報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「新たな仕事」

2020-09-21 19:45:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日15:59.天候:晴 宮城県仙台市若林区荒井 仙台市地下鉄荒井駅]

〔荒井、荒井、大成ハウジング本店前。終点です。降り口は、右側です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います〕

 仙台駅西口バスプールで斉藤絵恋さんと合流した私達。
 彼女の父親である斉藤秀樹社長から、確かに仕事の依頼があった。
 それは予想通り、絵恋さんのお守りであったが、問題はその場所である。
 それは仙台市地下鉄東西線に乗り、東の終点駅に向かうというものらしい。

 

 電車を降りて、地上の改札口を出る。
 平日の夕方のラッシュに差し掛かっている頃だが、あんまり利用者の数は多くない。

 愛原:「あ、もしもし。斉藤社長ですか?愛原ですけど、いつもお世話になっております」
 斉藤秀樹:「おお、愛原さん。今、宮城だそうですね。どうですか?そちらは涼しいですか?」
 愛原:「いや、あんまり東京と変わんないです。って、それよりお嬢さんのことですが……」
 秀樹:「娘から聞きましたよ。引き受けて下さるそうで、ありがとうございます。ちょっと変わった場所になりますが、よろしくお願いしますよ」
 愛原:「それはいいんですが、観光とかでなくていいんですか?」
 秀樹:「娘は友達と遊べればいいんです。それも、愛原リサさんとね。これから行って頂くところは、正に打ってつけですよ。ホテルも併設されてますから、今日一日、時間を気にせず遊べると思います」
 愛原:「分かりました。お引き受けしましょう」
 秀樹:「ありがとうございます。娘には十分なお金を渡してありますから、娘にはお金を使わなくて結構ですよ」
 愛原:「でしょうね。現金を使わなくていいようにしていますもんね」

 タクシーなんて、タクシーチケットだよ。
 どんだけだよ。

 愛原:「ついでに、ちょっとお願いしたいことがあります」
 秀樹:「アンブレラ・コーポレーション・ジャパンの代表取締役社長だった五十嵐皓貴氏のことですか?」
 愛原:「よく御存知で……」
 秀樹:「それも娘から聞きました。そうですね。世田谷に住んでいたことまでは知っていますが、その後のことは知りません。何か愛原さんの方でヒントは無いですか?」
 愛原:「あ、それなら……」

 私は五十嵐親子の車のナンバーを伝えた。

 秀樹:「ほお、川口ナンバーですか。なるほどなるほど……」
 愛原:「何か、お心当たりでも?」
 秀樹:「実は五十嵐家は、代々薬屋を営む家系だったそうなんですよ。それが埼玉県にあると聞いたことはあります。川口ナンバーの地域に限定すれば、意外と早く見つかるかもしれません。そこは私にお任せください」
 愛原:「ありがとうございます!で、でも……」
 秀樹:「心配せずとも、私とてバイオテロを憎む者です。使用者責任逃れをしている者を追い詰める為なら、協力は惜しみませんよ」

 斉藤社長も大企業家。
 恐らく、大企業の社長という同じ立場上、主犯ではないことは知っているようだ。
 しかし、主犯格に主犯たらしめた責任は取ってもらうということか。
 会社が潰れて、富を手放したくらいでは許されないということだ。
 私は斉藤社長との電話を切った。
 そこへ高橋がやってくる。

 高橋:「先生。バスはあと30分以上あります。とんでもない田舎のバスですよ。どうします?」
 愛原:「30分か。微妙だな……。あっとその前に……リサ」
 リサ:「はい?」

 私はリサを手招きした。

 リサ:「なに?先生」

 私は自動券売機に連れて行くと、リサのPasmoにチャージしてやった。

 愛原:「多分、向こうでも使うだろうから、今のうちに入れておいたよ」
 リサ:「おー!ありがとう!」
 高橋:「ございます、だろ!」
 リサ:「……ございます」
 愛原:「別にいいよ。また報酬入ることになったし」
 斉藤絵恋:「あの、もし良かったらタクシーで行きましょうか?チケットならありますし」

 絵恋さんはバッグの中からタクシーチケットの束を取り出した。
 どんだけぇ~!

