報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「情報交換」

2020-09-01 19:44:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日10:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区○○ 愛原家]

 深夜の探索を終えた私達は、今日は家にいることにした。
 善場主任が来られる旨は、既に両親にも話している。
 私の仕事絡みのことならと、それは簡単に了承してくれた。
 善場主任にはこの家の住所を教えているので、向こうから来てくれる。
 その間、私は公一伯父さんと連絡を取った。

 愛原公一:「なに?小牛田から嫁いだだと?」
 愛原学:「そうみたいなんだ。下の名前を律子さんと言うみたい。伯父さん、心当たり無い?小牛田町……今は美里町になったけど、合併前の小牛田町だよ。そこから結婚で仙台に行って、しかも結婚相手がアメリカ人って、結構田舎じゃ話題になるんじゃないの?」

 伯父さんは結構顔が広いから、その中にヒットしないか期待していた。

 公一:「うーむ……。ワシも町の住民全員が知り合いというわけでもないからなぁ……。でもまあ、知り合いはそれなりに多いから、当たってみることにしよう」
 学:「ありがとう、伯父さん」
 公一:「町議会議員とか県議会議員の後援会とか、その辺りを当たれば1人くらいヒットするじゃろ」

 さすが伯父さん、血は争えない。
 追跡法の考え方が私と同じ。
 私は電話を切った。
 すると、玄関のインターホンが鳴った。
 私は今、2階の自室にいる。
 そこを出て鍵を掛けると、廊下の窓から玄関の方を覗いてみた。
 するとそこに善場主任と、部下の男性職員が1人いた。
 私は急いで玄関に向かった。

 善場:「お疲れさまです。愛原所長」
 愛原学:「お疲れさまです、善場主任。遠いところをありがとうございます」
 善場:「いえ。現場調査の一環ですから」
 愛原:「どうぞ、お上がりください」
 善場:「お邪魔します」

 私は善場主任達を客間に案内した。
 リビングは両親がいるので。
 布団は既に片付けて、代わりに机と座椅子を置いている。

 愛原:「どうぞ、こちらに」
 善場:「失礼します」
 部下:「失礼します」

 私と高橋が善場主任達と向かい合って座り、リサは私の斜め後ろに座った。
 私が急いでキッチンに行くと、母親が用意していた冷茶を持って行った。

 愛原:「暑い中、申し訳ないですね」
 善場:「どうぞおかまいなく」
 愛原:「リサはジュースな」
 リサ:「うん」

 リサにはミニッツメイドのペットボトルを渡した。

 愛原:「実は昨夜調査した場所なんですが……」

 私は裏庭を指さした。

 愛原:「ちょうどあそこだけ庭石が無くなっていますが、そこに穴が開いていたんですよ。庭石はその下に落ちてまして、しかもちょうどそこにいたのか、ハンターαがそれの直撃を受けて一匹死んでました」
 善場:「ハンターが!」

 私は昨夜の調査結果を善場主任に説明し、そこで収穫したものを見せた。
 鍵や銃弾はオマケだろう。
 問題なのは写真だ。

 善場:「確かにこの少女はアメリカのリサ・トレヴァーです。ラクーンシティ郊外のアークレイ山中にありました秘密研究施設に監禁された、トレヴァー一家の長女です」
 愛原:「やはりそうでしたか」
 善場:「旧アンブレラ・コーポレーション・インターナショナルは、このオリジナル版を廃棄にしましたが、日本法人は別の観点・視点から彼女の研究を引き継いだと言われています。もちろんその為の『素材』は確保できる見通しがあったからこそだったのでしょう」

