報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「鬼の見た夢」

2021-11-22 15:53:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日06:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 ホテルグリーンウエル4F客室]

 枕が変わったことで、リサは変な夢を見た。
 かつて日本アンブレラの研究所に閉じ込められていた時の事だ。
 キツキツのスクール水着を着せられ、実験動物としてのホオジロザメと戦闘実験をさせられたり、水着を破られて全裸になった所でプールに電気を流されて、それにどれくらい耐えられるかの実験をさせられたりした。

 リサ:(それと比べたら、ここは天国……)

 リサは大きな欠伸をして、スマホのアラームを止めた。
 部屋備え付けのワンピースタイプの寝巻を着ている。
 裾が大きく捲れて、白いショーツが丸見えになっていた。
 もちろん、今はこの部屋に1人だけなので、全く気にしない。
 リサは起き上がると、着ていた寝巻を脱ぎ捨て、ショーツ1枚の状態でバスルームに入った。
 LINEの通知音がベッドから聞こえて来たが、恐らく斉藤絵恋からのものだと思い、そのままスルーして顔を洗い始めた。

[同日07:00.天候:晴 同ホテル B1Fレストラン]

 昨日とは違うTシャツを着る。
 昨日と違って、黒いTシャツである。
 前面に、“Biohazard”のロゴマークが入っている。
 これは、リサがBOWとしての気合を入れる時に着ることが多い。
 愛原や高橋と合流して、朝食会場に行った。

 愛原:「朝食はパンとゆで卵が食べ放題か。なるほど」
 高橋:「先生、あっちにドリンクバーありますよ?」
 愛原:「よし。モーニングコーヒーと行くか」
 リサ:「食べ物……パンとゆで卵だけ……?」
 愛原:「食べ物はそうだな」
 リサ:「もっと食べたい……」
 愛原:「パンとゆで卵を食べればいいだろ」
 高橋:「昨夜、あんなに食っといて、もう腹減ったのかよ」
 リサ:「夕食と夜食は別腹。朝食はもっと別腹」

 リサは箱に入っているパンをまるっと取ろうとした。

 愛原:「チッチッチッ」

 愛原がリサの腕を掴んで、右手の人差し指を振る。

 リサ:「それじゃあ……」

 リサは箱に入っているゆで卵をまるっと取ろうとした。

 高橋:「チッチッチッ」

 高橋がリサの腕を掴んで、右手の人差し指を振る。

 リサ:「食べ放題じゃないじゃん!」

 リサ、瞳を金色に光らせ、口から牙を覗かせた。
 もっとも、牙に関しては、まだマスクをしているので傍目には分からない。

 愛原:「まあまあ。腹8分目って言うだろ」
 リサ:「こんなんじゃ、すぐにお腹空いちゃうよぉ……」

 リサはそれでも食パンやロールパンを二桁枚数に達するほど食べ、ゆで卵も10個くらい食べたという。

 愛原:「すげぇ……」

[同日07:30.天候:晴 同ホテル4F客室]

 愛原:「8時になったら出発だから」

 愛原にそう言われて、リサは一旦自分の部屋に戻った。
 パーカーを羽織る為、荷物の中からグレーのパーカーを取り出す。
 フードが付いているので、角が生えた時や耳の形が変化した時は被って隠す。

 リサ:「う……」

 リサに便意が訪れた。
 別に腹を壊した感じではなく、ただの生理現象である。
 先ほどの朝食がきっかけとなって、消化器官が元気良く稼働しているようである。
 だが、リサはトイレに行こうとしなかった。

 リサ:「ここで出したら、またお腹空いちゃう。昼食まで愛原先生から断食命令出ちゃってるから……」

 そんな短いスパンを断食というのは、大きな間違いであろう。
 だが、ますますリサの腹からはトイレを促す警報音が鳴り響いた。

 リサ:「思い出すな……」

 リサは研究所で受けさせられた過酷な実験を思い出した。
 人間に対して行えば、間違いなく人権無視の非人道的なものとして糾弾されること請け合いである。
 しかしリサ達はBOW(生物兵器)であり、人間ではないから人権は無いという理屈で、メチャクチャな実験であった。
 500ml浣腸され、どのくらい耐えられるかというもの。
 当然、人間から改造されたリサ・トレヴァー達は、全員が脱糞した。
 『2番』のリサもその1人であった。
 後になってリサは、その研究員を捕まえて重傷を負わせた。
 しかし、とどめを刺したのは、他のリサ・トレヴァーだった。
 なので、『2番』のリサは傷害の経験はあっても、殺人や食人の経験は無い。

 リサ:「うっ……くっ……!ダメ……!漏れそう……!」

 リサは無念の思いで、トイレに行った。

 リサ:「あはぁ……!」

 トイレが詰まるのではないかというほど、腹の中から中身が出た。
 だが、その快感は性感を刺激されたみたいであった。
 しかし、その次には絶望が訪れた。
 これで昼食まで、また空腹を耐えなければならないのだ。
 自分もまた、常に食欲に駆られる化け物に過ぎないのだと思い知らされることになる。

 リサ:「……やっぱり化け物なんだ……わたし……」

 リサは長く尖った両手の爪を見て、自己嫌悪の思いで呟いた。

[同日08:17.天候:晴 同ホテル→仙台市地下鉄仙台駅]

 ホテルをチェックアウトしたリサ達は、地下鉄の駅へと向かった。

 リサ:「え……地下鉄で行くの?」
 愛原:「そう。なるべく高速道路の近くがいいだろうと思って、地下鉄で移動するよ。なぁに、泉中央駅からはすぐだから」
 リサ:「地下の薄暗い所、やだな……」
 愛原:「まあまあ。市街地部分だけは我慢してよ」
 リサ:「市街地部分?」
 愛原:「ここの地下鉄は、郊外に出ると地上に出るんだよ。終点までずっと地下というわけじゃない」
 リサ:「そう、なんだ……」

 但し、東西線の東部を覗く。

 愛原:「だから、ちょっとの間、我慢してくれよ?」
 リサ:「でも、気を張り詰めると、お腹空いちゃうし……。さっきもね、いっぱい出ちゃったの」

 リサは腹をさする仕草をした。

 愛原:「腹壊したのか?」
 リサ:「そうじゃない。ただのお通じ。でも私、いっぱい出しちゃうと、その分お腹空いちゃうの。我慢したけど、我慢できなかった」
 愛原:「食べた分、ちゃんと出るなんて、健康的じゃないか!」

 愛原はリサの肩を叩いた。

 リサ:「え……?」
 愛原:「それでいいんだよ。だからリサの肌、つやつやなんだな?若いだけじゃないんだ」
 リサ:「そ、そう?」
 愛原:「別に、おやつくらい食べていいよ」
 リサ:「ほんと!?」

 リサはパッと顔を明るくした。

 愛原:「それでいいか?」
 リサ:「うん!」

 リサは断食から解放されたことに安心した。
 ……のか、今度は空腹を知らせるアラームが腹から鳴った。

 高橋:「早ェだろ!」
 リサ:「……ごめんなさい」

 リサもさすがにこれはそうだと思い、素直に謝った。

 愛原:「駅の中で、食べ物くらい買えるだろ。とにかく、早く行こう」

 リサ達は地下鉄の入口から駅の中に入って行った。

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