 絵恋:「多分、あのタクシー会社なら使えます」

 どうせ交通費は、経費として後で請求することになる。

 愛原:「じゃあ、お願いしようかな。帰りはバスの時間に合わせるからね」

 駅の外に出てタクシー乗り場に向かう。
 今や東京都心では見かけなくなった、トヨタ・コンフォート(クラウンコンフォートではない)が客待ちしていた。
 こういう時は高橋が助手席に乗る。
 リアシートの助手席の後ろに座った私が運転手に行き先を告げた。

 愛原:「仙台コロナワールドまでお願いします」
 運転手:「はい。ありがとうございます」

 車が走り出す。

 絵恋:「愛原先生、先にホテルにチェックインしてからの方が荷物も少なくなると思います」
 愛原:「それもそうだな。すいません、車はホテルの前に着けてもらえますか?」
 運転手:「ホテルの前ですね。かしこまりました」

 リサはリアシートの真ん中に座っている。
 運転席の後ろに絵恋さんが座っているわけだが、そんな絵恋さんをリサが見た。

 絵恋:「なぁに?リサさん」
 リサ:「サイトー、いい服着てる。でも、その服だと遊びにくくない?」

 絵恋さんが着ているのはアイボリーホワイトを基調としたワンピースに、麦わら帽子である。
 いかにも御嬢様といった感じだ。
 とても空手を習っていて、しかも黒帯だということが信じられないくらいである。

 絵恋:「もちろん着替えてから行くよ。ちゃんと着替え持って来たもの。リサさんも着替え持って来たよね?」
 リサ:「うん。他に制服も入ってる」
 絵恋:「せ、制服!?どうして?」
 リサ:「先生の御両親に御挨拶する為」
 絵恋:「そ、そうなの」

 そうか。
 リサには制服を着させたけど、別に、絵恋さんのように、もっと高い服でも良かったんだな。
 うーん……。

 絵恋:「今は普通に私服だね」
 リサ:「うん。動き易さ重視。午前中、ハンターと格闘したから」
 絵恋:「は、ハンターって、あのトカゲだかカエルの化け物みたいな奴!?」
 リサ:「そう!」
 愛原:「リサ。そういうのは堂々と話さない」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「あ、先生。父には先生のお仕事のこと、お話しておきましたので」
 愛原:「うん。お父さんから聞いたよ。どうもありがとう」

 あとは斉藤社長からの情報待ちだな。
コメント (3)
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“私立探偵 愛原学” 「仙台へ」

2020-09-21 16:05:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日14:30.天候:晴 宮城県大崎市 JR古川駅→JRバス東北・東北高速古川線車内]

 私達は車をレンタカーショップに返した後、まずは仙台駅に戻ることにした。
 予算の都合で高速バスにしたのだが……。

 愛原:「ちょっと待て」
 高橋:「何ですか?」
 愛原:「俺達、仕事が終わったのに、どうして仙台に向かうんだ?」
 高橋:「そりゃあ、あのクソガキと合流して……」

 だが、リサはそんな高橋の腕を引っ張る。

 リサ:「サイトーのこと、そんな風に言わないで」
 高橋:「ンだと、コラ」
 愛原:「まあまあ。確かに、斉藤さんと合流する為だったよな。ところが実際はどうだ?斉藤さんはどこにいる?」
 高橋:「長距離トラック追って、とっくに町の外じゃないスか」
 愛原:「それだよ!リサの話じゃ、斉藤さんは俺達に仕事を持って来てくれるはずだったそうじゃないか!それをお前が余計なことしたから!」
 高橋:「いや~……」
 愛原:「いや~、じゃない!」
 高橋:「でもォ~……」
 愛原:「でも、じゃない!」
 高橋:「だって~……」
 愛原:「だって、じゃない!」
 高橋:「あいつが持ってくる仕事、あいつのお守りっスよ。探偵の仕事じゃないスよね?」
 愛原:「だけど報酬は高額だ。うちみたいな弱小事務所は、仕事を選んではいかん!」
 リサ:「バス来たよ」
 愛原:「とにかく、当初の予定通り、仙台には向かう。後で斉藤社長に謝らなきゃいけないってことにならないといいがな!」
 高橋:「さ、サーセン……」

