報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「両親の来訪」 3

2021-11-29 20:00:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月20日14:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 稲生勇太:「ここが図書室でーす」

 昼食を終えたマリア達は、勇太の両親を連れて館内を案内することにした。

 マリア:「2階がメインですが、吹き抜けの3階まである2層構造です」
 稲生宗一郎:「凄い。大学の図書室もかくやと言った感じだ」
 稲生佳子:「こんな難しい本をマリアさんは読んでらっしゃるの?」
 マリア:「いいえ。さすがに私もここにあるものは、全部読めません。閲覧はできますが、どちらかというと預かり物の本が多いんです」
 佳子:「そうなの」
 宗一郎:「お、これは知ってる。ダンテの『神曲』じゃないか。……おお!日本語版もあるぞ!」
 マリア:「それは私達にとっての教科書です。全世界の言語に翻訳された本が蔵書されています」
 宗一郎:「それは凄い。どうしてこれが教科書なの?」
 マリア:「魔法門の創始者である大師匠様が創られた呪文が書かれているからです。『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ』が代表例ですね」
 佳子:「何か、棚が鍵付きの蓋で覆われている部分があるけど、勝手に本が取り出せないように?」
 マリア:「そうです。あまりにも貴重なので、閲覧すらできないものもありますので」
 宗一郎:「そういうのは普通、書庫とかに保存しておくものなんじゃないの?」
 マリア:「いえ。あくまでも、私達では閲覧が許可されていないからであって、そうでない人もいますので」
 宗一郎:「ふーん……」
 稲生:(開いた途端、牙を剥き出しにして襲って来る“魔物の本”があるからとは言えない……)

 魔法使いの家などに、たまに蔵書されている呪いの本のことである。
 この屋敷の図書館では、だいたい本棚1つにつき、1~2冊はそのような呪いの本が収まっている。
 それを取り出せないように、鍵付きの蓋で覆っているのだ。

 宗一郎:「これらの本を整理するのも大変だね」
 マリア:「組によっては、入門直後、本の整理をすることからやらされる所あります」

 主に学歴の低い状態で入門した者など。
 ポーリン組のエレーナやリリアンヌなどが良い例。
 マリアは実質的に高校を卒業しているのと、勇太は文句無しの大卒である為、イリーナ組では本の整理は本当に散らかった時にやる程度であった。

 宗一郎:「そうなのか」
 勇太:「それじゃ、次に行こう」

 次に向かったのは地下のプール。

 勇太:「地下のプールでございます!」
 宗一郎:「プールまであるんて……!」
 佳子:「でも、少し薄暗くない?何だかナイトプールみたい」
 マリア:「もう少し明るくすることはできるんですよ。ただ、今は誰も泳いでいないので」
 宗一郎:「それもそうか。凄いね。プールまであるなんて。これは運動の為かい?」
 マリア:「そうですね。私達、魔法使いはどうしても頭を使う作業ばかりで、体力の方はどうしても落ちてしまうので。それとこれは、師匠が特別に造ってくれたものなんです」
 佳子:「イリーナ先生が?」
 マリア:「私、元々泳げなかったんです。昔、イジメの被害を受けていたトラウマで、水が怖くて……。そしたら師匠が、『魔法使いに弱点があってはならない』ということで、このプールで泳げるようになる特訓をすることになったんです。教えてくれたのは、勇太でした」
 宗一郎:「ほお、うちの勇太が……」
 佳子:「小学校の頃、スイミングスクールに通わせといて良かったわね」
 勇太:「学校の授業では困らなかったね。それだけで十分だと思ってたんだけど、まさかここで役に立つとは……」
 宗一郎:「まず、水への恐怖を克服することに慣れて、泳げるようになるまで、相当御苦労されたでしょう?」
 マリア:「はい。それはもう……」

