報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「もうひとりのリサ・トレヴァー」

2020-09-06 20:55:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日15:45.天候:曇 宮城県遠田郡美里町 吉田家]

 高橋:「チャース!どなたかいないっスかー?」
 ???:「はーい、どちら様?」

 玄関のドアを開けたのは、高橋よりも若い女性だった。
 もしかしたら、20歳にもなっていないかもしれない。
 高橋よりは背は低いが、リサよりは背が高い(高橋の身長181cm、リサの身長157cm)。
 髪を両肩のところで切っている。
 Tシャツにデニムのショートパンツ姿だった。

 高橋:「こちらに愛原学先生と愛原公一教授……いや、元教授が来てると思うんで、迎えに来たんスけど」

 女性の顔立ちは美人と言っていいだろう。
 まだ幼さの残る顔立ちに、5年後のリサといった感じだ。

 女性:「愛原学先生?」

 女性は首を傾げた。
 だが、すぐに笑みを浮かべた。

 女性:「ああ、あの人達ね!どうぞ、中へ。あの人達なら奥にいますから」
 高橋:「あざっす!お邪魔します」

 高橋はホイホイと家の中に入ったが、リサは眉を潜めていた。

 リサ:(血の匂い……。家の中からする。そして、この人……)

 高橋達は客間に通された。
 立派な床柱があり、10畳はある部屋の真ん中には、これまた立派な机が置いてある。

 女性:「どうぞ、こちらで寛いでください。今、お茶お入れしますね」
 高橋:「先生達は何をしてるんスか?」
 女性:「何か、『調査』とか言ってましたけど……」
 高橋:「調査!?何か見つけられたのか!?こうしちゃいられねぇ!場所はどこっスか!?」
 女性:「まあまあ。今、呼んで来ますから……。えーと、お名前は……」
 高橋:「あ、俺、高橋正義っス。愛原先生の忠実な一番弟子っス!こいつはリサで、えー……」
 女性:「私は吉田美亜です。この家の長女です」
 高橋:「あー、そうでしたか」
 女性改め美亜:「それじゃ、今お茶お入れしますので、このままお待ちください」

 美亜と名乗る女性は一旦、部屋の外に出て行った。

 リサ:「ねえ、お兄ちゃん……この家……人間の血の匂いがするよ……?」

 リサはマスクの上から鼻を押さえた。

 高橋:「シッ、黙ってろ。俺も怪しいとは思ってるんだ。もしかしたら今、先生達が危険な目に遭ってるかもしれねぇ。だけどよ、この広そうな屋敷の中、どこに先生がいるか分かんねぇ。今はまだフツーの客のフリをしてるんだ。分かったか?」
 リサ:「う、うん……」
 高橋:「因みにその血の臭いの中に、先生の匂いはするか?」
 リサ:「ううん、分かんない……」

 その時、美亜がお茶を持って戻って来た。

 美亜:「お待たせしました」
 高橋:「で、先生は呼んでくれたんスか?」
 美亜:「それが、『今、忙しくて手が放せない』とのことで、もうしばらく待つようにとのことです」
 高橋:「そうっスか。因みに、ちょっと聞きたいことあるんスけど……」
 美亜:「何でしょう?」
 高橋:「ここって、ケータイ繋がらないんスか?さっきから先生達のケータイに掛けても、ずっと繋がらないんスよ」
 美亜:「そうですね。何分、田舎なもので、電波が届かないかもしれませんねぇ……」
 高橋:「いや、バリバリ入ってるんスけど?」

 高橋は自分のスマホを見せた。

 美亜:「そんなこと、私に言われましても……」
 高橋:「先生が忙しいのなら、一番弟子の俺が手伝うのが筋だと思うんスよ。先生の居場所、案内してもらえないっスか?」
 美亜:「先生に『ここで待つように』と言われたのに、ですか?」
 高橋:「できない理由があるんスか?別にあんたが俺達を案内しても、怒られるのは俺で、あんたには関係無いはずだ」
 美亜:「ここは私の家です。あまり他人にズカズカと詮索されたくないんですけどね」
 高橋:「その割にはすんなり俺達を入れたじゃねーか?俺達を先生に会わせたくない理由があるんじゃねーのか?」
 リサ:「……!」

 その時、リサは見逃さなかった。
 一瞬、美亜の瞳が赤く光るのを……。

 リサ:(間違いない。この人……人間じゃない!
 美亜:「どうしてもと仰るのでしたら、案内しましょう。だけど、後悔しても知りませんよ?」
 高橋:「ああ、後悔するのは俺じゃねぇ。頼むぜ」

 高橋達は美亜の案内で客間の外に出た。

 リサ:(私はあの人の正体に気づいた。あの人は私の正体に気づいてる?)

