報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「からっぽの空」

2020-11-28 19:51:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月9日16:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

〔ドアが開きます〕

 ピンポーン♪とチャイムが鳴って、エレベーターが5階に到着する。

〔5階です。下に参ります〕

 エレベーターから降りて来たのはリサ。
 追われるBOWから逃げるのにマップ移動は好都合だが、こちらのリサにはエレベーターでマップ移動したところで、すぐに追って来るので無意味である。

 リサ:「ただいま」

 リサが事務所に入ると、事務所には高橋1人しかいなかった。

 リサ:「ただいま、お兄ちゃん。高野さんは?」
 高橋:「おー、リサか。アネゴなぁ……連行されたよ」
 リサ:「レンコー!?誰に!?」
 高橋:「善場の姉ちゃんだ。何でもアネゴ、アンブレラの関係者だったんだとよ。それで色々詳しく聞きたいってんで、任意同行だよ。ほとんど強制的な任意同行だ。で、何か容疑が固まりでもしたら、タイーホって流れだ」
 リサ:「高野さん、アンブレラだったの!?」
 高橋:「今思えば、確かにアネゴ、やたら詳しいと思った部分がいくつかあったけど……。まさか、ガチだったとは……」
 リサ:「先生には伝えたの?」
 高橋:「バカか。先生はまだ意識不明だろうが。どうやって伝えるんだ?」
 リサ:「あっ……そうか」
 高橋:「一応、ボスには伝えてある。先生がいらっしゃらなくて、アネゴもいないんじゃ、この事務所、回せねーからな。先生がお戻りになるまで、この事務所は休業だとよ」
 リサ:「そんな……」
 高橋:「俺にできることは、この事務所の掃除ぐれーだな」
 リサ:「それなら私にもできる」
 高橋:「……とりま、家に帰るか。ここにいたってしょうがねぇ」
 リサ:「うん……」

 リサと高橋は事務所をあとにした。

〔ピンポーン♪ 下に参ります〕

 エレベーターに乗り込む。

〔ドアが閉まります〕

 高橋:「取りあえず事務所には明日も行くけど、掃除と電話番くれーしかできねーな」
 リサ:「私は?」
 高橋:「オメーは学校に行け」

[同日22:00.天候:晴 同地区 愛原のマンション]

 夕食も終わり、リサはソファに座ってテレビを観ながらスマホをイジっていた。

 高橋:「おい。そろそろ、風呂入れ」
 リサ:「はーい」

 リサは白いTシャツ1枚に黒いスパッツ姿で寛いでいた。
 ゴロンとソファの上で転がって上半身だけ起こす。
 その時、高橋のスマホが鳴り出した。

 高橋:「!? 俺のか」

 高橋はテーブルの上に置いといた自分のスマホを取った。
 画面を見ると、相手は善場になっていた。

 高橋:「善場の姉ちゃんか。……はい、高橋」
 善場:「高橋助手。夜分遅くに恐れ入ります」
 高橋:「子供は寝る時間だが、俺はまだ起きてるよ」
 善場:「リサには夜更かしさせないようにお願いしますよ」
 高橋:「分かってる。今、風呂に入れる所だ。で、何の用よ?アネゴ、ついにタイーホか?」
 善場:「それはまだです。朗報ですよ。愛原先生の意識が戻ったそうです」
 高橋:「それ、ガチバナか!?」
 善場:「本当です。夜も遅いので、本当は明日連絡しようかと思ったのですが、なるべく早い方がいいと思いまして」
 高橋:「よっしゃあーっ!」
 善場:「高橋助手。近所迷惑な大声は出さないように。ですが、あくまで意識が戻ったというだけで、未だ予断を許さぬ状況ではあります。相変わらず熱は40度ほどあって、肺炎の危険性もありますし」

 今や常識だが、インフルエンザでも肺炎になることはある。
 そうなると命に関わることは、新型コロナウィルスと変わらない。
 なのでこの2つのウィルスが変異し、互いにタッグを組んで連係プレイでもしてこようものなら大変なことになるというわけだ。

