報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京後」

2020-09-29 20:03:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日17:24.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 落日の東京に私達は帰って来た。
 車内には西日が差し込んでいる。
 少し日が短くなったようだ。
 来月の秋分の日を以って、昼より夜が長くなる。
 後ろの席を見ると、仲睦まじい親友同士のJC2人は寝てしまっていた。

 愛原:「リサ、そろそろ起きろ。もうすぐ終点だぞ」
 リサ:「うん……」
 斉藤絵恋:「何か、寝ちゃってたみたい……」

〔「……22番線到着、お出口は左側です。……」〕

 愛原:「絵恋さん、新庄さん達はどこまで迎えに来てくれてるのかな?」
 絵恋:「八重洲南口です。そこの改札口の前に、新庄とパールが迎えに来てくれてます」
 愛原:「なるほど、そうか」

 荷物を網棚から下ろしたりしているうちに、列車はホームに滑り込んだ。

〔ドアが開きます〕

 JR東日本の新幹線ホームには、ホームドアが無い。
 これは東海道新幹線と違って車両の規格が統一されていない為、ドアの位置を固定できないからである。
 同じように相互乗り入れはしていても、ドアの数や位置の違う電車が走っているような路線では、やはりホームドアが設置されていないことが多い(JR埼京線、東京メトロ日比谷線など)。

 愛原:「何か、久しぶりに帰って来たような気がするなぁ」
 高橋:「作者の遅筆のせいですね」
 愛原:「こら。……絵恋さん、これで私の任務は完了ということでよろしいですかな?」
 絵恋:「まだですよ。『家に着くまでが任務』です」
 愛原:「ははは、なるほど」
 絵恋:「でも、先にリサさんの家まで送ってあげます。任務はそこまでです」
 愛原:「そうですか」

 列車を降りて改札口に向かう。
 JR東日本の新幹線だと、改札口を2回通らないといけない(日本橋口改札を除く)。
 旧国鉄時代は東海道新幹線も改札口を2回通る構造になっていたと思うが、かつての面影は殆ど無い。

 新庄:「お帰りなさいませ、御嬢様」

 在来線の八重洲南口改札を出ると、その外側に黒いスーツ姿の新庄運転手と絵恋さん専属メイドの霧崎さんがいた。
 霧崎さんはメイド服なので、思いっ切り目立っている。
 当然、衆目を集めることになるが、彼女は特段それを気にする様子は無い。
 何でも、『10代の時に犯した大罪の償いの1つ』なのだという。
 女子少年院から女囚刑務所までコンプリートしたという経歴は、少年院から少年刑務所までコンプリートしたという高橋と経歴は同じだ。
 但し、高橋曰く、『パールの方が罪状は自分より重い』とのこと。

 霧崎:「お帰りなさいませ、御嬢様」
 絵恋:「ただいま」
 霧崎:「お荷物お持ち致します」
 絵恋:「ありがとう。愛原先生達も車で送ってあげて」
 新庄:「かしこまりました。愛原様、どうぞこちらへ」
 愛原:「よろしくお願いします」

 私達は駅の外に出ると、目の前の階段を下りた。
 八重洲地下街へ向かう階段だ。
 そこに入ると、最初の角にまた下に行く階段がある。
 そこが八重洲地下駐車場であり、車はそこに止めている。

 リサ:「うー……」
 絵恋:「どうしたの、リサさん?」
 リサ:「駐車場の薄暗い感じ。研究所の地下に閉じ込められてた頃を思い出す……」
 愛原:「それは霧生市の?」
 リサ:「霧生市もだし、もっと別の研究所も……」

 移動の時は大型のゲージに入れられ、コンテナで運ばれた為、どこの研究所に移送されたか分からなかったそうである。
 最終的に霧生市の研究所にいた所、私と出会った。
 完全に旧アンブレラはリサを実験動物としか見ていなかったのである。

 新庄:「こちらでございます」

 予想通り、駐車場の一画に黒塗りのヴェルファイアが止まっていた。

 新庄:「どうぞ」
 絵恋:「先生方、後ろへどうぞ」
 愛原:「おっ、ありがとう」
 絵恋:「リサさんは、私と真ん中ね」
 リサ:「ん」

 新庄運転手はハッチを開けて、そこに荷物を積んでいる。
 不思議と霧崎さんは、高橋の予想したような、婚姻届を私に渡してくるようなことはしなかった。

 高橋:「パールのヤツ、何もしてきませんね?」
 愛原:「シッ、黙ってろ」

 高橋の言葉を待って行動に移そうとしているのかもしれない。
 私は高橋に余計なことを言わないよう、口止めした。

 新庄:「それでは出発致します」

 霧崎さんが助手席に乗り、新庄運転手が運転席に乗り込む。
 そして、車が動き出した。

 高橋:「先生。俺達は事務所でいいんスか?」
 愛原:「ああ。高野君が待っててくれるらしい」

 なので私は新庄運転手に、事務所まで乗せてくれるようお願いしていた。

[同日18:00.天候:晴 墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 車は事務所のあるビルの前で止まった。

