[8月24日10:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区○○ 愛原家]
深夜の探索を終えた私達は、今日は家にいることにした。
善場主任が来られる旨は、既に両親にも話している。
私の仕事絡みのことならと、それは簡単に了承してくれた。
善場主任にはこの家の住所を教えているので、向こうから来てくれる。
その間、私は公一伯父さんと連絡を取った。
愛原公一:「なに?小牛田から嫁いだだと?」
愛原学:「そうみたいなんだ。下の名前を律子さんと言うみたい。伯父さん、心当たり無い?小牛田町……今は美里町になったけど、合併前の小牛田町だよ。そこから結婚で仙台に行って、しかも結婚相手がアメリカ人って、結構田舎じゃ話題になるんじゃないの?」
伯父さんは結構顔が広いから、その中にヒットしないか期待していた。
公一:「うーむ……。ワシも町の住民全員が知り合いというわけでもないからなぁ……。でもまあ、知り合いはそれなりに多いから、当たってみることにしよう」
学:「ありがとう、伯父さん」
公一:「町議会議員とか県議会議員の後援会とか、その辺りを当たれば1人くらいヒットするじゃろ」
さすが伯父さん、血は争えない。
追跡法の考え方が私と同じ。
私は電話を切った。
すると、玄関のインターホンが鳴った。
私は今、2階の自室にいる。
そこを出て鍵を掛けると、廊下の窓から玄関の方を覗いてみた。
するとそこに善場主任と、部下の男性職員が1人いた。
私は急いで玄関に向かった。
善場:「お疲れさまです。愛原所長」
愛原学:「お疲れさまです、善場主任。遠いところをありがとうございます」
善場:「いえ。現場調査の一環ですから」
愛原:「どうぞ、お上がりください」
善場:「お邪魔します」
私は善場主任達を客間に案内した。
リビングは両親がいるので。
布団は既に片付けて、代わりに机と座椅子を置いている。
愛原:「どうぞ、こちらに」
善場:「失礼します」
部下:「失礼します」
私と高橋が善場主任達と向かい合って座り、リサは私の斜め後ろに座った。
私が急いでキッチンに行くと、母親が用意していた冷茶を持って行った。
愛原:「暑い中、申し訳ないですね」
善場:「どうぞおかまいなく」
愛原:「リサはジュースな」
リサ:「うん」
リサにはミニッツメイドのペットボトルを渡した。
愛原:「実は昨夜調査した場所なんですが……」
私は裏庭を指さした。
愛原:「ちょうどあそこだけ庭石が無くなっていますが、そこに穴が開いていたんですよ。庭石はその下に落ちてまして、しかもちょうどそこにいたのか、ハンターαがそれの直撃を受けて一匹死んでました」
善場:「ハンターが!」
私は昨夜の調査結果を善場主任に説明し、そこで収穫したものを見せた。
鍵や銃弾はオマケだろう。
問題なのは写真だ。
善場:「確かにこの少女はアメリカのリサ・トレヴァーです。ラクーンシティ郊外のアークレイ山中にありました秘密研究施設に監禁された、トレヴァー一家の長女です」
愛原:「やはりそうでしたか」
善場:「旧アンブレラ・コーポレーション・インターナショナルは、このオリジナル版を廃棄にしましたが、日本法人は別の観点・視点から彼女の研究を引き継いだと言われています。もちろんその為の『素材』は確保できる見通しがあったからこそだったのでしょう」
善場主任はリサを見た。
愛原:「リサを人間に戻す計画があるそうですが、一体どんな計画なのですか?」
善場:「まだ詳しいことは明らかにできません。愛原所長は、東北大学農学部の愛原公一名誉教授を御存知ですね?」
愛原:「知ってるも何も、私の伯父です。私の父は3人兄弟の末弟で、伯父は長男です。長男でありながら、夏目漱石の“こころ”に出てくる『先生』みたいな自由人として生きている人です」
善場:「それはそれは……。やはり、そうでしたか。名字が同じなので、もしやと思ったのですよ。愛原名誉教授が現役の教授だった頃、独自に開発した化学肥料があったのも御存知ですね?」
愛原:「『枯れた苗を元の苗に戻す肥料』でしょう?一度枯れてしまった作物を元の枯れる前に戻すなんて、そんな魔法みたいな肥料をよく造ったものだと思いましたよ」
善場:「そのことについて、何か聞いてはおりませんか?」
愛原:「実験中、居眠りしてたらいつの間にか出来てたそうです。あのぶっとび博士」
善場:「それ以外には?」
愛原:「変な製薬会社がしつこく買い付けに来たから、適当に吹っ掛けた値段で売り払ったとか何とか……ん?もしかして、その変な製薬会社って……」
善場:「旧アンブレラですよ。日本法人の方なのか、或いは米国本社の方なのかは御本人に確認させて頂く必要があるでしょうけどね」
愛原:「多分その時の契約書の控えくらい保管……してなさそうだなぁ……」
善場:「一応、確認して頂けませんか?」
愛原:「はい。一応、しておきます。まさか、伯父さんの造った肥料がリサを人間に戻すヒントになるなんて……」
善場:「こちらで旧アンブレラのことについて情報を洗っている最中に、そのような情報を得たのですよ。実は旧アンブレラでも、感染して変異体と化してしまった人間を元に戻す研究もされていたようです」
愛原:「そうだったんですか。あと、この写真なんですけど、裏に……」
私は近所に住んでいたトレヴァー家の家族写真の裏のメモ書きを見せた。
愛原:「律子さんって、恐らくここに写っている日本人の奥さんのことだと思うんですよ。幸い伯父が正しく美里町、合併前の小牛田町内に住んでいますので、誰のことだか当たってもらっています」
善場:「さすがは愛原所長です。愛原名誉教授のことに関しましては、所長に一任させて頂きたいと思います。報奨金につきましては、後ほどお支払いさせて頂きますので」
よっしゃ!報酬ゲット!
