報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「栃木最後の夜」

2021-06-11 20:22:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月3日20:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 那須ミッドシティホテル]

 夕食を終えた私達は、部屋に移動した。
 リサと絵恋さんは部屋に戻ると、着替えてからまた下に行くという。
 買い物にでも行くのかと思ったが、突然の宿泊延長の為、着替えが足りなくなり、ホテルのコインロッカーで洗濯してくるという。

 リサ:「サイトーはメイドさんがやってくれてるせいで洗濯機の使い方が分からないから、私がやってくる」
 絵恋:「リサさ~ん、ゴメンナサーイ」
 愛原:「大丈夫なのか?」
 リサ:「お兄ちゃんが使っているところ見てたから大丈夫」
 高橋:「俺がやってもいいぞ?」
 絵恋:「ヘンタイ!」
 高橋:「ンだとォ?!」
 リサ:「お兄ちゃん。洗濯するのは服もそうだけど、下着が多いから。私はいいけど、サイトーは嫌だって」
 愛原:「あー、そうか」
 リサ:「先生達はいいの?」
 高橋:「男なんてパンツ1つありゃ十分だ」
 愛原:「まあ、新しいのは買って来る必要がある。そこにコンビニがあるからな」
 高橋:「先生、お供します!」
 善場:「その前に、私と話がありますので」
 愛原:「分かってますよ」

 私達はエレベーターに乗り込むと、客室フロアに向かった。
 それからリサは絵恋さんと別の部屋に向かう。
 今度は二間続きの部屋ではないので、別々だ。

 愛原:「リサ達の部屋、ダブルですけど、いいんですか?」
 善場:「仲良し2人組ですからいいでしょう」
 愛原:「リサが絵恋さんを食べないとも限らんのですよ?」
 善場:「その時は【お察しください】」
 高橋:「姉ちゃん!だったら、俺達もダブルで良かったんだぞ!?」
 善場:「所長が『いい』って言ったらいいよ?」
 愛原:「断固、お断りだ」
 高橋:「ええーっ、そんなぁ……!」

 取りあえず、部屋に入る。
 因みに客室の窓からは、那須塩原駅が見える。

 善場:「それでは、ロープウェイで山頂に着いてからの事から伺いましょうか」
 愛原:「はい」

 私と主任のやり取りは小一時間ほど続いた。
 で、主任が1番関心を持ったのは高野君のことだった。

 愛原:「高野君は、善場主任もBOWと見做し、『狩る側だ』と言ってました」
 善場:「ふっ。まあ、向こうからしてみれば、そうでしょうね」

 久しぶりに善場主任はポーカーフェイスを崩し、口元を歪めた。

 高橋:「否定しねーのか?」
 善場:「否定はしますよ。でも、どんなにこっちが否定したところで、向こうは更に否定しますから」
 愛原:「やっぱり高野君は捕まえるんですか?」
 善場:「脱獄囚を捕まえるのは警察の仕事です。もちろん立場上、警察に協力はしますが、本来は管轄外ですので」
 愛原:「そこは我々探偵や、警備員と同じか」

 我々探偵や警備員とて、現行犯人は逮捕できても、指名手配犯は逮捕できない。
 例え、『おい、小池!』の小池容疑者を見つけたとしても、『オマエ、小池だな!?逮捕する!』なんてことはできないのである。
 できるのは、『この顔見たら110番』と書いてある通り、警察に通報するだけなのである。
 もちろん、通報している間に逃走する恐れは十分にあるが、さりとて捕まえてみたところで、そっくりさんなだけだったら誤認逮捕となり、通報者の方がタイーホされるシステムである(そっくりさんを指名手配犯と誤認し、通報した場合は逮捕されない。当たり前だ)。
 その為、探偵小説やドラマなどで、殺人犯を推理であぶり出す場合、都合良くそこに警察官がいなくてはダメなのである。
 一部小説家は面倒臭いのか、もう警察官を主人公にしちゃったりしている(ので、できたジャンルが刑事ドラマか)。