 新庄:「着きました」
 愛原:「ありがとうございます」

 電動スライドドアが開く。

 リサ:「それじゃ、サイトー」
 絵恋:「うん。また学校でね。……えと、もし寂しかったら、いつでも遊びに来ていいよ!」
 リサ:「うん、分かったっ。土日は埼玉の家?」
 絵恋:「そうね。プールに入りたかったら用意しておくから、水着を忘れないでね。学校のでも、ビキニでもどっちでもいいからね」
 リサ:「うんうん」
 絵恋:「も、もし忘れても、どうせ貸切なんだから、す、すすスキニーデップでも……」
 霧崎:「御嬢様、鼻血が出ておりますわ」
 高橋:「あぁ?そこはあれだぜ。そんな横文字じゃなくて、あえて『全裸水泳』って日本語で言った方がエロさマシマシだぜ?」
 絵恋:「きゃっ!ストレート過ぎぃ~っ!」
 霧崎:「マサも変な事を御嬢様に教えないで」

 霧崎さんはメイド服のスカートの中に手を突っ込んだ。
 スカートの隙間から、キラリと光る刃物がチラ見する。

 高橋:「あ、分かった、分かったよ」
 愛原:「仲のよろしいことで」

 私達は斉藤家と別れると、事務所のあるビルの中に入った。
 その前に事務所のある5階を見ると電気が点いていたから、確かに事務所には高野君がいるようだ。

 愛原:「リサは本当サイトーさんと仲がいいな」
 リサ:「うん、私のデザート」
 高橋:「先生、こいつ食う気満々ですよ?」
 愛原:「デザートはいきなり食べるものじゃないから大丈夫だろ」

 私はメインディッシュらしい。
 さて、前菜は誰なのやら。
 私はそんなことを考えながらエレベーターに乗り込んだ。
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“私立探偵 愛原学” 「JR仙台駅」

2020-09-29 16:11:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日14:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

 昼食を終えた私達は、善場主任達の車で仙台駅まで送ってもらった。
 あのトンネルの穴、今度は電車側から見てみたかったような気がしたが、せっかくの御厚意なので甘えることにした。

 善場:「それでは今日はありがとうございました」
 愛原:「いえ、こちらこそありがとうございました」
 善場:「川口での捜査状況、気になるでしょうが、何ぶん捜査機密が多分に含まれておりますので、詳細はお伝えできないかもしれません」
 愛原:「しょうがないですよ。私はあくまで、委託を受けた一私立探偵に過ぎませんから」

 もう既に善場主任達が表向きのNPO法人ではなく、直接政府機関職員として動く状況では、私達の出る幕は無いだろう。
 あくまでも私達の仕事は、善場主任達に情報を提供するのみ。
 あとは国家権力を発動できる機関に任せる他は無い。
 後で報酬は十分に受け取れる。

 愛原:「リサの出生の秘密、分かるといいですね」
 善場:「そうですね。人間に戻す前に、それくらいは判明させたいものです」

 結局、仙台のトレヴァー家の出身でもない可能性が出て来た。
 最悪、クローン技術で勝手に造られた人間かもしれない。
 旧アンブレラなら、そういうことは平気で行うだろう。
 それにしても、クローンの元となった人間が別にいるはずなんだ。

 善場:「それでは諸経費につきましては、後ほどお送りください。もう金曜日ですので、恐らく振り込みは来週になるかと思いますが」
 愛原:「報酬もその時一緒なんですね?」
 善場:「そういうことになります」
 愛原:「分かりました」

 善場主任達はもう少し現場に残って、屋敷跡を調べるという。
 埼玉県川口市内にあるという五十嵐親子の家については、強制捜査に入るのも時間の問題だろう。
 これもまた来週行われるものと思われる。
 私達は善場主任と別れると、駅構内に入った。

