報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵の目覚め」

2021-11-11 19:50:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月20日17:02.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター地下医療施設]

 愛原:「…………」

 ここはどこだ……?
 まだ……夢の続きなのだろうか……?
 私は周りを見渡した。
 どうやら、病院らしい。
 しかし、どうしてここにいるのか分からない。
 あれか?
 やはり私は空襲の爆発に巻き込まれて、その後、病院に搬送されたのだろうか。
 しかし、その割には設備は近代的なものだが……。

 看護師:「失礼します」

 そこへ、女性の看護師が入って来た。

 看護師:「意識が戻られましたね。すぐに、先生が来ますから」
 愛原:「ここはどこなんです?」
 看護師:「『藤野の地下』と言えば、分かりますか?」
 愛原:「藤野の地下……えっ!?」

 私はすぐに国家公務員特別研修センターの地下研究施設のことを思い出した。
 私がそう言うと、看護師は大きく頷いた。

 看護師:「そうです」
 愛原:「どうして私はここに……?」
 看護師:「それは……」
 医師:「失礼します」

 そこへ、白衣を着た男性医師が入って来た。

 医師:「愛原学さん。意識が戻りましたね。ご家族や関係者への連絡は、こちらでしますので、愛原さんはしばらく安静にしてください」
 愛原:「私は今、どういう状態なのでしょう?何だか……体がよく、動かないのですが……」
 医師:「ええ。1ヶ月も意識が無い状態でしたから、筋肉の機能が衰えているのでしょう。復帰の為には、リハビリが必要です」
 愛原:「い、1ヶ月!?」
 医師:「はい。愛原さんは8月20日、東京で起きたバイオテロに巻き込まれ、まるっと1ヶ月、意識不明だったのです。そして今、意識を取り戻されたのです」
 愛原:「あ、あの……それって、清住白河駅の……?」
 医師:「そうです」
 愛原:「都内で起きたバイオテロに巻き込まれて、どうして私はここに?都内の病院じゃ、ダメだったんですか?」
 医師:「最初は都内の大学病院に搬送されました。しかし、愛原さんには高濃度のTウィルスが注入されたことが分かり、最終的にはここの施設に移されたのです」
 愛原:「しかし、私はTウィルスに対する抗体を持っているはずですが……」
 医師:「その抗体の力をも上回る高濃度です。もしも抗体が無かったら、愛原さんはいわゆるゾンビにはならず、そのまま死亡していたと思われます」
 愛原:「それで、今の私の状態は……?」
 医師:「高濃度のワクチンを投与しまして、今は体内のウィルスは死滅している状態です。ただ、その副反応として、筋力の低下などを起こしているわけです。この後、検査などを行いますので、よろしくお願いします」
 愛原:「あ、はい。お願いします。あの……よく都合良く、高濃度のワクチンなんて用意できましたね?」
 医師:「日本アンブレラの開発したBOWリサ・トレヴァー『2番』。彼女からワクチンの材料を抽出しました。それから精製したものです」
 愛原:「リサが!」

 段々と思い出して来た。
 私は都営大江戸線の終電車内で、白い仮面を着けた少女に襲われた。
 恐らく、リサ・トレヴァーの亜種だろう。
 どうやらこの時に、高濃度のTウィルスを注入されたようだ。
 リサ・トレヴァーやネメシスなど、BOWから直接ウィルスを注入されてしまえば、例え抗体を持っていたとしても感染・発症してしまう。
 だが、『2番』のリサは本種である為、そこからワクチンを作ることは可能だ。
 なるほど。
 リサのおかげで助かったのか。

[同日20:00.天候:不明 同施設]

 脳の検査が大掛かりだったような気がする。
 Tウィルスは脳も侵食し、ここがやられると完全にゾンビになる。

 検査技師:「うーむ……。検査の結果、脳に異常は見当たらずです」
 医師:「よし。それでは愛原さん、ご苦労さまでした。明日も頑張りましょう」
 愛原:「はい」

 私はベッドに乗せられたまま、検査室をあとにした。
 そして最初に目が覚めた病室へと戻される。
 そこは、総合病院の個室のような雰囲気だった。
 といっても、応接セットとかまで付いている高い個室というわけではなく、大部屋をコンパクトに個室にしただけといった感じの部屋。

