報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 新富士→富士

2021-06-26 20:51:55 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月21日22:00.天候:曇 静岡県富士市 東横イン新富士駅南口]

 客室のテレビで映画を観る稲生とマリア。

〔「高橋、車を回してくれ。俺達は俺達で、BSAA極東支部に向かうぞ」「分かりました」 BSAA欧州本部には、あのクリス・レッドフィールド氏が向かったと聞く。BSAAの闇落ちは本部だけではないのだろうか。私達の仕事は、まだまだ続きそうだ。〕

 稲生:「ここで終わりかぁーっ!」
 マリア:「“THe Tantei Manabu Aihara”は長いシリーズになりそうだな」
 稲生:「“Android Master”はいつの間にか終わってたのにねぇ……」
 マリア:「朝も早かったし、そろそろ寝るわ」

 マリアは大きく伸びをした。

 稲生:「そう。マリアが乗り気じゃないならいいや」
 マリア:「ああ……。明日はあの人形と対面することを考えたら、体力は温存しておきたい。このミッションが終わったら……ね」
 稲生:「分かった。楽しみにしてるよ。それじゃ」
 マリア:「明日は何時にチェックアウトする?」
 稲生:「うーん……。8時にはここを出たい。バスに乗り換えて、富士宮に向かうから」
 マリア:「分かった。おやすみ」
 稲生:「お休み」

 稲生は自分の部屋のカードキーを手に取ると、部屋を出た。

 マリア:「よし」

 マリアは稲生が出て行ったのを確認してから、人形に命じた。

 マリア:「バスタブに湯を張って来て」
 ミク人形:「Yes,sir!」

 ミク人形がトテトテと歩いて、バスルームに向かう。

 マリア:「着替えを用意して」
 ハク人形:「Yes,sir!」

 ハク人形はマリアのローブの中から、替えの下着を取り出した。

 マリア:「映画を観てる最中、勇太が襲って来ないかなと思ってたけど、そんなことは無かった。紳士的で素晴らしいけど、ちょっと寂しい……」
 ハク人形:「?」
 ミク人形:「?」
 マリア:「いや、何でも無い」

[6月22日06:00.天候:晴 同ホテル客室 稲生の部屋]

 稲生は訳の分からない夢を見て目が覚めた。
 枕が変わると、往々にしてそういうことはある。
 だが、今回の場合は比較的はっきりとした夢だったが、脈絡的には何も無いものであった。
 それが以下。

 エレーナ:「おーい、稲生氏。もしかして、私のパンツ持ってってなーい?」
 稲生:「ご、ゴメン。持ってった」
 エレーナ:「やっぱりなぁ。返せよ」
 稲生:「ほ、本当にゴメン」
 エレーナ:「いいぜ。返してくれれば」
 稲生:「ちょっと使っちゃった」
 エレーナ:「ん?何か言ったか?」

 というもの。

 稲生:「エレーナ、どこから出て来たよ……」

 稲生は鳴り響くスマホのアラームを止めると起き上がった。
 そして、窓のカーテンを開く。
 今朝は昨日と打って変わって、カラッと晴れていた。

 稲生:「よしっ、今日はいい日になりそうだ!」

 稲生は急いでバスルームに入り、朝の身支度を整えた。
 そして……。

 稲生:「えーと……新富士駅がそこにあるから……東京はあっちの方だな。で、大石寺が向こうか。よし。南無妙法蓮華経、南無妙蓮華経、南無妙法蓮華経……」

 東の方を向いて、まずは題目三唱をしたのだった。

[同日07:15.天候:晴 同ホテル1F・朝食会場]

 朝の勤行を終えた稲生は、マリアを伴って朝食会場に向かった。
 ベタな法則通り、バイキング形式である。
 コロナ禍の影響から、一時期はバイキング形式を取り止めにしたそうだが、今は復活している。

 稲生:「おにぎりと玉子焼きとウィンナーと……」
 マリア:「勇太、この食事は無料なんだろう?」
 稲生:「そうです。食べ放題ですよ」

 因みにドリンクバーもある。
 人形達にあっては、ドリンクバーのジュースだけ飲んでいた。

 マリア:「多分、宿泊料金の中に入ってるんだろうな」
 稲生:「そうですね。多分、飛行機の機内食と同じですよ」
 マリア:「ああ、そうか」
 稲生:「外国ではなかなか無いでしょう?朝食代が宿泊料金の中に入ってるって」
 マリア:「師匠が泊まるような大きなホテルでは無いな。イン(Inn)みたいな所とかは、たまにそういう所も……あっ、だから規模はHotelなのに、名前はInnなのか」
 稲生:「あ、そういうこと!?」
 マリア:「ここはルームサービスやレストランが無い代わりに、宿泊者専用で朝食は出す。だけど、師匠が泊まるような大きなホテル(シティホテル)はレストランがあるから、食事はそこで別料金で取るか、あるいはルームサービスを取って食べる」
 稲生:「あー、確かに先生と一緒だと予算がいっぱいあるから、シティホテルに泊まれるんだよね」