 リサは美亜の臭いを嗅ぎ分け、どのような人外なのかを確認しようとした。
 だが、屋敷に充満する血の臭いで鼻が利かない。
 さすがに普通の人間の高橋も、気づいたようだ。

 高橋:「何だか、鉄の錆びたような臭いがするなァ?何だこの臭いは?」
 美亜:「まもなく分かります」

 薄暗い廊下を進み、奥の間に到着する。

 美亜:「こちらです。……御覧になりますか?」
 高橋:「見るまでも無ェな」

 高橋はマグナムを取り出した。

 高橋:「テメ、コラ!先生を血の海ん中にブッ込んだのか!?」
 美亜:「ふふ……ひひひひ!あっはははははは!!」

 美亜の姿が変化していく。
 頭に角が2本生え、瞳は金色に変色し、そして両手の爪が長く鋭く伸びた。

 高橋:「鬼か!?」
 美亜:「鬼ねぇ……。そうかもね!」

 高橋が一発発砲する。
 だが、美亜はそれを避けた。

 美亜:「遅い遅い!キャハハハハ!」
 高橋:「うぉっと!」

 美亜が鋭い爪で高橋に引っ掻き攻撃をしてくる。
 高橋はすんでの所で避けた。

 美亜:「おっ、交わした!やるじゃん!」
 高橋:「こう見えても、ダテにバイオハザードは潜り抜けてねーぜ!リサ、オマエも変化しろ!」
 リサ:「もち!」

 リサも第一形態に変化した。
 リサもまた、最初の形態は鬼そのものである。

 美亜:「えっ!?何これ!?珍百景!?」
 高橋:「ああ!珍百景だな!」
 リサ:(私の正体、気づいてなかったんだ……)

 リサは拍子抜けした。

 リサ:「それで?同じ鬼に変化できる……BOW同士ってことで教えて。愛原先生達はどこ?」
 美亜:「知らないよ!多分、そこの部屋の中さ!この前も男2人が来たから食ってやった!多分それだろ!オマエ達……いや、アンタは同じ種族みたいだから食えないけど、高橋さんは食ってやるよ!」
 高橋:「タダ飯ばっか食ってんじゃねーぜ、バーカ!」

 高橋は再びマグナムを構えた。

 美亜:「遅い遅い!いくら撃ったって当たんないよ!おとなしく食われな!」
 高橋:「だからタダ飯は食わせねぇ!」
 リサ:「お兄ちゃん、ここは私に任せて!」

 リサは美亜と同じ動きをした。

 リサ:「どうしてあなたはこの姿になったの!?」
 美亜:「はあ!?そんなこと聞いてどうするの!?あんたと同じ理由でしょ!?」
 リサ:「私は知らないの!」

 リサは美亜に向かって引っ掻き攻撃した。
 それは見事に当たり、美亜の顔から血が噴き出る。
 が、すぐにそれは止まった。
 リサと同様、傷の治りは物凄く早いのだ。

 美亜:「調子に乗るな、このクソガキ!」

 美亜の背中から黒い触手が2本現れる。

 高橋:「うわ、何だこれ!?キモっ!」
 リサ:「お兄ちゃん、それに捕まっちゃダメ!」

 リサも上を脱いだ。
 上はブラウスではなく、薄緑色のポロシャツである。
 これも東京中央学園の制服の1つである。
 夏はブラウスかポロシャツ、どちらか好きに選んで着て良いのだ。
 ポロシャツを脱ぐと、その下は黒いスポブラであった。
 スポブラの隙間から、リサも黒い触手を出した。
 しかし、こちらは4本!

 美亜:「はあ、何で!?あんた、何人食べたの!?」
 高橋:「そういうテメェは何人食いやがった!?」
 美亜:「10人くらい?家族は皆食ってやった!食えば食うほど、自分が強くなるのが分かるの!」
 リサ:「……私は覚えてない」
 美亜:「やっぱ覚えてないほど食べないとダメなんだね!だったら、その男を寄越しな!」
 リサ:「違うよ。食べたことを覚えてないの」
 美亜:「だから、それくらい食ったってことだろ!?」
 リサ:「多分、私は1人も食べてない」
 美亜:「ウソつくんじゃないよ!1人も食べてなくて、触手が4本とかマジありえないし!」
 リサ:「でも……!」

 いくら食人を1回もしていないことを自称するリサでも、そこはBOW。
 本来ならむせ返る血の臭いは、リサにとっては御馳走の匂いだった。

 リサ:(血……血の匂いが……。お腹が空いてくる……)
コメント
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