 看護師:「愛原さん、連絡が付きまして、23日に面会に来られるようですよ」
 愛原:「そうですか」
 看護師:「その前に、デイライトの職員さんが面会に来られると思いますが……」
 愛原:「善場主任ですね。分かります」

 随分と寝たわけであるから、眠くないはずなのだが、それでもまだ頭がボーッとする。
 まあ、質問されれば何とか答えられる感じの意識レベルといったところか。
 寝る前に注射を打たれた。

 看護師:「少し、眠くなりますよ」
 愛原:「…………」

 なるほど……。
 確かに……眠くなる……な……。

[9月21日10:00.天候:不明 同施設]

 朝の7時に看護師に起こされると、まず検温をされた。
 体温は平熱である。
 それから、まだ筋力が衰えて、ろくに物も掴むことができなくなっていた私は、朝食は点滴で取ることになった。
 恐らく、こういった食事とかのリハビリもこれから行うことになるのだろう。
 しかし……それくらいだったら、もう普通の病院に移っても良いのではないだろうか?

 善場:「失礼します」

 私が検査室から出て病室に戻ると、善場主任が訪ねて来た。

 善場:「御無事で何よりです」
 愛原:「善場主任……」
 善場:「体内のTウィルスは死滅したようですが、ワクチン投与前に体内のあちこちがやられたようですね」
 愛原:「あー、そういうことか」

 新型コロナウィルスだって、ウィルスに痛めつけられた肺は、例えウィルスがいなくなったとしても、しばらく傷ついたままだから後遺症として残るのだろう。
 私の体もTウィルスに痛めつけられたというわけか。
 筋力が衰えたのはワクチンの副反応だというが、Tウィルスの後遺症も否定できないそうだ。

 愛原:「リサからワクチンを作ったそうですね。リサに感謝しないといけない」
 善場:「これもまた、我々がBSAAにリサの助命を願い出た理由の1つでもあります。『0番』たる私でも代行できたのでしょうが、しかし私の場合はもう既に人間に戻っているということもあって、弱いワクチンしか作れないでしょう」

 BSAAは、とにかくBOWの存在自体を認めない主義である。
 にもかかわらず、今年2月のルーマニアで起きたバイオハザード事件において、BSAA本部がBOWを作戦に投入していた疑いが持たれている。

 愛原:「私はいつまで、ここにいるのでしょう?リハビリだけでいいなら、普通の病院でもいいはずですが……」
 善場:「今、ブルーアンブレラが国内でリサ・トレヴァー亜種の掃討作戦と、白井伝三郎の追討作戦を行っておりますので、それが終了するまでは……といったところですね」
 愛原:「え?でも、ブルーアンブレラは国内での活動が認められていないんじゃ?」

 すると善場主任は、溜め息をついた。

 善場:「米国からの圧力に、政府は屈したのですよ。BSAA極東支部が中国にあるのは御存知ですね?日本地区本部は日本国内にありますが、BSAA極東支部が中国にあるのを警戒した米国政府が、なるべくブルーアンブレラを使うように迫ったようです。今、米中関係は緊張状態にありますので……」

 なるほど。
 確かに、ブルーアンブレラが中国に支部があるという話は聞いたことがない。
 しかし、BSAA極東支部には中国人民解放軍からの出向者や退役者も多く所属しているという。
 米国政府は、それを警戒したようである。

 愛原:「政治的な理由ですか。それなら、高野君も無罪放免に……」
 善場:「は?できるわけないでしょ?彼女は東京拘置所を脱獄したんですよ?お忘れですか?」
 愛原:「あ、ハイ。すいません……」

 いつもポーカーフェイスの善場主任が、この時ばかりは表情を変えた。
 よほど高野君のことが嫌いなんだな。

 善場:「とはいえ、状況は刻一刻と変わりますから、それによっては早めに移れるかもしれません」
 愛原:「そうなってほしいものですね。何しろここ、地下施設だから外が全く見えないもので」
 善場:「ですよね。私からも、上申はしてみます」
 愛原:「ありがとうございます。是非、お願いします」
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“私立探偵 愛原学” 「タイムスリップ?」

2021-11-11 14:59:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:不明 場所:不明(東京中央学園上野高校旧校舎?)]

