報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再び穴の中へ」

2020-09-26 16:02:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日11:48.天候:晴 宮城県仙台市若林区 仙台市営バス国分寺薬師堂前バス停→愛原家]

 私達は薬師堂駅の次のバス停でバスを降りた。
 地下鉄東西線が開通する前から存在していたバス停で、その当時はただ単に『薬師堂』というバス停であった。
 東西線開通時に停留所名が変更され、現在に至る。

 愛原:「うちの実家にお邪魔したいということだ」

 私はスマホを見せながら高橋に言った。

 愛原:「どうせ、あれだ。裏庭から例の地下道に入りたいんだろう」
 高橋:「なるほど。でも、こいつはどうします?」
 絵恋:「こいつって何!?」
 愛原:「高橋。そうだなぁ……。危険な場所だから、絵恋さんは連れて行けないな」
 絵恋:「ええーっ!」
 愛原:「うちの実家に預けておこう」
 絵恋:「知らない人の家にいるのは嫌です」
 高橋:「先生の御実家だっつーの」

 さすがに爆発事故の時と違って、規制線は解かれている。
 実家の駐車場には代車と思しき車と、黒塗りのアルファードが止まっていた。

 善場:「愛原所長。お疲れ様です」

 その車の助手席から善場主任が降りて来た。
 運転席には善場主任の部下と思しき男性職員が乗ったままだ。

 愛原:「善場主任、お疲れさまです」
 善場:「本日は調査に協力して頂けるということで、ありがとうございます。よろしくお願いします」
 リサ:「えーと……御指名ありがとうございます。リサです」
 愛原:「本当にやらなくていい!」
 善場:「あらあら?後で指名料をお支払いしないといけませんね」
 高橋:「さすが姉ちゃん!そうこなくちゃ!」
 愛原:「お前がもらうわけじゃないだろ」
 善場:「あら?斉藤社長の娘さんも御一緒なんですね?」
 愛原:「まだ社長の仕事は継続中なので。帰京するまでは」
 善場:「なるほど。では危険ですので、車の中で待っててもらいましょうか」
 絵恋:「車の中ですか」
 善場:「エアコンは入ってますし、Wi-Fiも完備ですよ。部下も残しておきますので、護衛も完璧です」
 絵恋:「リサさん、早く帰って来てね」
 リサ:「うん、分かった」
 愛原:「話が分かるコで良かった」

 私は3人を敷地内に案内した。
 家の中にいた両親には事情を説明した。

 父親:「何だって!?うちの裏庭の下に通路が!?」
 愛原:「やっぱりそこは気づいてなかったか……」

 私は板を退かすと、物置から縄梯子を持って来た。

 愛原:「何でこんな縄梯子があるの?」
 父親:「何かあって、2階から外へ避難しなければならなくなった時用だ」
 愛原:「だから、どうしてそれが物置にあるのかっていうツッコミだよ」
 善場:「まあまあ」

 私は縄梯子を用意すると、先日と同じように、もう一つの庭石に括りつけた。

 父親:「後でこの穴も埋めないとなぁ……」
 愛原:「俺達が戻って来てからにしてくれよ?」

 私達はヘッドランプやマグライトを用意すると、それで再び地獄の地下通路へ向かった。

 愛原:「またハンターとかいたりしませんかね?」
 善場:「それは大丈夫でしょう。BSAAが既に調査済みですから」
 高橋:「先生、いざとなったら俺のマグナムで……」
 愛原:「でもお前のそれの命中率、意外と低いぞ?」
 高橋:「う……」
 善場:「射撃場で訓練した方がいいかもしれませんね。それか、もう少し威力の小さい拳銃とかにすればいいのでは?」
 高橋:「それだとゾンビしか殺せねーだろうが」
 善場:「本来は一般人であるあなた達に、特別に銃の所持許可を出すことについて、上層部から反対の声もあるんですよ。ただ、あなた達は一般人の割にBOWとの遭遇率が異様に高いので、許可されているんです」
 愛原:「もちろん、発砲はそのBOWとクリーチャーにだけですよ」

