報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 大石寺

2021-06-27 19:58:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月22日11:30.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大日蓮華山大石寺]

 透視の終わったマリアは佐野家で少し休憩した後、稲生と一緒に大石寺に向かった。
 田部井は自分の車で行き、稲生とマリアは佐野の車で向かった。
 まずは登山事務所に向かう。

 僧侶:「それでは、2000円の御開扉御供養をお願い致します」
 稲生:「はい。お願いします」

 稲生は内拝券をもらうと、記帳台に行き、寺院名と寺院番号を書き込む。

 稲生:「どうして東京第布教区(※)だけ最後のページなんですか?」
 田部井:「うちのお寺の誓願達成率、万年全国最下位だからねぇ……。御住職様も一年おきに交代するくらいだし(※※)」

 ※フィクションであり、現時点ではそのような布教区は実在しておりません。
 ※※フィクションです。そもそも、正証寺自体が架空の寺院です。

 稲生:「東京第三布教区は二軍布教区ですか……」
 田部井:「いやあ、三軍じゃねw」
 佐野:「だったらキミ達、もう少し真面目に折伏しようね?」
 稲生&田部井:「すいません」
 佐野:「だいたい稲生君、あのマリア……さんとかいう人、折伏しないのかい?」
 稲生:「魔道士はどの宗教にも与しないという掟がありまして……。もちろん、入門前に信仰していた宗教は条件付きで続けることはできます。但し、魔女狩りを行うような宗派は禁止ですが。幸い仏教は魔女狩りの歴史が無いので、ダンテ一門では禁教にはなっていないです」
 田部井:「日蓮正宗の方が、むしろ魔女狩り(法難)に遭う側だったからね」
 稲生:「今のところ大っぴらに禁止されているのはキリスト教とイスラム教ですね」
 佐野:「イスラム教も」
 稲生:「というか、現代でも魔女狩りを行っているのはイスラム教の方ですよ」
 佐野:「キリスト教以上にテロと戦争が好きな宗派だからなぁ!」
 稲生:「ま、そういうことなんで、マリアさんは諦めてください」
 佐野:「それは残念だ」
 稲生:「それより僕はいいですけど、田部井さん、今日は仕事なんじゃ?」
 田部井:「せっかくだから有休取ったよ。幸い溜め込んでて、上司からそろそろ消化しろって言われてたから、すんなり取れたよ」
 稲生:「それはそれは」

 内拝券を手に、車に戻る。

 佐野:「さて、今度は新町の駐車場に移動しよう」
 稲生:「よろしくお願いします」

 車の中ではマリアが待っていた。
 手には手帳を持っている。
 透視で得られた結果を記入したのだが、それを纏めているのだ。
 取りあえず分かったことは、あの西洋人形メリーは、1927年にアメリカから渡って来た『青い目の人形』であること。
 静岡中央学園女学校に寄贈されたものであるということ。
 そして、大東亜戦争中に『敵国の人形』ということで処分されかけたこと。
 それをまだそこの学生だった佐野の母親が持ち出して、蔵の中に隠したことまでは分かった。
 その女学園は静岡市内にあり、静岡市もまた空襲の対象都市となった為に、実家の富士宮市(当時は上野村?)に疎開し、その際に蔵の中に隠したのではないかというのが佐野の考察だった。
 それを家族に話さなかったのは、佐野の母親が人形を無断で持ち出したことがバレないようにする為ではないかということだが、しかし終戦後もそれを話さなかったこと、卒業後も話さなかったことが謎だった。
 法律上は確かに窃盗罪にはなるだろうが、それとて時効があるから、時効後に話しても良かっただろうに。
 今であれば、『よくぞ人形を助けてくれた』と、美談になるだろうに。
 人形のことは、静岡県の教育委員会で働いている者が佐野の知り合いにおり、そのツテを利用して静岡中央学園に人形のことを話してみることになった。
 上手く行けば、メリーは1世紀近くぶりに母校に帰ることになる。
 分からないのは、メリーがマリアに言っていたこと。

