報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「善場の話」

2020-09-09 20:31:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月26日10:00.天候:雨 宮城県遠田郡美里町 愛原公一の家]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 公一伯父さんの家の前に、善場主任達を乗せた黒塗りのクラウンが止まった。
 ナンバーこそ普通の3ナンバーだが、リアにアンテナを搭載していることから、それが覆面パトカーの一種であることが分かる。
 しかしその車は警察車両ではない。
 降りて来たのは善場主任だけだった。

 善場:「おはようございます」
 愛原学:「おはようございます。雨の中、ありがとうございます」
 善場:「いいえ。お約束ですから」
 愛原学:「どうぞ、お上がりください」
 善場:「お邪魔致します」

 私は善場主任を客間に案内した。

 善場:「あなたが愛原公一名誉教授ですね。『枯れた苗を元の苗に戻す化学肥料』のサンプルを頂きに参りました」
 愛原公一:「うむ。残り1つだで。大切に扱ってもらいたい」
 愛原学:「残り1つ!?量産は?」
 公一:「んだから、ワシが居眠りしている間に勝手にできた肥料だから、作り方が分からんのだ」
 学:「旧アンブレラに全部売ったのかと思ったよ」
 公一:「売ったのはサンプルだけだで」
 学:「そうか」

 公一は奥から瓶に入った薬品を持って来た。
 瓶自体は大きなものではなく、栄養ドリンクの瓶くらいの大きさである。

 善場:「ありがとうございます。これを解析して、必ず『BOWリサ・トレヴァーを人間に戻す』薬品を作ってみせます」
 学:「よろしくお願いします。リサも人間に戻りたいと言いました」
 善場:「そうですか」
 学:「リサが体内に有しているウィルスでは、新型コロナウィルスのワクチンは作れなかった。恐らく、今後も何か新型のコロナウィルスなどが出てきたとしても、リサでは役に立てない。それで方針を転換して、リサを人間に戻すというプランになったということですか?」
 善場:「さすがは愛原所長。名推理ですね。概ね正解ですが、少し違う所があります」
 学:「どこですか?」
 善場:「『リサ・トレヴァーから新型コロナウィルスのワクチンを造り出すことに失敗したから方針転換した』のではなく、『リサ・トレヴァーから新型コロナウィルスのワクチンを造り出すプランと同時進行で、人間に戻す計画を実行していた』というのが正しいです」
 学:「そんなことを私達に内緒で?」
 善場:「申し訳ありません。私とて中間管理職です。上の命令には逆らえません。そのプランが上から承認を得られて、初めて実行できるのです。今回リサ・トレヴァーを人間に戻す計画についても、藤野の時点ではまだ承認を得られていなかったので、お話しすることができなかったのです」
 学:「具体的にはどうするのですか?伯父さんの薬が、どのように役に立つのですか?」
 善場:「私はここにいるリサ・トレヴァーを、アメリカの政府エージェント、シェリー・バーキン氏のようにしたいと思っております。御存知のように、バーキン氏は幼少の頃、Gウィルスに感染し、危うくBOWになるところでした。しかし、そのGウィルスにもワクチンはあります。しかしそのワクチンは、ウィルスを無効化するのではなく、その人体に無理なく取り込めるようにする効果を発揮するものです。そしてバーキン氏は正しく期待通り、Gウィルスを自然に取り込み、人間の姿、自我、理性、知性全てを失うことなく、しかし驚異的な身体能力を有することができたのです」

 因みに善場主任はこの説明をする際、専用のタブレットを使って説明した。
 紙の資料にすると紛失したり、流出したりの危険性があるからだろう。
 確かに資料を見る限り、シェリー・バーキン氏は人間と言って差し支えない感じであった。
 あくまでも驚異的な身体能力を持っているというだけで、例えば今のリサみたいに人外に変化するわけではないそうだ。
 もちろん他人にウィルスを感染させたりすることもないし、人肉を食らうこともしない。

