[5月6日15:15.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→山手線1411G電車11号車内]
リサは絵恋と一緒に帰路に就いた。
上野駅に行くと、通勤電車や中距離電車などは運転を再開していたが、新幹線はまだ止まっていた。
どうやら地震の影響で停電が発生したらしい。
〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕
ホームから吊り下げられた発車標を見ても、時刻表記は消えている。
地震の影響でダイヤが乱れているのだろう。
〔「3番線、ご注意ください。山手線、外回り電車の到着です」〕
通勤電車は運転を再開していることから、特に待ち時間なども無く、すぐに電車がやってきた。
〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます〕
2人は1番後ろの車両に乗り込んだ。
元々上野駅北寄りの改札口を利用しているので、どうしても電車は後ろの車両になりがちである。
しかしそれでも1番後ろに乗るのは、偏にリサがBSAAやデイライトからの監視対象になっているからである。
〔「運転間隔調整を行います。当駅で2分ほど停車致します。発車まで、しばらくお待ちください」〕
フワッとした座席に腰かけると、そんな放送が流れて来た。
〔「13時2分頃に発生しました地震の影響により、首都圏のJR各線に大きな遅れが発生しております。尚、各新幹線につきましては、先ほど15時頃、運転を再開しております。……」〕
ポロロローン♪とチャイムが鳴り、ドアの上のモニタにある運行情報も新幹線の運転再開を伝えていた。
2時間以上の遅れが発生するのは必至であり、特急料金の払い戻しが発生するだろう。
リサ:「地下鉄は走ってるかな?」
絵恋:「あー、そうねぇ……」
絵恋は自分のスマホで運行情報を検索した。
絵恋:「どうやら走ってるみたいね。かなり遅れてるみたいだけど……」
リサ:「走っているならそれでいい」
絵恋:「まあ、そうね」
〔「お待たせ致しました。山手線外回り、東京、品川方面行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください。運転間隔調整に御協力頂きまして、ありがとうございました」〕
ホームに発車ベルの音が鳴り響く。
上野駅の通勤電車のホームは、メロディではなく、従来からのベルである。
〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
絵恋:「やれやれ。やっと帰れるわ」
リサ:「あとは地下鉄か……」
電車が走り出す。
〔この電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕
絵恋:「リサさん、ところでさ……」
リサ:「なに?」
絵恋:「新聞部員に、学校の七不思議の特集の取材を頼まれたって聞いたけど……」
リサ:「ああ、頼まれた」
絵恋:「リサさん、それ受けるの?」
リサ:「受けるつもり。まだ、だいぶ先だけどね」
絵恋:「うちのお父さん、あの学園の卒業生なんだけど……」
リサ:「知ってる」
絵恋:「お父さんから聞いたんだけど、あの集まり、無事に終わらなかった回もあったって話だよ?」
リサ:「無事に終わらなかった?」
絵恋:「うん。例えば、集まりの最中に身内に不幸が相次いで途中で中止になったり、ある回では語り部が発狂して新聞部員に襲い掛かって中止になったりとかあったみたい」
リサ:「ほお……」
リサの目が一瞬、金色に光った。
絵恋:「ほ、本当よ!私、ウソついてない!」
リサ:「分かってるよ。面白そうじゃない。だったら、『恐怖を与える側』代表のつもりで参加してやるよ」
絵恋:「で、でも危険じゃない?いくらリサさんが、あの“トイレの花子さん”と知り合いだからって……」
リサ:「大丈夫。もし他に『人ならざるモノ』が来ようものなら、そいつ締め上げて学園の黒い秘密吐かせる」
絵恋:「ええっ!?」
リサ:「それが白井の居場所や、アンブレラの秘密に繋がることだったら万々歳だよ」
[同日15:20.天候:曇 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅→同区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]
〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます〕
2人を乗せた山手線電車は、所要時間を2分増やして到着した。
2人にとっては乗車時間が2分増えただけだが、この電車そのもののトータルの遅延時間はどのくらいか【お察しください】。