 メリー:「東京に私の友達、ジェシーがいるの。どこかで生きてると思うけど、誰にも見てもらえないみたいだから、助けてあげて」

 とのことだった。

 マリア:「今度は東京か……」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「東京だってさ。東京にミスター佐野の家みたいに、蔵のある家なんてあるのか?」
 稲生:「うーん……。八王子とか青梅とか奥多摩とかに行けばあるのかなぁ……。でも、本当に生きてるの?」
 マリア:「古い人形のインスピレーションはとても強いから、信憑性はあるよ」
 稲生:「生きているけど、皆に見てもらえない。確かに、蔵の中にずっといたメリーみたいだね」
 マリア:「他にも閉じ込められてるコ達がいるのなら、助けてあげないと」

 メリーはきれいにしてあげた後で、ボロボロになった服はミク人形の着替えをあげた。
 日本からアメリカに渡った『答礼人形』は規格がほぼ統一化されていたのとのことだが、『青い目の人形』に関しては規格もサイズもバラバラであった。
 しかし逆に、メリーがマリアの作った人形とサイズが同じであったのが幸いだった。

 稲生:「ていうか、ヒントは無いの?」
 マリア:「ヒントなぁ……。木造の校舎くらいしか出て来ない。だけど、人形が寄贈された頃の日本の学校の校舎って、みんな木造だったんだろう?」
 稲生:「そうだねぇ……。昭和時代に入ってから、鉄筋コンクリート造りの校舎が建てられた所もあったらしいけど、1920年代はそうだろうねぇ……」

 大石寺の仲見世商店街に面した駐車場に到着する。

 佐野:「腹が減っては何とやらだ。しっかり食べて、御開扉に備えよう」
 稲生:「はーい」
 田部井:「やった!伯父さんの奢り」
 佐野:「オマエ、いくつになったと思ってんだよ。自分で出せ」
 田部井:「えーっ!」
 佐野:「えーじゃない!」
 稲生:「ハハハハ……」

 稲生達は、まずは昼食を取ることにした。
 その後、マリアを除く3人は奉安堂へ。
 マリアは商店街で、稲生達が戻るのを待つことになる。
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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 メリー

2021-06-27 16:17:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月22日09:13.天候:晴 静岡県富士宮市 JR西富士宮駅]

〔ご利用頂きまして、ありがとうございました。まもなく終点の西富士宮、西富士宮に到着致します。お降りのお客様は、運賃、乗車券、回数券は整理券と一緒に駅係員にお渡しください。Toikaは駅の改札機にタッチしてください。整理券のみのお客様は、運賃と一緒にお降りになる駅で、駅係員にお渡しください。どなた様も、お忘れ物の無いようにお支度ください。まもなく終点の西富士宮、西富士宮です。今度の駅では、全てのドアから降りられます〕

 富士宮駅で多くの乗客が降りていった。
 富士駅を出てから富士宮駅に着くまで、乗客が増えていったのだが、富士宮駅から先は数えるほどしか乗客が残らなかった。

 稲生:「やっぱり市街地で皆、降りちゃうんだね」
 マリア:「まあ、オフィスはそういう所にあるだろうからね」

 電車は西富士宮駅のホームに入線した。

 

 ワンマン運転なのだが、運転士はいちいち車掌スイッチを操作してドア扱いをするのだから、停車しても実際にドアが開くまでのブランクがある。
 身延線はこの駅まで複線。
 ここから北は単線となり、本数もグッと少なくなる。
 もしも創価学会が臨時列車を多数運転させていなければ、この路線の本数はそんなに多くなかったであろう。
 電車を降りると、跨線橋を渡って改札口に向かう。

 稲生:「ここからタクシーで、佐野さんの御宅へ向かいます」

 田部井信徒の母方の親戚の家ということで、名字が違う。
 改札口は自動改札機が設置されてはいないが、ICカードの読取機だけは設置されていた。
 それにSuicaを当てて出場となる。
 どこにでもあるような地方ローカル線の有人駅といった感じの駅舎の外に出ると、すぐタクシー乗り場がある。
 そこからタクシーに乗り込んだ。

