報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔女達の舞踏会、前日譚」

2019-10-25 19:05:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月25日18:00.天候:雨 長野県北部山中 マリアの屋敷B1F・機械室]

 マリア:「Restart!」

 ガチャ!ガチャ!
 ブゥゥゥン……!!

 稲生:「あっ、また電気点いた。良かった良かった」
 マリア:「全く。雨が降る度に停電して、再起動させられる身にもなってみろってんだ」
 稲生:「まあまあ。それにしても、あの台風の時から随分と調子が悪くなりましたね」
 マリア:「師匠曰く、『消耗品だからねぃ』だそうだ。今さら取って付けたような理由言いやがって……!」
 稲生:「でもそれは本当のことなんでしょう?それはそれとして、だったら早いとこ新しいものと交換してもらいませんと……」
 マリア:「さすがに師匠も、それは分かってると思うけどね」

 2人の魔道士はそんなことを話しながら、地上階へ向かう階段を登った。

 稲生:「……ックシュ!」
 マリア:「大丈夫か?」
 稲生:「ええ。急に冷えてきましたね」
 マリア:「屋敷内は定温に保たれているはずなんだけど、さっきの停電で冷えたかな。そういえば、私も上着を脱ごうとは思わなかった」

 マリアは相変わらず緑色のブレザーを着ていた。
 シングルだと本当にJKに見えてしまうのでダブルを着ているが、それでも容姿が幼く見えるからか、コンビニなどで酒を買う時はパスポートを出すようにしている。
 その為、イリーナからは、そろそろイリーナのような大人っぽいドレスを着用するように言われているが……。

 稲生:「マリアさん、その服、とても似合いますもんね」
 マリア:「勇太が気に入ってくれなきゃ、私はもっとぞろっとした服を着ていただろうね」

 マリアは目を細めて答えた。

[同日18:30.天候:雨 マリアの屋敷1F・大食堂]

 イリーナ:「ご苦労さん。多分もう今日は停電しないと思うから、あとはゆっくりしよう」

 食堂に行くと既に夕食の用意はできあがっていた。
 イリーナがナイフとフォークを手に取ると、それが食事開始の合図である。

 稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。いただきます」
 マリア:「昔は『天におられる私達の父よ』ってやってたんだけどな……」
 イリーナ:「その『父』に助けてもらえなかったから、ここにいるんじゃない」
 マリア:「まあ、そうですけど」
 イリーナ:「それは私も同じ」
 稲生:「仏様だったら、すぐそこにいらっしゃいますよ。御受誡します?」
 マリア:「しない!」
 イリーナ:「勇太君、あくまでも仏教だけが黙認されているというだけで、大っぴらに許されているわけじゃないんだからね?」
 稲生:「はい、すいません」
 マリア:「何で仏教だけ黙認されてるんです?」
 イリーナ:「それは私達も詳しいことは知らないのよ。『魔女狩りの歴史が無いから』とか、『ダンテ先生がかつて仏教に興味を持たれていたから』とか、色々と噂されているけど……」
 稲生:「もしかして、日蓮大聖人の御前にいらっしゃったことがあったとか?」
 イリーナ:「それは無いわね。その日蓮さんは、インドとかには行ったの?」
 稲生:「いえ、行ってないです。そもそも外国にすら行かれてないです」
 イリーナ:「じゃあ、違うわ。今から800年くらい前の話でしょう?誰も、ダンテ先生が日本に行ったなんて知らないもの」
 マリア:「師匠達ですら大師匠様のお姿を常に追われているわけじゃないんでしょう?実はこっそり日本に行ってたという可能性は?」
 イリーナ:「それも無いわね。あの時はポーリン姉さんなどがダンテ先生の付き人みたいなことをしていたの。もし日本に行ってたら、すぐに分かるわ」
 稲生:「さっき、インドが出て来ましたけど……」
 イリーナ:「インドには行かれたみたいね。でも、そこで仏教に触れたとかいう話は聞いてないわ」
 稲生:「その頃からインドってイギリスの植民地でした?」
 イリーナ:「いや、そんなことないよ。その頃は独立した王国だったわ。もっともその時、ダンテ先生は似たような予言はされたみたいだけど」
 稲生:「なるほど……」
 イリーナ:「ま、いずれにせよ、今はダンテ先生の御好意で仏教徒でいられるんだから、感謝しなさいよ」
 稲生:「も、もちろんですよ」
 イリーナ:「ぶっちゃけ、ガウタマ・シッダールタよりもダンテ先生の方が……あうっ!」
 マリア:「!?」
 稲生:「どうしました?」
 イリーナ:「腰にギアス(呪い)が……!」
 マリア:「また腰痛ですか……」
 イリーナ:「これはきっと、今の話をダンテ先生が聞かれてて……『これ以上は言うな』と……」
 マリア:「はあ?」
 稲生:(大師匠様と仏教、一体何の関係が……?)
 イリーナ:「ア、アタシゃ先に休ませてもらうよ……。ごちそうさま……」

