報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「『9番』と勝負」

2020-11-25 19:42:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日16:00.天候:曇 某県霧生市中心街 市役所8F「市民ラウンジ」]

 私達は誘われるかのようにエレベーターに乗り込み、8階へと向かった。
 非常予備電源で動いているエレベーターの中は薄暗く、動きも緩慢だ。
 そんな時、リサは持っていたバッグの中から何かを取り出した。
 それは、あの白い仮面。
 裏側に小さく『2』という数字が印字されていることから、リサ用の仮面だろう。
 リサはそれを顔に着けた。
 これで着ている服がブレザーではなく、セーラー服なら、敵側のリサ・トレヴァーだ。

 愛原:「どうして仮面なんか着けるんだ?」
 リサ:「リサ・トレヴァー達は互いの素顔を知らない。ここでは私は先生達の味方のリサ・トレヴァーとして戦うわけだから、敵にすぐ認識してもらえるよう、仮面を着けておいた方がいいと思った」
 高橋:「何を今さら……」

 高橋は呆れたかのように肩を竦めた。

〔ドアが開きます〕

 愛原:「やっと8階だ」

 ピンポーン♪とチャイムが鳴る。

〔8階です。下に参ります〕

 エレベーターを降りると、雲間から西日が差し込んでいた。
 もう夕方なのか。
 時間が経つのは早いな。
 そして、その夕日を背にして立っているのは、セーラー服に白い仮面を着けたリサ・トレヴァーが1人だけだった。

 リサ・トレヴァー:「ようこそ」

 リサと同じショートボブであるが、あちらは金髪だ。
 もしかして、外国人なのか?
 今喋った日本語は流暢なものだが……。

 リサ(以下、『2番』とする):「『9番』だね?」
 『9番』:「その声は……何番だっけ?忘れたw」
 『2番』:「どうせ日本のリサ・トレヴァーなんてそんなもの。私は『2番』。あなたは『9番』でいいね?」
 『9番』:「そう、私は『9番』」
 高橋:「一匹だけか?『8番』はいねーのか?」
 『9番』:「『8番』ね。あなた達が弱そうだからって、先に帰っちゃった」
 高橋:「あぁ?」
 『2番』:「ウソだね。『8番』は太陽に弱い。だから、日暮れまで動けない」
 高橋:「ウソついてんじゃねぇぞ、コラ!」

 ということは、だ。
 16時30分くらいに日没になるとして、それまでにカタを付ければ私達に有利ってことじゃないか?

 愛原:「キミを地獄に送る前に、2つ聞きたいことがある」
 『9番』:「なぁに?」
 愛原:「1つは、『0番』と『1番』はどこにいる?」
 『9番』:「あー……『1番』ねぇ……」

 『9番』は困ったかのように頭をかく仕草をした。

 『9番』:「私を倒すことができたら、『8番』が来る。『8番』に聞けばいいよ」
 愛原:「『0番』は?」
 『9番』:「? ここには来てないよ」
 愛原:「そうか……」

 私はこの時、『1番』は別行動をしていて、『0番』もまた別行動をしているのだと思っていた。

 高橋:「いや、もう少し丁寧に答えろや。『1番』のことが分かんねーんだったら、せめて『0番』が今どこにいるか教えろっつってんだ」

 すると『9番』は不思議そうに首を傾げた。

 『9番』:「えっ、知らないの?今は別行動になってるけど、それまでずっと一緒に行動してたじゃない」
 愛原:「はあ???」
 『2番』:(ま、まさか……)

 『2番』のリサだけが何となく分かった。
 初めて会った時から、何となく違和感そのものは感じていた。
 その『0番』と思しき人物は、『バイオテロに立ち向かう為、様々なワクチンを体内に投与しているから、それでそう思うのだ』と説明していたが、やはり何となく怪しいのを覚えている。