 稲生:「えーと……」

 稲生は運転手に佐野家の住所を伝えた。
 運転手はナビに住所を打ち込んでいく。

 運転手:「それじゃ、ナビの通りに行きますから」
 稲生:「お願いします」

 タクシーが走り出した。
 ルート的には、大石寺に向かう方向のようだ。
 東京圏では見かけなくなったプリウスのタクシーが、地方ではまだまだよく見られる。
 東京圏で見かけなくなった理由は【お察しください】。

 稲生:「いよいよ、御対面ですね」
 マリア:「うん」

 さすがのマリアも、そろそろ緊張してきたようだ。
 ミク人形とハク人形は、バッグの中から顔を出して窓の外を眺めていたが。

[同日09:30.天候:曇 同市内某所 佐野家]

 西富士宮駅から車で10分ほど走った所に、佐野家はあった。
 昔は豪農だったのだろうか。
 周囲は田んぼに囲まれている場所であったが、大きな母屋が特徴だった。
 タクシーはその家の前に止まった。
 そして、敷地内には問題となったであろう土蔵もあった。
 で、敷地内には車が何台か止まっているが、その中に赤いフェアレディZがあったので、田部井信徒もいることが分かる。

 田部井:「稲生君!マリアさん!来てくれましたか!」
 稲生:「田部井さん、おはようございます」
 田部井:「早く、こっちへ」

 蔵ではなく、母屋に案内された。
 人形は蔵から出されたのだろうか。

 稲生:「マリアさん、靴脱いで!」
 マリア:「おっと!」

 ずっと洋館にいたせいか、靴を脱いで過ごすことを忘れていたマリアだった。

 佐野:「ようこそ、おいでくださいました。私、佐野と申します」

 奥から屋敷の主人と思しき70歳くらいの老人が現れた。
 しかし、歳より若く見えるほど足腰はしっかりしている。
 農業で鍛えた体だからだろうか。

 稲生:「稲生です。あー、正証寺の御講とかでお見かけしたことがありましたかねぇ……」
 佐野:「あったかもしれませんね。いつも洋平がお世話になっております」
 稲生:「いえいえ、そんな……!」
 田部井:「伯父さん。この人がマリアさん。あの人形を鑑定……というか、透視をしてくれる人」
 マリア:「マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットです。早速、人形を見せてください」
 佐野:「奥に置いてあります。どうぞ」

 佐野に付いて行くと、仏間に着いた。
 家も立派なら、仏壇も立派なものだ。
 今は厨子が閉じた状態になっているが、開けようと思えば電動で開くタイプであった。

 佐野:「こちらなんですがね……」

 それは古い桐箱に入れられていた。
 そこには毛筆で何か書かれていた痕があるのだが、すっかり滲んでしまい、読み取ることはできない。
 しかも、元々の字が旧字体だったのだろうと思うほど解読不能だ。
 そのことから、旧字体が使われていた頃からあったのだとは言える。

 マリア:「うっ……!」
 稲生:「こ、これは……!」

 桐箱を開けると、そこには古く汚れた西洋人形が収められていた。
 その人形を見た瞬間、魔力の強いマリアは目まいに襲われ、稲生は言い知れぬ圧を感じた。

 稲生:「特徴が……『青い目の人形』に似てますね?」
 マリア:「ああ。ちょっと会話してみる……。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ……」

 マリアはダンテ一門オリジナルの呪文を唱えると、人形に手を触れた。
 次の瞬間、元々目を開けていた人形の目が、更にカッと見開かれた上、マリアだけがそこから暴風を受けたかのように、髪や服が大きく揺れた。