 愛原:「まずはキップを買おう」

 8月末の現在、コロナ禍ではなかったら、まず指定席は取れないくらい混んでいるだろう。
 しかし今は、状況が違う。
 秋になれば、少しは状況も改善されるのだろうか。

 愛原:「15時24分発、“やまびこ”60号、東京行き。これは空いてるな」

 盛岡始発だが、指定席券売機で座席表を見ると、スカスカだった。
 これでE6系“こまち”車両も併結した長大編成なのだから、勿体ない気もした。
 いや、だから空いているのかもしれないが。
 E6系に乗ってみたい気がしたが、あいにくそちらはグリーン車以外全車両自由席だった。
 多分、席は空いてると思うんだけどね。
 私が迷っていると、横から斉藤絵恋さんが口を挟んだ。

 斉藤絵恋:「あの、もし良かったら、後で父にグリーン料金を出してもらいますけど……」
 愛原:「い、いや、それには及ばない」

 私は打ち消して、さっさとE5系“はやぶさ”車両にのみ設定されている普通車指定席をまとめ買いした。
 4人なので2人席を前後して確保する形になる。
 買ってからで何だが、私は1つ気になったことがある。

 愛原:「絵恋さん、今日は金曜日だけど、埼玉の実家に帰らなくていいのかい?」
 絵恋:「今日は東京のマンションに泊まります。パールも寂しがっているでしょうし」

 すると、高橋が一瞬反応した。
 私はすぐにそれに気づいた。

 愛原:「そうかそうか。それじゃ、霧崎さんに東京駅まで迎えに来てもらったらどうだい?」
 絵恋:「いえ、私は1人で帰れます。まあ、タクシーには乗りますけど……」
 愛原:「まあまあ、そう言わずに」

 私はこっそり高橋を指さした。
 だが、逆に絵恋さんはプイッとそっぽを向いた。

 絵恋:「先生から私に対する『口のきき方』に対して、御指導して頂ければ考えなくもないですわ」
 愛原:「あ、ああ……」

 高橋は絵恋さんを『(レズ)ビアン(のクソ)ガキ』と呼んでいるので、それを気にしているだろう。

 愛原:「分かった。俺から強く言っておくよ」

 高橋は貧しい家庭環境で、ロクに親からの愛情も受けずに育ったので、斉藤絵恋さんのような『御嬢様には反吐が出る』とか言ってたな。
 ましてや高橋もLGBTのG(自称。実際はB)。
 しかし、G(自称)なのにLは『気持ち悪い』と思うらしい。
 ノーマルの私に言わせれば、いずれも【お察しください】。

 絵恋:「そういうことでしたら、よろしいですわ」

 絵恋さんはスッと自分のスマホを出した。

 愛原:「ありがとう。良かったな、高橋。東京駅で霧崎さんに会えるぞ」
 高橋:「あー……そうですか」
 愛原:「何だ?せっかく好きな人に会えるんだから、もっと喜べよ」
 高橋:「いや、もちろん、俺的には『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』って感じですけど、先生的には地雷かと」
 愛原:「何で?」
 高橋:「多分あいつ、婚姻届持って来ますよ。俺と先生にサインを求めてくるかもです。俺はサインしますけど、先生は保証人の所にサインしてくれますか?」
 愛原:「いや、多分その反省無さげな態度にキレてしまうかもしれん。ここ最近、健康診断で高血圧って出るようになったんだからさ、カンベンしてくれよ……」
 高橋:「ですよね」

 そんなことを話していると、絵恋さんが私の所にやってきた。

 絵恋:「連絡取れました。パールと新庄が迎えに来てくれるみたいです。車で」
 愛原:「すると、ヴェルファイアに乗ることになるな」

 新庄さんは斉藤家の専属お抱え運転手。
 6人乗り込むことになるので、いつもの光岡ガリューでは乗り切れない。
 そういう時はヴェルファイアで迎えに来る。

 愛原:「あっ、キップは1人ずつ持とう。落とさないように」
 高橋:「あざっす。俺は先生のお隣で」
 愛原:「はいよ」

 新幹線特急券と乗車券が1枚になったタイプである。
 もちろん自動改札機を通れる。
 因みに、領収証の発行も忘れない。
 今は全部券売機でできるのだから便利だ。

 絵恋:「私はリサさんの隣でお願いします」
 愛原:「ハイハイ」
 高橋:「で、どうするんスか?もう改札ん中、入っちゃいます?」
 愛原:「そうだな。ラチ内にも土産物屋はあるしな。……忘れたか?高野君やボスに買って行ってあげないと」
 高橋:「それもそうっスね」

 ボスに関しては宅配便で送ることになる。
 高野君はスイーツが好きだから、“萩の月”でも買って行ってあげるか。
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