報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「この近くにアンブレラの拠点が?」

2021-06-09 20:00:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月3日11:40.天候:晴 栃木県那須郡那須町 那須ロープウェイ山麓駅→那須ロープウェイ山頂駅]

 山麓駅でトイレ休憩を取った私達は、ロープウェイ乗り場へと向かった。
 山麓とはいえ、標高が1300メートル以上あるのだから、そりゃ街中よりも涼しいはずだ。
 駅前でリサと絵恋さんのツーショット写真を撮る。
 これは報告書に添付しよう。
 駅の中はキップ売り場の他に、売店や軽食販売コーナーもあった。

 リサ:「いい匂い」
 愛原:「先に山頂に行ってからな?」
 高橋:「どんだけ食うつもりだよ……」

 乗り場はけして寂しいわけではなかったが、ゴールデンウィークならもっと混んでいてもいいのではないかと思った。
 コロナ禍の影響はここにもあるらしい。
 大きな荷物はコインロッカーに預ける。
 往復キップを券売機で購入し、それから改札口の前に並ぶ。
 ロープウェイは20分おきの運行で、改札は時間を区切って行われる。
 改札が始まると女性の駅員が出て来た。

 愛原:「デカいな……!」

 女性駅員による改札を受けてホームに行くと、そこには大きなゴンドラが停車していた。
 大型の路線バスよりも大きいのではないか。
 実際、定員を見ると111人とある。
 大型の路線バスでも80人くらいだから、そりゃ確かに大きい。
 両開きの大きなドアの横にはロングシートがあるが、殆どが立ち席になるようだ。
 スタンションポールの他に、天井からは黒いベルトが吊るされており、その下には黒いボールのような物が付いていた。
 どうやらこれが吊り革のようである。
 どうして輪っかではなく、ボールなのかは不明だが。

〔「座席は詰めてお座りになり、ご乗車になりましたら中ほどまでお乗りください」〕

 乗務員もいるようだ。
 尚、ゴンドラに直接乗り込むのは運転士ではない。
 運転台など、どこにも無いからだ。
 あるのはマイクなどの案内装置や、外部と連絡を取る無線装置くらい。
 運転台は駅構内にある。
 もちろんそれは、乗客の目に付かないところだ。
 そこはケーブルカーに似ている。
 発車の時間になると、乗降扉が閉められた。
 そして、ゴンドラが動き出す。

 リサ:「おー!」
 絵恋:「一気に昇って行くのね」
 愛原:「さしものBOWも、ロープウェイの動いたゴンドラまでは追って来れないだろう」
 リサ:「と、思うでしょ?」
 愛原:「え?」
 リサ:「私みたいに人間に化けているのもいるし、中には空飛んでくるヤツもいるから」
 愛原:「カラスかな?」
 リサ:「カラスじゃなくても」

 でも確かに、空飛ぶBOWの存在も少数ながら確認されている。
 何でも、今年2月くらいにルーマニアでそのようなBOWの存在が確認されたとか。
 2013年に香港で発生したバイオハザードにおいても、そのようなBOWの存在が確認されている。
 アメリカ大統領の暗殺事件に関わった黒幕本人がBOW化したものだとか。

 高橋:「先生、カプコン製のヘリが墜落する原因もBOWの攻撃が殆どらしいですよ」
 愛原:「それもそうだな。……このゴンドラは大丈夫なんだろうな?」
 リサ:「私がいるから大丈夫」

 リサは大きく頷いた。
 凄い自身満々だ。

〔「……尚、山頂の気温は凡そ10度ほどとなっております」〕

 車掌が車内放送でそのようなガイドをしている。

 愛原:「えっ、10度!?」

〔「地上との差は凡そ10度ほどございます。皆様、体調の管理には十分ご注意ください」〕

 愛原:「あんまり長居できないかなぁ……?」

 一応私は上着は着ているのだが、リサや絵恋さんがブレザーを着ていない。
 リサは大丈夫だろうが、肝心の絵恋さんに風邪を引かせてしまったら大変だ。

〔「また、山頂付近は、薄いながらも、雲が掛かっている状態です。……」〕

 山の天気は変わりやすいという。
 その辺はしょうがないかもしれない。

[同日11:45.天候:曇 同町内 那須ロープウェイ山麓駅→駅周辺]

