報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東北新幹線“なすの”270号」

2021-06-12 20:02:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月4日09:48.天候:晴 栃木県那須塩原市 JR那須塩原駅→東北新幹線270B列車8号車]

 那須塩原駅構内で買い物を済ませた私達。

 愛原:「よし。こんな所だな。皆も買い忘れとか無いか?」
 リサ:「大丈夫」
 絵恋:「オッケーです」
 高橋:「問題ナシっス!」
 愛原:「よし。それじゃ、ホームに行こう」

 私達はすぐ横にある新幹線改札口を通った。

〔1番線に停車中の電車は、9時53分発、“なすの”270号、東京行きです。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。尚、全車両禁煙です〕

 高架ホームに上がると、往路で乗ったのと同じE5系列車が停車していた。
 仕業によっては“はやぶさ”として最高速度320キロで爆走することもある車両が、今は中距離用の各駅停車としての運用に入っている。

 愛原:「はい、撮るよー」

 往路と同じように、行き先表示器の下にリサと絵恋さんを立たせ、写真を撮る。
 東海道新幹線などの西や南へ向かう新幹線車両といい、最近の新幹線車両は行き先表示の大きくなったものが流行っているようだ。
 しかも列車名だけでなく、号数や途中停車駅まで表示できるようになっている。
 200系時代には考えられない事だな。
 写真を撮り終わってから、車内に入る。
 この列車唯一の普通車指定席車両だ。
 空いているのなら自由席でも良いのではと思うかもしれないが、少しでも修学旅行気分を味わってもらう為だ。
 往路と同じように、2人席を前後して確保してある。
 リサと絵恋さんは隣同士で座った。

 高橋:「先生、お荷物上げます」
 愛原:「ああ、頼むよ」

 荷棚に荷物を上げるのは、高橋に任せる。

〔「ご案内致します。この列車は9時53分発、“なすの”270号、東京行きです。停車駅は宇都宮、小山、大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。尚、この列車では車内販売の営業はございません。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 私が善場主任と斉藤社長に新幹線に乗車したことを伝えるメールを送っていると、ホームから発車ベルが聞こえて来た。
 在来線ホームだと発車メロディだろうが、新幹線ではベルである。

〔1番線から、“なすの”270号、東京行きが発車致します。次は、宇都宮に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 愛原:「よしっと」

 メール送信が終わる頃、ホームから甲高い客終合図のブザーが聞こえて来て、ドアが閉まる音がした。
 そして、列車はスーッと走り出した。
 下り副線の更に側線ホームに停車していたので、上り本線に出るまでの間、徐行速度でポイントを何度か渡る。
 徐行と言っても狭軌の在来線ではないし、カーブ半径も緩やかに取られていることもあって、首都圏の通勤電車くらいの速度である。
 そこを通過し終えると、ようやくグングンと速度を上げ始めた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“なすの”号、東京行きです。次は、宇都宮に止まります。……〕

 愛原:「色々あったなぁ……」
 高橋:「温泉以外は慰安にならなかったっスねぇ……」
 愛原:「うん……って!タイラントのせいで、那須湯本温泉に入り損ねた」
 高橋:「先生。元はと言えば、後ろにいるBOWのガキのせいですよ?1発撃っておきましょうか?」
 愛原:「やめなさい!」

 すると後ろの席に座っていた絵恋さんが私の所に顔を出した。

 絵恋:「先生。父からで、『那須湯本温泉風の入浴剤を差し入れに送る』そうです」
 愛原:「何で社長知ってるんだよ……」
 高橋:「何でも作ってやがりますね。斉藤社長の会社」
 愛原:「アンブレラも温泉の素作ってりゃ良かったんだよ」

 世界中の製薬会社で、温泉の素を売っているのは日本だけであろうか。

 高橋:「先生の仰る通りです」
 愛原:「おっ、斉藤社長から返信が来た。『報告書は明日までにお願いします』か。帰ったら、事務所に寄るか」
 高橋:「了解です」
 リサ:「先生、お昼ご飯はー?」
 愛原:「帰ってからだな。この列車の東京駅到着は11時8分だ。それからバスに乗って帰るから、菊川に着くのはちょうど昼くらいだろ?それからだよ」
 リサ:「なるほど」

