報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「栃木最後の朝」

2021-06-12 16:01:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月4日07:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 那須ミッドシティホテル・愛原と高橋の部屋]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。
 私は手を伸ばしてそれを止めた。

 愛原:「よし。おーい、高橋、朝だぞー」
 高橋:「ういっス」

 私はベッドから起き上がると、まずはテレビを点けた。
 ニュースを観ると、那須岳の熊だの、日光市郊外の山で火事だのというのが流れていた。
 そして今日は、熊狩りと称して高橋からもたらされた新情報を元に、BSAAが動いていることだろう。

 愛原:「やっと今日は帰れるな」

 私はバスルームに入って顔を洗う。

 高橋:「10時前後の新幹線がいいっスか?」
 愛原:「ああ。頼むよ」
 高橋:「うっス」

 新幹線の検索は高橋に任せることにした。

[同日08:00.天候:晴 同ホテル1Fレストラン]

 昨夜夕食を食べたレストランで朝食を食べることにする。
 コロナ禍前まではベタな法則通り、バイキング方式だったそうだが、コロナ禍の今は弁当形式になっていた。
 私と高橋は和食にしたが、リサと絵恋さんは洋食である。
 どうも、チキンカツが入っているということで、リサは洋食にしたらしい。
 食事は弁当だが、飲み物に関してはドリンクバーである。

 愛原:「帰りの新幹線は、9時53分発の“なすの”に乗るから」
 リサ:「承知」
 絵恋:「分かりました」
 愛原:「修学旅行と言えばな、新幹線だろ、やっぱ」
 絵恋:「そうですね」
 高橋:「先生は修学旅行、どこに行きました?」
 愛原:「仙台にいたからな。中学校の時は東京、高校の時は関西だったよ。どっちも新幹線だった。あの時はまだ、東北新幹線は開業当時の200系が現役でなぁ……」

 歳がバレてしまうな。
 おっと、もうバレてる?

 愛原:「因みに小学校の時は会津だった」
 高橋:「あ、先生の小学校は修学旅行あったんスね」
 絵恋:「普通、あるわよ」
 愛原:「仙台から会津だからな。電車じゃなくて、バスだったよ」
 リサ:「いいなぁ……」
 愛原:「絵恋さん、小学校の時はどこに行った?」
 リサ:「私は秩父です。埼玉の小学校だったので」
 愛原:「秩父か。秩父はまだ行ったこと無いな……」

 秩父鉄道にはSLも走っているし、セメント製造のプラントなど、スチームパンクの世界観を取材したければ打ってつけらしい。

 リサ:「中学校では行けると思ってたのに……」

 本来ならリサ達、中等部の修学旅行は関西地方に行くはずであったという。
 コロナ禍で中止になってしまった。
 尚、それは高等部も同じ。
 高等部の修学旅行は海外組と国内組に別れるものの、いずれも飛行機を使うことから、コロナ禍の影響をモロに受けた形となる。
 もし復活したとしても、リサは国内組一択になるだろうな。
 BSAAとの取り決めで、『BOWの海外移送は厳禁』となっており、修学旅行であったとしても、そうと見做される確率が高い。
 BSAA本部のあるヨーロッパでは、修学旅行の概念が存在しないからだ(私は最初、BSAAの本部は国連本部のあるニューヨークかと思ったが、アメリカが初のバイオハザード発生地であるにも関わらず、アメリカは支部で、本部がヨーロッパというのは不思議である)。

 絵恋:「こ、高等部では行けるわよ、きっと」

 国内組は沖縄と北海道が交互になっていて、リサ達が行く頃だと北海道になる可能性が高い。

 絵恋:「あ、そうだ。先生、まだお土産を買っていないんですけど……」
 愛原:「ん?那須ハイランドパークでいくつか買ってなかった?」
 絵恋:「あれは学校用です。家用がまだなんで」

 学校で自慢げにお土産を配布する絵恋さんの姿か想像できた。
 コロナ禍でさえなければ海外旅行にでも行って、その土産を自慢げに配ったりするのだろう。

 愛原:「駅で買えるさ。駅でも土産物を売る店はあるからね」
 高橋:「NEWDAYSっスか。どこにでもありますね」
 愛原:「都市の主要駅なら基本あるだろ」

 私もボスや斉藤社長へのお土産を買うとしよう。

[同日09:30.天候:晴 同市内 JR那須塩原駅]

 ホテルをチェックアウトし、那須塩原駅に向かう。

 愛原:「ゴールデンウィークは明日までだけど、明日はどうするんだ?」
 リサ:「宿題やる」
 絵恋:「まだ全部終わってないもんね」
 愛原:「なるほど。予備日みたいなもんか」
 高橋:「本当は今日も予備日だったんスけどね」
 愛原:「あー、そうだった」

 上空をヘリコプターが何機も飛んでいる。

 愛原:「あれは自衛隊のヘリだな。BSAAに協力して、後方支援に当たるんだろう。方角が……那須岳の方か?」
 高橋:「BSAAはBSAAで、何か見つけたんスかね」
 愛原:「でないと困る。せっかく高橋の後輩が、新情報を提供してくれたというのに」
 高橋:「あざっス」

 山道を通る県道を爆走していた高橋の後輩達が、道を一本間違えてしまい、変な廃墟に辿り着いてしまったという。
 その地域はホテルなどが廃業し、それが何軒も廃墟となっている場所でもあり、後輩達はその廃墟もそんな廃ホテルの1つだと思ったらしい。
 せっかくなので探検してみようと思ったのだが、入ったそばから変な化け物と遭遇してしまい、慌てて逃げたという。
 これがゲームや映画だと、随分深入りしてからそういう化け物と遭遇し、逃げようとした時には既に遅しといった展開になるのがデフォルトであるが、実際には入ってすぐにエンカウントしてしまうものである。
 まあ、そのおかげで逃げ足の速い暴走族達は逃げ切れたというわけだが。
 それが一昨日の夜の話。
 もしかしたら、タイラントはそこから来て、私とリサをそこに連れて行こうとしていたのかもしれない。

 愛原:「俺達の仕事はここまでだ。あとは武装勢力達に任せよう」

 民間の探偵業者のやれることは決まっているからね。
 本来なら、推理して犯人を突き止めるなんてことも無いからね?
 駅に到着すると、私はまずネットで予約した新幹線のキップを発券することにした。
 これなら指定席券売機でもできる。
 また、ネット予約だといくらか安く買える。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」
 絵恋:「私、リサさんの隣でお願いします!」
 リサ:「私は窓側~」
 愛原:「はいはい。行きと同じ、8号車ね」

 私はキップを配った。

 愛原:「新幹線乗り場の手前にNEWDAYSがある。そこでお土産とかも買えるだろう」

 まだ列車の発車まで時間があるので、私達は土産を見て行くことにした。

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