 高橋:「見舞いには行けるのか!?」
 善場:「無理です。面会謝絶です。ただでさえ新型コロナウィルスのせいで、通常の面会も制限されている状態ですから」
 高橋:「うう……」
 善場:「ただ、病院から愛原所長の病状については逐一連絡がありますから、何か変化でもあればすぐに連絡しますよ」
 高橋:「た、頼むぜ」
 善場:「昼間は事務所でいいですか?休業状態ではあるでしょうが……」
 高橋:「まあ、そうだな。掃除と電話番くれーはしようかと思ってる」
 善場:「分かりました。昼間は事務所に電話します」
 高橋:「ああ、よろしく」
 善場:「『1番』の情報はありませんか?」
 高橋:「無ェな。逆にそっちは無ェのか?」
 善場:「高野事務員を乗せた“青いアンブレラ”のヘリは、確かに霧生市役所庁舎屋上にリサ・トレヴァーの姿を見たそうです。『7番』は県道上で倒しましたし、『8番』は栗原蓮華さんが仕留めました。『9番』は高橋助手が仕留めたんですよね?」
 高橋:「『8番』も『9番』も俺がとどめを刺した。だから、間違い無く死んだはずだ」
 善場:「そうですね。となると、残りは何番かということになりますが、『1番』の可能性が高いでしょう。『13番』以降はそもそも存在するのかどうかも不明ですから」
 高橋:「でも逃げられたんだろ?」
 善場:「そのようです。あの後、BSAAでも捜索しましたが、リサ・トレヴァーの遺体すら見つからなかったそうです」
 高橋:「アネゴ達、余計なことしやがって……」
 善場:「高野事務員は、『元アンブレラ関係者として、その負の遺産を片付ける義務があった』と供述していますが……」
 高橋:「そうなのか。他には?」
 善場:「バイオハザードの最中、霧生市に留まった本当の理由も話してくれました。日本アンブレラの一員として、『1番』を探していたということでした」
 高橋:「『1番』?結局見つかったのは、こっちの『2番』だろ?」
 善場:「BSAAの調査によりますと、実際に大山寺にいた形跡がありますからね。あいにくと証拠はありませんが。『2番』は当時研究所に留まっていたわけですから、高野事務員は『1番』の捜索を命じられていたとのことでした」

 だがその捜索が間に合わず、『1番』は栗原家を襲い、栗原兄弟を食い殺し、そして蓮華の左足も食い千切った(正確には食い千切ってはいないいのだが、ウィルスに冒されていたため、切断せざるを得なかった)。

 高橋:「もう一度、霧生市に行くのか?」
 善場:「いえ。あとはBSAAに任せます。『1番』は取り逃がしてしまいましたが、残る『7番』から『9番』まで倒すことができたのは、1つの勝利ですから」

 但し、その為に安全宣言が保留され、住民達の帰還が遅れたことは1つの敗北だろう。
 せめて、『1番』がもう霧生市にはいないという証拠でも見つかれば良いのだが。

 善場:「また後で電話します。愛原所長の意識が戻れば、あとは快方に向かうはずですから」
 高橋:「ああ、分かった」

 高橋は電話を切った。

 リサ:「お兄ちゃん!先生は!?」
 高橋:「喜べ、リサ!先生の意識が戻ったそうだぞ!」
 リサ:「やったーっ!いえーい!」
 高橋:「おおーっ!」

 2人はハイタッチで喜んだ。

 リサ:「後でお見舞い行かないとね!」
 高橋:「いや、さすがに見舞いはNGだってよ」
 リサ:「何で何でー!?」
 高橋:「コロナが怖いのと、先生の具合自体はまだ悪いからだ。さすがに熱が40度ってんじゃ、ムリポだな」
 リサ:「はいはい、私!私ならどんなウィルスでも平気だよ!」
 高橋:「誰もBOWが見舞いに来るなんて想定すらしてねーよ。だいたい、オメーは人間のフリして生きてることになってるんだから、そこで化け物になる必要は無ェな」
 リサ:「ええ~……」
 高橋:「とにかく、さっさと風呂入ってこい」
 リサ:「はーい……」

 リサは渋々、席を立った。
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“愛原リサの日常” 「苛む高橋とリサ」

2020-11-28 15:49:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月9日08:00.天候:晴 東京都墨田区某所 東京中央学園墨田中学校3年3組]

 リサ:「ぶー……」

 教室で1人落ち込んでいるリサ。
 そこへ斉藤絵恋が話し掛けて来る。

 絵恋:「おはよう、リサさん。……元気無いね?どうしたの?」
 リサ:「先生が感染しちゃった……」
 絵恋:「感染したって、まさかコロナ!?」
 リサ:「コロナの方がまだいいよ。何しろ、生物兵器リサ・トレヴァーの殺人ウィルスだもの」
 絵恋:「一体、何の話?」
 リサ:「仕事で霧生市に行ったら、そこで化け物に襲われて、先生が感染させられたの」
 絵恋:「そ、それで先生は?」
 リサ:「入院中。今も意識不明。私の血を使って血清を作ったの」