 高橋:「ダメだ、やっぱり。先生、こいつらウソつきみたいです。さっさとブッ殺しましょう」

 高橋はマグナム44を構えた。

 愛原:「待て。まだ質問は終わっていない。もう1つの質問だ。キミは……今まで何人の人間を食い殺した?」
 『9番』:「ああ。………………………………………………………」
 高橋:「おい!早く答えろや!」
 『9番』:「よくは覚えてないけど、3ケタは行ってないと思うよ、多分」
 『2番』:「100人行くか行かないか、か……」
 『9番』:「さて、私からも質問いい?」
 愛原:「いいだろう」
 『9番』:「『2番』を飼ってるみたいだけど、どうするの?バイオテロに使うの?それとも性奴隷?」
 愛原:「いや、飼ってるんじゃない!一緒に住んでるだけだ!」
 『9番』:「ふーん……?GPSを仕込んでるみたいだから、首輪着けてるのかと思った」

 それは『2番』のリサが制服のリボンとして首に着けているものだ。
 リボンの裏には、超小型GPSが搭載されている。
 これで善場主任達が逐一、『2番』のリサの行動を監視するのである。
 学校では私の監視から外れるからだ。
 但し、今ではリサにはスマホを買い与えている為、そのGPSが使用されている。
 その為、リボンの方は殆ど稼働していない。

 『9番』:「『2番』は人間を何人食べた?」
 『2番』:「私は(自分が記憶している限り)人間の血肉は食べていない」
 『9番』:「プッwww 食べてないって、あんた……ハハハハハ……!ウソつかなくていいんだよ」
 『2番』:「本当に食べてない。だから私は人間に戻る」
 『9番』:「はあ?今更何を……」
 『2番』:「私は人間に戻る。だから、もう戻れないあんた達には用は無い」
 『9番』:「夢見てんじゃねーよ。化け物は死ぬまで化け物なんだよ」

 『9番』は右手から触手を出した。
 どうやら、『2番』のリサと同じく、ネメシスの細胞が強いらしい。

 『2番』:「どうかな?」

 『2番』のリサも右手から触手を出した。
 それを掴んで鞭のようにしならせる。
 だが、高橋が先に『9番』に発砲した。
 善場主任のハンドガンは的確に『7番』の仮面を撃ち壊したが、『9番』は予想通り『7番』より強いようだ。
 何故なら……。

 高橋:「あっ!?」

 バシッと、まるで蝿を叩き落とすかのように、マグナム弾を触手で払い落したのだ。

 『9番』:「あんたから死にたいみたいね?」
 高橋:「ま、マジかよ……?」

 まさか銃弾を叩き落とすとは……。

 高橋:「しゃらくせぇっ!」

 高橋、今度はマシンガンを『9番』に放つ。
 だが、これも『9番』は左手を大きな盾に変形させて身を守った。

 高橋:「な、何いっ?!」
 『9番』:「もう終わり?ハハッ、弱い弱い」
 『2番』:「先生達、下がって。私が戦う」
 愛原:「だ、大丈夫なのか?」
 『2番』:「うん。今ので分かった。私は勝てる」
 『9番』:「ハハっw 人間を1人も食べたことが無いくせにwww」

 嘲笑う『9番』。
 『2番』は無言で左手からも触手を出す。
 一体、『2番』のリサは何を持って自信タップリに勝算ありと分かったのだろうか?
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“私立探偵 愛原学” 「ついに善場の正体判明!」

2020-11-25 16:04:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日15:00.天候:曇 某県霧生市中心部]
(この話に限り、愛原不在の三人称とします)

 栗原蓮華:「う……」

 蓮華が意識を取り戻した。
 暴走トラックと装甲車の激突事故により、漏れ出した燃料が引火し、大爆発を起こした。
 栗原蓮華と妹の愛里は爆発する直前、善場に庇われ、ビルとビルの間の路地に飛び込んだのだ。
 おかげで爆風の直撃は避けられたわけだが……。

 蓮華:「愛里、愛里。しっかりして」
 栗原愛里:「う……ん……」

 幸い姉妹共に大きなケガは無く、意識レベルも通常値(概算)であった。

 愛里:「お姉ちゃ……」
 蓮華:「うん、怖かったね」

 愛里は必死に泣くのを堪える妹を抱き抱えた。
 が!

