報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の転院」

2021-11-12 19:58:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月23日10:00.天候:曇 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター地下医療施設]

 今朝の朝食はスプーンとフォークで食事ができた。
 筋力は少しずつ戻りつつある。
 早いとこ、手足の感覚を取り戻して、ちゃんとした固形食が食べたいものだ。
 もっとも、今日からスプーンとフォークが使えるようになったわけだし、消化器系などの病気で療養しているわけではないので、スプーンとフォークで完結できる固形食なら食べれるだろう。
 事実、今朝の朝食は、普通の食パン(マーマレード付き)とコーンスープ、カットフルーツにヨーグルトが出された。
 その後はここを出る為に、医師の診察を受ける。
 筋力以外は、特に異常は無かった。
 移動も今は車椅子となっている。
 ここに来たばっかりの時は、ベッドで移動する有り様だったというのに。

 善場:「おはようございます、愛原所長。お体の具合は如何ですか?」
 愛原:「とてもいいです。ただ、今だに筋力が戻ってなくて……」
 善場:「新たな転院先が見つかりましたので、今から移動します」
 愛原:「もう準備はできてますよ?それで、高橋達は?」
 善場:「もうすぐここに……」
 高橋:「先生ぇぇぇぇっ!!」
 リサ:「先生ぇぇぇぇっ!!」

 ん?おかしいな?
 BOWが1人増えてね?

 高橋:「御無事で良かったっス!」
 リサ:「先生!会いたかったよォ!!」

 リサは隠すことなく、第一形態になっていた。
 高橋は凄まじい迫力だったので、BOWに見えてしまったようだ。

 愛原:「あ、ありがとう……」
 高橋:「先生、俺が車椅子押します!」
 リサ:「先生、私が先生を担いであげるねぇ!」
 高橋:「だったら俺はおんぶだ!」
 リサ:「私はお姫様抱っこ!」
 愛原:「あー、もううるせぇ!」
 善場:「静かにしなさい!」
 高橋:「サーセン……」
 リサ:「はぁい……」
 愛原:「夢じゃない……んだな?」
 善場:「現実で間違いないですよ」
 愛原:「先生、ガチのリアルです!」
 リサ:「そう!ざっつらいと!」
 善場:「すぐに退所の手続きをしますので、所長は車椅子へ」
 高橋:「先生、俺が肩貸します!」
 リサ:「じゃあ私、胸貸します」
 高橋:「無ェ胸貸せねーだろ!w」
 リサ:「じゃあ、触手貸す!」
 愛原:「肩だけでいいから」

 私は高橋に肩を貸してもらい、ベッドから車椅子へと移動した。

 リサ:「これでも少し大きくなったのに……ブツブツ……」
 愛原:「確かに少し大きくなったな」
 リサ:「そうなの!ブラのサイズが合わなくなったから、先生が入院している間に買い替えたんだよ!」

 リサは制服を着ていたが、まだ9月ということもあり、夏服だった。
 リサはブラウスの第2ボタンも外して、私にブラを見せようとした。

 善場:「はしたないからやめなさい」
 リサ:「……はーい」

 さすがのリサも、『先輩』リサ・トレヴァーの指示には従わざるを得ない。

 愛原:「サイズ、Aカップだっただろ?Bになったってことか?」
 リサ:「そう!これでも少しずつ大きくなってるからね!」

 たった1ヶ月の間だけなのだが、背も心なしか伸びているような気がする。

 愛原:「そうか……」
 善場:「愛原所長、これを……」
 愛原:「何だい?」
 善場:「サングラスです。所長、外に出るのも1ヶ月ぶりですよね?恐らく、目も紫外線慣れしていないと思うので……」
 愛原:「なるほど、そうか」

 私はサングラスを掛けた。

 高橋:「先生!ダンディっスよ!」
 リサ:「まるで、先生がボスみたい」
 愛原:「そ、そうなのか……」

 仕事でサングラスを掛けないわけではない。
 ただ、ここ最近は掛けることはないな。
 さすがに、松田優作みたいな恰好はしないよ?
 こうして、私は暫くぶりに地上に出た。