 リサは『8番』と同じBOWである。
 その同族の血を使って、血清やワクチンを作ることは可能だ。
 リサは何度もそれに協力している。
 本来なら愛原が感染したものは、数時間から数日で死に至るものらしい。
 リサは『1番』とは殆ど面識が無いが、『8番』や『9番』のことは多少知っている。
 特に『8番』が毒素を放って対象者を感染させる攻撃法は、以前から知っていた。
 そして、どんな毒なのかも知っていた。
 そんなリサの知識は大いに役に立ち、愛原の一命を取り止める結果に繋がった。

 絵恋:「良かったじゃない」
 リサ:「でも、まだ意識が戻らない」
 絵恋:「それは心配ね」
 リサ:「私が、もっと早く動いていれば……」
 絵恋:「あ、あんまり気落ちしないでね。愛原先生が早く治ることを祈ってあげようよ」
 リサ:「うん……」

[同日10:00.天候:晴 同区菊川 愛原学探偵事務所]

 事務所内の応接室で対峙する高野芽衣子と善場優菜。
 茶を持って来た高橋は、その異様な雰囲気に圧倒された。

 善場:「御用件は1つです。あなたは、“青いアンブレラ”の構成員なのですか?」
 高橋:「は!?」

 高橋は高野を見た。

 善場:「BSAAに要請して、“青いアンブレラ”の霧生市入市隊員リストを確認させて頂きました。その中に高野事務員の名前がありました。“青いアンブレラ”は民間軍事企業ではありますが、入社条件は旧アンブレラの関係者または家族とのことです。あなたもそれに該当するということですね?」
 高橋:「な、何だって、アネゴ!?」
 善場:「バイオハザードの最中の霧生市。あなたは大山寺の境内で愛原所長や、そこの高橋助手と偶然出会ったと言います。しかし、こちらの調べでは、当時霧生市内にあった新聞社にあなたの名前はありません」
 高橋:「な、何だって!?」
 善場:「“青いアンブレラ”に所属し、霧生市内の新聞記者を装って愛原所長達に近づいた理由を説明して頂きます。……庁舎で!」

 善場は黒服の部下2人に合図を送った。

 高野:「あーあ。もう少し、この事務所で働きたかったんだけどなぁ……。もうここが潮時か」
 高橋:「あ、アネゴ!?」
 高野:「マサ、悪かったね。後で先生にも謝っといてくれる?」
 善場:「おとなしく来て下さるのなら、手荒なことは致しません」
 高野:「ええ、いいわ」
 高橋:「た、タイーホなのか!?」
 善場:「それはまだです。今はただの任意同行です。が、何か容疑が固まり、逮捕状が取れればそうなります」

 高野は善場達により事務所の外に連れ出され、ビルの前に停車していた黒いハイエースに乗せられた。

 高橋:「アネゴ。タイーホだけは勘弁しろよ?」
 高野:「さあ、どうでしょう。先生が戻ってくるまで、事務所の方、よろしくね?」

 ハイエースのスライドドアが閉められる。
 フロントガラスと運転席、助手席の窓以外はスモークガラスになっているので、ドアを閉めたら中の様子が分からない。

 高橋:「弁護士、呼んでいいんだよな?」
 善場:「もちろんです。高野事務員は前々から怪しいとは思っていましたが、ようやく尋問に漕ぎ付けることができました。本当は……あなたも少しは怪しいとは思っていたのですが、どうやらシロのようですね」
 高橋:「悪かったな、疑わしくて!ダテにネンショー(少年院)や少刑(少年刑務所)出てねーよ!」
 善場:「あなたは探偵協会に、このことを報告してください。ほら、ボスと名乗る人からよく電話が掛かって来るでしょう?」
 高橋:「ああ……そうだな」
 善場:「あなた1人で事務所を維持するのは大変でしょうが、そこは取りあえず協会にサポートしてもらいましょう」
 高橋:「先生さえ戻って来てくれれば……」
 善場:「意識が戻り次第、連絡するよう病院には伝えてあります。それを待ちましょう。症状としては、インフルエンザのようなものだそうです」

 実際、愛原の体からインフルエンザウィルスによく似たウィルスが検出されているという。
 『8番』から感染させられたウィルスがそれなのか、或いは元々感染していたのかは不明だ。
 しかし、他に愛原の体から『8番』が放ったウィルスらしき物は検出されなかった。
 リサの血で作った薬がよく効いているのだろうが、何しろリサ・トレヴァーなどのBOWが体内に有しているウィルスはとても変異性の強いものだ。
 それが愛原の体の中で、インフルエンザに近いものに変異したのだろうか。