しかも、更に遅れが広がる表示が出ている。
ホームから吊り下げられている、JR関係者用の表示器に『延発』という表示が出ていたのだ。
そこには『2145』という数字も交互に表示されている。
リサ:「あれはこの電車に、更に時間調整をしろという合図。発車時間は15時21分45秒という意味」
絵恋:「よく知ってるわね!?」
リサ:「愛原先生に教えてもらった。愛原先生、鉄ヲタだから」
絵恋:「ああ、そういうことなの」
リサ:「きっと電車内で殺人事件でも起こったら、先生が名推理で解決してくれそう」
絵恋:「それ以前に、探偵さんが推理をするような殺人事件が起きないよ」
そんなことを話しながら、まずはエスカレーターでコンコースに下りる。
それから今度は、昭和通り口に向かう為にまたエスカレーターを昇らなくてはならない。
因みにこのエスカレーターは、中央・総武線ホームに向かうものでもある。
そのコンコースに上がり、今度は昭和通り口に出る為にまたエスカレーターを下りなくてはならない。
全てエスカレーターを利用できるのだが、利用する路線・出入口によっては、アップダウンを繰り返させられる駅でもある。
リサ:「ん?何か、いつの間にか曇ってる?」
絵恋:「そうねぇ……。天気予報では、今日はずっと晴れのはずなのにねぇ……」
昭和通り口から駅の外に出て、リサは上空を見上げた。
リサ:「ん?」
昭和通りを南に歩いていると、神田川に架かる和泉橋を渡ることになる。
その辺りで、上空から雷の音が聞こえた。
リサ:「雷?」
絵恋:「ええっ!?」
リサ:「これは一体……」
更に南に歩いていると……。
リサ:「ん?雨?」
雷の音と共に雨が降って来た。
絵恋:「ちょっと!傘持って来てないのに!」
リサ:「駅はすぐそこだ。急ごう」
2人は走って、岩本町駅に飛び込んだ。
リサ:「ギリギリセーフ!」
絵恋:「もう……何なのよぉ」
リサ:「駅に着けばこっちのもの。早く行こう」
絵恋:「う、うん……」
2人は地下鉄駅の階段を下りた。
リサ:(これも何がしかの警告?だけど、私は脅しに屈しない)
新聞部の取材は7月初め頃を予定しているという。
これは本来、夏休み中に旧校舎が取り壊されることになった1995年、夏休み前の特別企画として銘打たれた名残である。
もちろん、“トイレの花子さん”やその他もろもろの旧校舎に棲む『モノ』達の妨害により、取り壊し計画は頓挫。
教育資料館としてリニューアルし、未だ学園内にその存在感を示し続けている。
リサは絵恋と一緒に帰路に就いた。
上野駅に行くと、通勤電車や中距離電車などは運転を再開していたが、新幹線はまだ止まっていた。
どうやら地震の影響で停電が発生したらしい。
〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕
ホームから吊り下げられた発車標を見ても、時刻表記は消えている。
地震の影響でダイヤが乱れているのだろう。
〔「3番線、ご注意ください。山手線、外回り電車の到着です」〕
通勤電車は運転を再開していることから、特に待ち時間なども無く、すぐに電車がやってきた。
〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます〕
2人は1番後ろの車両に乗り込んだ。
元々上野駅北寄りの改札口を利用しているので、どうしても電車は後ろの車両になりがちである。
しかしそれでも1番後ろに乗るのは、偏にリサがBSAAやデイライトからの監視対象になっているからである。
〔「運転間隔調整を行います。当駅で2分ほど停車致します。発車まで、しばらくお待ちください」〕
フワッとした座席に腰かけると、そんな放送が流れて来た。
〔「13時2分頃に発生しました地震の影響により、首都圏のJR各線に大きな遅れが発生しております。尚、各新幹線につきましては、先ほど15時頃、運転を再開しております。……」〕
ポロロローン♪とチャイムが鳴り、ドアの上のモニタにある運行情報も新幹線の運転再開を伝えていた。
2時間以上の遅れが発生するのは必至であり、特急料金の払い戻しが発生するだろう。
リサ:「地下鉄は走ってるかな?」
絵恋:「あー、そうねぇ……」
絵恋は自分のスマホで運行情報を検索した。
絵恋:「どうやら走ってるみたいね。かなり遅れてるみたいだけど……」
リサ:「走っているならそれでいい」
絵恋:「まあ、そうね」
〔「お待たせ致しました。山手線外回り、東京、品川方面行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください。運転間隔調整に御協力頂きまして、ありがとうございました」〕
ホームに発車ベルの音が鳴り響く。
上野駅の通勤電車のホームは、メロディではなく、従来からのベルである。
〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
絵恋:「やれやれ。やっと帰れるわ」
リサ:「あとは地下鉄か……」
電車が走り出す。
〔この電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕
絵恋:「リサさん、ところでさ……」
リサ:「なに?」
絵恋:「新聞部員に、学校の七不思議の特集の取材を頼まれたって聞いたけど……」
リサ:「ああ、頼まれた」
絵恋:「リサさん、それ受けるの?」
リサ:「受けるつもり。まだ、だいぶ先だけどね」
絵恋:「うちのお父さん、あの学園の卒業生なんだけど……」
リサ:「知ってる」
絵恋:「お父さんから聞いたんだけど、あの集まり、無事に終わらなかった回もあったって話だよ?」
リサ:「無事に終わらなかった?」
絵恋:「うん。例えば、集まりの最中に身内に不幸が相次いで途中で中止になったり、ある回では語り部が発狂して新聞部員に襲い掛かって中止になったりとかあったみたい」
リサ:「ほお……」
リサの目が一瞬、金色に光った。
絵恋:「ほ、本当よ!私、ウソついてない!」
リサ:「分かってるよ。面白そうじゃない。だったら、『恐怖を与える側』代表のつもりで参加してやるよ」
絵恋:「で、でも危険じゃない?いくらリサさんが、あの“トイレの花子さん”と知り合いだからって……」
リサ:「大丈夫。もし他に『人ならざるモノ』が来ようものなら、そいつ締め上げて学園の黒い秘密吐かせる」
絵恋:「ええっ!?」
リサ:「それが白井の居場所や、アンブレラの秘密に繋がることだったら万々歳だよ」
[同日15:20.天候:曇 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅→同区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]
〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます〕
2人を乗せた山手線電車は、所要時間を2分増やして到着した。
2人にとっては乗車時間が2分増えただけだが、この電車そのもののトータルの遅延時間はどのくらいか【お察しください】。
しかも、更に遅れが広がる表示が出ている。
ホームから吊り下げられている、JR関係者用の表示器に『延発』という表示が出ていたのだ。
そこには『2145』という数字も交互に表示されている。
リサ:「あれはこの電車に、更に時間調整をしろという合図。発車時間は15時21分45秒という意味」
絵恋:「よく知ってるわね!?」
リサ:「愛原先生に教えてもらった。愛原先生、鉄ヲタだから」
絵恋:「ああ、そういうことなの」
リサ:「きっと電車内で殺人事件でも起こったら、先生が名推理で解決してくれそう」
絵恋:「それ以前に、探偵さんが推理をするような殺人事件が起きないよ」
そんなことを話しながら、まずはエスカレーターでコンコースに下りる。
それから今度は、昭和通り口に向かう為にまたエスカレーターを昇らなくてはならない。
因みにこのエスカレーターは、中央・総武線ホームに向かうものでもある。
そのコンコースに上がり、今度は昭和通り口に出る為にまたエスカレーターを下りなくてはならない。
全てエスカレーターを利用できるのだが、利用する路線・出入口によっては、アップダウンを繰り返させられる駅でもある。
リサ:「ん?何か、いつの間にか曇ってる?」
絵恋:「そうねぇ……。天気予報では、今日はずっと晴れのはずなのにねぇ……」
昭和通り口から駅の外に出て、リサは上空を見上げた。
リサ:「ん?」
昭和通りを南に歩いていると、神田川に架かる和泉橋を渡ることになる。
その辺りで、上空から雷の音が聞こえた。
リサ:「雷?」
絵恋:「ええっ!?」
リサ:「これは一体……」
更に南に歩いていると……。
リサ:「ん?雨?」
雷の音と共に雨が降って来た。
絵恋:「ちょっと!傘持って来てないのに!」
リサ:「駅はすぐそこだ。急ごう」
2人は走って、岩本町駅に飛び込んだ。
リサ:「ギリギリセーフ!」
絵恋:「もう……何なのよぉ」
リサ:「駅に着けばこっちのもの。早く行こう」
絵恋:「う、うん……」
2人は地下鉄駅の階段を下りた。
リサ:(これも何がしかの警告?だけど、私は脅しに屈しない)
新聞部の取材は7月初め頃を予定しているという。
これは本来、夏休み中に旧校舎が取り壊されることになった1995年、夏休み前の特別企画として銘打たれた名残である。
もちろん、“トイレの花子さん”やその他もろもろの旧校舎に棲む『モノ』達の妨害により、取り壊し計画は頓挫。
教育資料館としてリニューアルし、未だ学園内にその存在感を示し続けている。