 マリア:「うっ……ううっ!……うう……!」

 マリアの頭の中に、この人形の言いたいことが全部流れ込んで来る。
 マリアの両目から涙が溢れて来た。

 稲生:「マリアさん!?」

 稲生はポケットからハンカチを取り出して、マリアに渡した。
 手を離したマリアが涙を拭きながら言った。

 マリア:「間違いない。この人形は1927年、アメリカから日本に寄贈された『青い目の人形』の1体だ……」
 田部井:「1927年!?今から約100年前の人形!?相当な値打物ですか!?」
 マリア:「この人形の名前はメリー。アメリカのパスポートも渡されていたはずだが、それは無い?」
 佐野:「いや、この箱の中に入っていたのはこの人形だけです」

 戦後、何十年も経ってから発見された青い目の人形は何体かあったが、パスポートまでセットで発見された個体は少ないという。

 マリア:「この人形は静岡中央女学園に寄贈されたものだという……」
 稲生:「静岡中央女学園。多分、今は名前が変わっているのでは?」
 佐野:「そうです。確か今は、静岡中央学園の中学校・高校になっているはずです。……ああ、それで思い出しました。私の母はそこの卒業生なんです」
 稲生:「静岡中央学園は、東京中央学園の姉妹校ですよ。この学校法人、元々は女学校から始まりましたから。その名残で、今も高等部は女子の方が数が多い」
 佐野:「おかしいですね。母は何も言っていませんでしたが……」

 佐野の母親は既に他界している為、本人から話を聞くことはできない。

 マリア:「もう少し詳しく話を聞いてみる」

 マリアは更に透視を続けることにした。
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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 富士市内

2021-06-27 11:34:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月22日08:30.天候:晴 静岡県富士市 JR富士駅南口→身延線ホーム]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、富士駅南口です」〕

 バスが終点に到着する。
 ここから見えるホームは比較的遠く、多くの線路を挟んだ先にある。
 そこから見える東海道本線は、この辺りではローカル区間であり、電車もラッシュ時は5~6両編成といったところである。
 バスを降りて駅の中に入ると、一応まだ朝のラッシュ時であることが伺えた。
 始業時間が程近いのか、学生の姿はあまり無く、むしろ通勤客の方が多い。
 だが、中には学校に遅刻しそうなのか、駅構内を全力ダッシュする学生の姿も。
 とはいうものの、トーストを咥えたまま走る女子中高生の姿はさすがに無い。
 地方駅でも、朝ラッシュの光景の基本は変わらぬということだ。

 稲生:「ここまで来ても、さっきのバスみたいにSuicaが使えるのは便利です」
 マリア:「確かに」

 富士駅の改札口も自動化されており、Suicaを使って通過する。
 もっとも、この辺りはJR東海なので、エリア的にはToikaとなる(でも、地元の路線バスはPasmoを主張している)。

 稲生:「特急はさすがに乗れないよな……」

 稲生はコンコースの発車標を見て呟いた。
 先発の身延線下りは特急“ふじかわ”1号。

 マリア:「そう?」
 稲生:「あれだと西富士宮駅、止まらないので」

 急行“ふじかわ”時代は停車していた。

 マリア:「ふーん……」
 稲生:「次の電車は8時52分発か……。これでも、身延線では本数の多い区間なんですよ」
 マリア:「別にいいよ。急いでるわけじゃないし」

 

 稲生:「今のうちに田部井さんに電話しておこう」

 身延線のホームは、幾分東海道本線のホームよりは人が少ない。
 そのホームに下りると、稲生は自分のスマホを取り出した。

 マリア:「ミスター田部井もいるの?」
 稲生:「言い出しっぺは自分だからと、立ち会ってくれるみたいです。それに、いくら同じお寺の信徒さんでも、僕とはあまり面識が無い人達ですから。田部井さんという仲介人が立ち会ってくれる方がいいでしょう」
 マリア:「なるほど」

 稲生は田部井に電話した。

 稲生:「あ、もしもし、田部井さん。稲生です。今、富士駅にいまして……はい。8時52分発の電車に乗りますので、9時半頃にはそちらの御宅に到着するかと……はい。是非、よろしくお願いします」
 マリア:「ミスター田部井は迎えに来てくれないのか?」
 稲生:「フェアレディZじゃ、3人乗れないから」
 マリア:「ああ、あの赤い車……」

 信徒が乗り回す分にはまだ『功徳』だから良いが、僧侶が乗り回すと批判の的になるのだから不思議なものだ。
 尚、作者の父方の菩提寺の住職氏はハーレーダビッドソンを【お察しください】。
 さすが真言宗は景気いいなぁ!