 リサは納得した。
 一応、まだ手持ちのポッキーなどのお菓子はあるから、空腹に襲われることはないということだな。
 これで手持ちの食料を尽かしていたら、【お察しください】。

 絵恋:「私もお昼、御一緒していいですか?」
 愛原:「いいけど、パールさんが迎えに来ないの?」
 絵恋:「パールは実家の方にいます。他のメイドが休んだので、そのヘルプです」
 高橋:「コロナじゃねぇだろうな?」
 絵恋:「違うよ。パールと違って、一応帰る実家のあるメイドもいて、帰省しているからよ」
 愛原:「絵恋さんは帰らなくていいの?」
 絵恋:「どちらでも構いませんよ。どうせ、毎週末には帰ってますから。今週もまた帰るので」
 愛原:「そうか」
 絵恋:「できれば、リサさんと一緒にいる時間の方が大事です」
 愛原:「そこは御両親と一緒にいる時間を大事にしような?」

[同日11:08.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車は何事も無く東京駅に接近した。
 リサと絵恋さんにとって、今回の旅行のスタート地点である上野駅を出発すると、長いトンネルを抜ける。
 抜けた先は秋葉原付近であり、進行方向左手にヨドバシカメラが見えたら、着いたも同然だ。
 ビル群の間を抜けて列車は減速し、弓なりに曲がっているホームに入線する。
 曲がっているのは、少ない用地で長い編成の新幹線列車を収める為の策である。

〔ドアが開きます〕

 ホームに停車してドアが開く。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物の無いよう、お降りください。23番線に到着の電車は、回送となります。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください」〕

 愛原:「いや~、ようやく帰ってきたな」
 高橋:「そうっスね」
 リサ:「また写真撮るの?」
 愛原:「よし。今度は東京駅の看板の下で撮ろう」

 ホームの天井から吊り下げられている駅名看板。
 その下にリサと絵恋さんを立たせ、撮影する。
 取りあえず、写真はこんなところでいいか。

 高橋:「先生。バスの時間が11時24分です」
 愛原:「なに?ちょうどいい時間だな。よし、バス乗り場に行くぞ」

 私達は急いで改札口へ向かった。
 リサの血縁者といい、何だか色々と真相に迫ることができた旅行だった。
 この旅行を膳立てしたのは斉藤社長。
 これは偶然とは思えない。
 報告書を出す時に、質問してみることにしよう。
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“私立探偵 愛原学” 「栃木最後の朝」

2021-06-12 16:01:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月4日07:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 那須ミッドシティホテル・愛原と高橋の部屋]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。
 私は手を伸ばしてそれを止めた。

 愛原:「よし。おーい、高橋、朝だぞー」
 高橋:「ういっス」

 私はベッドから起き上がると、まずはテレビを点けた。
 ニュースを観ると、那須岳の熊だの、日光市郊外の山で火事だのというのが流れていた。
 そして今日は、熊狩りと称して高橋からもたらされた新情報を元に、BSAAが動いていることだろう。

 愛原:「やっと今日は帰れるな」

 私はバスルームに入って顔を洗う。

 高橋:「10時前後の新幹線がいいっスか?」
 愛原:「ああ。頼むよ」
 高橋:「うっス」

 新幹線の検索は高橋に任せることにした。

[同日08:00.天候:晴 同ホテル1Fレストラン]

 昨夜夕食を食べたレストランで朝食を食べることにする。
 コロナ禍前まではベタな法則通り、バイキング方式だったそうだが、コロナ禍の今は弁当形式になっていた。
 私と高橋は和食にしたが、リサと絵恋さんは洋食である。
 どうも、チキンカツが入っているということで、リサは洋食にしたらしい。
 食事は弁当だが、飲み物に関してはドリンクバーである。

 愛原:「帰りの新幹線は、9時53分発の“なすの”に乗るから」
 リサ:「承知」
 絵恋:「分かりました」
 愛原:「修学旅行と言えばな、新幹線だろ、やっぱ」
 絵恋:「そうですね」
 高橋:「先生は修学旅行、どこに行きました?」
 愛原:「仙台にいたからな。中学校の時は東京、高校の時は関西だったよ。どっちも新幹線だった。あの時はまだ、東北新幹線は開業当時の200系が現役でなぁ……」

 歳がバレてしまうな。
 おっと、もうバレてる?