 善場主任はリサを見た。

 愛原:「リサを人間に戻す計画があるそうですが、一体どんな計画なのですか?」
 善場:「まだ詳しいことは明らかにできません。愛原所長は、東北大学農学部の愛原公一名誉教授を御存知ですね?」
 愛原:「知ってるも何も、私の伯父です。私の父は3人兄弟の末弟で、伯父は長男です。長男でありながら、夏目漱石の“こころ”に出てくる『先生』みたいな自由人として生きている人です」
 善場:「それはそれは……。やはり、そうでしたか。名字が同じなので、もしやと思ったのですよ。愛原名誉教授が現役の教授だった頃、独自に開発した化学肥料があったのも御存知ですね?」
 愛原:「『枯れた苗を元の苗に戻す肥料』でしょう?一度枯れてしまった作物を元の枯れる前に戻すなんて、そんな魔法みたいな肥料をよく造ったものだと思いましたよ」
 善場:「そのことについて、何か聞いてはおりませんか?」
 愛原:「実験中、居眠りしてたらいつの間にか出来てたそうです。あのぶっとび博士」
 善場:「それ以外には?」
 愛原:「変な製薬会社がしつこく買い付けに来たから、適当に吹っ掛けた値段で売り払ったとか何とか……ん?もしかして、その変な製薬会社って……」
 善場:「旧アンブレラですよ。日本法人の方なのか、或いは米国本社の方なのかは御本人に確認させて頂く必要があるでしょうけどね」
 愛原:「多分その時の契約書の控えくらい保管……してなさそうだなぁ……」
 善場:「一応、確認して頂けませんか?」
 愛原:「はい。一応、しておきます。まさか、伯父さんの造った肥料がリサを人間に戻すヒントになるなんて……」
 善場:「こちらで旧アンブレラのことについて情報を洗っている最中に、そのような情報を得たのですよ。実は旧アンブレラでも、感染して変異体と化してしまった人間を元に戻す研究もされていたようです」
 愛原:「そうだったんですか。あと、この写真なんですけど、裏に……」

 私は近所に住んでいたトレヴァー家の家族写真の裏のメモ書きを見せた。

 愛原:「律子さんって、恐らくここに写っている日本人の奥さんのことだと思うんですよ。幸い伯父が正しく美里町、合併前の小牛田町内に住んでいますので、誰のことだか当たってもらっています」
 善場:「さすがは愛原所長です。愛原名誉教授のことに関しましては、所長に一任させて頂きたいと思います。報奨金につきましては、後ほどお支払いさせて頂きますので」

 よっしゃ!報酬ゲット!
 これなら、事務所で留守番を強いられている高野君にも顔が立つというものだ。
 私達は今後のことを話し合うと、退室を頼まれた。
 どうやら、リサと話がしたいらしい。
 恐らく、リサを人間に戻す計画があるという話をリサ本人にするつもりなのだろう。
 それに対してリサはどう思うのだろうか。
 混乱して錯乱したりはしないだろうな?
 話は意外に早く終わった。

 善場:「愛原所長の気持ち次第で決めるとのことです」
 愛原:「はあ……」

 リサ本人のことなのだから、リサが自分の希望を伝えればいいのに……。
 善場主任達は穴の状況を確認すると、穴の中には入らず、直接屋敷跡の調査に向かった。
 当初の予定では私達も同行させてもらえることになっていたが、当日になって善場主任の上司から待ったが掛かり、私達は同行させてもらえなくなった。
 恐らく地下通路でハンターと交戦したことで、屋敷跡もまだそういった危険があるからと判断されたのかもしれない。
 善場主任達から見れば、私達など所詮一般市民の延長線に過ぎないのだ。
 取りあえず、『お化け屋敷』関連については、もう善場主任達に投げていいだろう。
 私達は公一伯父さんの情報を待って行動するのみ。
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“私立探偵 愛原学” 「地下通路探索終了」

2020-09-01 17:52:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日02:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区○○ 地下通路]

 私達は通路の反対方向を確認すると、再び『お化け屋敷』に向かって歩いた。
 こちらには敵はおらず、少し進むと案の定、通路は崩れて塞がっていた。

 愛原:「ま、だろうな」

 恐らく今回の大爆発による衝撃で崩れたものだろう。
 知らなければ、とてもこの奥が『お化け屋敷』に繋がっていたとはとても思えない。
 せっかくロボットから鍵をもらったのに、これでは使い所が無い。
 そう思っていた。

 高橋:「先生、これは!?」
 愛原:「ん?」

 高橋が崩れている部分の壁にマグライトを照らした。
 崩壊した瓦礫に半分隠れるようにして、鉄製のドアがあった。

 高橋:「どこかに通じているかもしれませんよ?」
 愛原:「そう、だな……」

 幸いドアノブは瓦礫の外に出ている。
 私はロボットから頂戴した鍵を鍵穴に入れてみた。
 すると!

 愛原:「開いた!」

 カチッという音がして錠が開く感覚がはっきりと伝わって来た。

 高橋:「早く行きましょう」
 愛原:「でも、開くか?」

 幸いにして、ドアは向こうに開けるタイプだった。
 こちら側に開けるタイプだったら、完全にお手上げだっだろう。
 あとは、向こう側も崩れていなければ良いのだが。

 高橋:「先生、俺が開けます」

 高橋がドアを向こう側に開けた。
 すると、瓦礫や土砂がズザザーッと流れて行く。
 幸いその量は少量で、崩れた部分が更に崩壊するということはなかった。
 ドアの向こうを探索するのには支障は無い。
 だが、油断はできない。
 いつまた崩壊が起こるか分からないのだ。

 愛原:「高橋、ちょっとここで見張っててくれ。もしまた崩壊しそうなら、教えてほしい。急いで脱出するから」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「リサ、行くぞ」
 リサ:「ん!」

 私とリサはドアの向こうに入った。
 ドアの向こうは何やら部屋のようになっているみたいだが、真っ暗である。
 マグライトを照らして、中の様子を探る。
 すると!