〔「ご乗車ありがとうございました。山頂駅でございます。この先、どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」〕

 山麓駅から山頂駅までは5分も掛からない。
 尚、標高は300メートルほど上がった。
 東京タワーの地上から展望台まで上がったくらいか。
 駅の外に出ると……。

 愛原:「ちょっと……寒いな……」
 高橋:「ちょっと……そうっスね」
 リサ:「そう?」
 絵恋:「リサさんの熱い体温に抱かれれば大丈夫よ」
 高橋:「先生、大丈夫っぽいっスよ?」
 愛原:「そ、そうか」

 山の上ということもあってか、時折強い風が吹いてくる。

 愛原:「2人とも、スカート気をつけろよ?」
 リサ:「大丈夫。スパッツ穿いてる」
 絵恋:「そういうことじゃなくってぇ……」

 AVのJKモノはスパッツなど穿いていないが、それを真に受けているのか、スカート内盗撮を行うヤツの気持ちなんか全く分からない。
 実際はリサでさえスパッツを穿いていて、下着など見えないようになっているのだが。

 愛原:「はい、2人とも。撮るよー?」

 私は手持ちのデジカメを構え、リサと絵恋さんの写真を撮る。
 まずは駅前、それと駅前にある木製の『日光国立公園』『那須岳』『山頂駅 標高1684m』と書かれたモニュメントの前で。
 モニュメントの前で強い風が吹いていたので、2人のJKはスカートを押さえながら被写体に収まるというポーズだった。

 子供:「ヤッホー!ヤッホー!」
 リサ:「! 何あれ?」

 家族連れのうち、子供が1人、麓に向かってあの掛け声をしている。

 絵恋:「ああ、あれね。麓に向かって叫んでもしょうがないのに。山が連なる方に向かって、今みたいな掛け声を上げると、それが他の山にぶつかって、掛け声がこだまするというものよ」
 リサ:「おー、“こだま”!……ん?“やまびこ”?」
 愛原:「この場合は“やまびこ”と言った方がいいな」

 実は新幹線の名前に使われる“こだま”も“やまびこ”も、意味は同じ。
 また、英訳に関しても、どちらも『echo(エコー)』となる。

 リサ:「私も!私もやる!」
 絵恋:「えぇ?何か恥ずかしいなぁ……」
 リサ:「山の方に向かって声掛ければいい!?」
 絵恋:「そ、そうね」

 リサは山の方に向かって……恐らく、『ヤッホー』と言ったのだろう。
 恐らく、というのは、リサのヤツ、人間の耳には聞こえないヘルツで叫んだようだ。
 その証拠に私達、人間は何が起こったのかさっぱり分からず、何とも言えない間が発生していたのだが、他の家族連れ達が同伴させていた犬や猫などの動物達が騒ぎ出したからだ。
 アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーも、洋館や研究所内では聞く者に恐怖を与える咆哮を時折発していたらしいが、ここにいる日本版リサなどは人間の耳には聞こえない咆哮を上げることができるようだ。
 哀れ、ペットケースから出ていたペット達はリサの咆哮にパニックを起こし、飼い主から離れて右往左往逃げ惑う様相が繰り広げられた。

 リサ:「……何も起こらないよ?」
 愛原:「向こうの山ではな!こっちで何か起こったぞ!」
 リサ:「え?……あ」

 向こうではトイプードルがキャンキャン叫び、そっちではアメリカンショートヘアーが山頂駅に向かって走り出し、それを慌てて飼い主さんが追い掛けるというパニック状態である。

 リサ:「……!?」

 だがリサ、またもやさっき叫び声を上げた方の山を見る。

 リサ:「……あれ?何か来る」
 愛原:「えっ!?」
 リサ:「……うん。何か……いたみたい。こっちに来る」
 愛原:「オマエ、何呼び寄せたんだよ!?」
 高橋:「責任取れや、コラァ!!」
 絵恋:「リサさんに対して、そんな言い方は無いわ!」
 高橋:「レズガキは黙ってろ!」