 愛原:「因みに小学校の時は会津だった」
 高橋:「あ、先生の小学校は修学旅行あったんスね」
 絵恋:「普通、あるわよ」
 愛原:「仙台から会津だからな。電車じゃなくて、バスだったよ」
 リサ:「いいなぁ……」
 愛原:「絵恋さん、小学校の時はどこに行った?」
 リサ:「私は秩父です。埼玉の小学校だったので」
 愛原:「秩父か。秩父はまだ行ったこと無いな……」

 秩父鉄道にはSLも走っているし、セメント製造のプラントなど、スチームパンクの世界観を取材したければ打ってつけらしい。

 リサ:「中学校では行けると思ってたのに……」

 本来ならリサ達、中等部の修学旅行は関西地方に行くはずであったという。
 コロナ禍で中止になってしまった。
 尚、それは高等部も同じ。
 高等部の修学旅行は海外組と国内組に別れるものの、いずれも飛行機を使うことから、コロナ禍の影響をモロに受けた形となる。
 もし復活したとしても、リサは国内組一択になるだろうな。
 BSAAとの取り決めで、『BOWの海外移送は厳禁』となっており、修学旅行であったとしても、そうと見做される確率が高い。
 BSAA本部のあるヨーロッパでは、修学旅行の概念が存在しないからだ(私は最初、BSAAの本部は国連本部のあるニューヨークかと思ったが、アメリカが初のバイオハザード発生地であるにも関わらず、アメリカは支部で、本部がヨーロッパというのは不思議である)。

 絵恋:「こ、高等部では行けるわよ、きっと」

 国内組は沖縄と北海道が交互になっていて、リサ達が行く頃だと北海道になる可能性が高い。

 絵恋:「あ、そうだ。先生、まだお土産を買っていないんですけど……」
 愛原:「ん?那須ハイランドパークでいくつか買ってなかった?」
 絵恋:「あれは学校用です。家用がまだなんで」

 学校で自慢げにお土産を配布する絵恋さんの姿か想像できた。
 コロナ禍でさえなければ海外旅行にでも行って、その土産を自慢げに配ったりするのだろう。

 愛原:「駅で買えるさ。駅でも土産物を売る店はあるからね」
 高橋:「NEWDAYSっスか。どこにでもありますね」
 愛原:「都市の主要駅なら基本あるだろ」

 私もボスや斉藤社長へのお土産を買うとしよう。

[同日09:30.天候:晴 同市内 JR那須塩原駅]

 ホテルをチェックアウトし、那須塩原駅に向かう。

 愛原:「ゴールデンウィークは明日までだけど、明日はどうするんだ?」
 リサ:「宿題やる」
 絵恋:「まだ全部終わってないもんね」
 愛原:「なるほど。予備日みたいなもんか」
 高橋:「本当は今日も予備日だったんスけどね」
 愛原:「あー、そうだった」

 上空をヘリコプターが何機も飛んでいる。

 愛原:「あれは自衛隊のヘリだな。BSAAに協力して、後方支援に当たるんだろう。方角が……那須岳の方か?」
 高橋:「BSAAはBSAAで、何か見つけたんスかね」
 愛原:「でないと困る。せっかく高橋の後輩が、新情報を提供してくれたというのに」
 高橋:「あざっス」

 山道を通る県道を爆走していた高橋の後輩達が、道を一本間違えてしまい、変な廃墟に辿り着いてしまったという。
 その地域はホテルなどが廃業し、それが何軒も廃墟となっている場所でもあり、後輩達はその廃墟もそんな廃ホテルの1つだと思ったらしい。
 せっかくなので探検してみようと思ったのだが、入ったそばから変な化け物と遭遇してしまい、慌てて逃げたという。
 これがゲームや映画だと、随分深入りしてからそういう化け物と遭遇し、逃げようとした時には既に遅しといった展開になるのがデフォルトであるが、実際には入ってすぐにエンカウントしてしまうものである。
 まあ、そのおかげで逃げ足の速い暴走族達は逃げ切れたというわけだが。
 それが一昨日の夜の話。
 もしかしたら、タイラントはそこから来て、私とリサをそこに連れて行こうとしていたのかもしれない。

