[9月30日09:27.天候:晴 東京都江東区森下 都営地下鉄森下駅→ワンスターホテル]
〔まもなく4番線に、清澄白河行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
断面の小さいトンネルの向こうから、1両辺りが小さい8両編成の電車がやってきた。
フル規格であれば、6両編成分くらいの長さであろう。
このような設計の地下鉄車両は日本国内でも有数に走っているが、これはトンネル断面を小さくすることにより工事費用を抑える為と、急カーブに対応する為である。
〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです。4番線は、清澄白河行きです〕
次の駅で終点となる為か、稲生達が降りて来ると、更に電車が空いた。
朝ラッシュが終わったので、車両基地へと引き上げる為であろう。
清澄白河駅の最寄りには車両基地がある。
車両基地も含めて一切地上に出ない地下鉄なのである。
稲生:「急がないと先生をお待たせしています」
マリア:「どうせ気長に待っているだろうから大丈夫さ」
電車が出て行く際、地下鉄ならではの強風が起こる。
エスカレーターを昇っていると、マリアはスカートの裾を気にした。
マリア:「どうせロビーで寝てるさ」
稲生:「ですかねぇ……」
駅の外に出て7〜8分ほど歩いた所にワンスターホテルはあるのだが……。
エレーナ:「らっしゃいせー!!」
稲生&マリア:「ラーメン屋か!」
エレーナ:「ちょうどダブルの部屋が空きましたぜ、お客人」
稲生:「誰が客人だ!」
マリア:「さりげなくダブルルーム紹介すんな!」
エレーナ:「お客さん、冷やかしなら帰ぇってくんな」
マリア:「もうオマエ、何屋だよ?」
稲生:(森下商店街の下町チックな店の真似だな……)
と、そこへエレベーターのドアが開く。
宿泊客:「すいません、チェックアウトします」
エレーナ:「おはようございます!鍵をお預かり致します」
コロッと接客モードに変わるエレーナ。
エレーナ:「領収証のお名前は、株式会社日東ローラー様でよろしいでしょうか?」
宿泊客:「ええ」
稲生:(どこかで聞いたような名前の会社だなぁ……)
稲生は首を傾げた。
エレーナ:「こちらが領収証でございます。スタッフ一同、またのご利用を心よりお待ち申し上げます。本日は真にありがとうございました」
宿泊客:「どうもお世話さま」
宿泊客がホテルを出て行くと……。
エレーナ:「イリーナ先生なら、トイレだぜ。そこで待ってるんだぜ」
マリア:「オマエもコロッと変わるな」
エレーナ:「処世術だぜ、処世術」
すると、女性清掃員の恰好をした女将がエレベーターから降りて来た。
エレーナ:「お疲れーっス!!」
オーナーの奥さんであり、このホテルの陰のオーナーである。
清掃員の恰好をしているので、一瞬女将だとは分からない。
女将:「313号室の常連さん、まもなくチェックアウトだから失礼の無いようにしなよ?」
エレーナ:「ウィーッス!」」
女将:「ウィーッス!……ほらその前にこのリネン、裏に出しといて!」
エレーナはチェックアウト後の使用済みリネンの入った袋を受け取ると、裏口に運び出した。
女将:「こんな感じでね、ウチは楽しくやってるのよ。アットホームな雰囲気のホテルだから、また泊まりに来てちょうだいね」
稲生:「はは、了解です」
マリア:「Yes,landlady...」
女将:「あなた達一緒だったら、ダブルルーム安くしとくから」
稲生:「エレーナに教育したのは女将さんでしたか!」
マリア:「謎は全て解けた!」
イリーナ:「あー、スッキリしたぁ〜」
イリーナがのほほんとした感じでトイレから戻って来たのはその直後であった。
[魔界時間9月30日10:30.天候:霧 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ 魔王城新館1Fメインホール]
ワンスターホテルの地下室の奥にある魔法陣。
そこから魔法を唱えれば、基本的には誰でも魔界へ行ける。
早速イリーナ組の3人はそこから魔界へと向かった。
向こうの出口は魔王城の新館である。
普段は倉庫として使われている部屋に、出口はあった。
イリーナ:「早く謁見受付しましょう」
稲生:「さすがにVIP扱いではないんですね」
マリア:「当たり前だろう」
大魔王バァルが統治していた頃の魔王城は『ダークパレス』と呼ばれるほど薄暗い場内であった。
もちろん今でもそんなに明るいわけではないのだが、某ネズミの王国の中心にそびえる城くらいの明るさはある。
『Reception』と書かれた受付には女性兵士が受付係をやっている。
それは魔王軍の正規軍とは違い、傭兵隊の一部なのであるが、その中で選りすぐりの容姿端麗且つ柔和で接客性に富んだ者を配属している。
傭兵というと女戦士サーシャをどうしてもイメージしてしまう稲生には、どう見ても彼女らがサーシャの仲間だった者には見えないのだ。