 愛原:「てことは主任、あれですよ?私が高野君を捕まえなかったからといって、何らかの罪になっても知りませんよ?」
 善場:「ええ。警察には、『愛原所長から私へ通報があった。なので、けして犯人隠避とは見做されない』ということにしておきます。バイオハザード事件の場合、所長は警察よりも私に通報してくれますからね」

 表向きにはNPO法人だが、その実、裏では政府機関のエージェントである善場主任らに捜査権があるのだろう。
 今現在、私の所に警察は来ていない。

 愛原:「それは助かります」
 善場:「ですので、高野を乗せたヘリがどこへ飛んで行ったかを教えてください」

 私はノートPCを開けて、電源を入れた。
 そしてこのホテルのWi-Fiに接続し、グーグルマップを出す。

 愛原:「えーと……ここが那須赤十字病院ですね。ここのヘリポートに私達を降ろした後、こっちの方角へ飛んで行きました」

 説明して改めて気づいたのだが、そこは日光市の方角だった。
 やはりブルーアンブレラは、あのタイラントが向かおうとした所を捜索するつもりなのだろう。

 善場:「愚かですね。そのタイラントが実際どこへ行くつもりだったのかも把握しきれていないくせに。でしたらまだ、タイラントが潜んでいた所を探すのがベストです。誰がどうしてそこに、タイラントを潜ませておいたのかの証拠が見つかるかもしれませんからね」

 どちらが正しい捜索なのだろう?
 もちろん、怪しい所全てを捜索するに越した事は無いが。
 多分、高野君達はタイラントとネメシスが鉢合わせになった場所を探しているんじゃないだろうか?
 よくよく考えてみれば、日光市郊外山中に都合良くネメシスが潜んでいたのも気になるところだ。

 愛原:「ところで、本当に大丈夫でしょうね?」
 善場:「何がですか?」
 愛原:「タイラントとネメシスですよ。奴ら、瀕死の重傷になっても尚、ターゲットを追跡しようとするらしいじゃないですか。この場合、リサがターゲットでしょうか」
 善場:「BSAAより掃討完了報告がありました。体をバラバラにした上、死体は全て焼却したとのことです。そこまでして復活したという報告は、かつて例がありません」
 愛原:「そうですか……」

 私はホッとした。

 善場:「取りあえず、今夜はこのホテルに一泊してください。帰りはどのタイミングでもいいですから」
 愛原:「善場主任は一緒に帰京しないのですか?」
 善場:「私はBSAAの捜索状況を確認します。それと、ブルーアンブレラの動きも気になりますからね」

 私と高橋は主任を見送りがてら、ホテル近所のコンビニに行こうと思った。
 リサ達も誘おうかと思う。
 善場主任と部下の人だけ別のフロアに宿泊している(もちろん、部屋は別々)。
 先に善場主任はエレベーターに乗って行ってしまった。
 私は同じフロアのリサ達の部屋に行き、ドアをノックした。

 愛原:「ん!?」

 すると私は部屋の中から変な音が聞こえたような気がして、ドアに耳を当てた。

 高橋:「どうしました、先生!?」
 愛原:「何か、泣き声が聞こえるぞ!」
 高橋:「ええっ!?」

 私はさっきよりもっと強くドアをノックした。

 愛原:「おい、どうした!?何があった!?」

 しばらくして、目に涙を浮かべたリサが出て来た。
 今のリサの泣き声だったのか?
 しかし、部屋に入ってみると、絵恋さんもまたダブルベッドの上でグスッグスッと泣いていた。

 愛原:「な、何だ何だ?何があった?」
 高橋:「お?何だァ?女同士のケンカかぁ?おい」
 リサ:「違う……グスッ」

 果たして、リサ達の身に何があったのだろうか?
 次回へ続く!
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“私立探偵 愛原学” 「久しぶりの再会」

2021-06-11 14:35:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月3日13:30.天候:晴 栃木県日光市郊外上空 ブルーアンブレラのヘリ機内]

