報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「帰り道」

2021-06-19 19:47:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月6日15:15.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→山手線1411G電車11号車内]

 リサは絵恋と一緒に帰路に就いた。
 上野駅に行くと、通勤電車や中距離電車などは運転を再開していたが、新幹線はまだ止まっていた。
 どうやら地震の影響で停電が発生したらしい。

〔まもなく3番線に、東京、品川方面行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 ホームから吊り下げられた発車標を見ても、時刻表記は消えている。
 地震の影響でダイヤが乱れているのだろう。

〔「3番線、ご注意ください。山手線、外回り電車の到着です」〕

 通勤電車は運転を再開していることから、特に待ち時間なども無く、すぐに電車がやってきた。

〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます〕

 2人は1番後ろの車両に乗り込んだ。
 元々上野駅北寄りの改札口を利用しているので、どうしても電車は後ろの車両になりがちである。
 しかしそれでも1番後ろに乗るのは、偏にリサがBSAAやデイライトからの監視対象になっているからである。

〔「運転間隔調整を行います。当駅で2分ほど停車致します。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 フワッとした座席に腰かけると、そんな放送が流れて来た。

〔「13時2分頃に発生しました地震の影響により、首都圏のJR各線に大きな遅れが発生しております。尚、各新幹線につきましては、先ほど15時頃、運転を再開しております。……」〕

 ポロロローン♪とチャイムが鳴り、ドアの上のモニタにある運行情報も新幹線の運転再開を伝えていた。
 2時間以上の遅れが発生するのは必至であり、特急料金の払い戻しが発生するだろう。

 リサ:「地下鉄は走ってるかな?」
 絵恋:「あー、そうねぇ……」

 絵恋は自分のスマホで運行情報を検索した。

 絵恋:「どうやら走ってるみたいね。かなり遅れてるみたいだけど……」
 リサ:「走っているならそれでいい」
 絵恋:「まあ、そうね」

〔「お待たせ致しました。山手線外回り、東京、品川方面行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください。運転間隔調整に御協力頂きまして、ありがとうございました」〕

 ホームに発車ベルの音が鳴り響く。
 上野駅の通勤電車のホームは、メロディではなく、従来からのベルである。

〔3番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 絵恋:「やれやれ。やっと帰れるわ」
 リサ:「あとは地下鉄か……」

 電車が走り出す。

〔この電車は山手線外回り、東京、品川方面行きです。次は御徒町、御徒町。お出口は、左側です。都営地下鉄大江戸線は、お乗り換えです〕

 絵恋:「リサさん、ところでさ……」
 リサ:「なに?」
 絵恋:「新聞部員に、学校の七不思議の特集の取材を頼まれたって聞いたけど……」
 リサ:「ああ、頼まれた」
 絵恋:「リサさん、それ受けるの?」
 リサ:「受けるつもり。まだ、だいぶ先だけどね」
 絵恋:「うちのお父さん、あの学園の卒業生なんだけど……」
 リサ:「知ってる」
 絵恋:「お父さんから聞いたんだけど、あの集まり、無事に終わらなかった回もあったって話だよ?」
 リサ:「無事に終わらなかった?」
 絵恋:「うん。例えば、集まりの最中に身内に不幸が相次いで途中で中止になったり、ある回では語り部が発狂して新聞部員に襲い掛かって中止になったりとかあったみたい」
 リサ:「ほお……」

 リサの目が一瞬、金色に光った。

 絵恋:「ほ、本当よ!私、ウソついてない!」
 リサ:「分かってるよ。面白そうじゃない。だったら、『恐怖を与える側』代表のつもりで参加してやるよ」
 絵恋:「で、でも危険じゃない?いくらリサさんが、あの“トイレの花子さん”と知り合いだからって……」
 リサ:「大丈夫。もし他に『人ならざるモノ』が来ようものなら、そいつ締め上げて学園の黒い秘密吐かせる」
 絵恋:「ええっ!?」
 リサ:「それが白井の居場所や、アンブレラの秘密に繋がることだったら万々歳だよ」

[同日15:20.天候:曇 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅→同区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます〕

 2人を乗せた山手線電車は、所要時間を2分増やして到着した。
 2人にとっては乗車時間が2分増えただけだが、この電車そのもののトータルの遅延時間はどのくらいか【お察しください】。
 しかも、更に遅れが広がる表示が出ている。
 ホームから吊り下げられている、JR関係者用の表示器に『延発』という表示が出ていたのだ。
 そこには『2145』という数字も交互に表示されている。

 リサ:「あれはこの電車に、更に時間調整をしろという合図。発車時間は15時21分45秒という意味」
 絵恋:「よく知ってるわね!?」
 リサ:「愛原先生に教えてもらった。愛原先生、鉄ヲタだから」
 絵恋:「ああ、そういうことなの」
 リサ:「きっと電車内で殺人事件でも起こったら、先生が名推理で解決してくれそう」
 絵恋:「それ以前に、探偵さんが推理をするような殺人事件が起きないよ」