 善場:「こちらのリサ・トレヴァーは検査した所、Gウィルスを保有しています。これにシェリー・バーキン氏に投与されたGウィルスのワクチンとこの薬剤、そして……他に存在しているウィルスなどを上手く調剤して、リサ・トレヴァーを人間に戻す薬を作ろうと思っています」
 高橋:「マンガやアニメみてーに、随分と都合のいい話に聞こえるな?」
 善場:「言葉にするからそのように聞こえるのですよ。実際、その薬を作る方は大変ですよ」
 公一:「それは確かに」
 善場:「他に名誉教授にお願いしたいのは、この薬剤が偶然できた時の実験、その状況を記した資料などの提出もですね」
 公一:「ああ。それについても、あの胡散臭い製薬会社が欲しがってたな」
 学:「まさかあげたの!?」
 公一:「無いとはウソ付けんだろうが」
 学:「いや、そりゃそうだけど……」
 公一:「だけど当時の助手が資料をコピーしていたので、それは持っておるよ」
 学:「何だ……」
 公一:「それで良ければ、持って行くといいでしょう」
 善場:「ありがとうございます」
 学:「居眠りしてて偶然できたって話の方が、よっぽどマンガみたいだよ」
 公一:「だってできちゃったんだもん、スかたねーべよ!」
 高橋:「先生、先生の調査の方は?吉田なんとかって家に行ったんでしょう?」
 学:「いや、いい話は聞けなかった。写真のメモ書きを見せても、『そんなのは知らない』の1点張りだ」
 高橋:「よし、でしたら俺の出番ですな」

 高橋はマグナムを取り出した。

 高橋:「門扉に一発、玄関に一発撃っときゃ、いい警告になりますかね?」
 学:「それはヤーさんの組事務所に頼むよ?」
 善場:「でも、写真のことは反応したわけですね?」
 学:「吉田律子さんの御実家であることは認めてくれましたよ。ですが、娘さんを失った悲しみがまだ癒えていない為に、赤の他人の私が言ってもダメでした」
 公一:「まさか、小牛田から古川に引っ越してたとは……」
 高橋:「で、俺とリサが相手した吉田美亜ってヤツ、結局何だったんでしょう?何であいつはリサみたいな化け物に?」
 善場:「それこそが、正に私がこれからお話ししたい内容です。皆さん、日本アンブレラのことは御存知ですね?」
 公一:「知ってるも何も、わしの研究成果を爆買いしていった胡散臭い製薬会社だで」
 学:「知っても何も、霧生市で嫌ほど知らされましたよ」
 高橋:「先生の仰る通りだ。何を今さら……」
 リサ:「その研究所にいました」
 善場:「もちろん、潰れたことも御存知ですね。当然です。経営母体のアメリカ本社が潰れたわけですから。その本体と直接繋がっていた日本アンブレラも2004年3月14日に、一旦は無くなっています。が、すぐに独立企業として再生したわけですが」

 しかしそれも、霧生市のバイオハザードで会社としての信用を一切失い、そのまま潰れたと聞く。

 善場:「霧生市に在住していた関係者の大半は亡くなりましたが、市外在住の関係者、或いは市内在住であっても、上手く脱出した関係者も多数います。それらの多くは“青いアンブレラ”に参加して贖罪活動をしているわけですが、中にはそうでない者もいるのです。その中に、そこにいるリサをBOWたる日本モデル完全版リサ・トレヴァーとした者がいます」
 愛原:「な、何だってー!?」
 公一:「噂なら知ってる。だが連中は、海外に逃亡したと聞くが?」
 善場:「そうです。捜索は困難を極めましたが、このコロナ禍のおかげで助かりましたよ」

 世界中を恐怖と不幸に陥れた新型コロナウィルス。
 しかし、今回はそれが幸運な方向へと導いただと?
 それは一体?
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“愛原リサの日常” 「リサの視点で過ごす愛原公一宅」

2020-09-09 15:32:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月26日00:00.天候:曇 宮城県遠田郡美里町 愛原公一の家]