 愛原:「俺達の仕事はここまでだ。あとは武装勢力達に任せよう」

 民間の探偵業者のやれることは決まっているからね。
 本来なら、推理して犯人を突き止めるなんてことも無いからね?
 駅に到着すると、私はまずネットで予約した新幹線のキップを発券することにした。
 これなら指定席券売機でもできる。
 また、ネット予約だといくらか安く買える。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」
 絵恋:「私、リサさんの隣でお願いします!」
 リサ:「私は窓側~」
 愛原:「はいはい。行きと同じ、8号車ね」

 私はキップを配った。

 愛原:「新幹線乗り場の手前にNEWDAYSがある。そこでお土産とかも買えるだろう」

 まだ列車の発車まで時間があるので、私達は土産を見て行くことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「栃木最後の夜」 2

2021-06-12 11:35:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月3日22:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 那須ミッドシティホテル→セブンイレブン那須塩原西口店]

〔下に参ります〕

 私達はエレベーターに乗った。

〔ドアが閉まります〕

 リサと絵恋さんが泣いていたのは、何もケンカでもイジメでもなかった。
 泣いたのはリサで、絵恋さんはもらい泣きしただけである。
 では、どうしてリサが泣いたのか?

〔ドアが開きます。ピンポーン♪〕

 おっと!
 エレベーターが1階に着いてしまったので、その話はまた後で……。

〔1階です。上に参ります〕

 ……というのは冗談で、リサはリサなりに気に病んでいたそうである。
 那須岳の山頂でタイラントを呼んでしまい、せっかくの旅行気分を台無しにしてしまったことに。
 それを絵恋さんが優しく慰めたものだから、リサが絵恋さんに抱き付いて泣いた。
 そしたら絵恋さんももらい泣きして、で、更にリサがそれで大泣きして……ということらしい。

 愛原:「まあ、取りあえず、外の空気でも吸って、落ち着こうや」
 リサ:「うん……」

 ホテルの外に出て、近隣にあるコンビニに向かう。
 すると駐車場にはガラの悪そうな、車を魔改造した若い男数人がたむろしていて……。

 高橋:「おおっ!?」
 若者:「あれ!?」
 高橋:「ヨッシーじゃん!何やってんの!?」
 若者:「マサ先輩!ちゃス!」

 どうやら高橋の知り合いらしい。
 『下越のヤンキー』が、どうして『北関東のヤンキー』と知り合いなのか……。

 愛原:「高橋、俺達は中にいるぞ」
 高橋:「はい!」

 私達はリサと絵恋さんが絡まれないように守りながら、コンビニ店内へと入った。
 店内から駐車場を見ると、高橋が久しぶりの後輩達に会ったことで盛り上がっている。
 ゴールデンウィーク中だから、ああいう遊びにしか興味の無い若者達が、コロナなんぞどこ吹く風で遊び回っているわけか。

 愛原:「替えのパンツとシャツと靴下と……」

 私がふと近くにいる絵恋さんを見ると、生理用品を手にした絵恋さんが私から隠すように背を向けた。
 一方、リサは……。

 リサ:「これ買って」

 全く気にする様子は無く、自分が使う生理用品を私の持つカゴに入れた。
 絵恋さんは気にし過ぎだし、リサはもうちょっと気にしろ。

 リサ:「ジュースとお菓子もいい?」
 愛原:「しょうがないな。もう泣くんじゃないぞ」
 リサ:「うん。泣いた時、久しぶりに背中から触手が出て来たから自分でもビックリした」
 愛原:「おい!」

 オリジナル版の名残が日本版のリサ・トレヴァーにもあって、それが背中から触手を出すことなのである。
 今の第0形態はもちろん、第1形態でも今は背中から触手を出すことは滅多に無い(今は掌の中から触手を出すこと多くなった)。