 愛里:「ひっ!?」

 姉の背後にいる人物を見て、愛里は息を呑んだ。

 蓮華:「え!?」

 蓮華が咄嗟に後ろを見ると、そこには姉妹を庇った善場が倒れていた。
 しかも、背中には鉄材のような物が背中に突き刺さっていた。

 蓮華:「そ、そんな……」

 蓮華は善場に駆け寄った。

 蓮華:「善場さん!善場さん!しっかりしてください!」

 蓮華が善場を揺り動かすと、善場はゆっくり目を開けた。

 蓮華:「だ、大丈夫ですか!?」
 善場:「大丈夫……だけど、これは……良くないわね……。背中に何か刺さってるでしょう?」
 蓮華:「て、鉄の棒みたいなのが突き刺さっています」
 善場:「近くに大人の男性はいる?」
 蓮華:「い、いません。愛原先生達も、軍人さん達もです」
 善場:「まあ……愛原所長達は大丈夫でしょう。しょうがないから、あなたがこれを抜いてくれる?」
 蓮華:「だ、ダメです!確か、これ、ヘタに抜いたりしたら、血が噴き出して、もっと大変なことになるんですよね!?」
 善場:「普通はね。でも、私は大丈夫なの。だから、抜いてくれる?」
 蓮華:「え……?」
 善場:「うん……。私は、大丈夫だから……。だから、お願い……。まだ高校生のあなたに……お願いするのはアレだけど……」
 蓮華:「ほ、本当に大丈夫なんですね?」
 善場:「ええ。だから、お願い」

 蓮華は善場の後ろに回り、鉄材を掴んだ。
 爆発で飛んで来た物だからか、それはまだ熱かった。
 火傷するほどの熱ではなかったが。

 蓮華:「くっ……!」
 善場:「ううっ!」
 蓮華:「や、やっぱりやめた方が……!」
 蓮華:「いいから続けて!」

 蓮華は何とかして鉄材を引き抜くことに成功した。
 勢い余って、後ろに倒れてしまったが。
 当然、善場の背中から血が噴水のように噴き出した。
 愛里は完全に顔を覆っている。
 だが、呆然と見つめる蓮華の前で、噴き出した血は、まるで水道の蛇口を締めるように止まっていった。
 そして完全に血が止まると、今度はズプズプと傷が塞がって行く。
 気が付くと、既に傷は跡形も無く消え失せていた。

 蓮華:「あ……あ……」

 さしもの蓮華も、しばらくは口をパクパクさせるだけだった。

 蓮華:「な……ど……どうなってるの?」

 そこで蓮華、ハッと気づく。
 同じような現象を見せたBOWがいたことに。
 その名をリサ・トレヴァーという。
 すぐに傷が回復するものだから、無闇に斬るだけでは埒が明かない。
 だから、首を一気に刎ね飛ばさないといけないのだ。

 蓮華:「ま、まさか!」

 蓮華は手持ちの日本刀をスラッと抜いた。

 蓮華:「愛里!そいつから離れて!!」
 愛里:「え?」
 善場:「心配しないで。確かに私は普通の人間と違うけど、別にあなた達を取って食べるつもりはないから」
 蓮華:「どういうことなんですか?ここまで来たら教えてもらいませんと。教えなかったら、あなたをBOWとして斬ります」
 善場:「分かったわ。周りに男性はいない?」
 蓮華:「いませんけど?」
 善場:「それじゃあ……」

 善場は黒いスーツの上着を脱ぎ、その下のブラウスも脱いだ。
 そして、上だけ下着姿になると、左腋の下を見せた。
 そこには……。

 蓮華:「0!?『0番』!?」
 善場:「そう。私はリサ・トレヴァーの『0番』なの。だけど、何でトップナンバーより前の0番なのか知ってる?」
 蓮華:「知りません」
 善場:「もっとこの数字をよく見てくれる?」
 蓮華:「……?何か、下に書いてありますね」

 元々あった入れ墨を消して、その上から改めて0という数字を入れ墨したようである。
 1と2という数字がうっすら見えるような……?