 梯子を下りると、あの地下通路に出た。
 既にこの辺りで格闘したハンターの死体は無くなっていた。
 灰となって消えたか、或いはやってきたBSAAによって処分されたか……。

 リサ:「うん。変な臭いがする。化け物の臭い……」

 リサは人間形態ながら鼻をヒクつかせた。

 善場:「恐らくあなたと同じタイプのBOWだと思います。場合によっては第一形態への変化を認めます」

 リサは第0形態のまま、まずは事件現場へと向かった。
 もちろん、私達も一緒だ。
 先日探索した時にはただの壁だった行き止まりが、今は貫通していた。
 直径2メートルくらいの穴が開いていて、その先が地下鉄のトンネルになっていた。
 今は簡易的なバリケードが置かれている。

 愛原:「地下鉄のトンネルを歩くのは初めてだなぁ……」
 善場:「霧生電鉄は地下鉄ではないですからね」

 もちろんこの穴はいずれ塞がれるのだろう。
 本当は塞がってから電車を走らせるべきなのだろうが、そうもいかない。
 まずは簡易的に塞いで、それから運転を再開させるといったところか。

 善場:「早く戻りましょう。今、運転再開に向けて試験走行をしているみたいです」

 促されて地下通路に戻ると、ちょうど『試運転』と表示された電車が通過していく所だった。
 午後には運転再開予定であるとのこと。

 善場:「それでは今度は、瓦礫で進めなかったという先に行きましょうか」

 化け物が瓦礫を退かしてくれたおかげで、今は屋敷跡に行くことができる。
 ライトを手に崩壊した場所に向かった。
 確かに先日来た時は崩壊してて行けなかった通路が、今は通れるようになっていた。
 だが、代償はあったらしい。
 どうして崩壊していたのかというと、陥没していたからである。
 うちの裏庭みたいに。
 しかしこの現場はうちの裏庭よりも、ヒドい陥没であった。
 この真上には駐車場があって、そこに止まっていた車が下に落ちていた。
 もちろん陥没のきっかけは、あの大爆発だ。

 愛原:「この先にリサの秘密が……」
 善場:「いえ、無いと思います」
 愛原:「え?」
 善場:「屋敷自体が大爆発しましたからね」
 愛原:「じゃあ、あの地下鉄を襲った化け物はどこから来たんですか?」
 善場:「それを五十嵐元社長に聞きたかったのに、意識不明の重体で大変なことになりました。ところで、所長に1つお聞きしたいことがあります」
 愛原:「何ですか?」
 善場:「所長は、『もし昨日中に帰京する予定だったら、自分達があの電車に乗っていた』と仰ってましたね?」
 愛原:「ええ。でも、偶然なんでしょう?」
 善場:「かもしれませんし、そうでないかもしれません。それで、後者だった時の話をしたいのですよ。所長があの電車に乗るかもしれないことを、どなたに話しましたか?」
 愛原:「あの電車に乗ると話した人は誰もいませんよ」
 善場:「それでは、昨日中に帰るかもしれないことを誰に話しましたか?」
 愛原:「それはうちの高野君と斉藤社長ですね。斉藤社長には仕事の依頼を受けた際、『そういう予定でした』という話をしただけです。高野君には昨日中に帰りたい旨を伝えましたが、もちろん今日帰ることになったことを伝えてあります」
 善場:「なるほど……」
 高橋:「アネゴでも疑ってんのか?姉ちゃんはアネゴのことが嫌いだもんな」
 善場:「個人的には何の感情も持っていませんが、ただ、何か大きな秘密を持っていらっしゃる方だろうとは思っていますよ」
 愛原:「大きな秘密?」