 バスがバスプール内の乗り場にやってくる。
 既に数人の乗客が乗っているのは、ここ始発ではなく、1つ手前の営業所始発だからだろう。
 それでもコロナ禍の影響からか、乗客がそんなに多いわけではなかった。
 また、高速バスとしては短距離路線ということもあってか、Suicaも使えるようになっている。
 当然ながら、その割引もあった。
 バスに乗り込むと、1番後ろの席に3人並んで座った。
 この位置は長距離用だとトイレがある位置だが、このバスには無いということだ。
 時刻表の上では1時間で仙台に着いてしまうのだから、まあ必要無いと言えば無いか。

〔「14時30発、電力ビル前経由、仙台駅前行き、発車致します」〕

 バスは折り戸式の乗降扉を閉めて発車した。

 リサ:「GPSで私の位置情報が分かると思うけど……」
 愛原:「斉藤さんがどこまで行ったか分からない以上、スマホを回収できたら、それで追って来て欲しいものだな」
 高橋:「マジでまたあいつのお守りやるんスか?」
 愛原:「嫌ならオマエだけ帰っていいんだぞ」
 高橋:「そ、それは……」
 リサ:「サイトーが高額報酬をお父さんに口添えしてくれるって」
 愛原:「そうかそうか。それは頼もしいな」

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 本日もJRバス東北、古川~仙台線をご利用頂きまして、ありがとうございます。バスはこれより先、古川台町、古川十日町、古川警察署前、上古川、水道事業所前、石名坂、電力ビル前、終点仙台駅前の順に止まります。……〕

 愛原:「何しろ高野君の機嫌があまり良くないみたいだから、ここで1つ高額報酬の1つでも受けて帰れば、言い訳もできるってもんだ。そうだろ?」
 高橋:「確かに……」

 リサはバスの窓の外を見ていた。

 リサ:「来た道を戻ってるみたい」
 愛原:「だろうな。東北自動車道の古川インターから高速に乗るみたいだから、その途中までのバス停に止まって行くんだろう」
 高橋:「お、先生。このバス、Wi-Fi飛んでるみたいですよ」
 愛原:「そうか。最近の高速バスは、そういうのも充実してきたな」

 リサはバッグの中からポッキーを取り出すと、それをポリポリ齧り始めた。

 リサ:「先生、ポッキーゲームやる?」
 愛原:「お前、意味分かってて言ってるのか?」
 リサ:「うん」
 高橋:「先生!俺とも是非、ポッキーゲームを!」
 愛原:「キモいから却下!」
 高橋:「ええ~!」

[同日15:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

 大崎市内の各バス停で乗客をピックアップしたバス。
 乗客数はそこそこに増えた。
 短距離線なので、旅行客よりも通勤・通学客の方が多いのかもしれない。
 それならコロナ禍の影響は受けにくい。
 仙台市内に入ると、さすがに交通量は多くなったが、同じ高速バスの姿は見かけても、同じ車種を使用した観光バスの姿は見かけなかった。
 観光業は大打撃である。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。長い間のご乗車、大変お疲れさまでした。まもなく終点、仙台駅前、仙台駅前に到着致します。【中略】本日もJRバス東北、古川~仙台線をご利用頂きまして、ありがとうございました〕

 バスは仙台駅西口の広大なバスプールに進入する。
 バース数ならバスタ新宿を凌ぐ。
 その中でもトップナンバーである1番乗り場に向かった。
 その乗り場はJRバス東北が旧国鉄バス時代から使用している乗り場で、つまりそれだけ立場が強かったということだろう。

 リサ:「……あ」
 愛原:「ん?」

 リサが反応したのは、正にその1番乗り場には既に斉藤さんがいて、こちらに向かって手を振っているからだった。

 愛原:「やっぱり新幹線で追い越されたか。お金持ちの御嬢様は違うなぁ……」
 高橋:「ちょっと運ちゃんに頼んで、通過してもらいましょうか。ええ、もっと遠くのバス停へ……」

 高橋、バッグに隠したマグナムを取り出して、運転席に向かおうとしている。

 愛原:「バスジャックはやめなさい!」

 私は全力でそれを阻止した。
 そして、バスが1番乗り場に停車してドアが開いた。

 高橋:「はぁ~。あのビアンガキのお守りか……」
 愛原:「ゲイだと思ってたらバイだったでござる、のオマエのお守りよりマシだよ」
 高橋:「センセ!ヒドい!」( ;∀;)
 愛原:「いいから降りるぞ!」