 リサは愛原達とは襖挟んだ隣の部屋で寝た。

 リサ:「サイトー、ワガママ言って仙台に来るみたい」
 ジョン:「?」

 結局、リサと一緒に寝ることになった柴犬のジョン。
 某“お父さん犬”みたいに白い毛色が特徴。

 リサ:「サイトーってのはね、私の初めての人間の友達で、私のおやつ
 ジョン:「!?」
 リサ:「何だかお腹空いちゃった。あの家で人間の血を飲んだからかなぁ……?」

 もちろん、普通の食事は沢山食べている。
 なので、普通に胃袋は満たされている。

 リサ:「久しぶりの人間の血だったの。分かる?」
 ジョン:(分からんワン)
 リサ:「美味しそうな血の匂いにつられて、つい夢中になっちゃったんだけど、邪魔なお姉さんを引っ叩いたら首がもげちゃったんだ。でも、それでお兄ちゃんが助かったんだからいいよね」
 ジョン:(首もいだの!?)
 リサ:「サイトーが仙台に来たら、ちょっと分けてもらおうかな……」
 ジョン:(オレは食べないで欲しいワン……)

[同日07:00.天候:曇 愛原公一の家]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす……。

 リサ:「ん……」

 リサが眠そうにしていると、ジョンがペロッとリサの顔を舐めた。

 ジョン:「ハッ、ハッ。(朝だワン。起きるんだワン)」

 リサは手を伸ばしてスマホのアラームを止めた。

 リサ:「おやすみ……」
 ジョン:「ワン!?ワンワン!ワンッ!」

 二度寝を始めたリサに吠えるジョン。

 リサ:「うるさいよ……?」

 リサが半分目を開けた。
 しかしその目はいつもの人間の目ではなく、瞳が赤くなった鬼の目であった。

 ジョン:「ワウッ!?キャン!キャンキャン!」

 リサの眼光に驚いたジョン、慌てて部屋の外に逃げ出そうとする。
 襖なので、隙間に前足を入れようとしたり、鼻先を突っ込もうとするうちに襖が少し開いて、ジョンはその隙間に強引に体を滑り込ませるような形でリサから逃げて行った。

 リサ:「しょうがない。起きるか……」

 リサは大きく伸びをして布団から出た。
 因みに今、白いTシャツに黒いオーバーパンツ姿である。

 愛原公一:「おーい、ジョン。外は雨が降りそうだから、今日は庭で遊ぶだけにしとけ」

 公一はリサの部屋から逃げて来たジョンを庭に連れ出した。

 リサ:「おはよう、先生……」
 愛原学:「おはよう、リサ。……ってリサ、寝癖すっげぇ……」
 リサ:「えっ!?……あっ!」

 リサは今、腰まであるロングなのだが、あっちこっち寝癖で凄いことになっていた。

 リサ:「枕が変わるといつもこれ。やっぱり短くしたいなぁ……」
 愛原学:「だが、それがいい」
 リサ:「んん?」
 愛原学:「というか、短く切ったところで、またオマエ、髪を触手のように伸ばしたら、ロングに戻るだろうが」
 リサ:「それもそうか」
 愛原学:「ショートは人間に戻ってからにしたらどうだ?」
 リサ:「……なるほど。先生は私に、人間に戻って欲しい?」
 愛原学:「そりゃあな」
 リサ:「確かに私も、獲物探したり何なりメンドくさいと思う。人間に戻れるなら、戻った方がいいかも……」
 愛原学:「BOWは不老不死なんだろ?で、リサは俺と一緒に暮らしたいんだろ?そんな時、リサがBOWだったら、結局先に死ぬのは俺の方になる。お前が人間に戻れれば、俺が歳を取ればお前も取ることができる。それで一緒に暮らしても、何の問題も無くなるってわけだ」
 リサ:「分かった。私、人間に戻る」
 愛原学:「日本人版シェリー・バーキン氏になれれば、万々歳らしいからな、頑張れよ」
 リサ:「うん、分かった」

