報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰り道」

2020-09-20 19:56:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日11:30.天候:晴 宮城県大崎市鳴子温泉鬼首 鬼首郵便局→国道108号線上]

 郵便局員:「レターパックプラスがお1つですね?520円です」
 愛原:「はい」

 私は最寄りの郵便局に行くと、そこでレターパックを買い求めた。

 高橋:「レターパックにUSBメモリー1個はデカくないですか?」
 愛原:「だけど、これも精密機器だ。これをそのまま封筒に入れて送るわけにもいかないだろう?」
 高橋:「それはそうですけど、緩衝材なんてそう都合良くは……」
 愛原:「それが、あるんだな」

 私はポケットティッシュを何個も取り出した。

 愛原:「このポケットティッシュというのが、意外と緩衝材になるんだな」
 高橋:「な、なるほど!そういう手がありましたか!」

 高橋は手帳に私のやり方をメモし始めた。
 ポケットティッシュとポケットティッシュの間にUSBメモリーを挟むようにして入れ、あとはそれが中でズレないように、何個かポケットティッシュを詰め込んで固定する。
 結果的にコンビニなどで販売している6個セットのポケットティッシュを全部使うことになるが、緩衝材が都合良く手に入らない場合の代替措置である。

 高橋:「それで先生、よく車の中などにポケットティッシュを何個も入れているんですね?」
 愛原:「まあ、これだけが理由じゃないんだがな」

 私はそう言うと、善場主任の指定した送り先を記入し、再び窓口に出した。

 郵便局員:「確かにお預かりします」
 愛原:「よろしくお願いします」

 用が済んだ私達は郵便局をあとにする……前に、ATMに立ち寄った。

 愛原:「ちょっと現金を補充しておこう」
 高橋:「俺もしておきます」
 愛原:「そうしてくれ」

 車に残っているリサはどうするかと思ったが、まあ別にここでなくてもいいだろう。
 ATMで現金を補充した私達は車に戻った。

 リサ:「お帰りなさい」

 リサはリアシートでスマホをやっていた。

 愛原:「ああ。それじゃ行こう」
 高橋:「もう帰っていいんスか?」
 愛原:「そうだな。取りあえず古川駅まで戻って、この車、返して来よう」
 高橋:「うっス」

 高橋は車をバックさせて、再び国道108号線上にハンドルを切った。
 私は一応、善場主任に送付完了の報告をしようと思った。

 善場:「善場です」
 愛原:「あ、善場主任、お疲れさまです。愛原ですが、例のUSBメモリー、レターパックプラスで送らせて頂きました。明日の午前中には届くと思います」
 善場:「ありがとうございます。一応、番号を教えて頂けますか?」
 愛原:「はい」

 私は追跡番号を善場主任に伝えた。
 善場主任側でも、例の重要なUSBメモリーがいつ届くか確認しておきたいのだろう。

 愛原:「それで、私達はこれからどうすればいいですか?」
 善場:「私達からの依頼はこれで終了です。報酬は後程振り込ませて頂きますので、あとは諸経費の請求をお願いします」
 愛原:「新たな依頼は無いということでよろしいですか?」
 善場:「今のところは。また何かありましたら、よろしくお願いします」
 愛原:「分かりました。取りあえず私達は、レンタカーを返しに古川駅まで戻りますので」
 善場:「承知しました。お疲れさまです」

 電話を切ると、上空に軍用ヘリコプターが数機飛行しているのが分かった。

 愛原:「“青いアンブレラ”のヘリだな」
 高橋:「あいつら、いつもどこにいやがるんですかね?」
 愛原:「さあな」

 私は肩を竦めた。
 車は旧国道を走っている。
 町から外れたバイパスを通らないのは、郵便局がそんな旧道から更に一歩入った場所にあるからだ。
 山道の旧道と違って、バイパスができても廃道にはならず、地元民の生活道路として生きている。
 実際、路線バスも未だに旧道の方を走っているようだ。

 愛原:「さすがに旧国道とはいえ、この辺りは封鎖しないだろうけど、早めに通過してしまおうか」
 高橋:「そうっスね」

 鬼首の町を抜け、旧道と新道が現道に合流する交差点に差し掛かると……。

 愛原:「うへ!?」

 何と、“青いアンブレラ”の装甲車が何台も曲がって来た。
 知らない者が見れば、自衛隊か米軍の装甲車が隊列組んで走行しているように見えてしまう。

 高橋:「戦争でも始まるんスかね?」
 愛原:「……かもなァ」

 とにかく、装甲車の隊列を見送ると、来た道を戻る。
 アップダウンの激しく、道も狭い旧道ではなく、長いトンネルの新道を突き進む。

 リサ:「お腹空いた」

 リサがリアシートから顔を覗かせた。

 愛原:「ああ。途中で何か食べて行こう。あれだ。あの道の駅。あそこにレストランがあっただろ。あそこで食べよう」
 高橋:「了解っス」
 リサ:「あのレストラン、バイキングだって……」