 愛原:「うわっ!」

 そこに白骨死体があった。
 しかも、ただの白骨死体ではない。
 鎖に繋がれたまま死んで、そのまま白骨化してしまったようだ。
 ボロボロの服はワンピースで、大きさから少女のような感じであった。
 しかも、この服の柄……。

 リサ:「うっ!」

 リサはまた頭を抱えてふらついた。

 愛原:「リサ、しっかりしろ!」

 あの写真で見た『よちよち歩きの娘』が着ていた服に似ていた。
 まさか、ここで鎖に繋がれて、そのまま死んでしまったのか?
 では、ここにいるリサは……?

 愛原:「これは……!?」

 無機質なコンクリートの壁に覆われた部屋だが、壁には2枚の写真があった。
 大きな写真で、A1くらいの大きさであった。
 1枚は少女の写真。
 年齢は……12歳から14歳くらいか?
 しかし、リサとは似ても似つかない。
 リサは欧米人とのハーフを匂わせる顔立ちだが、こちらの少女は本当の外国人である。
 黒髪がよく似合う、目鼻顔立ちのハッキリした美少女と言って良い。
 よく見ると写真の下には、英語で少女の名前が書かれていた。
 その名前は……。

 愛原:「『リサ・トレヴァー』!?……そうか!この少女はアメリカのオリジナル版のリサ・トレヴァーか!まだ、BOWにされる前の!」

 ここにいる日本モデル完全版とは似ても似つかない。
 オリジナル版は本当にただの実験体扱いだったそうだ。
 隣にあるのは、この家族の集合写真である。
 何枚か同じ物があるようだ。
 だが、こちらは大サイズということもあり、他の写真では写っていないものも写っていた。
 私はついこの家族は3人家族だと思っていたのだが、どうやら4人目がいたようだ。
 『よちよち歩きの娘』の左下に、生まれたばかりの赤ちゃんも写っていたからである。
 もしかして、むしろこれがここにいるリサだったりして!?

 愛原:「ちょっと写真を外してみよう」
 リサ:「先生?」
 愛原:「こういう場合、写真にも何かの仕掛けが施されている場合があるんだ」

 私は室外に落ちているコンクリート片を持って来て、それを台代わりに使うことにした。
 因みに運んだのはリサである。
 リサなら、台に使えそうなほどの大きさのコンクリート片を軽々と持ち運ぶことができる。

 愛原:「額縁の裏には何も無いな」

 隠し通路とか、隠しスイッチとか。
 そういうのを期待したが、さすがにそこまでは無かった。
 額縁を外して、写真を取り出す。
 額縁そのものにも何かが隠されているかと思ったが、そんなことはなかった。
 しかし、写真にはある重要なことが書かれていた。

『この写真を見つけたら、小牛田の家を訪ねてください。 律子』

 愛原:「これは……!?」

 この日本人妻の名前だろうか。
 とにかく、何か大きく前に進めたような気がする。
 私はこの写真も持って行くことにした。

 高橋:「先生、何か変な音がします!」

 部屋の中に入って来た高橋が瓦礫を指さした。

 愛原:「そうか。きっとまた、これから崩壊が進むんだろう。最悪、この地下通路自体が埋まる恐れがある。収穫はあった。ここの探索は十分だ。急いで戻ろう」
 高橋:「はい!」

 私達は小部屋を出ると、速足でさっきの進入口へと戻った。
 そして、急いで縄梯子を登って地上に脱出したのだった。

 愛原:「よし。あとは明日……もとい、日付が変わったから今日か。善場主任にこの通路のことを報告するだけだ」

 上手く行けば特別ボーナスがもらえる。
 私達は手早く縄梯子を片付け、穴を元の状態に塞いでから家の中に戻った。

 高橋:「暑かったっスねぇ……。変な汗かいてしまいました」
 愛原:「もう1回寝る前に、シャワーでも浴びよう。リサ、先に使っていいぞ」
 リサ:「ありがとう」
 愛原:「ああ、ちゃんと第0形態に戻れよ」
 リサ:「あっ……」