 イリーナはヨロヨロと立ち上がると、魔法の杖を老人の杖代わりに突き、マリアのメイド人形達に支えられて席を立った。

 マリア:「ただの持病でしょ」

 マリアは素知らぬ顔でステーキを口に運んだ。

 稲生:「でも、先生ほどの方なら腰痛くらい魔法で治せそうなものですが……」
 マリア:「だから、その魔法も効かないくらい歳なのよ。あの体、耐用年数が迫っているっていうし」
 稲生:「そんなもんですかねぇ?」
 マリア:「そんなもんよ。魔力が弱かったら、とっくに老衰でくたばってる体だよ、あれは」

 大魔道師の強い魔力で、まだ30代女性の見た目を保っているのだ。
 美魔女どころの騒ぎではない。
 マリアなど、契約悪魔ベルフェゴールの『特典』で、未だに契約当時の18歳のままだ。
 稲生はまだ正式な契約はしていないのだが、既にそれが内定している悪魔から、何らかの『特典』は受けているもよう。
 こうすることで、他の悪魔からの横取りを防いでいるのだという。

 稲生:「なるほど」
 マリア:「それより、今度の『ダンテ先生を囲む会』、日本で開催だからね?この国を拠点としている私達がホストになって、しかも日本人である勇太が率先して会場押さえとかしなくちゃいけないけど、大丈夫?」
 稲生:「あ、はい。あの、『ダンテ先生を囲む会』は、俗称でしょう?多分、令和天皇即位に絡んだ動きではないかと……」
 マリア:「まあまあ。それとも、『魔女達の舞踏会』にする?」
 稲生:「そっちの方がカッコいいかもしれませんね。とにかく、高級ホテルとかは押さえておきますので……」
 マリア:「頼むよ。こういうのが上手く行って、大師匠様の覚えがめでたかったら、勇太もマスターにしてもらえるから」
 稲生:「魔法とかの実力を見られるんじゃないんですか?」

 水晶球の向こうで、大師匠ダンテ・アリギエーリが苦笑していたことは言うまでもない。
コメント (2)
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“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過後、更に経過」

2019-10-25 10:26:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月13日06:30.天候:曇 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 井辺が事務所のトイレで顔を洗っていると、敷島が入って来た。

 敷島:「グッモーニーン……」
 井辺:「あっ、社長。おはようございます」
 敷島:「停電、復旧したんだなー」
 井辺:「あ、社長は御存知だったんですね」
 敷島:「俺がトイレから出ようとしたら、バチッと切れやがったからさぁ……」
 井辺:「そうだったんですか。私は恥ずかしながら、爆睡してて気が付きませんでした」
 敷島:「いや、いいんだよ。その方がいい。知らぬが仏って言うからな」
 井辺:「はあ……」
 敷島:「チラッとさっきテレビを見たんだが、どうやら一夜明けても交通機関は復旧しないらしい。早くても、今日の昼頃だそうだ」
 井辺:「やはりですか……。下の被害はどうだったんでしょう?」
 敷島:「それはまだ分からん。だけど、まだしばらくこの事務所にいた方が良さそうだな」
 井辺:「はい」
 敷島:「ま、非常食も飲料水も備蓄してあるから心配すんな」
 井辺:「はい、それはもう……」
 敷島:「じゃ、取りあえず俺はエミリーの体洗って来てやるから。シャワー使う?」
 井辺:「いえ、私は昨夜使わせて頂いたので……」
 敷島:「あ、そう」
 井辺:「初音さんからぼんやり聞いたんですが、昨夜はエミリーさんとお楽しみだったそうで……」
 敷島:「ちっ、ミクにはバレてたか。エミリーのヤツ、凄いよ。タマが空になるまで搾り取られた……」
 井辺:「は、はあ……」
 敷島:「井辺君にも後で貸してあげるからね」
 井辺:「いえ、結構です。遠慮しておきます。レイチェルで懲りましたから」
 敷島:「あ〜、そうか。まあ、いいや。井辺君も昼くらいまで寝てていいよ」
 井辺:「いえ、取りあえず情報収集に当たります」