 バスを降りると……。

 斉藤:「リサさーん!会えて良かったー!」

 斉藤さんがリサに思いっ切りハグをした。

 リサ:「あ、うん……そだね」

 さすがのリサも少しヒく。

 愛原:「預かってる荷物あるだろ。早く受け取れ」
 リサ:「はーい」

 私達は荷物室に預けてある荷物を運転手から受け取った。

 愛原:「それで、私達に仕事の依頼とは?」
 斉藤:「これです!……私から見ても変わったお仕事だと思いますけど、どうかお願いします」

 斉藤さんが仕事の依頼書を私に差し出した。
 もちろん作成者は、斉藤秀樹社長である。
 で、内容は予想通り、娘である斉藤絵恋さんのお守りだった。
 だが、確かにその詳細というのが……。
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“私立探偵 愛原学” 「帰り道」 2

2020-09-21 13:18:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日13:00.天候:晴 宮城県大崎市岩出山池月 あ・ら・伊達な道の駅]

 往路の時に立ち寄った道の駅に再び立ち寄り、そこで昼食を取った。
 案の定、昼食バイキングにリサの食欲は全開であった。
 リサは他のBOWと違って普通の食事もできるが、そうでないと大量食人をするのだろう。
 それでも、これだけ食べても体型は太らないとはこれ如何に?

 リサ:「食後のソフトクリーム♪」
 愛原:「そんなに食べて、よく太らないな?」
 リサ:「変化の時にエネルギーを使うからね。あと、さっきハンター達と戦った時にも」
 愛原:「そういうことか」

 形態を変化させる際のエネルギー消費が大きいのか。
 あと、私達が戦ったハンターは、普通のハンドガン程度ではなかなか倒せない。
 具体的に言えば、日本の警察官が持っているような拳銃程度ということだ。
 口径の大きい高橋のマグナムや、ショットガン以上の銃器でないと倒すのは難しいとされる。
 それをリサは素手や素足で倒すのだから凄い。
 が、その分、大量のエネルギーを消費するということだ。

 愛原:「それじゃ、少し休んだら行くか」
 高橋:「ちょっと一服してきます」
 愛原:「おーう」

[同日13:45.天候:晴 宮城県大崎市古川李埣 ENEOSスタンド]

 車を返す前に、ガソリンを満タンにしておかないといけない。
 駅近くのセルフスタンドに立ち寄った。

 愛原:「意外と早く着いたな。こりゃ、一泊しないで帰れるかもな」
 高橋:「仙台駅で降りず、そのまま帰っちゃいましょう」
 愛原:「こらこら。斉藤さんは、うちの事務所の大口顧客の御嬢様だぞ」

 もっとも、寄越してくる仕事というのは、確かに高額報酬ではあるが、おおよそ探偵の仕事とはかけ離れていたり、或いは本当に命懸けのものだったりするのだが。

 愛原:「というか、予算の問題もあるんだよなぁ……」
 高橋:「は?」
 リサ:「ちょっとトイレ行って来る」
 愛原:「行ってらっしゃい」

 リサはスタンド内のトイレに向かった。

 高橋:「予算というのは?レンタカー代とか、このガソリン代とか、善場の姉ちゃん達が出してくれるんですよね?」
 愛原:「そういうことになっているんだが、何しろそれまでは俺達の立替払いだからな。俺の財布が……」
 高橋:「ああ。じゃ、とっとと帰った方がいいってことですね」
 愛原:「一泊する余裕は確かに無いな。あと、斉藤さんには悪いけど、仙台までは高速バスで行かせてもらおう」
 高橋:「バスが走ってるんスか」
 愛原:「JRバスね。在来線でケチろうとすると、どうしても小牛田駅で乗り換えしなくちゃいけなくなる。それもそれでメンドくさい」
 高橋:「あー、確かに。こういう時、やっぱり車の方が便利っスね」
 愛原:「そうだな。実家から借りるという手があったんだが、爆発のせいで鋭意修理中だし、かといって公一伯父さんはプリウスをオシャカにするし、軽トラだと定員オーバーだし」
 高橋:「何気に愛原家、車の損失デカいっスね」
 愛原:「そうだな。うちの実家は完全に被害者だが、伯父さんの場合は【お察しください】」
 高橋:「でもそれのおかげで、俺達助かりましたからぁ……」
 愛原:「それな」