それくらい大企業の受付係並みの端麗さであった。
イリーナ:「陛下から親書を預かったコを連れて来たんだけど?」
受付係:「かしこまりました。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
マリア:(体臭を香水で誤魔化している。恐らくグールの一種だろう)
グールとは西洋の人喰い鬼のことである。
バァル王権の頃から仕えていたのかは不明だが、もしその頃から生きていたのであれば、当時は遠慮せず奴隷階級であった人間を好きなだけ襲って食らっていたのかもしれない。
肉食である為、体臭が強い。
その為、デオドランドスプレー等が欠かせないという。
イリーナ:「魔道師ダンテ門流イリーナ組のイリーナ、マリアンナ、そして親書を預かったイノウ・ユウタだよ」
受付係:「かしこまりました。それではすぐにお取り次ぎさせて頂きますので、あちらにお掛けになってお待ちください」
稲生:(まるで父さんの会社みたいだなぁ……)
稲生は宗一郎の会社訪問を何度かしたことがある。
その度にやはり女性受付係から同じような対応をされるのだ。
稲生:「誰かが迎えに来るんですかね?」
マリア:「私達はともかく、師匠まで一緒だからね。普通そうじゃない?」
稲生:「ですかねぇ」
マリア:「師匠はこれでも宮廷魔導師ポーリン先生のケンカ相手だから」
イリーナ:「私は仲良くしたいのにねぇ……」
マリア:「バスルームで裸で抱きついて来るキモい後輩と仲良くしたいとは思わないと思います」
イリーナ:「えー?ただのスキンシップだよぉ……」
マリア:「やめてくださいね、キモいだけですから!」
そのようなつまらないことでまた師匠同士ケンカされても、弟子としては迷惑なのである。
イリーナ:「じゃあ、今度は勇太君にハグしてあげる。もち、裸でw」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「もっとやめください!」
坂本:「おお、さすが噂通りの方達だ」
そこへ現れたのは魔界共和党参事の坂本。
何気に“新人魔王の奮闘記”(原作:多摩準急)から登場しているキャラである。
坂本:「魔界共和党総務担当参事の坂本成人と申します。ここから先は私めがご案内させて頂きます」
イリーナ:「ありがとう」
坂本:「まずは総裁がお待ちですので、総裁室にご案内致します」
稲生:「総裁?」
イリーナ:「アベ首相のことよ。日本の自民党と同じで、党の総裁がイコール首相なのよ」
稲生:「ああ、なるほど」
イリーナ組は坂本参事に案内されて魔王城の奥へと向かった。
〔まもなく4番線に、清澄白河行き電車が到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
断面の小さいトンネルの向こうから、1両辺りが小さい8両編成の電車がやってきた。
フル規格であれば、6両編成分くらいの長さであろう。
このような設計の地下鉄車両は日本国内でも有数に走っているが、これはトンネル断面を小さくすることにより工事費用を抑える為と、急カーブに対応する為である。
〔森下、森下。都営新宿線は、お乗り換えです。4番線は、清澄白河行きです〕
次の駅で終点となる為か、稲生達が降りて来ると、更に電車が空いた。
朝ラッシュが終わったので、車両基地へと引き上げる為であろう。
清澄白河駅の最寄りには車両基地がある。
車両基地も含めて一切地上に出ない地下鉄なのである。
稲生:「急がないと先生をお待たせしています」
マリア:「どうせ気長に待っているだろうから大丈夫さ」
電車が出て行く際、地下鉄ならではの強風が起こる。
エスカレーターを昇っていると、マリアはスカートの裾を気にした。
マリア:「どうせロビーで寝てるさ」
稲生:「ですかねぇ……」
駅の外に出て7〜8分ほど歩いた所にワンスターホテルはあるのだが……。
エレーナ:「らっしゃいせー!!」
稲生&マリア:「ラーメン屋か!」
エレーナ:「ちょうどダブルの部屋が空きましたぜ、お客人」
稲生:「誰が客人だ!」
マリア:「さりげなくダブルルーム紹介すんな!」
エレーナ:「お客さん、冷やかしなら帰ぇってくんな」
マリア:「もうオマエ、何屋だよ?」
稲生:(森下商店街の下町チックな店の真似だな……)
と、そこへエレベーターのドアが開く。
宿泊客:「すいません、チェックアウトします」
エレーナ:「おはようございます!鍵をお預かり致します」
コロッと接客モードに変わるエレーナ。
エレーナ:「領収証のお名前は、株式会社日東ローラー様でよろしいでしょうか?」
宿泊客:「ええ」
稲生:(どこかで聞いたような名前の会社だなぁ……)
稲生は首を傾げた。
エレーナ:「こちらが領収証でございます。スタッフ一同、またのご利用を心よりお待ち申し上げます。本日は真にありがとうございました」
宿泊客:「どうもお世話さま」
宿泊客がホテルを出て行くと……。
エレーナ:「イリーナ先生なら、トイレだぜ。そこで待ってるんだぜ」
マリア:「オマエもコロッと変わるな」