 一応今回の旅行もプラチナカードを渡されているということは、ぶっちゃけて言えば予算が潤沢にあるということではある。
 しかし、弟子の身分であることを考えると、大っぴらに贅沢はできないのが常識だろう。
 だから稲生も、駅前にあって便利とはいえ、リーズナブルなチェーンホテルに宿泊したのだ。

 稲生:「ルームサービスがメチャクチャ高いのにはビックリした」
 マリア:「ルームサービスがあるようなホテルは、だいたいどこも高いよ」
 稲生:「凄いなぁ……」
 マリア:「それより、8時にチェックアウトするんでしょ?その後は?」
 稲生:「ああ。こことは反対側、新富士駅の富士山口の方のバス停からバスに乗るよ。8時21分発だから、ここを8時過ぎに出るとちょうどいいかなと思って」
 マリア:「なるほど。分かった」

[同日08:21.天候:晴 同市内 JR新富士駅富士山口→富士急静岡バス“ゆりかご”号車内]

 ホテルをチェックアウトして、バス乗り場に向かう。
 朝のラッシュの時間帯ではあるのだが、新幹線のみの駅だと、やはり通勤電車が走っているような駅と違う雰囲気があった。

 

 

 バスは広告がラッピングされた、中型の路線バスが来た。
 それに乗り込む。

〔「8時21分発、富士駅南口行き“ゆりかご”です」〕

 バスに乗り込むと、1番後ろの席に座った。
 富士山に面したバスプールの為か、バスの車内からでも富士山はよく見える。
 7~8人の乗客を乗せたところで、発車の時間になった。

〔「発車します。お掴まりください」〕

 バスは駅前のロータリーを発車した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ ご乗車ありがとうございます。このバスは、富士駅南口行きです。次は下横割、下横割でございます。お降りの際は、押釦でお知らせください〕

 稲生:「これで富士駅まで行って、それから身延線という路線に乗り換えます」
 マリア:「かなり田舎にあるんだろうね」
 稲生:「田部井さんの話だと、そうでしょうね。まあ、大石寺自体が富士宮市の郊外にありますから。その富士宮市自体も、そんなに大きな町ではないので……」
 マリア:「ミスター田部井の話だと、どうして外国製の人形がそこにあったのか、それ自体が不明だそうだ」
 稲生:「ですよねぇ。あの家に住んでいる人達、一度も海外に行ったことはないし、海外から来た人を招いたことも無いと……。そういうことってあるんですか?」
 マリア:「あまり考えられないな。それでも誰かが人為的に人形をあの家に持ち込み、そしてKuraの中に放置してそのまま忘れられたんだろう。それならあの人形も哀しむのは分かる」
 稲生:「恐ろしいことにならなければいいねぇ……」
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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 東横イン新富士駅南口

2021-06-26 14:39:25 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月21日18:03.天候:曇 静岡県富士市 JR新富士駅→東横イン新富士駅南口]

〔♪♪(車内チャイム“いい日旅立ち・西へ”サビ)♪♪。まもなく、新富士です。新富士を出ますと、次は静岡に止まります〕
〔Ladies & Gentlemen.We will soon make a brief stop at Shin-Fuji.The stops after Shin-Fuiji,will be Shizuoka.Thank you.〕

 確かにマリアの言う通り、静岡県に入る頃には雨も止んでいた。
 雲も薄いせいか、外も幾分明るい。
 だが、まだまだ空が雲に覆われているせいか、車窓からはっきり見えるはずの富士山が、今日は顔を隠していた。

 稲生:「ここから富士山がよく見えるはずなのに……」
 マリア:「明日以降は晴れるから、それに期待するしかないね」
 稲生:「マリアといると、天気予報要らずだね」
 マリア:「一人前の魔道士は大抵、天気当てられるよ」
 稲生:「僕がいつまでも一人前とされない理由はそれかなぁ……」
 マリア:「でも、必須項目ではないはずだけど……」

 列車は速度を落とし、副線ホームに入った。

〔「当駅で5分ほど停車致します。発車は18時8分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 列車がホームに停車すると、ドアチャイムが鳴ってドアが開いた。
 その音色は私鉄のものとも、同じJR東海でも在来線のものとも違う。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。新富士、新富士です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。2番線に到着の電車は、18時8分発、“こだま”743号、名古屋行きです」〕