 善場:「愛原所長は重症ではありますが、重態ではありません。意識さえ戻れば、あとは快方に向かう一方のはずです。だから、愛原所長の意識が戻るまで耐えてください」
 高橋:「分かってるよ。先生の留守を預かるのも、弟子の勤めだろう?」
 善場:「そういうことです。では、失礼します」

 善場が助手席に乗り込むと、車が走り出した。
 車はデイライトの事務所ではなく、デイライトを管轄している政府機関に向かうという。
 即ち、善場が本当に所属している機関である。
 そこで高野は激しい尋問をされるのだろう。

 高橋:「くそっ!」

 高橋は急いで事務所に戻ると、世界探偵協会日本支部関東地区本部に電話を掛けた。

 ボス:「うむ、私だ」
 高橋:「ボスっスか?俺、愛原先生の弟子の高橋っスけど……」
 ボス:「ああ、高橋君か。愛原君のこと、聞いてるよ。業務中の災害ということで、協会からは見舞金が支給されることになっている。だから、費用のことについては心配御無用だ」
 高橋:「それと、もう1つあるんです」
 ボス:「何かね?」
 高橋:「アネゴが……。高野芽衣子が逮捕されそうっス」
 ボス:「高野君というのは、愛原君の事務所に雇われている事務員のことだね?」
 高橋:「そうっス」
 ボス:「何をしたのかね?痴漢をボコボコにして過剰防衛とか?」
 高橋:「そっちの方がまだマシっス。善場の姉ちゃん……NPO法人デイライトに、アンブレラの関係者だったってことかバレて連行されたんス」
 ボス:「何と……!旧アンブレラは世界中にバイオテロの素を振り撒いたということで、テロ組織に認定されるほどだ。例えその構成員個人が何もしていなくても、関係者というだけで逮捕される国もあるということだ。“青いアンブレラ”は一度は逮捕されたものの、その後に課す刑罰が無くて釈放された者達が殆どだと聞く」

 日本では暴力団組員というだけで逮捕されることはないが、外国ではマフィア構成員というだけで逮捕される国もある。
 旧アンブレラの関係者というだけで逮捕されるというのは、つまりそういうことだ。

 ボス:「日本の司法組織はそこまで厳しくはないものの、しかし日本の法律に違反していたことが分かったら、それで正式に御用とはなるだろう」
 高橋:「善場の姉ちゃんもそう言ってました」
 ボス:「うむ。愛原君が正式に業務に復帰できるまで、愛原学事務所は休業としよう。キミは愛原君の容体だけを気にしていれば良い。事務所のことは我々に任せなさい」
 高橋:「は、はい」
 ボス:「元気を出すんだよ」

 そう言ってボスの電話は切れた。

 高橋:「くそっ……!」

 高橋は電話を切ると、自分の机の席に座って頭を抱えた。

 高橋:「俺が不甲斐無いばっかりに……!先生……!」
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“愛原リサの日常” 「霧生市から離脱」

2020-11-28 11:18:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日18:00.天候:晴 某県霧生市中心部 霧生電鉄南北線地下トンネル→霧生中央駅]

 市役所などの官庁街は“青いアンブレラ”の攻撃により、BSAAが介入できず、そこから離れなくてはならなかった。

 高橋:「どうなってんだ、一体!?」
 善場:「私にも分かりません!とにかく、ハート2から避難しないことには……!」

 高橋は意識を失った愛原を背負い、霧生電鉄南北線の地下トンネルを善場達と一緒に走っている。
 先導するのは善場と栗原蓮華。
 霧生電鉄は市街地区間のみ地下を走る。
 この部分だけは、まるで地下鉄のようだ。
 これがバイオハザードの最中だったり、パンデミックが過ぎた後でもしばらくはクリーチャーが跋扈していただろうが、今はその死体すら白骨化して転がっている。
 一応、攻撃力の強い善場や蓮華が、前から来る敵に警戒していたが、杞憂に終わったようだ。

 栗原蓮華:「次の駅が見えて来た!」
 栗原愛里:「霧生銀座駅?」

 もちろん、東京の銀座とは無関係である。
 埼玉の大宮駅東口にも飲み屋街としての『南銀座』、風俗街としての『北銀座』があるが、要は繁華街としての名前である。
 霧生市にも銀座と称する繁華街があるということだ。

 善場:「この駅でもまだハート2のエリアですね。もう1つ隣の駅に行きましょう」

 ホームには南行の電車が停車しており、こちらは2両編成だった。
 しかし、繁華街の駅ということもあって、バイオハザードの最中に惨劇が繰り広げられたことは、構内の様子を見れば想像に難くない。
 まだ白骨死体だからいいようなものの(骨体くらいなら理科室のガイコツで皆見ているだろう?)、腐乱死体だったら愛里などは大変だろう。

