蓮華:「そうかぁ……」

 テレビでは特番で清澄白河駅でのもようを中継で放送しているが、走行中はカーナビ画面に切り替わるので、音声だけである。
 どうやら、BSAAが突入し、構内を徘徊しているゾンビ達の掃討作戦を行っているもようだ。
 今は粗方倒し、取り残された生存者がいないかを確認しているらしい。

 高橋:「駅の方はBSAAに任しときゃいいだろ。俺達は先生の心配だ」
 リサ:「そうだね。……センパイが捜してるリサ・トレヴァーって、あれ?親戚の強い人がやられたっていう……」
 蓮華:「そう。何だか、おかしいことになっててね。最も危険な鬼の生き残りは、あなた1人だけのはずでしょう?」
 リサ:「そうだけど……。強いて言えば、善場さんもそうだけど、あの人は人間に戻ったからなぁ……」
 蓮華:「もう1人いるらしいのよ」
 リサ:「ええっ?」
 高橋:「あぁ!?何だ?『13番』でもいるのか?」
 蓮華:「番号までは分かんないけどね」
 リサ:「でも、そんな話は聞いたことがある。私はそれが『0番』だと思ってたんだけど……」
 高橋:「俺達、最初そう思ってたんだよな。だけど実際フタ開けてみたら、その『0番』は善場の姉ちゃんだったっていうオチだった」
 リサ:「一体、どういうことなんだろうね?」
 高橋:「もしかしたら、姉ちゃんに聞けば何か分かるかもな」

 高橋は車を豊洲に向けて走らせた。
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