 善場:「12よ。元々私は『12番』だったの」
 蓮華:「はあ!?」
 善場:「だけど私が捕まっていた研究所が、今の私の政府組織に摘発されて、私はある実験を受けた。それが、『人間に戻す実験』だった。実験は今のところ成功。だけど、まだ実験段階」
 蓮華:「あの……『2番』をさっさと捕まえて、実験しないんですか?」
 善場:「私はまだ完全にリサ・トレヴァーになりきれていなかったの。だから、まだ人間に戻すことができた。私が助け出された時、まだ私はカプセルの中にいたからね。だから、私はまだ誰も人を食い殺していないよ。そうなる前に助け出されたから」
 蓮華:「だから?」
 善場:「だけど、『2番』は完全にリサ・トレヴァーになってしまってる。しかも、製造者側が完成品と謳うほどのもの。私と同じやり方ではダメなの。もちろん、私に使われた薬剤などは参考になるだろうけど、まだ足りない。それと、今すぐ彼女を人間に戻しても、人間らしい生活ができるかどうかわからない」
 蓮華:「?」
 善場:「まだ化け物になる寸前だった私ですら、後遺症で、『人間って何?』という所から始めなければならなかったからね。ましてや、今の『2番』もまだ感覚が普通の人間とズレている部分とかあったりするでしょう?愛原省所長達と一緒に暮らしているうちに、だいぶ良くなったみたいだけど……」
 蓮華:「それでもうちの妹を『捕食』しようとしました」
 善場:「そう。彼女の中から『化け物』を消さなければならない。科学的に人間に戻せたとしても、精神的に化け物ではダメだから。ちゃんとした方法が見つからない限り、『2番』を『治療』することはできないわけ」
 蓮華:「もう一度聞きますが、あなたはもう化け物ではないんですね?」
 善場:「ええ。私はあのコ達と違って触手を出したり、鬼に化けたりとかはもうできないから」
 蓮華:「分かりました」
 善場:「愛原所長達は爆発の向こう側に行ったようね。ちょうど鉄道の駅の中を通って行けるようだから、それで行きましょう」
 蓮華:「はい。愛里、付いてこれる?」
 愛里:「うん……」
 蓮華:「愛里はやっぱり来ない方が良かったかもね」
 善場:「今度BSAAと合流できたら、このコを保護してもらいましょう」

 善場は服を着直すと、まだ無事に口を開けている市役所前駅のB2出入口へ向かった。
 蓮華と愛里も付いていく。

 蓮華:「もしも『2番』が人間に戻れたら、番号はどうなるんですか?」
 善場:「そうねぇ……。『00番』とかにでもなるのかしら」
 蓮華:「野球の背番号みたいですねぇ……」
 善場:「ふふっ、そうね。でも、リサ・トレヴァー達を全滅させることができたら、もう番号で識別する必要も無くなるから、そもそもナンバリングそのものが廃止されるかもね。私も、この『0番』を消すことになるのかも」
 蓮華:「その『0番』さんでも、『1番』の居場所は分からないと?」
 善場:「だから直接来る他無かったのよ」

 地下駅への階段を下りる。
 途中でシャッターが3分の1だけ開いた状態で下りていた。
 善場と力を合わせてシャッターを引き上げ、先に愛里を中に入れる。
 それから2人同時に入って、手を放すと、ガッシャーンと勢い良く閉まった。
 これでもうここから地上に戻ることはできない。

 善場:「行きますよ」

 善場はマグライトを点灯させた。

 善場:「愛里さんは私から離れないで。蓮華さんは日本刀を抜いていても構いません」
 蓮華:「はい。(『7番』が言ってたこと、実は本当たったりして……)」

 町の入口の県道バイパスで戦ったリサ・トレヴァー『7番』。
 彼女は、『「1番」はいない』と言っていた。
 それはただ単なる言い逃れの為のウソだと思っていた。
 だが、これだけの騒ぎでも、他のリサ・トレヴァーが現れない所をみると……そんな気がしてきてしょうがないのだ。
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