 リサはニヤリと笑った。
 鬼のように食べるBOWのリサにとって、バイキング(食べ放題)は天国のようなものか。

 リサ:「それと先生」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「サイトーが、『いつ仙台に戻るの?』って矢のような催促」
 愛原:「あちゃー……」
 高橋:「『仙台駅通過の新幹線で東京へ帰るぜ。あばよ』とでも返しとけ」
 愛原:「そんな新幹線あるか!」
 高橋:「名古屋飛ばしの新幹線があるって聞きましたよ?仙台もあるんじゃないスか」
 愛原:「そりゃ300系“のぞみ”のことだ!今は無い!」

 もっとも、名古屋駅も仙台駅と同様、通過線が無い為に、通過速度は時速70キロ程度の徐行だったらしいが。

 愛原:「お昼を食べて古川駅に行くだろ?そこから車を返したり何なり、結構時間掛かると思うよ?」
 高橋:「ですよねぇ……」( ̄ー ̄)
 愛原:「夕方までには仙台に戻る予定だって伝えといて」
 リサ:「分かった」
 高橋:「ん?てことは先生、仙台にもう一泊っスか?」
 愛原:「う、うん。場合によっちゃ、そうなるな」

 で、帰りは明日か。
 高野君、事務所空け過ぎて怒るかなぁ……。
 私はそうなる見込みであることを電話しようと思ったが、何だか怖くて電話できなかった。

 高橋:「先生、何でしたら俺からアネゴに電話しましょうか?」
 愛原:「あ……うん。お願いしようかな。あ、道の駅に着いてからでいいから」
 高橋:「分かりました」

 私達はバイパスの長いトンネルを抜け、国道47号線に出た。
 あとはそこから只管、東進するのみ。
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“私立探偵 愛原学” 「前進」

2020-09-20 15:34:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日11:00.天候:晴 宮城県大崎市鳴子温泉鬼首 某林道上]

 ファルファレルロという何とも呼びにくい名前の『消えるハンター』の腹の中から、カプセルに入ったUSBメモリーが出て来た。
 私は早速その中身を見てみた。
 すると、その中にあったものは恐るべきものであった。

 愛原:「これは……!」

 それは旧・日本アンブレラのことであった。
 アンブレラ・コーポレーション・インターナショナルの日本法人、アンブレラ・コーポレーション・ジャパンである。
 その代表取締役の名前が五十嵐皓貴というのだが、それこそ正に先ほど私達の前に現れた五十嵐親子の父親であった。
 データの写真は現役当時の物だから、まだ50歳前後と若い。
 それから15年以上の月日が経っているので、さすがに私達の前に現れた時は老けていたが。
 2004年3月14日に法人としての日本アンブレラは潰れてしまったが、その後に一度復活している。
 それが霧生市でもバイオハザード事件を引き起こしてしまった為、完全に潰れてしまった。

 高橋:「あの五十嵐の爺さんじゃないですか!」
 リサ:「うっ……」

 リサはまた頭を抱えてフラついた。

 愛原:「リサ、大丈夫か?」
 リサ:「大丈夫……」
 高橋:「潰れた日本アンブレラの社長がこんな所に何の用だったんスかね?」
 愛原:「正しくこのUSBを手に入れるのが目的なんじゃないか?」

 他にも色々ある。

 愛原:「やっぱり……」

 リサが受けた実験についても書かれていた。
 アメリカ本体では放棄されたリサ・トレヴァーの実験を日本法人が引き継いだという噂は本当だったのだ。

 高橋:「もしかしたら、もっと凄いお宝があるかもしれませんよ?」
 愛原:「そうかもな。ちょっと行ってみよう」

 私達はもう1度車を降りた。

 愛原:「リサ、さっきの消えるハンターがまた出ないか警戒してくれ」
 リサ:「うん。今のところ、臭いは無いよ」

 姿は消せても、臭いや足音までは消せない。
 私達はバリケードの向こうを覗いてみた。
 どうやら五十嵐親子が先に探索していたこともあってか、崩壊した道には縄梯子が掛けてあった。
 これで下に行き、あとは沢伝いに進んだらしい。
 よく見ると、その先には崩壊した建物があった。
 どうやらそこが旧・日本アンブレラの保養所跡らしい。