 リサはうっかりしたとばかりに自分の頭をコツンと叩くと、人間の姿になった。
 そして客間の自分の寝床に向かうと、そこから新たな着替えを用意した。

 愛原:「高橋は2階のシャワールームを使っていい」
 高橋:「いいんスか?」
 愛原:「ああ」

 我が家も変わったもので、1階には普通の浴室があるくせに、何故か2階にもシャワールームがあるのだ。
 もっとも、洗面所を改造したもので、広さは電話ボックスに毛を生やしたようなものだが。

 愛原:「なるべく両親を起こさないように静かに使えな?もし起きて来て何か言われても、『俺に使っていいと言われた』って言えばいいから」
 高橋:「分かりました」

 リサは1階の浴室、高橋は2階のシャワールームに向かった。
 で、私はどちらか空いた方を使えば良い。
 よほど汗をかいたのか、2人からはそのような匂いがするからな。
 もっとも、その匂いが違うのは人間とBOWの違いか、それとも単に男女の違いか……。
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“私立探偵 愛原学” 「地下通路」

2020-09-01 14:59:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月24日01:30.天候:晴 宮城県仙台市若林区○○ 愛原家の地下]

 私は自分の実家の下に広がる地下通路で、ハンターα3匹と遭遇した。
 尚、1匹については既に死亡していた。
 通路の片一方は例の『お化け屋敷』に続いている一方で、もう片方がどこに続いているのかも気になった。

 愛原:「よし。先に反対方向を見て来よう」
 高橋:「はい」

 私と高橋はマグライトとハンドガンを手に、『お化け屋敷』とは反対方向に歩いて行った。
 因みに地下通路の大きさだが、幅は5メートルほど。
 高さは3メートルほどあった。

 愛原:「? これは……」

 途中の壁に掛かっているのは、とある家族の集合写真。
 それは私が昔、『お化け屋敷』を探検した時に発見したものとよく似ていた。
 そして、そこには確かに『よちよち歩きの娘』も写っていた。
 これがここにいるリサ……?

 リサ:「ううっ!」

 するとリサは両手で頭を抱えて倒れ込んだ。
 やっぱりだ!
 今、リサの頭の中では失われたはずの人間だった頃の記憶が蘇ろうとしている。

 リサ:「頭が痛い……」
 愛原:「無理に思い出さなくていいぞ。これは重要アイテムとして確保しておこう」

 私はトレヴァー家の家族写真を入手した。
 これは後で善場主任に引き渡そう。
 更に先に進むと……。

 ロボット:「IDガ確認デキナイ場合、不審者ト見做シマス」

 ルンバを巨大化したようなロボットがやってきた。

 高橋:「何スか、こいつ?」

 移動はキャタピラー式になっている。

 愛原:「恐らく警備ロボットだろう。この地下通路で眠っていたのかもな」
 高橋:「なるほど」
 ロボット:「IDガ確認デキナイ場合、不審者ト見做シマス」
 愛原:「勝手にやってくれ。俺達は先に進む」

 私達とロボットの横を通り過ぎようとした。

 ロボット:「侵入者発見、侵入者発見。コレヨリ掃討フェーズニ移行シマス」

 ロボットはそう言うと、ボディの両脇からマシンガンを出した。

 高橋:「先生、危ない!」
 愛原:「うぉっ!?」

 タタタタタタタと昔の足踏み式ミシンのような音が地下通路内に響く。

 リサ:「いたっ!」

 しかも流れ弾がリサに当たってしまった!
 だが、そこはBOW。
 マシンガンが多少被弾したところで、殆どダメージは受けない。
 当たった所は確かに出血するのだが、すぐに血は止まる。

 ロボット:「侵入者ハ直チニ排除シマス」
 高橋:「てめ、フザけんな!」

 高橋がマグナムを構えてロボットに発砲する。
 が、ロボットは何とジャンプして高橋の発砲を避けた。

 高橋:「動くな!これじゃ当たんねー!」

 しかもこのロボット、装備しているのはマシンガンだけではなかったようだ。
 今度はマグナムと同じ型の銃口を出して、今度はそれで高橋を狙って来た。

 高橋:「マネすんな!マグナムは俺の武器だぞ!」
 リサ:「でやぁーっ!」

 第一形態に変化しているリサ、鬼の力でロボットに体当たり。

 リサ:「お、重い……!」

 その後でロボットを持ち上げた。
 うちの庭石くらいの大きさで、重さもそれなりにあるだろうに、それを持ち上げられるリサも凄い。
 これが鬼形態のBOWの力。

 愛原:「いいぞ、リサ!壁に叩き付けろ!」

 リサはヒョイと壁に向かって叩きつけた。
 だが、ロボットは見事に着地しただけだった。

 高橋:「今だ!」

 高橋がマグナムを発砲する。
 それはロボットに被弾した。
 被弾した所から火花が飛び散っている。
 よし、効いてる!