 ズシンズシンと何か大きな地響きを轟かせながら、本当に何かが近づいてきた。

 愛原:「皆さん!ここは危険です!山頂駅に避難して下さい!!」

 私は逃げたペット達を捕まえるのに夢中になっている飼い主達や、他の登山客にそう呼び掛けた。

 高橋:「うわっ、出たーっ!」
 絵恋:「きゃあああっ!!」
 愛原:「おい、高橋!ロケラン!」
 高橋:「んなモン都合良く無いっスよ!」

 私が咄嗟に、こいつを倒すのにはロケットランチャーが必要だと思ったほどの相手だ。
 それは一体……!?
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“私立探偵 愛原学” 「天長園をあとにして」

2021-06-09 16:08:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月3日07:00.天候:晴 栃木県那須塩原市 ホテル天長園7F・721号室]

 愛原:「おはよう……」
 高橋:「おはようございまっス……」

 スマホのアラームが鳴って、私達は起床した。

 高橋:「今日は風呂どうします?」
 愛原:「いや……昨夜でお腹いっぱいになったよ」
 高橋:「そうですか」
 愛原:「行きたかったらオマエ、行っていいぞ」
 高橋:「いや、いいです」

 起き上がって洗面所に向かう。
 まだ、リサ達は起きていないようだった。
 後で起こしてやろう。

 高橋:「先生、今日はどちらへ?もうここはチェックアウトですよね?」
 愛原:「そうだ。俺的には観光して帰りたいところだな」
 高橋:「いいと思います」

 さて、どうするか……。

[同日08:00.天候:晴 同ホテル8Fレストラン]

 女将:「おはようございます」
 愛原:「おはようございます」

 レストランに行くと、既に朝食は用意されていた。
 今日も天気が良いので、窓からは那須連峰が見える。

 愛原:「山か……」
 高橋:「はい?」
 愛原:「今日は山の方に行ってみるか」
 高橋:「それはいいですね」
 女将:「ロープウェイも運行されていますし、きっと景色もいいですよ」

 とのこと。

 愛原:「よし。今日はそこまで行ってみよう。お嬢さん方、それでいいかね?」
 リサ:「うん」
 絵恋:「わ、私はリサさんと一緒ならどこでも……」
 高橋:「お供します!地獄の果ての果てまでも!!」
 愛原:「そんな所ヘは行かん!」

[同日09:35.天候:晴 ホテル出入口前・栃木県道369号線(板室街道)上→関東自動車バス車内]

 朝食を終えてから部屋に戻り、浴衣から私服に着替えた。
 リサ達は再び制服に着替える。
 それから荷物を纏めてチェックアウトした。

 愛原:「どうも、お世話になりました」
 女将:「こちらこそ、ありがとうございました」

 普通はエントランスまでだろうに、女将の上野母娘はバス通りまで見送りに来てくれた。

 女将:「是非、また来てくださいね」
 愛原:「良かったら、東京にも来てくださいよ。『最も危険な12人の巫女たち』は、もうこのリサしかいませんから」
 女将:「そうですね。いつか、そうさせて頂きます」
 高橋:「先生、バスが来ましたよ」
 愛原:「ああ、止まってもらって」

 高橋は『いいね!』のポーズを取ると、

 高橋:「ヘイ、タクシー!」

 と、叫んだ。

 リサ:「お兄ちゃん、タクシーちゃう!」

 と、すかさず妹分のリサに突っ込まれる。
 とはいうものの、バスの運転手は高橋のアクションに気づいてか、左ウィンカーを上げ、停車してくれた。

 愛原:「それではお世話さまでした」
 女将:「あの……リサさん」
 リサ:「はい?」

 女将さんはリサの手を取った。

 女将:「あなたはもう一人ぼっちでは、ありませんので、どうか……」
 リサ:「……うん」

 リサは最後にバスに乗り込んだ。
 引き戸の中扉が閉まり、すぐにバスが発車する。
 1番後ろの座席に座ると、リサは見送る母娘に向かって手を振った。

 高橋:「先生、終点まで乗るんですか?」
 愛原:「いや、黒磯駅前……黒磯駅西口か。そこで乗り換えだな。上手い事、接続してくれているといいんだがな」
 高橋:「ちょっと調べてみましょう」
 愛原:「帰りは夜くらいでいいと思うけど、あんまり遅くならないように」
 高橋:「はい。ロープウェイで山登りするだけですか?」
 愛原:「いや。ついでに那須湯本温泉で日帰り入浴できたらいいと思う」
 高橋:「分かりました。先生は温泉がお好きですね」
 愛原:「こういう所に来たら、当たり前だろー」
 高橋:「その通りですね」