エレーナ:「処世術だぜ、処世術」
すると、女性清掃員の恰好をした女将がエレベーターから降りて来た。
エレーナ:「お疲れーっス!!」
オーナーの奥さんであり、このホテルの陰のオーナーである。
清掃員の恰好をしているので、一瞬女将だとは分からない。
女将:「313号室の常連さん、まもなくチェックアウトだから失礼の無いようにしなよ?」
エレーナ:「ウィーッス!」」
女将:「ウィーッス!……ほらその前にこのリネン、裏に出しといて!」
エレーナはチェックアウト後の使用済みリネンの入った袋を受け取ると、裏口に運び出した。
女将:「こんな感じでね、ウチは楽しくやってるのよ。アットホームな雰囲気のホテルだから、また泊まりに来てちょうだいね」
稲生:「はは、了解です」
マリア:「Yes,landlady...」
女将:「あなた達一緒だったら、ダブルルーム安くしとくから」
稲生:「エレーナに教育したのは女将さんでしたか!」
マリア:「謎は全て解けた!」
イリーナ:「あー、スッキリしたぁ〜」
イリーナがのほほんとした感じでトイレから戻って来たのはその直後であった。
[魔界時間9月30日10:30.天候:霧 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ 魔王城新館1Fメインホール]
ワンスターホテルの地下室の奥にある魔法陣。
そこから魔法を唱えれば、基本的には誰でも魔界へ行ける。
早速イリーナ組の3人はそこから魔界へと向かった。
向こうの出口は魔王城の新館である。
普段は倉庫として使われている部屋に、出口はあった。
イリーナ:「早く謁見受付しましょう」
稲生:「さすがにVIP扱いではないんですね」
マリア:「当たり前だろう」
大魔王バァルが統治していた頃の魔王城は『ダークパレス』と呼ばれるほど薄暗い場内であった。
もちろん今でもそんなに明るいわけではないのだが、某ネズミの王国の中心にそびえる城くらいの明るさはある。
『Reception』と書かれた受付には女性兵士が受付係をやっている。
それは魔王軍の正規軍とは違い、傭兵隊の一部なのであるが、その中で選りすぐりの容姿端麗且つ柔和で接客性に富んだ者を配属している。
傭兵というと女戦士サーシャをどうしてもイメージしてしまう稲生には、どう見ても彼女らがサーシャの仲間だった者には見えないのだ。
それくらい大企業の受付係並みの端麗さであった。
イリーナ:「陛下から親書を預かったコを連れて来たんだけど?」
受付係:「かしこまりました。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
マリア:(体臭を香水で誤魔化している。恐らくグールの一種だろう)
グールとは西洋の人喰い鬼のことである。
バァル王権の頃から仕えていたのかは不明だが、もしその頃から生きていたのであれば、当時は遠慮せず奴隷階級であった人間を好きなだけ襲って食らっていたのかもしれない。
肉食である為、体臭が強い。
その為、デオドランドスプレー等が欠かせないという。
イリーナ:「魔道師ダンテ門流イリーナ組のイリーナ、マリアンナ、そして親書を預かったイノウ・ユウタだよ」
受付係:「かしこまりました。それではすぐにお取り次ぎさせて頂きますので、あちらにお掛けになってお待ちください」
稲生:(まるで父さんの会社みたいだなぁ……)
稲生は宗一郎の会社訪問を何度かしたことがある。
その度にやはり女性受付係から同じような対応をされるのだ。
稲生:「誰かが迎えに来るんですかね?」
マリア:「私達はともかく、師匠まで一緒だからね。普通そうじゃない?」
稲生:「ですかねぇ」
マリア:「師匠はこれでも宮廷魔導師ポーリン先生のケンカ相手だから」
イリーナ:「私は仲良くしたいのにねぇ……」
マリア:「バスルームで裸で抱きついて来るキモい後輩と仲良くしたいとは思わないと思います」
イリーナ:「えー?ただのスキンシップだよぉ……」
マリア:「やめてくださいね、キモいだけですから!」
そのようなつまらないことでまた師匠同士ケンカされても、弟子としては迷惑なのである。
イリーナ:「じゃあ、今度は勇太君にハグしてあげる。もち、裸でw」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「もっとやめください!」
坂本:「おお、さすが噂通りの方達だ」
そこへ現れたのは魔界共和党参事の坂本。
何気に“新人魔王の奮闘記”(原作:多摩準急)から登場しているキャラである。
坂本:「魔界共和党総務担当参事の坂本成人と申します。ここから先は私めがご案内させて頂きます」
イリーナ:「ありがとう」
坂本:「まずは総裁がお待ちですので、総裁室にご案内致します」
稲生:「総裁?」
イリーナ:「アベ首相のことよ。日本の自民党と同じで、党の総裁がイコール首相なのよ」
稲生:「ああ、なるほど」
イリーナ組は坂本参事に案内されて魔王城の奥へと向かった。