 エレベーターのドアをこじ開けると、そこはトイレだった。

 愛原:「???」

 それも、随分と古めかしいトイレだ。
 水洗式ではない。
 私が一歩外に出ると、ドアが勝手に閉まった。
 振り返ると、私がいたのは個室だったようだ。
 ドアを開けると、汲み取り式の和式便器があるだけで、エレベーターは全く無い。
 一体、どうなってるんだ?
 窓の外を見ると、あちこちで火災が起きているのが分かった。
 それも、時折爆発音がする。
 それはガス爆発とかではなく、爆弾が爆発する音だった。
 そして、上空からはプロペラ機の轟音。

 愛原:「な、何だ?!空爆か!?」

 しかし、BSAAがプロペラ機を持っているとは聞いたことがない。
 オスプレイみたいなのが欧州本部や北米支部に配備されたみたいな話は聞いたことがあるが。

 愛原:「って、あれ!B29じゃん!?」

 第2次世界大戦中、米軍に配備された『超空の要塞』。
 当時の日本国を次々と焼け野原にしていったことが有名だ。
 ということは……。

 愛原:「って、それなに!?大戦中の日本に来たってこと!?」

 私は何が何だか分からなかった。
 とにかく、トイレの外に出た。
 それはどうやら学校であるらしかった。
 木造校舎ならではの木張りの廊下が続いている。
 って、木造なんて、燃える一択だろうが!

 愛原:「ん!?」

 すると、廊下の向こうから誰かが走って来るのが分かった。
 それも、1人や2人ではない。
 5~6人くらいの男子学生だった。
 大戦中よろしく、学生服ではなく、国民服のような服を着て、帽子を被っている。

 愛原:「キミ達……」

 何やら必死だ。
 私が声を掛けるが、彼らは私のことなど、まるで見えないかのようにすり抜けた。
 ……ん?すり抜けた!?
 そうなのだ。
 1人とは明らかにぶつかった感じなのに、そんな感触など全く無く、すり抜けて行ったのである。

 愛原:「どこへ行くんだ?」

 私は彼らの後を追いかけた。
 彼らは、とある教室に入った。
 そこで私は気づいた。
 ここは、東京中央学園上野高校の旧校舎なのではないかと。
 もちろん当時は旧学制なので、旧制中学が何かか?
 確か、大戦中は軍需工場の一部になったり、末期には野戦病院として使用されていたと聞いたことがあるが……。

 愛原:「防空壕か!?」

 珍しいことに、空き教室の中には防空壕があった。
 彼らはここに避難するようである。
 と、近くで爆発が起こった。
 爆弾が落ちたようだ。
 後者の外にある植木が燃え上がる。

 愛原:「おい、私も入れてくれよ!?」

 私は彼らに言ったが、彼らは私の存在自体に気づいていないかのようだった。
 1人の肩を叩こうとしたが、すり抜けてしまった。
 やはりだ。
 ここでは、私は幽霊のようなものなのだ。
 これは一体、どういうことなんだ???
 私が首を傾げながら彼らの様子を見た。
 防空壕はかなり小さく、15歳程度の少年達が5~6人入っただけですぐ満員になるほどであった。

 愛原:「ん!?」

 跳ね上げ式の扉を閉めた直後、外が騒がしくなった。
 どうやら、他にも避難者がいるようだ。

 愛原:「え!?」

 だが、それは数えるほどではなかった。
 20~30人もの少年少女達が教室に駆け込んできたのである。
 女子生徒はモンペ姿だったし、男子生徒は国民服を着ていた。
 どうやら、学内に併設された軍需工場か何かで作業をしていたようである。
 しかし、どうしてここに避難して来たんだ?
 外の方がまだ広い防空壕とかあるだろうが。