 稲生:「ま、駅からタクシーも出ているので、それで行こう」
 マリア:「分かった。……ああ、それで現金ね」
 稲生:「そういうこと」

[同日08:52.天候:晴 身延線3533G列車先頭車内]

 

 しばらくして、折り返しの普通列車が1番線に入線してきた。
 2両編成のワンマン列車である。

 

 東海道本線を走る同じ形式の電車はオールロングシートだが、身延線のはロングシートとボックスシートが組み合わされたセミクロスシートである。
 名古屋駅付近を走る転換クロスシート車は、基本静岡支社管内にはいない。
 電車に乗り込むと、稲生とマリアはボックスシートに向かい合って座った。
 今は駅舎に隠れているが、下りの進行方向右側に乗ると、富士山側である。

〔「お待たせ致しました。8時52分発、身延線の普通列車、西富士宮行き、まもなく発車致します」〕

 ワンマン列車なので、肉声放送は運転士が行う。
 また、ホームにベルやメロディは流れない。
 車両に取り付けられた車外スピーカーから、発車メロディが流れる。
 ドア開閉時に流れるチャイムは、首都圏では京王電車のそれと音色が同じ。
 そして、電車が走り出した。
 朝ラッシュの終わり掛けであるが、車内はそんなに混んでいない。
 稲生達の座る4人用ボックスシートも、まだ相席になることはなかった。

〔お待たせ致しました。次は柚木、柚木です。柚木では、後ろの車両のドアは開きません。お降りのお客様は、前の車両にお移りください〕

 マリア:「あれから人形に、何か異常はあったかどうか聞いた?」
 稲生:「いえ、そこまでは……。ただ、もし何か異常があったら、僕に言ってくるはずですからね」
 マリア:「そう」
 稲生:「実は僕、少し気になって調べてみたんだけどね……」
 マリア:「なに?」
 稲生:「マリアがあの人形を透視してみて、アメリカのパスポートが映ったってことだけども……」
 マリア:「一瞬だけね」
 稲生:「実はそれだけで、ある人形達のことがヒットしたんだ」
 マリア:「何それ?」
 稲生:「『青い目の人形』」
 マリア:「『青い目の人形』?」
 稲生:「第2次世界大戦前、アメリカから日本に大量に送られた西洋人形のことだよ。あくまで民間レベルでの、日米親善活動の一環だったらしいんだけど……」
 マリア:「第2次世界大戦前とはいえ、結局その後のことを考えたら、その活動は失敗だったのでは?」
 稲生:「そういうことになる」
 マリア:「アメリカ政府が関わってるのなら、私の手に負えないかもしれないよ?」
 稲生:「その時は、先生にお願いすればいいよ。先生達の中には、アメリカ政府高官に何か言える人もいるでしょ?」
 マリア:「いると思うね。誰だったかなぁ……」

 イリーナとかアナスタシアはロシア政府だし、マルファはフランス、ポーリンはイギリスと……。

 稲生:「まあ、あくまでも可能性だから。人形の特徴と、アメリカのパスポートという特徴が一致しただけのね」
 マリア:「私がこれから見に行く人形以外で、そういう人形は現存している?」
 稲生:「してるしてる!何体かは今でも一般公開されてるくらいだよ」
 マリア:「ほお!」

 マリアは久しぶりに目を丸くした。

 マリア:「是非、見てみたいものだ」
 稲生:「後で検索しておくよ」
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