 愛原:「うう……」
 高橋:「先生。もうしばらくの辛抱です。頑張ってください」

 幸いこの駅は2面2線の対向式ホームである為、進路上に電車が止まっていても、その横を通って進むことができた。
 『2番』のリサが善場の横にやってくる。

 『2番』:「『0番』さん?」
 善場:「! どうして知ってるの?」
 『2番』:「何となく分かった。この町にいるリサ・トレヴァーが、あなたに対してだけ反応が違ったから」
 善場:「あら、そう。……確かに私は『0番』よ。それがどうしたの、『2番』さん?」
 『2番』:「『8番』が先生にどんなウィルスを感染させたか、何となく知ってる。同じリサ・トレヴァーの私の血を使えば、薬が造れるはず。だから、私の血を使って」
 善場:「ありがとう。でも、それは元リサ・トレヴァーの私も同じよ。私の血も使えば、最強かもね」
 『2番』:「おー」
 善場:「その為には、早いとこBSAAと合流しないと……」
 『2番』:「“青いアンブレラ”、悪い人達じゃないと思ったのに……」
 善場:「それも含めて、後で確認しないとね」

 ようやくハート2エリアを抜け、霧生中央駅に辿り着いた善場達。

 BSAA隊員:「早くこちらへ!」

 既に救助隊員が待ち構えていて、ストレッチャーを用意していた。
 それに愛原が寝かされる。
 BSAAの救助隊員達は地上出口へ向かった。

 善場:「“青いアンブレラ”が攻撃してきたっていうけど、それはどうして?」
 BSAA隊員:「分かりません。彼らによれば、『ターゲットを発見した。総攻撃するので、こちらに任せてほしい』の1点張りで……」
 善場:「霧生市内における作戦指揮は全てBSAAが執っているはずよ。LS役の“青いアンブレラ”がそんな勝手なこと……」

 LSとはLogistic Supportの略で、後方支援のことである。
 市内に展開して直接作戦を行うのがBSAA、それに対して後方支援を行うのが民間軍事企業たる“青いアンブレラ”である。
 もちろん先遣隊の派遣など、“青いアンブレラ”が前に出ることもあるが、BSAAから顧問を招聘して主な作戦遂行を委任するのが現状のはずだ。

 BSAA隊員:「そうなんですが、“青いアンブレラ”は独自に何か調査していたらしいのです」
 高橋:「あの屋上に『1番』がいたのかもしれねーな」
 善場:「ええっ?」
 高橋:「今頃はビルと一緒にバラバラになっていたりしてな」

 地上に出ると、BSAAのヘリコプターが着陸していた。

 蓮華:「『1番』の捜索は中止ですか?」
 善場:「ええ、そういうことになります」
 蓮華:「ここまで来て……。せめて、私達の家がどうなってるかだけでも確認できませんか?」
 善場:「ふーむ……」

 善場はBSAA救助隊員に尋ねた。

 善場:「これから、どこの病院に搬送しますか?」
 BSAA隊員:「会津地方の災害拠点病院になりそうです。今、最終的な搬送先を決めているところです」
 善場:「そうですか。いずれにせよ、方角的にはこのコ達の家の近くは通ることになるわけですね」
 BSAA隊員:「は?」

 しばらくして愛原の応急処置が終わり、愛原はストレッチャーのままヘリコプターに乗せられた。
 その後で高橋が乗り込む。

 善場:「2人とも。この人達に頼んで、あなた達の家の上空を通る時、少し低空飛行してもらうことになったから。それで家の様子を見るだけ見て」
 蓮華:「あ、はい」

 栗原姉妹が最後にヘリコプターに乗り込むと、すぐに離陸した。
 離陸してしばらくしてからも、善場や『2番』のリサは周囲への警戒を怠らない。
 何せ、離陸したヘリをロケランで吹っ飛ばしたBOWも存在するからだ。
 それからしばらくして、BSAA隊員がやってきた。

 BSAA隊員:「“青いアンブレラ”からの報告です。ターゲットたるリサ・トレヴァー『1番』の殺処分に失敗したとのことです」
 善場:「失敗したとは?」
 BSAA隊員:「市役所庁舎が崩壊し、そこを捜索しましたが、全くそれらしき遺体は見つからなかったと」
 善場:「でしょうね。何しろ『1番』はここにいる『2番』と同じ。ヘリからの機銃掃射くらいでは倒せないでしょう」
 BSAA隊員:「スゴい化け物ですね」
 善場:「凄い化け物なんですよ。……だから、取り扱いには十分注意しませんと」

 善場は心配そうに愛原を覗き込む『2番』のリサを見て答えた。
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