 愛原:「あっ!?」

 窓の外を見て、その理由が分かった。
 学校には不釣り合いな工場らしき建物がすぐ近くにあるのだが、そこが火災を起こしていた。
 どうやら、避難する間も無く、爆弾の直撃を受けたようである。
 ここに来たのは、その生き残り達か。
 彼らもまた、私の存在に気づいていない。
 彼らの話を聞いてみると、工場に爆弾が直接落ちたことで、防空壕への避難経路が経たれてしまった。
 また、それでも辛うじて防空壕へは辿り着けたが、そこに爆弾が直接落ちてしまっては、一たまりも無かったようだ。
 そこで途方に暮れていると、学校の教室に臨時で掘られた防空壕があると誰かが言い出し、それを目指して避難してきたようである。
 しかし、それを言い出したのは先ほどの男子生徒達か?
 彼らが入ったことで、もうここは満員のはずだが、他には無いのか?
 ……無いのだろうな。
 あれば、誰かがそこへ行こうとするだろう。
 先に入った少年達は、頑なに扉を開けようとしなかった。
 私はどうやら幽体のようだが、避難しなくても大丈夫かな?

 と!

 愛原:「うっ!?」

 ついに爆弾がここにも落ちた。
 ヤベェと思った時には、私も爆風に浚われ、教室の壁に叩きつけられた。

 愛原:「でも、生きてる……。ううっ!」

 まあ、幽体のようだからな。
 しかし、周りの生徒達は……とてもグロテスクな状態なので言えない。
 まあ、体のパーツがバラバラなったとだけ言っておこう。
 もしかして、東京中央学園の怪談話のルーツは、ここから来てるんじゃないのか?
 こんなに冷静に分析できるのは、霧生市のバイオハザードを体験してしまったからか、それとも私が幽体だからなのか……。

 男子生徒:「うう……」

 教室に火が点いて、メラメラ燃え出した。
 と、そこへ先に逃げ込んだ男子生徒の1人が、跳ね上げ式の扉を開けて這い出て来た。

 男子生徒:「いてて……。死ぬかと思った……」

 爆風の直撃を避けられたこともあってか、彼らは無事だったようだ。

 男子生徒:「か、火事だ……!」

 男子生徒は自分だけ防空壕から出ると、這うように教室から出て行った。

 愛原:「おいおいおい!一緒に行かんのか!?」

 私は防空壕の中を覗いて見た。
 死んでいるのかどうか分からないが、意識が無いようだ。
 さすがに衝撃とかはあっただろうから、気絶したのかも。
 って、いやいやいや!逃げないと焼け死ぬぞ!

 愛原:「おい、待て!!」

 私が木造のせいで火の回りが早い校舎の中を、少年の後を追って行った。
 そして、何とか彼に追い付き、彼の肩を掴んだ。
 そう、今度は掴めた!

 少年A:「!!!」

 少年は驚いてこちらを振り向いた。
 私が開口一番に聞いたのは、何故かこれだった。

 愛原:「キミ、名前は!?」

 思えば、何でそんなことを聞いたのだろう?
 しかし、少年は私の気迫に圧倒されてか、こう答えたのである。

 少年A:「斉藤秀平……」
 愛原:「なにっ!?」
 少年B:「ま、待て……!斉藤、キサマ……!!」
 斉藤秀平:「う、うわっ!あぁ……!」

 そこへ先ほどの教室から、別の少年がやってきた。
 しかし、今の斉藤少年がほぼ無傷なのに対し、こちらは明らかにケガをしている。
 頭から、手足から血を流していた。
 その様子を見た斉藤少年は、慌てて逃げ出した。

 愛原:「キミ、名前は!?」
 少年B:「白井伝平……」

 突然、目の前が明るくなった。
 また爆弾が落ちたのだろうか?
 とにかく、私は光に包まれた。
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