 そんなことを話しながら、まずはエスカレーターでコンコースに下りる。
 それから今度は、昭和通り口に向かう為にまたエスカレーターを昇らなくてはならない。
 因みにこのエスカレーターは、中央・総武線ホームに向かうものでもある。
 そのコンコースに上がり、今度は昭和通り口に出る為にまたエスカレーターを下りなくてはならない。
 全てエスカレーターを利用できるのだが、利用する路線・出入口によっては、アップダウンを繰り返させられる駅でもある。

 リサ:「ん?何か、いつの間にか曇ってる?」
 絵恋:「そうねぇ……。天気予報では、今日はずっと晴れのはずなのにねぇ……」

 昭和通り口から駅の外に出て、リサは上空を見上げた。

 リサ:「ん?」

 昭和通りを南に歩いていると、神田川に架かる和泉橋を渡ることになる。
 その辺りで、上空から雷の音が聞こえた。

 リサ:「雷?」
 絵恋:「ええっ!?」
 リサ:「これは一体……」

 更に南に歩いていると……。

 リサ:「ん?雨?」

 雷の音と共に雨が降って来た。

 絵恋:「ちょっと!傘持って来てないのに!」
 リサ:「駅はすぐそこだ。急ごう」

 2人は走って、岩本町駅に飛び込んだ。

 リサ:「ギリギリセーフ!」
 絵恋:「もう……何なのよぉ」
 リサ:「駅に着けばこっちのもの。早く行こう」
 絵恋:「う、うん……」

 2人は地下鉄駅の階段を下りた。

 リサ:(これも何がしかの警告?だけど、私は脅しに屈しない)

 新聞部の取材は7月初め頃を予定しているという。
 これは本来、夏休み中に旧校舎が取り壊されることになった1995年、夏休み前の特別企画として銘打たれた名残である。
 もちろん、“トイレの花子さん”やその他もろもろの旧校舎に棲む『モノ』達の妨害により、取り壊し計画は頓挫。
 教育資料館としてリニューアルし、未だ学園内にその存在感を示し続けている。
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“愛原リサの日常” 「臨時休講」

2021-06-19 14:00:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月6日14:30.天候:晴 東京中央学園上野高校1F保健室]

 斉藤絵恋:「失礼します!」

 突然、ガラッと保健室のドアを開けて入る絵恋。

 養護教諭:「あら?何か御用かしら?」
 絵恋:「1年5組の斉藤絵恋です!愛原リサさんを迎えに来ました!」
 養護教諭:「元気一杯ね。そろそろ、いいかしら?」
 絵恋:「私が見に行きます!」

 絵恋は養護教諭の話も聞かずに、閉じられたカーテンをサッと開けた。

 男子生徒:「うーん……。なに……?」
 絵恋:「な……な……な……!ちょっとォ!何でアンタがリサさんのベッドで寝てるのよ!?どーゆーこと!?どーゆーこと!?説明しなさい!!」
 男子生徒:「な、何なんだ!?何なんだ!?何なんだよ!?」
 養護教諭:「落ち着きなさい、斉藤さん。愛原さんなら、この隣よ」

 養護教諭は隣のカーテンを開けた。

 リサ:「うるさいなぁ……」

 絵恋は眠そうな目を擦りながら起き上がった。

 絵恋:「良かったーっ!リサさーん!地震のせいで本棚の下敷きになったって聞いたから、私もー心配で心配でーっ!」
 リサ:「はあ?私が本棚の下敷き?」
 養護教諭:「何言ってるの、斉藤さん。愛原さんは、倒れて来た本棚に腰が当たっただけよ」
 絵恋:(本当は下敷きになったんだけど……)
 養護教諭:「それより、具合の方はどう?」
 リサ:「あ、はい。もう大丈夫です」
 養護教諭:「そう。じゃあ、気をつけて帰るのよ。倉田先生と坂上先生には、私から言っておくから」
 絵恋:「え?私、早退ですか?」

 時間帯的には5時限目の授業が終わった頃である。
 あとはもう1時限あるはずだが……。

 養護教諭:「ああ、そうか。愛原さんは知らないのね。あの地震のあと、少し強めの余震が何度かあったから、安全の為に6時限目の授業は休講になったのよ。本当はもう午後の授業から取り止めにするべきだという意見もあったんだけど、ほら、ああいう大きな地震の後って電車とかも止まってるから、帰るに帰れないじゃない?電車が復旧する頃合いを見計らってってことで、5時限目まではやることにしたのよ」
 リサ:「そうだったんですか」

