報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 卯酉東海道……もとい、東海道新幹線

2021-06-24 21:02:38 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月21日16:42.天候:雨 東京都千代田区丸の内 JR東京駅→東海道新幹線743A列車1号車内]

 

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく15番線に、“ひかり”510号が到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この後、16時57分発、“こだま”743号、名古屋行きとなります。車内の整備が終わるまで、お待ちください〕

 ホームに向かうと、ちょうど列車が入線するところだった。

 稲生:「何か雨、強くない?」
 マリア:「東京はね。でも、大丈夫。向こうに着く頃には止んでる」
 稲生:「そうか」

 マリアも天気くらいなら予知できるようになった。
 但し、地震予知や水晶玉占いなどの高度な予知はまだ未熟である。

〔「15番線、ご注意ください。“ひかり”510号が到着致します。折り返しは16時47分発、“こだま”743号、名古屋行きです。黄色い点字ブロックの内側を御歩きください。安全柵から離れてください」〕

 折り返し先頭車となる1号車に向かっている最中、N700Aと呼ばれる列車が入線してきた。
 一瞬見えたフロントガラスの上のワイパーブレードは規則正しく動いている。
 列車が停車するか否かの時点で、安全柵が開き出す。
 作動時のメロディは“乙女の祈り”である。

〔東京、東京。東京、東京。ご乗車、ありがとうございました〕

 ドアが開くと、ここまでの乗客がぞろぞろと降りて来た。
 “ひかり”もそれなりに乗客が多いらしい。

 清掃員:「ありがとうございましたー」

 ドア横に立っている清掃員がゴミ袋を広げて、乗客が手にしているゴミの回収をしている。

〔15番線に停車中の電車は、16時57分発、“こだま”743号、名古屋行きです。電車は前から1号車、2号車、3号車の順に、1番後ろが16号車です。グリーン車は8号車から10号車、自由席は1号車から7号車までと、13号車から16号車です。……〕

 マリア:「勇太、スマホで私を撮ってくれない?」
 稲生:「いいよ」

 マリアは車両のドアの横にある大きな行き先表示の下に立った。
 特に何かポーズを撮るわけではないが、映る時はマスクを撮って微笑を浮かべた。

 稲生:「(マリア、かわいい……)これでいい?」
 マリア:「Thanks.あとはこの画像をルーシーに送る」
 稲生:「そうか。ルーシー、新幹線が好きだもんね」
 マリア:「箱根に行った時の帰りに乗った……えー……」
 稲生:「小田急ロマンスカー」
 マリア:「そう、それ。あれも良かったみたい」
 稲生:「そうか。それは良かった」
 マリア:「今度は展望席に乗ってみたいって」
 稲生:「あれか。あれは大人気で、すぐに売り切れるんだよな。ま、機会があったら頑張ってみるよ」
 マリア:「そうしてやって。ただ、コロナ禍で飛行機飛んでないのがネックだけど……」
 稲生:「それ、魔道士のセリフかな?瞬間移動魔法……」
 マリア:「だから、High Master以上にならないと無理だって。私も試しにMiddle Masterが使える短距離移動魔法(Teleportation)に挑戦してみたけど、あまり上手くいかなかった」
 稲生:「“エスパー魔美”みたいにビーズぶつけてみる?」
 マリア:「いつの時代のマンガだよ」

 尚、長距離移動の魔法にはルゥ・ラ(Lu la)という名前が付けられているのに、何故か短距離移動魔法には名前が付いておらず、超能力の1つとしてのテレポーテーションと呼ばれている。

〔「お待たせ致しました。15番線、まもなくドアが開きます。乗車口まで、お進みください」〕

 そんなことを話していると、あっという間に清掃時間終了となった。
 ドアが開いて、2人の魔道士は新幹線車内に入った。
 進行方向右側の2人席に座った。
 乗った車両はN700A“Advance”と呼ばれるもので、車内の内装の違いと言えば、座席モケットの柄とヘッドレストの違いである。
 “Advance”ではない車両と比べると、ヘッドレストが深い。

〔ご案内致します。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に止まります〕

 マリアは窓側に座ると、高速バスの時にもそうしたようにローブを脱いだ。
 因みにローブの色はダークグリーンである。
 一瞬、黒いローブに見えるが、光に当たると緑色に反射するので、ダークグリーンなのである。
 それを丸めて荷棚の上に置く。
 人形達の入ったバッグも隣に置いた。
 ローブの下はブレザーを着ておらず、長袖の白いブラウスの上にグレーのニットのベストを着ている。
 下はモスグリーンのスカートだった。
 但し、首に着けているのはリボンではなく、魔法石の付いたペンダントである。
 緑色に光ることから、宝石のエメラルドが素と思われるが……。

 稲生:「もう食べる?駅弁」
 マリア:「そうだねぇ……。まあ、食べようか。人形達も食べてるみたいだし」

 人形達が食べているのはシンカンセンスゴイカタイアイスである。
 但し、“こだま”では車内販売が無いので、駅の売店で買って来たが、駅の売店で売っているものについては、そこまで硬くない。
 2人は駅弁の蓋を開けた。

[同日16:57.天候:晴 東海道新幹線743A列車1号車内]

〔「レピーター、点灯です」〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが響き渡った。
 JR東日本の新幹線ホームがベルなので、混同することはない。
 ましてや曲が、かつては300系“のぞみ”で流れていた車内チャイムなのだから。
 普通は1コーラスしか流れないが、最終列車だと2~3コーラス流れることもある。

〔15番線、“こだま”743号、名古屋行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
〔「15番線、まもなく発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。ITVよーし!乗降、終了!」〕

 けたたましい客終合図と共にドアが閉まり、安全柵の扉も閉まる。
 そして、列車は降りしきる雨の中、東京駅を出発した。

 稲生:「本当は昼の時間が長い日なのに、何だか薄暗いね」
 マリア:「雨が降るわけだ。まあ、向こうは降ってないから」

 天気は西から東へ変わる。
 列車は西に向かっているので、途中で雨雲を抜けるということだろう。

〔♪♪(車内チャイム“いい日旅立ち・西へ”イントロ)♪♪。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に止まります。次は、品川です〕

 駅を出てしばらくは、通勤電車や中距離電車と並行して走る。
 通勤電車の方は、そろそろ夕方ラッシュの始まる頃からか、立ち客が目立つようになっていた。

 稲生:「今夜は駅前のホテルに一泊して、明日、現地に向かいます」
 マリア:「かなり念の強い人形だ。一応、写真越しに『私に話を聞かせて。私が行くまで、そこの家の人達には手を出さないで』と伝えておいたけど、果たして通じたかどうか……」
 稲生:「通じてるといいねぇ……」
コメント
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