 愛原:「何とか下に……」

 私が縄梯子を下りようとした時だった。

 リサ:「何か来た」

 その保養所跡から、わらわらとハンター達が出て来た。
 奴らは縄梯子を登ることはできない。

 リサ:「壁を登ることはできるよ。それでビルの壁をよじ登ったって聞いたことがある」
 愛原:「マジか!さすがにもう弾が無いぞ。引き上げよう」
 高橋:「命あっての物種っスね。戦略的撤退っス」

 私達は車まで急いで戻った。
 いずれにせよ地盤は緩んでいるから、ハンターのような巨体が登ろうとしたら、逆に崖が崩れてしまうかもしれない。

 高橋:「善場の姉ちゃんに報告ですね?」
 愛原:「そうだけど、ちょっと移動してくれないか」
 高橋:「やっぱここは危険ですもんね」

 高橋は車のエンジンを掛けた。

 愛原:「いや、それもあるんだが、ここはケータイが圏外だ」
 高橋:「マジっスか!」
 愛原:「この先のキャンプ場まで行けば電波も入るだろう。そこまで行こう」
 高橋:「分かりました」

 高橋は車を切り返して、来た道を戻った。
 そして林道から県道に戻る。
 県道自体も1.5車線程度の狭い道であったが、舗装されている道に出たというだけで何かホッとする。
 県道に出ただけでケータイの電波が復活したが、まだ安心はできない。
 キャンプ場とかなら人もいるだろうから、そういう所で連絡した方がいいだろう。

 愛原:「まあいいや。電波復活したから電話するわ」
 高橋:「はい」

 私はすぐに善場主任のケータイに電話した。

 善場:「はい、善場です」

 善場主任はすぐに電話に出た。
 私は事の経緯を説明した。

 善場:「そうですか!五十嵐元社長がいましたか!私達も愛原所長が会った人物は、それではないかと思ったのですよ。それをお知らせしようとしていたところです」
 愛原:「まさか日本アンブレラの社長だった人がいるとは思いませんでしてねぇ……」
 善場:「お疲れさまでした。後の事はこちらにお任せください。保養所跡のハンター達についても、“青いアンブレラ”に対処させましょう。まずは林道を封鎖します。愛原所長、林道からは出られましたか?」
 愛原:「はい。そこから出て、今は県道171号線を走行中です」
 善場:「場合によっては、接続する県道も封鎖することになるかもしれません。取り急ぎ、まずは国道まで出てください。さすがに国道まで封鎖する事態にはならないと思いますが」
 愛原:「そう願います。それで、このUSBメモリーはどうすれば?」
 善場:「東京の事務所に送って頂けますか?もちろん、『デイライト』の事務所です。住所は私の名刺に書いてありますので」
 愛原:「分かりました」

 善場主任は明らかに政府機関のエージェントであるが、政府機関の人間が表立って行動するとマズいとなった時の為、NPO法人の職員という肩書も持っている。
 私が受け取ったのは、その表向きの名刺。

 愛原:「郵便で送りますよ」
 善場:「ありがとうございます。愛原所長にもう1つ依頼があります。その五十嵐元社長の居場所を探してください。現役当初は世田谷に住所を持っていましたが、今は引っ越して住所が特定できないのです」
 愛原:「それなんですが、どうやら川口ナンバーの地域に住んでいるようです。目撃した車のナンバーがそれで、しかもレンタカーではなかったようなので」
 善場:「車のナンバー、覚えていますか?」
 愛原:「あ、はい。『川口501 か【以下略】』で、車種は白のウイングロードです」
 善場:「ありがとうございます。これで五十嵐元社長を逮捕できると思います」
 愛原:「やっぱり逮捕案件ですか」
 善場:「リサ・トレヴァーを誘拐して人体実験に関わった罪として、ですね。もちろん社長本人が手を下すとは思えないのですが、使用者責任を問うことはできるでしょう」
 愛原:「なるほど」

 大きく前進したような気がした。
 私が電話を終える頃、高橋はキャンプ場の駐車場に車を止めていた。

 愛原:「よし。今度は近くの郵便局に行くぞ。ナビで検索だ」
 高橋:「はい!」
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