 リサは大きく伸びをして、それからベッドから起き上がった。
 その際、リサが大きく足を開く形でベッドから足を出したので、スカートの中が丸見え状態になる。

 絵恋:「リサさん、スカート……はっ!」

 その時、絵恋の後ろに感じる視線。
 バッと後ろを振り向くと、先ほどの男子生徒がカーテンの隙間からこちらを見ていたのが分かった。

 絵恋:「ちょっとアンタ!何覗いてんてのよ!?っていうか今、リサさんのスカートの中見たでしょ!?え!?こら、ちゃんと白状しなさい!!」
 男子生徒:「き、キミ達が騒がしいから、気になって見てたんじゃないかー!」
 養護教諭:「斉藤さん、落ち着きなさい」
 リサ:「サイトー、落ち着いて。スパッツ穿いてるから」
 絵恋:「そういう問題じゃないのよ!」
 養護教諭:「うーん……。愛原さんも、もう少しお行儀良くする?」
 リサ:「私、行儀悪いですか?」
 養護教諭:「まあ、鈴木君のことは愛原さんの後から来たから知らないけど、保健室のベッドの数は限られてるからね。もちろんカーテンでは仕切るけど、隣のベッドに寝るのが同性とは限らないのよ?」
 リサ:「はあ……分かりました」

 愛原家には男2人しかいないので、行儀がどうとかは余程悪くない限り注意されることはない。

 絵恋:「リサさん、一緒に帰りましょ」
 リサ:「分かった。ちょっと荷物取ってくる」
 絵恋:「! ごめんなさい!私、ついでに持ってくれば良かったね!」
 リサ:「いいよ。荷物くらい自分で取って来る」

 リサは保健室から出ると、絵恋と一緒に教室に向かった。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「こちらは生徒会です。6時限目の授業は中止となりました。また、各部活動についても中止となっております。13時2分に発生しました大地震の影響により、余震が相次いで発生しております。安全の為の措置ですので、校内に残っている生徒は速やかに帰宅してください。尚、明日の授業につきましては、通常通り行われる予定です。……」〕

 生徒会が放送している中……。

 リサ:「まだ揺れてる……」

 1年生の教室に向かう階段を昇っていると、また地震が発生した。
 今度はユラユラと揺れる程度で、震度1か2といったところだろう。

 絵恋:「これ、昔だったらきっと災害クラスだったんでしょうね」
 リサ:「被害は無い?」
 絵恋:「うちの学校はね。だけど、都内だってケガした人が何人かいた程度よ。この学校で1番ケガをした生徒って、リサさんだけよ」
 リサ:「なるほど。てか、あの本棚、私じゃなかったらケガじゃ済まなかったかもよ」
 絵恋:「でしょうね。リサさんだから、湿布だけで済んだのよ」
 リサ:「全く」

 というか、湿布自体も要らなかった。
 誰もいない教室に行くと、リサは自分の席に行き、自分の鞄を取った。

 リサ:「よし」

 これがゲームだと、教室内を探索して、色々とクリアに必要なアイテムを手に入れたり、情報を仕入れたりするのだろう。
 だが、これはゲームではない。

 リサ:「ん?」

 しかし、リサは自分の机の中に、ある物が入っているのを見つけた。
 それは1枚のメモ書き。

 リサ:「これは……」

 『七不思議を知る者には死を!それが昔からの理!

 リサ:「ほお……!」

 リサは一瞬、第1形態に戻りかけた。
 人ならざるモノから挑発を受けた感じになったのだ。

 絵恋:「どうしたの、リサさん?」
 リサ:「いや……。何でもない。帰ろう」

 リサはメモ書きをスカートのポケットの中にしまった。

 リサ:「! ちょっと待って」
 絵恋:「え?」

 校舎の外に出ると、リサはふと思いついた。

 リサ:「ちょっと旧校舎行ってくる」
 絵恋:「ちょっとの感覚で行くような場所じゃないと思うけど……」
 リサ:「サイトーは無理してついてくることはない。先に帰ってて」
 絵恋:「い、行きたくないけど、リサさんとは一緒に帰りたいから、ちょっとその辺で待ってるわ」
 リサ:「分かった」

 リサは旧校舎に向かって行った。
 そして、鞄の中から白い仮面を取り出して装着する。

 トイレの花子さん:「やっぱり来たか。来ると思っていたよ」
 リサ:「花子さん?それはどういうこと?というか、旧校舎に被害は?」
 花子さん:「私がここを仕切っている間は、何も起こさせないよ。それより、新校舎で何かキナ臭いものを感じる。何か変わったことは無かったか?」
 リサ:「やっぱり知ってるんだ。これは知ってる?」

 リサはポケットの中からメモ書きを取り出した。

 花子さん:「! もしかして今年、あの集まりをやるつもりなのか!?」
 リサ:「そうらしいね。で、私が誘われた」
 花子さん:「性懲りも無く、またやるつもりなのか……」
 リサ:「これを書いたのは花子さん?」
 花子さん:「まさか。私のテリトリーはこの校舎のみ。わざわざ向こうにまで行って、こんな回りくどいことはせんよ」
 リサ:「そっかぁ……」
 花子さん:「だが、キナ臭いものを感じる。面倒な事に巻き込まれたくなかったら、その集まりには参加しないことだ」
 リサ:「なるほど、分かった」
 花子さん:「分かるか?まだ『誘われただけ』のあなたが、ピンポイントでこんな警告を送って来る相手だぞ?よく考えるんだよ?」
 リサ:「うん、分かった」

 リサはそう言って、旧校舎をあとにした。

 花子さん:「今や向こう(新校舎)の方が、ここより危険な所となっている。あのコも大変だ……」
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