 いつの間にか私達は屋敷跡の地下に来たようだ。
 そこにはまた横穴が開いていた。

 善場:「ここからあの化け物は出て来たようです。BSAAが調査したところ、大型のゲージが出て来たそうですので、そこから出て来たものと思われます」
 愛原:「リサは結局この家のコだったのかな?」
 善場:「断定はできませんね。五十嵐元親子に聞けば、すぐに分かりそうなものなのに残念です」
 愛原:「あ、そうそう。その五十嵐元社長なんですが、埼玉の住所が分かりましたよ」

 私は斉藤社長からの情報を善場主任に伝えた。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台市営バス」

2020-09-26 11:04:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日11:04.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 仙台市営バス鶴巻バス停→仙台市営バス15系統車内]

 

 リサと斉藤絵恋さんの散髪終了を待って、私達は出発した。
 リサは望み通り、ショートボブへと髪形を変更している。
 絵恋さんはセミロングからショートへ長さを変えたというだけで、全体的な形までは変わっていない。

 愛原:「あー、なるほど。確かにリサと出会った時、こういう髪形だったなぁ……」
 高橋:「あの時ゃ、そんな髪形を観察する余裕なんか無かったはずですよ」
 愛原:「パンツは白かった記憶ならあるのだが……」
 高橋:「は?」
 絵恋:「えっ!?」
 愛原:「あ、いや何でもない」
 リサ:「うん、確かに白かった。今もそうだよ。見る?」

 リサは自分の黒いスカートを捲り上げようとした。

 愛原:「やめなさい!こういう所で!」
 絵恋:「はわわ……!り、リサさん……!」

 そんなことを話しているうちにバスがやってきた。
 特段ラッピングをしているわけでもなく、緑と青の仙台市交通局オリジナルの塗装だ。

〔15系統、東部工場団地、若林体育館前経由、荒井駅行きでございます〕

 私達はノンステップバスに乗り込んだ。
 車内はガラガラで、1番後ろの席に並んで座った。

〔発車致します。ご注意ください〕

 私達が乗り込むと中扉が閉まるが、なかなか走り出さない。
 時間調整でもしているのかと思ったが、むしろ少し遅れているので、そういうわけでもない。
 冒頭の写真では分かりにくいが、このバス停は片側3車線の道路にありながら、バス停車帯が無い。
 それだけでなく、バス停を出てすぐ次の交差点を右折しなければならない為、走り出してすぐに左車線から右車線へと入る為、交通量が多いタイミングだとヘタに動けないのである。
 手前の信号が赤になり、後ろから来る車が途切れたところで発車する。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は岡田西町、岡田西町でございます〕

 バスの外観は仙台市交通局だが、車内を見るに、どうも横浜市営バスの中古車のようだ。
 何故なら座席モケットを見るに、横浜ベイブリッジだの、横浜中華街入口の門だの、女の子の靴だの、洋風なお墓の絵だのが描いてあったからである。

 高橋:「先生、地下鉄はまだ止まっているみたいです」

 高橋はスマホを見ながら言った。

 愛原:「そうか。駅に着いたら運転再開していたという仄かな望みはダメか」

 首都圏ならよくある話なのだが。
 もちろん、その逆もある。

 高橋:「午前中は全面運休みたいですね」
 愛原:「マジか」
 高橋:「一応、仙石線への振り替え輸送と、代行バスが運転されるみたいです」
 愛原:「代行バスか……」

 それに乗って行ったとしても、だいぶ時間が掛かるだろうなぁ……。

[同日11:15.天候:晴 仙台市若林区荒井 地下鉄荒井駅→仙台市営バス40系統車内]

 バスは私達の他、2~3人の乗客を乗せて荒井駅に到着した。

 愛原:「あー、何かいるわ」

 ロータリーには他のバスが停車していた。
 どうやらあれが代行バスらしい。
 地下鉄が市営である為、代行バスも市営だった。

 高橋:「あれに乗るんですか?」
 愛原:「ふーむ……」

 私達のバスが降車場に停車する。
 私は自分のスマホを見た。
 時間帯的に、そろそろ善場主任が現場に到着した頃だ。

 愛原:「いや、別のバスに乗ろう。確かこの駅から、あの現場の近くを通るバスが出ているはずだ」
 高橋:「やはり先生、現場に行かれますか?」
 愛原:「やっぱり気になるじゃないか。善場主任もそろそろ到着した頃だし、話が聞けるかもしれない。あと、斉藤社長からの話も情報提供できる」
 高橋:「さすが先生です」