 愛原:「ん?」

 しかも私はあるいい物を見つけた。

 愛原:「あれだ!」
 高橋:「先生!?」
 ロボット:「ボディノ損傷ガ発生シマシタ。自己修復モードニ移行シマス」

 私が見つけたのは消火栓。

 愛原:「これで止めだ!」

 私は起動ボタンを押した。
 そしてホースを引っ張って、筒先をロボットに向ける。

 愛原:「……。リサ!バルブを回してくれ!」

 これ、1号消火栓じゃん!
 2人で操作するタイプ!
 要は1人がホースを持って火点に向かい、もう1人が消火栓のバルブを回す役。
 私は近くにいたリサに言った。

 リサ:「バルブってこれ!?」
 愛原:「そうだ!思いっ切り回せ!」

 ドゴン!という音がした。
 高橋がロボットにもう一発放ったのだ。
 何だか高橋のマグナムだけで倒せそうな勢いだが……。

 高橋:「先生、サーセン!弾切れです!」
 愛原:「そうくると思ったよ!」

 リサがバルブを回し、水が勢い良く出てくる。
 そしてその水を私はロボットに向けて放った。

 ロボット:「!!!」

 ある程度の防水にはなっているのだろうが、傷ついたボディの隙間から水が入ることまでは想定されていなかったらしい。
 もちろん私はわざとロボットの傷ついた部分を狙って放水した。
 そこから水が入り込んだことで、ロボットはショートした。
 そして派手に部品をばら撒きながら爆発した。

 愛原:「よっし、終了!リサ、水を止めてくれ」
 リサ:「はーい!」

 リサは今度はバルブを締めに行った。
 そして、水が止まる。

 高橋:「先生、さすがっスね!」
 愛原:「警備員時代、何度も消火栓の訓練を受けたものだ。昔取った杵柄ってヤツだな」
 高橋:「メモっておきます!」
 愛原:「せんでいい」

 すると私はロボットの破片から色々な物を見つけた。

 愛原:「おい、高橋。これ、マグナムの弾じゃないか?」

 ロボットはマグナムも装備していた。
 だから未使用の弾も体内に貯蔵されていた。

 高橋:「あっ、そうッスね」
 愛原:「もらっとけもらっとけ」
 高橋:「うっス」

 ロボットから頂戴したのは未使用の銃弾だけではなかった。

 愛原:「鍵だ。どこの鍵だ?」

 見た目は普通の鍵。
 しかし、どこかで使えるかもしれないので、これも頂戴しておくことにした。
 そして、再び奥へ進む。

 愛原:「行き止まりか」

 途中で工事を中断したのだろうか。
 壁や天井はコンクリートであるが、行き止まりの部分は土壁が剥き出しになっていた。
 ここはどの辺りなのだろう?
 私はスマホで位置情報を探ってみた。

 愛原:「なるほど。この向こうは地下鉄東西線のトンネルだ。地下鉄ができたので、掘るのを諦めたか。って!」

 地下鉄東西線の開通は東日本大震災以降だぞ?
 もし私の推理が当たっているのなら、この通路はその時期に掘られたことになる。
 よくよく見れば、コンクリートの壁は薄汚れてはいるものの、造られてから何十年も経っているようには見えない。

 リサ:「先生、そこから上に上がれるみたいだよ」

 リサは土壁の手前にある鉄製の梯子を指さした。
 それ自体は何の変哲も無い梯子だ。

 リサ:「ちょっと昇ってみるね」
 愛原:「お、おい」

 しかし、リサはスルスルと昇っていった。
 黒いスカートの中に白い物が見えたので、またそれを隠す物を穿いていないらしい。
 しばらくして戻って来た。
 戻って来る時は、豪快に梯子の途中から飛び下りてくる。

 愛原:「上はどうだった?」
 リサ:「建物の中だった。だけど、何にも無い」

 リサの話では空き店舗とか空き事務所のような所に出たとのことだった。
 地図で見ると、貸店舗または貸事務所のような建物が確かにある。
 どうやらまだ借り手が付いていないようだ。

 高橋:「どうします、先生?」
 愛原:「今度は反対側、『お化け屋敷』の方に行ってみよう」
 高橋:「はい」

 私達は反対方向に歩いて行くことにした。
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