 愛原:「あっと!ちょっと手持ちを補充するか」

 せっかくなので、店内のセブン銀行で現金を下ろす。
 そんなことをしていると、突然駐車場から爆音が聞こえて来た。
 高橋の後輩達の車やバイクから流れ出る音楽ではない。
 それら車両の改造されたエンジン音だ。
 高橋と別れて去って行ったようだが、ただの別れではなかった。

〔「はい、緊急車両通ります!緊急車両通ります!」〕

 パトカーのけたたましいサイレンの音が通過していった。
 どうやら、パトカーの姿を見て慌てて逃げて行ったらしい。

 高橋:「ふぅ~、危ないところでしたよ」
 愛原:「何やってんだよ」
 高橋:「早めに逃げれたんで、多分捕まらないと思います」
 愛原:「オマエみたいに、何回か捕まった方がいいんじゃないのか?」
 高橋:「そうっスねぇ……。あいつ、まだ鑑別所とネンショー(少年院)1回しか行ってないんで、今度は少刑(少年刑務所)でも目指し……」
 愛原:「目指さなくていい!さっさと更生しろ!」
 高橋:「サーセン。でも、奴らからいい情報が聞けましたよ」
 愛原:「え?」

[同日22:30.天候:晴 那須ミッドシティホテル1Fロビー]

 ホテルに戻った私達は、内線電話で善場主任の部屋に電話した。
 まだ寝ていないということだったので、高橋が仕入れた情報を提供する旨伝えると、エレベーターで下りて来てくれた。
 リサ達は先に部屋に戻る。
 もう寝るように伝えて……。

 善場:「一体、何でしょうか?新たな情報というのは……」
 高橋:「司法取引だ。姉ちゃんの力で、警察を黙らせてやってくれ」
 善場:「は?」
 愛原:「ごめんなさい、通訳します。『私の後輩から重大な情報を得たので、提供します。どうか、警察に追われている後輩達を助けてやってください』です」
 善場:「その後輩さん、何をしたのですか?」
 愛原:「まあ、平たく言えば、共同危険行為ですかな。道路交通法の」
 善場:「警察の管轄ですので、私は手出ししかねます」
 高橋:「あ、そ。じゃあ、民間人の俺も国家公務員の業務には口出し無用」
 善場:「場合によっては、犯人蔵匿及び証拠隠滅罪で逮捕しますよ?」
 高橋:「おい、姉ちゃん!サツじゃねぇって言っただろ!」
 善場:「私達の組織は、バイオテロに関する物でしたら捜査権と逮捕権がありますので」
 高橋:「先生!この姉ちゃん、卑怯っスよ!?」
 愛原:「まあ、国家に関する事は、だいたいどこの国も正々堂々とはしていないものだ。日本とて例外ではないということだよ」
 善場:「その通りです。もしもこの国だけが例外だったら、とっくに中国共産党の傘下に入っているかと」
 愛原:「そういうことですな」

 いいですか?お隣の朝鮮国を見てご覧なさい。
 正々堂々という言葉が辞書に無い。
 どうでしょう?

 愛原:「というわけだ、高橋。文句があるなら、上級国民になれ。幸いこの国は、下級国民でも努力すれば上級国民になれる。上級国民になれば、ちょっとやそっとのことでは逮捕されないぞ?」

 ということは、ホリエモンは上級国民にはなれなかったということだな。
 明らかに、もっと多額の粉飾決算をやらかした企業は他にもあったのに。

 高橋:「分かりました」
 善場:「というわけで、情報提供をお願いします」
 高橋:「はあ……。後輩が昨日の夜、日光辺りの県道を爆走していた時の事なんだけど……」

 後輩的には何らかの不可解現象または怪奇現象に巻き込まれた感じであったが、高橋の耳にはバイオハザード絡みに聞こえたという。
 そしてそんな高橋の話は、私の耳にも善場主任の耳にもバイオハザード絡みに聞こえたのである。
 そしてその話は、やはりブルーアンブレラの捜索判断が正しいことの現れであった。
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