 私達はバスを降りた。
 案の定、私達以外の乗客達は代行バスの方へ向かって行った。
 元々荒井駅は現時点でそんなに乗客の多い駅ではないのと、ラッシュの時間ではない為か、代行バスは満席状態ではなかった。
 もっとも、この駅周辺もマンション開発が進められている。
 それができれば、この駅ももう少し賑わうようになるだろう。

 係員:「地下鉄代行バスが発車しまーす!ご利用のお客様、お急ぎください!」

 代行バスは私達が乗らないと分かると、ドアを閉めて発車していった。
 途中の駅に止まりながら走ろうとすると、仙台駅に着くまでどのくらい掛かるのだろう?

 愛原:「あった。次の薬師堂駅方面、あと10分くらいで来るぞ」
 高橋:「先生のお仕事だ。文句は言わせねーぞ」
 リサ:「うん、分かった」
 絵恋:「わ、私はリサさんと一緒にいられれば、別にいいです」

 高橋の説明、雑過ぎ!
 私はバスを待っている間、善場主任にメールを送った。
 もちろん、メールだ。
 すぐに返信が来るとは限らない。
 返信が来たのは、乗り換えのバスに乗り込んだ時であった。
 そのバスも中古車で、今度は都営バスであった。
 モケットに、マスコットキャラの『みんくる』の絵が描いてある。
 まさか、仙台に来てまで都営バスに乗ることになろうとは……。
 またもや1番後ろの席に座る。

 愛原:「うん。やっぱり俺達に来てほしいみたいだ。特に、リサにだな」
 高橋:「リサ、御指名だぞ。良かったな。指名料、善場の姉ちゃんからもらえよ?で、会ったらこう言うんだ。『御指名ありがとうございまぁす。リサでぇす』ってな」
 愛原:「キャバクラか、このどアホ!」
 高橋:「じゃあ、どうするんですか?」
 愛原:「『ワタシ、サイキンコッチキタヨー!シャチョサン、アソンデカナイ!ヤスクスルヨー!』かな?」
 高橋:「それ昔のフィリピンパブっす!」
 絵恋:「ねぇ、リサさん?先生達、何の話をしているんたろう?」
 リサ:「大人の仕事の話。私達は気にしたら負け」
 絵恋:「そ、そうね。リサさんがそう言うなら……」

 バスにエンジンが掛かる。

〔「11時26分発、X40系統、霞の目営業所前行き、発車します」〕

 少し前まで、中扉の閉扉合図はブザーだったが、今は電車みたいにドアチャイムが主流になった。
 あれも車種によって個性があって面白かったのだが。
 やたら音色が低かったり、逆に甲高かったり。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 毎度、市営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスはX40系統、蒲町(かばのまち)、薬師堂駅、若林区役所前経由、市営バス霞の目営業所前行きです。次は荒井六丁目、荒井六丁目でございます〕

 リサ:「お昼はちゃんと食べれる?」
 愛原:「ああ、心配すんな。ただ、ちょっと時間はズレるかもしれないな。申し訳ないけど」
 リサ:「むー……」
 高橋:「一食くらい抜いても暴走しないようにする修行だと思え」
 愛原:「おっ、高橋。いいこと言うな」
 高橋:「えへへ……!あざーす!」
 絵恋:「本当に昼食抜きってわけじゃないですよね?」
 愛原:「それは無い。ちょっと遅れるだけだよ」

 リサにはそれでいいかもしれないが、絵恋さんのお守りの仕事も継続中なのに、絵恋さんまで巻き込んで昼食抜きにさせるわけにはいかない。
 善場主任には、現場に着いたらちゃんと説明しないとな。
コメント (2)
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