 マリアはそう答えると、勇太へそっと耳打ち。

 マリア:「そういえば、わざとワンサイズ小さいスクール水着を着せやがったお仕置き、まだしてなかったね?」

 と、低い声で言った。

 勇太:「そ、それは許して~」
 宗一郎:「ん、何だい?」
 マリア:「何でもありません。とにかく、今は勇太のおかげで、素潜りまでできるようになりました」
 宗一郎:「それは凄いね。これで弱点が克服できたってわけだ」
 マリア:「はい。そういうことです」
 佳子:「大きなお屋敷で、何でも揃ってるのねぇ……」
 勇太:「そうだよ。それじゃ、お次は……」

 次は1階の西側、大食堂とは裏手の部屋に向かう。

 勇太:「ここはプレイルームです」

 ちょっとしたバーカウンターにビリヤード台、ダーツに、ブラックジャックやポーカーなどを行うトランプ台があった。

 勇太:「ちょっと気分転換したい時はここね」
 宗一郎:「なるほど」
 勇太:「お次は……」
 宗一郎:「待った待った。さすがに疲れたよ。まさか、こんなに広い屋敷とは……」
 佳子:「そうね。あなた達が修行している所とか無いの?」
 勇太:「基本的に土日は休みなんだよ」
 マリア:「(祝日は別だけど、師匠が面倒臭い時は『日本では休みだから』なんて理由で自習にしてたりとか……)ティールームに御案内します」

 マリアは稲生家の面々を先導した。
 ティールームは2階にある。

 宗一郎:「イリーナ先生はどちらに?」
 マリア:「恐らく、先生の部屋にいると思います」

 図面上は書斎ということになっているが、本棚の裏にベッドを隠してる辺り、イリーナの仮眠室だとマリアは勝手に思っている。

 マリア:「こちらです」
 宗一郎:「ほうほう」

 火の点いていない暖炉があり、1人掛けのソファが4つ、向かい合わせに置かれていた。
 この部屋にも仕掛けが隠されているのだが、当然今は作動しない。
 実は暖炉の中に仕掛けがあるのだが、勇太はチラッと見ただけだった。
 この広い屋敷、勇太でも、たまにどの部屋にどんな仕掛けがあるのか忘れることがある。
 即死トラップとかは作動しないようになっているのだが、それでもダミーは作動するので、たまにびっくりさせられることがあるる。

 マリア:「お茶とお菓子を持って来て」
 クラリス:「かしこまりました」

 マリアはメイド人形のクラリスに命じた。

 宗一郎:「何人のメイドさんが働いてるんですか?」
 マリア:「そうですね……。必要な時に稼働させるので、定数は言えないんですけど……。まあ、Maxで20~30人くらいかと……」
 宗一郎:「どこの王城ですか」
 マリア:「私が造った人形に、『魔法の糸』を通して、操り人形として稼働させるので、本物の人間のメイドを使うより気軽なんですよ」
 宗一郎:「それは便利なものだ」
 マリア:「勇太にも、1体専属で稼働させています」
 ダニエラ:「マリアンナ様の忠実なる人形、ダニエラでございます。今は勇太様の専属メイドとして、自主的に働かせて頂いております」
 宗一郎:「うぉっ!?いつの間に!?」
 佳子:「な、何だか威圧感が凄いわねぇ……」
 ダニエラ:「よく言われます。単なる身の回りの御世話係だけでなく、身辺警備もさせて頂いておりますので」
 勇太:(そして、僕の脱走防止の為の監視……)

 ダンテ一門でも、組によっては厳しい修行についていけず、脱落する新弟子が少なからず存在する。
 破門者はもちろん、脱走者を出すことは、師匠の恥とされている。
 しかも弟妹弟子が脱走した場合、責任は兄姉弟子も負うことになる為、勇太の入門当時は大変だった。
 即死トラップはさすがに停止されていたものの、ダニエラのみならず、他のメイド人形達が夜通し、勇太の部屋の周辺を監視していたものである。

 宗一郎:「そうだ。もし良かったらなんだけど……」
 マリア:「何でしょう?」
 宗一郎:「マリアさんの人形作りの部屋とかも、見せてもらえないかな?」
 マリア:「いいですよ。といっても、見た目は普通の人形作りの工房ですけど……」

 そして、そこが実質的なマリアの私室である。
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