これなら、事務所で留守番を強いられている高野君にも顔が立つというものだ。
私達は今後のことを話し合うと、退室を頼まれた。
どうやら、リサと話がしたいらしい。
恐らく、リサを人間に戻す計画があるという話をリサ本人にするつもりなのだろう。
それに対してリサはどう思うのだろうか。
混乱して錯乱したりはしないだろうな?
話は意外に早く終わった。
善場:「愛原所長の気持ち次第で決めるとのことです」
愛原:「はあ……」
リサ本人のことなのだから、リサが自分の希望を伝えればいいのに……。
善場主任達は穴の状況を確認すると、穴の中には入らず、直接屋敷跡の調査に向かった。
当初の予定では私達も同行させてもらえることになっていたが、当日になって善場主任の上司から待ったが掛かり、私達は同行させてもらえなくなった。
恐らく地下通路でハンターと交戦したことで、屋敷跡もまだそういった危険があるからと判断されたのかもしれない。
善場主任達から見れば、私達など所詮一般市民の延長線に過ぎないのだ。
取りあえず、『お化け屋敷』関連については、もう善場主任達に投げていいだろう。
私達は公一伯父さんの情報を待って行動するのみ。
深夜の探索を終えた私達は、今日は家にいることにした。
善場主任が来られる旨は、既に両親にも話している。
私の仕事絡みのことならと、それは簡単に了承してくれた。
善場主任にはこの家の住所を教えているので、向こうから来てくれる。
その間、私は公一伯父さんと連絡を取った。
愛原公一:「なに?小牛田から嫁いだだと?」
愛原学:「そうみたいなんだ。下の名前を律子さんと言うみたい。伯父さん、心当たり無い?小牛田町……今は美里町になったけど、合併前の小牛田町だよ。そこから結婚で仙台に行って、しかも結婚相手がアメリカ人って、結構田舎じゃ話題になるんじゃないの?」
伯父さんは結構顔が広いから、その中にヒットしないか期待していた。
公一:「うーむ……。ワシも町の住民全員が知り合いというわけでもないからなぁ……。でもまあ、知り合いはそれなりに多いから、当たってみることにしよう」
学:「ありがとう、伯父さん」
公一:「町議会議員とか県議会議員の後援会とか、その辺りを当たれば1人くらいヒットするじゃろ」
さすが伯父さん、血は争えない。
追跡法の考え方が私と同じ。
私は電話を切った。
すると、玄関のインターホンが鳴った。
私は今、2階の自室にいる。
そこを出て鍵を掛けると、廊下の窓から玄関の方を覗いてみた。
するとそこに善場主任と、部下の男性職員が1人いた。
私は急いで玄関に向かった。
善場:「お疲れさまです。愛原所長」
愛原学:「お疲れさまです、善場主任。遠いところをありがとうございます」
善場:「いえ。現場調査の一環ですから」
愛原:「どうぞ、お上がりください」
善場:「お邪魔します」
私は善場主任達を客間に案内した。
リビングは両親がいるので。
布団は既に片付けて、代わりに机と座椅子を置いている。
愛原:「どうぞ、こちらに」
善場:「失礼します」
部下:「失礼します」
私と高橋が善場主任達と向かい合って座り、リサは私の斜め後ろに座った。
私が急いでキッチンに行くと、母親が用意していた冷茶を持って行った。
愛原:「暑い中、申し訳ないですね」
善場:「どうぞおかまいなく」
愛原:「リサはジュースな」
リサ:「うん」
リサにはミニッツメイドのペットボトルを渡した。
愛原:「実は昨夜調査した場所なんですが……」
私は裏庭を指さした。
愛原:「ちょうどあそこだけ庭石が無くなっていますが、そこに穴が開いていたんですよ。庭石はその下に落ちてまして、しかもちょうどそこにいたのか、ハンターαがそれの直撃を受けて一匹死んでました」
善場:「ハンターが!」
私は昨夜の調査結果を善場主任に説明し、そこで収穫したものを見せた。
鍵や銃弾はオマケだろう。
問題なのは写真だ。
善場:「確かにこの少女はアメリカのリサ・トレヴァーです。ラクーンシティ郊外のアークレイ山中にありました秘密研究施設に監禁された、トレヴァー一家の長女です」