 私とリサを乗せたヘリは、BSAAではなかった。
 日本では活動を禁止されたブルーアンブレラのヘリであった。
 そしてそこに乗っていたのは……。

 愛原:「高野君!」

 東京拘置所から脱獄した高野芽衣子君がいた。

 高野:「お怪我はありませんか?」
 愛原:「だ、大丈夫だ」
 高野:「でも心配ですから、病院には行きますわよ?特にそこの怖いBOWのお嬢さんがいますからね?」

 リサはまだ興奮状態が冷めないせいか、第1形態のままだった。

 高野:「町の病院には連絡済みですので、さっさと向かいましょう。デイライトの怖いお姉さんが攻撃してくる前に」
 愛原:「何でオマエ達、嫌い合ってるんだ?」
 高野:「私達はBOWを狩る側。そしてそんな私達からすれば、善場さんも『狩る対象』なんですよ。そこのリサちゃんもね」
 愛原:「おいおい。まさか俺だけ降ろして、リサをどこかに連れて行くんじゃないだろうな?」
 高野:「他のリサ・トレヴァーならそうするところですが、そこのリサちゃんには愛原先生と一緒に降りて頂きます」
 愛原:「何だ、そうか……。ってか、まあ、このリサは確かにBOWだから警戒するのはしょうがないとして、人間に戻った善場主任まで疑うとは……」
 高野:「私達からすれば、善場さんは人間に戻っていませんよ」
 愛原:「ええっ!?」
 高野:「体内に上手く融合した為に除去できず、そのままとなっているだけです。仮にGウィルスだのTウィルスだのを上手く取り込んだ者を化け物だとするならば、善場さんも十分に化け物なんですよ」
 愛原:「その言い方は……」
 高野:「ですが、それも今は昔となってしまいました。今は特異菌を体内に入れた者を化け物と言うのです」
 愛原:「デイライトさんの資料で見たぞ。確か、モールデッドとかいうヤツだな」
 高野:「それは特異菌が上手く融合できなかった人の成れの果てですね。今は……その特異菌を100%適合させ、人間の記憶と自我と理性と姿を保ったまま、他のBOWを狩る者が現れたのですよ」
 愛原:「何だそれは?日本にいるのか?」
 高野:「日本にはいません。超極秘事項となっていますので。ああ、そうそう。それでリサちゃんを人間に戻すことも可能なんですよ」
 愛原:「知ってるよ。俺が人柱になるって話だろ?」
 高野:「今は、ですね。でもきっと、特異菌の研究が進めば、先生が人柱になる必要は無くなるかもしれません」
 愛原:「早くそうなってもらいたいものだな」
 リサ:「先生が死ななきゃいけないんだったら、私、人間に戻らないよ」
 愛原:「ああ、心配するな。俺だって、自分の命は大事にするよ。今の話を聞いただろ?将来的には、俺が人柱にならなくても、リサを人間に戻す方法ができるようになるってな」

 それにしても、特異菌を100%適合させ、人間の状態のままBOW化し、他のBOWを倒すスーパーマンが現れたとは……。
 日本人ではないみたいだが、一体誰なんだろう?
 1度会ってみたいものだな。

[同日17:00.天候:晴 栃木県大田原市 那須赤十字病院]

 善場:「愛原所長方には、県内でもう一泊して頂きます」

 善場主任は極力ポーカーフェイスを保っているものの、こめかみには明らかに怒筋が浮かんでいた。

 善場:「費用はこちらで持ちますので、どうかご安心を」

 それは事の発端がリサにあったこと、そしてそのリサや私がブルーアンブレラと接触したことが大問題となったようである。

 愛原:「それは、この病院で?それとも、ホテルで?」
 善場:「駅前にホテルを取りましたので、そちらへどうぞ。ホテルまでは、車でお送りします」
 愛原:「はい……」