 リサは寝癖を直しに洗面所に行った。
 台所から料理や高橋の匂いがする。
 どうやら、ここに来ても高橋は食事当番であるようだ。

 リサ:「! そうだ!サイトーからのライン」

 寝癖を直して歯を磨いている時、リサは斉藤絵恋からラインが来ていたことを思い出した。
 明らかに斉藤からの方が送信数が多く、リサはしばしば既読スルーにすることが多い。
 で、たまに放置し過ぎると、斉藤が泣きながら直電してくるという流れだ。
 如何に斉藤は友達が少ないかが分かるだろう。
 リサもこの点に関してはウザさを感じているが、自らリサに食われることを望んでいる希少な人間である為、付き合いを続けている。

 朝の支度を終えると、リサはもう1度自分の寝室に戻った。

 愛原学:「リサ、布団は畳んでおけよ?後でクリーニングに出すらしいから」
 リサ:「はーい」

 リサは愛原学にそう言われ、部屋に戻ると、布団を畳んだ。
 そして着替えるが……。

 リサ:「ポロシャツ汚れたなぁ……」

 吉田家での戦いにおいて、リサのポロシャツは血や体液で汚れていた。
 もちろん着替えは用意していて、今度は制服のブラウスを着た。
 制服のスカートはスパッツの上から穿いた。
 着替えが終わってから、スマホを見てみる。

 リサ:「サイトー……」

 リサは呆れた。
 たかだか顔を洗って着替えている間に、もういくつも来ていたからだ。

 斉藤:『リサさん!これで返してくれなきゃ電話する!』

 とまで……。

 リサ:「あー、ハイハイ……」

 リサはまるで生理が来たかのような感覚になりながら、斉藤にラインを返した。
 現在地を教えてやったら……。

 斉藤:『私も美里町に行く!JR八高線で行けばいいのね!』
 リサ:「八高線?昨日乗った電車、そんな名前だったっけ???」

 リサが首を傾げていると……。

 愛原学:「リサ、朝食だぞー!」

 と、リサを呼ぶ声がした。

 リサ:「はーい!」

 リサが返事をして部屋を出る。
 朝食会場たる茶の間に行く途中、玄関の前を通って行くのだが、固定電話機の後ろにこの町の地図が貼られていた。
 田舎の家あるあるである。

 リサ:「八高線……無いな」

 小牛田駅から出ているのは東北本線と陸羽東線、そして石巻線である。

 愛原公一:「さすが高橋君!料理の腕前も凄い!学もいい弟子を入れて幸せだな!?」
 高橋:「ありがとうございます!教授!」
 愛原学:「ま、まあ、家事能力に関しては非の打ち所が無いとは思うけどね……」

 リサが茶の間に行くと、公一が高橋を褒めていた。

 愛原学:「おっ、来たか。じゃあ、早速頂こう」
 愛原公一:「うむうむ。久しぶりの複数人での食事じゃ。ワシは嬉しいぞ」
 リサ:「先生。この町に、八高線っていうJRは走ってない?」
 公一:「八高線?」
 学:「あれだろ?東京の八王子から群馬県の高崎までを結ぶJR線だろ?八王子の『八』と高崎の『高』で八高線だ。それがどうかしたのか?」
 リサ:「私が今、美里町にいるってラインしたら、サイトーがそれに乗って会いに行くってうるさいの」
 高崎:「ガチのビアンだ。気持ち悪ィ」
 学:「高橋。お前もLGBTのGだったろうが。今はBか」
 高崎:「心外です!俺は至ってノーマルですよ!」
 学:「嘘つきやがったな、このヤロー……!」
 公一:「おお、思い出した!美里町は美里町でも、ここは宮城県遠田郡美里町(ちょう)、八高線は埼玉県児玉郡美里町(まち)ではないかね?」
 リサ:「ええっ!?」

 リサはスマホを見た。

 斉藤:『今、新幹線に乗ったわ!それから大宮で川越線に乗り換えればいいのね!』
 リサ:「サイトー、乙……」

 Ω\ζ°)チーン

 愛原学:「どうした、リサ?」
 リサ:「こうして、斉藤絵恋は宮城県から排除されたのだった」
 愛原学:「ん?」

 こうして、斉藤絵恋は宮城県から排除されたのだった。
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