愛原:「やはりそうでしたか」
善場:「旧アンブレラ・コーポレーション・インターナショナルは、このオリジナル版を廃棄にしましたが、日本法人は別の観点・視点から彼女の研究を引き継いだと言われています。もちろんその為の『素材』は確保できる見通しがあったからこそだったのでしょう」
善場主任はリサを見た。
愛原:「リサを人間に戻す計画があるそうですが、一体どんな計画なのですか?」
善場:「まだ詳しいことは明らかにできません。愛原所長は、東北大学農学部の愛原公一名誉教授を御存知ですね?」
愛原:「知ってるも何も、私の伯父です。私の父は3人兄弟の末弟で、伯父は長男です。長男でありながら、夏目漱石の“こころ”に出てくる『先生』みたいな自由人として生きている人です」
善場:「それはそれは……。やはり、そうでしたか。名字が同じなので、もしやと思ったのですよ。愛原名誉教授が現役の教授だった頃、独自に開発した化学肥料があったのも御存知ですね?」
愛原:「『枯れた苗を元の苗に戻す肥料』でしょう?一度枯れてしまった作物を元の枯れる前に戻すなんて、そんな魔法みたいな肥料をよく造ったものだと思いましたよ」
善場:「そのことについて、何か聞いてはおりませんか?」
愛原:「実験中、居眠りしてたらいつの間にか出来てたそうです。あのぶっとび博士」
善場:「それ以外には?」
愛原:「変な製薬会社がしつこく買い付けに来たから、適当に吹っ掛けた値段で売り払ったとか何とか……ん?もしかして、その変な製薬会社って……」
善場:「旧アンブレラですよ。日本法人の方なのか、或いは米国本社の方なのかは御本人に確認させて頂く必要があるでしょうけどね」
愛原:「多分その時の契約書の控えくらい保管……してなさそうだなぁ……」
善場:「一応、確認して頂けませんか?」
愛原:「はい。一応、しておきます。まさか、伯父さんの造った肥料がリサを人間に戻すヒントになるなんて……」
善場:「こちらで旧アンブレラのことについて情報を洗っている最中に、そのような情報を得たのですよ。実は旧アンブレラでも、感染して変異体と化してしまった人間を元に戻す研究もされていたようです」
愛原:「そうだったんですか。あと、この写真なんですけど、裏に……」
私は近所に住んでいたトレヴァー家の家族写真の裏のメモ書きを見せた。
愛原:「律子さんって、恐らくここに写っている日本人の奥さんのことだと思うんですよ。幸い伯父が正しく美里町、合併前の小牛田町内に住んでいますので、誰のことだか当たってもらっています」
善場:「さすがは愛原所長です。愛原名誉教授のことに関しましては、所長に一任させて頂きたいと思います。報奨金につきましては、後ほどお支払いさせて頂きますので」
よっしゃ!報酬ゲット!
これなら、事務所で留守番を強いられている高野君にも顔が立つというものだ。
私達は今後のことを話し合うと、退室を頼まれた。
どうやら、リサと話がしたいらしい。
恐らく、リサを人間に戻す計画があるという話をリサ本人にするつもりなのだろう。
それに対してリサはどう思うのだろうか。
混乱して錯乱したりはしないだろうな?
話は意外に早く終わった。
善場:「愛原所長の気持ち次第で決めるとのことです」
愛原:「はあ……」
リサ本人のことなのだから、リサが自分の希望を伝えればいいのに……。
善場主任達は穴の状況を確認すると、穴の中には入らず、直接屋敷跡の調査に向かった。
当初の予定では私達も同行させてもらえることになっていたが、当日になって善場主任の上司から待ったが掛かり、私達は同行させてもらえなくなった。
恐らく地下通路でハンターと交戦したことで、屋敷跡もまだそういった危険があるからと判断されたのかもしれない。
善場主任達から見れば、私達など所詮一般市民の延長線に過ぎないのだ。
取りあえず、『お化け屋敷』関連については、もう善場主任達に投げていいだろう。
私達は公一伯父さんの情報を待って行動するのみ。