 思えば、私が山に行きたいと思ったのは、何らかの第六感だったのだろう。

[同日10:05~10:10.天候:晴 同市内 JR黒磯駅西口→関東自動車バス車内]

〔「黒磯駅西口です」〕

 途中の黒磯駅西口のロータリーでバスを降りる。
 ここから那須ロープウェイ行きのバスに乗り換えることになる。
 幸い5分の乗り換えで接続しているようだ。

 高橋:「先生、あのバスです」

 このバス停が始発ではないため、那須ロープウェイ行きのバスには既に先客が乗っていた。
 那須温泉郷の中でもメジャーな方に向かうせいか、私達が乗って来たバスよりも乗客が多かった。

 愛原:「1時間くらい揺られることになるから、まあゆっくりしようか」

 2人席に腰かけて、私は言った。

 高橋:「本当に観光ですね」
 愛原:「当たり前だろ」

 リサはバスの路線図を見ながら……。

 リサ:「『お菓子の城』……『チーズガーデン』……」
 絵恋:「リサさんは食欲全開ね。私は、この『恋人の聖地』ってのがすっごく気になるんだけどォ?」
 リサ:「でも、先生の決めた行き先が第一」
 絵恋:「ええーっ!?」
 高橋:「それにしても先生、海ではなく、山の方へ行かれるとはさすがです」
 愛原:「そうかな?内陸部の栃木県で、山の方に行くというのは自然だと思うけど……」
 高橋:「夏は海っスか?」
 愛原:「オマエのせいで八丈島まで行くハメになったんだからな?」
 高橋:「さ、サーセン!」
 愛原:「オマケにBSAAの掃討作戦にまで巻き込まれて」
 高橋:「いや、ほんっとサーセンっス!」
 愛原:「まあ、いいけど……」

[同日11:12.天候:晴 栃木県那須郡那須町 那須ロープウェイ山麓駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、那須ロープウェイです。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください」〕

 バスが終点に到着する。
 ロープウェイの山麓駅前には駐車場があり、その中にバス停があった。
 バスはその前で止まる。
 バス車内でも広告などで大々的にローブウェイの宣伝をしているのは、ロープウェイの運行会社も同じ関東自動車だからだろう。

 リサ:「先生、ちょっとトイレいい?」
 愛原:「ああ、いいよ。ロープウェイに乗る前に、少し休憩しよう」

 さすがにホテル天長園前から黒磯駅西口まで30分、そこからこのロープウェイ乗り場まで約1時間。
 しかも車種は普通の路線バスとなれば、多少腰も痛くなるというもの。
 その腰痛を癒やす為にも、帰り際は那須湯本温泉で一っ風呂浴びたいものだ。

 高橋:「先生。まだ麓だってのに、若干涼しいですね」

 私達もトイレに行きがてら、高橋がそんなことを言った。

 愛原:「まあ、そうだろう。いくら山麓っつったって、街からだいぶ離れたし、それも山の方に向かって進んだわけだから、多少の標高はあるだろう」

 静岡で言えば、今は大石寺の境内辺りにいるようなものか。
 そこから更にロープウェイで山頂に向かおうというのだから……。

 愛原:「山頂はもっと涼しいぞ。ヘタすりゃまだ寒いかもな?」
 高橋:「えっ?もう5月なのに……」
 愛原:「富士山だって、まだ5月だと雪を被ってるだろ?それと同じだよ」
 高橋:「富士山ほどは高くない山ですよね?」

 もちろん本格的な登山をするつもりはなく、あくまで山頂駅付近を散策してみるだけだ。
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