 愛原:「うおっ、まぶしっ!」

 外は曇っていたのだが、それでもサングラス越しに紫外線を感じると、私は目を細めた。

 リサ:「どう?私の気持ち、少しは分かる?私は地下の研究所に何年も閉じ込められていたんだよ?」
 愛原:「そ、そうだよな!大変だったな」
 善場:「もしも悪さをしたりしたら、また薄暗い地下研究所に逆戻りだからね?」
 リサ:「わ、分かった。いいコにする……」

 地上の駐車場では、1台のミニバンが停車していた。
 善場主任の部下と思しき人がハッチを開けて、中からスロープを引き出す。
 いわゆる、ユニバーサルデザインタクシーになっていた。
 私は部下の人に車に乗せてもらった。
 このままで、車椅子はベルトに固定される。

 善場:「荷物は横に乗せてください」
 高橋:「分かった」

 高橋とリサはリアシートに座る。
 部下の人はスロープを収納すると、ハッチを閉めた。

 愛原:「どこの病院に転院するんですか?」
 善場:「八王子の病院です」
 愛原:「八王子。さすがに、都心ではないか……」
 善場:「そうですね。BSAAなどがうるさいもので……。しかしリハビリが終われば、もう口出しはさせませんから、そのまま帰宅できるはずですよ」
 愛原:「なるほど」

 車が出発した。
 やはりというべきか、出る時は守衛所のある正門から出る。
 そこから退構手続きをして、ようやく外に出ることとなる。

 愛原:「俺が夢の中を駆けずり回っている間、何か進展はあったのか?」
 高橋:「まあ、そうっスね。色々とありました」
 愛原:「色々とあった?」
 高橋:「そうっスね。まず、斉藤社長が書類送検されました」
 愛原:「書類送検!?」
 善場:「リサの寄生虫を勝手に採取し、それを新薬開発に使っていたことを突き止めました。本当はこのまま逮捕して起訴処分としたかったのですが、まあ、向こうも狡猾なもので、腕の立つ弁護士を用意しましてですね……。まあ、結局は書類送検に収まったというわけです」
 高橋:「先生、斉藤社長んちの1階のトイレのことですよ」
 愛原:「ああ!」
 善場:「結局は愛原所長達の画像で、何とかなりました。あとは証拠隠滅に協力した工事会社を、家宅捜索したりしましてですね……」

 工事会社も、とんだとばっちりだっただろう。

 リサ:「新しい薬ができる前に、善場さん達がサイトーのお父さんを捕まえたから」

 新しい薬ができて、それが出回ってウハウハしたら逮捕だったのだろう。
 警察によってはわざとそこまで泳がせて逮捕するところまでやるだろうが、善場主任達の機関ではそこまではしなかったようだ。
 本当に斉藤社長を社会的に抹殺したいわけではないようだ。

 愛原:「あとは?」
 リサ:「『12番』が新しくできたことが分かった」
 愛原:「『12番』?」
 善場:「私の後釜です。私が『0番』になったことで、『12番』は欠番になったはずですが、白井は新たに造ったようです」
 愛原:「新たに造るなよぉぉぉ!そう簡単に造るなよぉぉ!」
 善場:「ただ、詳細は分かりません。もしかすると、それまでのリサ・トレヴァーですら無いのかもしれません」
 愛原:「エブリンみたいに、特異菌?」
 善場:「かもしれませんね。ただ1つ、明らかなことが……」
 愛原:「何ですか?」
 リサ:「“花子さん”の遺骨が盗まれた」
 愛原:「はい!?」
 リサ:「花子さんの名前、斉藤早苗さんって言うの?そのお墓が暴かれて、骨壺が盗まれていたんだって」
 愛原:「はあぁ!?」

 な、何てことを……!

 善場:「暴かれた墓石の前には、ヴェルトロのロゴマークの書かれた布が落ちていたことから、白井がヴェルトロに依頼して墓暴きをした可能性が高いと見ています。時系列的に、その後に『新12番』の存在が噂されたことから、その遺骨を材料に、何らかの方法で造ったものと思われます」
 愛原:「それって、リサより強いのでしょうか?」
 善場:「分かりません。今のところ、詳細は何も分かっておりませんので」

 私が意識を失っている間に、白井が逮捕されるか射殺されていれば万々歳だったのだが、世の中そんなに甘く無いようだ。
コメント (1)
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