 検査の結果は異常なし。
 異常が無い以上、病院に泊まるわけにはいかない。
 私達は病院の外に出ると、黒塗りのアルファードに乗り込んだ。

 絵恋:「リサさぁーん!無事で良かったーっ!」
 リサ:「サイトー、悪い」
 高橋:「先生もよく御無事で!」

 車には高橋と絵恋さんも乗っていた。

 善場:「それでは、車を出して」
 部下:「はっ」

 善場主任は助手席に乗り込むと、運転席にいた部下に告げた。
 車は静かに走り出した。

[同日17:30.天候:晴 栃木県那須塩原市 那須ミッドシティホテル]

 高野君率いるブルーアンブレラが日光市から那須塩原市に戻ってくれたおかげで、臨時の宿泊先もそこに落ち着いた。
 まずは客室に荷物を置くと、夕食を取ることにした。
 私達をホテルの外には出したくないらしく、夕食も取れるレストラン付きのホテルを善場主任は選んだようである。

 善場:「状況を察するに、愛原所長とリサは昼食を取れなかったようです。リサを暴走させない為にも、先に食事は取りましょう」

 実験では日本版リサ・トレヴァーは、3食抜いて暴走するらしい。
 但し、『個体によってバラつきがある』とのことなので、欠食させないに越したことはない。
 リサは自分のしたことに顔色を悪くしながらも、出て来た肉料理はガツガツ食べた。
 だが、私は自分のを食べながら、それとなく善場主任も観察した。
 高野君に言われて改めて見ると、善場主任も、リサに説教したのがウソみたいにパクパク食べている。
 このことから、善場主任は、口ではリサを暴走させない為と称して、実は自分が食べたいだけなのではと思った。
 もちろんこれだけで断定するのはどうかと思うが、善場主任は人間に戻れたのではなく、『より人間に近いBOWとなった』と言うのが正しいのではないか。
 そしてそれは、アメリカ政府エージェントのシェリー・バーキン氏も同じだと。
 左腋の下に入れ墨された『12』の番号が抹消ではなく、『0』に変更というのがそれを物語っていると。
 但し、シェリー・バーキン氏はアンブレラの実験を受けさせられたわけではないので、彼女にはそのような番号は無い。
 あくまで、日本限定の話だ。

 愛原:「あの……タイラントとネメシスはどうなりましたか?」
 善場:「ご安心を。BSAA極東支部が退治してくれました。ただ、ニュースでは『山火事』ということになっていますけどね」
 愛原:「那須岳での騒ぎは?」
 善場:「熊が出たことになっています」

 く、クマ……ですか。
 何か、どちらも苦しいような……。
 いや、しかし私達にツッコミを入れる権利は無い。
 確かにリサが、BOWの声で『ヤッホー』と叫ばなければ、あんなことにはならなかったのだ。
 しかし……。

 愛原:「タイラントとネメシスがどこから来たかというのは分かりましたか?」
 善場:「現時点ではまだ調査中としか言えません。愛原所長達は何故か日光市まで連れて行かれたようですが、私達は那須郡のどこかにあるのではないかと見ています」
 愛原:「リサが『研究所に連れて行け』って言ったのにねぇ……」

 だが、リサがあの雄叫びを上げてからタイラントが駆け付けてくるまでと、実際に那須岳から研究所に向かおうとする距離と時間が合わないのは事実だ。
 そうなると、那須町内或いはその周辺であるとデイライトやBSAAが見るのは当然だろう。
 だが、ブルーアンブレラは何故か日光市内を探しているようだ。
 BSAAはタイラントが潜んでいたと思われそうな場所を探し、ブルーアンブレラはそのタイラントが向かおうとした所を探している。
 そんな感じだ。

 善場:「食事が終わったら、タイラントと遭遇した所からブルーアンブレラと合流するまでの事を詳しく話してもらいます。それまではアルコール禁止でお願いします」
 愛原:「はい」

 残念だが、ここは従う他はあるまい。
 尚、斉藤社長に事情を説明したところ、デイライトさんの指示に従うように言われた。
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