 ホームに降りて、階段に向かって歩いていると、通過列車が轟音を立てて通過していった。

 稲生:「もう駅から見えてる。今日はあのホテルに泊まるから」
 マリア:「本当に駅近」

 階段を下りて、すぐに改札口がある。

 稲生:「ようやく一泊できると分かったら、疲れて来たなぁ……」
 マリア:「魔界じゃ、殆ど歩き通しになるんだよ。電車などの交通機関が使えるのは、アルカディアシティ内だけだよ」
 稲生:「知ってるけどさぁ……」

 駅を出て、すぐ近くにあるホテルに向かう。

 マリア:「でも、さっきまでは降ってたみたいだね。何だか湿っぽい」
 稲生:「あー、それは分かる」
 マリア:「日本の夏は湿度が高いから、不快になる」
 稲生:「熱中症になるのも、湿度のせいだからねぇ……」
 マリア:「プールはどうなの?」
 稲生:「今年もプール開きやりたいけど、結局国内にいる人達しか来ないんですよねぇ……」

 マリアの屋敷の地下にはプールがある。
 コロナ禍で日本への渡航を自粛している組が多数あり、マリアの屋敷に来るのは、結局国内にいるエレーナとリリアンヌだけであった。
 が、何故か自粛しているはずのアナスタシアなどの大魔道師達が長距離瞬間移動魔法で来ることが昨年はあったが。

 稲生:「掃除は終わったんで、あとは水を入れるだけです」
 マリア:「So good.今年も泳ぐからよろしく」
 稲生:「はいはい」

 この魔女達、泳いでいる最中に『スカイクラッド』と称して水着を脱ぎ、全裸で泳ぐことがあるので、稲生は参加できないのである。

 フロント係:「いらっしゃいませー」

 ホテルの中に入り、稲生はフロントに向かった。

 稲生:「今日から一泊で予約している稲生と言いますが……」
 フロント係:「はい、稲生様ですね」

 稲生は自分の会員証を出した。
 そして、宿泊者カードにボールペンを走らせる。
 マリアはその間、イリーナから預かったカードを取り出した。

 稲生:「支払いはカードでお願いします」

 宿泊料金をカードで払う客は多いだろうが、まさかアメリカンエキスプレスのプラチナカードはいないだろう。

 フロント係:「ありがとうございます。こちら、カードキーになります」

 因みにいくら2人が相思相愛だからといって、さすがにまだ部屋は一緒にはさせてもらえない。
 シングル2部屋分ということで、カードキーを2枚もらった。
 エレベーターで客室フロアに向かう前、部屋着のガウンを取る。

 稲生:「さて、部屋はどっち向きかな……」
 マリア:「指定しなかったの?」
 稲生:「特には。ただ、禁煙の部屋にはしたよ。あとは出たとこ任せ」

 エレベーターに乗り込んで、客室フロアに向かう。

 稲生:「夕食は食べたし、あとは明日の朝までやることはない。か……」
 マリア:「映画でも観る?」

 エレベーターホールには、VODのカードの自販機があった。

 稲生:「それはいいね。飲み物は……あっ、1階の自販機か」
 マリア:「後で買いに行こう」
 稲生:「そうしましょう」

 部屋はさすがに隣同士。
 稲生が中に入ると、チェーンホテルならではのシンプルな造りになっていた。

 

 料金プランはシングルだが、ベッドはダブルサイズのものが置かれている。

 稲生:「ダブルかぁ……。2人で寝れそうだなぁ……」

 取りあえずは荷物を置いて、バタッとベッドに仰向けに倒れ込んでみる。
 その後、起き上がって、窓のカーテンを開けてみた。

 稲生:「おっ、トレイン・ビュー」

 客室は駅の方を向いていた。
 それはつまり、富士山の方を向いているということでもある。
 防音にはなっているようだが、通過列車が通過する際には微かにそのような音が聞こえて来た。
 もちろん、鉄ヲタでもある稲生には全く不快感は無い。
 むしろ、室内にあるエアコンの風や冷蔵庫のモーター音の方が大きいくらい。
 トイレに行って用を足していると、部屋の電話機が鳴った。

 稲生:「はいはい」

 電話を取る。

 稲生:「もしもし」
 マリア:「ああ、私。準備できたから、飲み物とか買いに行く?」
 稲生:「行きましょう行きましょう」

 稲生は電話を切ると、小銭入れとスマホだけを持って部屋を出た。
 もちろん、カードキーを持って行くのも忘れない。
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