 給油が終わってもリサはトイレから戻って来なかった。
 後がつかえていたので、私達の車は駐車スペースに移動した。

 高橋:「何やってんだ、あいつ!先生をお待たせしやがって!」
 愛原:「まあまあ。女性のトイレは長いものだよ。別に急いでるわけじゃない。それより、高橋とリサが小牛田の吉田家で戦った相手……」
 高橋:「ああ。リサみたいな奴だったけど、リサよりは弱かったヤツですね。ま、それに負けた俺も弱かったっスけど……」
 愛原:「お前1人でボスキャラに立ち向かおうなんざ、不利過ぎるだろ。俺が言いたいのは、あのUSBメモリーの中に書いてあったのが本当だとしたら……」
 高橋:「本当だとしたら?」
 愛原:「他にもいるぞ?リサの亜種みたいな奴ら」
 高橋:「ええっ、マジっすか!?」
 愛原:「通りで未だに“青いアンブレラ”が国内に常駐しているわけだ。普段はリサみたいに人間に化けているから、なかなか分からないらしい」
 高橋:「まだいるんスか、あんな化け物……」
 愛原:「こりゃ、ますます五十嵐元社長に話を聞かないとダメだな」
 高橋:「川口ナンバーってことは、川口市内を探せばいいんじゃないスか?」
 愛原:「隣の蕨市とかもそうだろ。まあ、蕨市は狭いけど」

 日本一狭い市ということで有名だ。

 愛原:「意外と斉藤社長とか知ってたりしてな。元同業者だし」
 高橋:「ああ!」
 愛原:「俺も知り合いの探偵業経営者の家、何軒か知ってるぞ。お呼ばれしたり、御挨拶に出向いたりしたことがある。斉藤社長も似たようなものだろ」

 ガチャと後ろのドアが開いた。
 リサが戻って来たのか。

 斉藤絵恋:「そうですね。父なら多分知ってると思います」
 愛原:「そうだろうそうだろう。後で聞いてみるか」
 斉藤:「何でしたら、私から聞いておきますよ」
 愛原:「そうか?じゃあ、お願いしようかな。…………………………………」
 高橋:「…………………………………」
 斉藤:「はい。えーと、詳しい話をお願いします」
 愛原:「何でここにいるんだ、キミが!?」
 高橋:「いつの間にかしれっといるんじゃねェ!」
 愛原:「何でここにいるんだ!?あれ?仙台市内で待ってるはずだろ!?俺達の到着を!」
 高橋:「ファミパンおじさんの物真似か、あぁ!?」
 斉藤:「ごめんなさーい。どうしても待ちきれなくってぇ……」
 愛原:「てか、どうして俺達がここにいるって分かったんだ!?」
 斉藤:「それは……」

 斉藤さんは恥ずかしそうに自分のスマホを取り出した。

 斉藤:「文明の利器(GPS)で
 愛原:「キミはストーカーか!」
 高橋:「犯罪者ァァァァァ!」

 高橋は斉藤さんからスマホを奪い取った。

 高橋:「ぬん!」
 斉藤:「ぎゃあああっ!?」

 そして、道路にぶん投げる。
 ちょうどそこへ大型長距離トラックがやってきて、その荷台に乗ってしまった。

 高橋:「次やったら、ヤり捨てんぞ!」
 斉藤:「私とリサさんの運命の赤い糸がぁあああ!」

 ちょうどそこへ空車のタクシーが通り掛かり……。

 斉藤:「た、タクシー!タクシー!」

 斉藤さんはタクシーに飛び乗って行った。

 リサ:「ただいま。何かあったの?」
 高橋:「リサ、遅ェぞ!さっさと乗れ!」
 愛原:「まあまあ」
 リサ:Σ(゚Д゚)

 リサが乗り込むと、高橋は一気に車を出した。

 高橋:「また厄介事になる前に、とっととこの町を離れましょう!」
 愛原:「おい、その前にこの車、返しに行かなくちゃならんぞ?」
 リサ:「一体、何があったの?」
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