 井辺がそう言うと、敷島は頷いてエミリーをシャワー室に連れて行った。

 井辺:「あれだけマルチタイプを使いこなす人間は、やはり珍しいのかもしれない……」
 初音ミク:「わたしも、社長は凄い人だと思います」
 井辺:「ですね」
 ミク:「何せ兵器として開発されたわたしを、ボーカロイドとして再生してくれた人ですから」
 井辺:「最初にその機能を発見したのは、平賀教授だということですが……」
 ミク:「平賀博士はわたしの機能を発見して、社長に伝えただけです。博士も、わたしの機能を重視していませんでした」

 ミクの歌唱機能を最大限を発揮すると、人間の脳幹を停止させる大量虐殺兵器に変わる。
 そこを上手く調整したのが平賀と敷島のコンビだ。
 開発者の南里は危険過ぎると海洋投棄したのだが、弟子の平賀がそれを回収してしまった。
 結果的には平賀の判断は正しかったと言える。

 ミク:「エミリーはあの調子ですし、プロデューサーさんの朝ご飯はわたしが用意しますね」
 井辺:「ああ、初音さん。助かります」

 そして、シャワー室では……。

 エミリー:「気持ちいいです。社長、ありがとうございます」
 敷島:「大事な『お人形さん』をきれいにしてやるのも、持ち主の義務だからな」

 もちろんアンドロイドは自分で自分の体を洗うことができる。
 元はテロ用途として製造されたバージョン・シリーズでさえ、そうしようとするくらいだ。
 街角のガソリンスタンドの洗車機を無断使用したことが相次ぎ、大問題となったことがあるくらいだ。
 その度にエミリーとシンディが、どつき回したほどである。
 しょうがないので、洗車機を改造した洗浄機をアリスが開発し、それをバージョン達に使わせることで収束した。

 エミリー:「んっ……ん……!」

 エミリーが下半身に力を入れると、ゴボッと秘所から白濁したドロリとした液が出て来る。
 透かさずそれを洗い流してやる敷島。

 エミリー:「いっぱい出されましたね……。きっと、人間の女性なら妊娠してしまいます……」

 エミリーは恍惚とした顔で言った。
 敷島は後ろからエミリーを抱きしめた。

 敷島:「お前が人間だったらなぁ……。俺はお前と……」
 エミリー:「社長……」

 エミリーは恍惚とした顔で敷島の手を握った。
 が、その顔が一瞬、恍惚の表情からほくそ笑むものに変わった。
 それは人間に支配されるべきAIが、支配してやったという勝ち誇った顔のように見えた。

[同日07:00.天候:曇 敷島エージェンシー事務室・打合せコーナー]

 井辺はミクに用意された朝食を取っていた。
 といってもパック容器の白飯(つまり、サトーのごはん)を電子レンジで温め、おかずは缶詰や真空パックで保存されていたもの、味噌汁はフリーズドライのものを熱湯で戻しただけであった。

 井辺:「本当に非常食ですね。でもまあ、備蓄していて良かったですよ。いただきます」
 ミク:「どうぞどうぞ」

 打合せコーナーの椅子に座り、机の上に並べられた朝食に箸をつける。
 ラジオを点けてそれをBGMとするが、やはり流れて来るのは台風情報である。

〔「……首都圏の鉄道に関する情報です。まず、各新幹線ですが、東海道新幹線のみ始発から運転を再開しました。今後、概ね平常運行を行うとしています。……」〕

 井辺:(やはり在来線の運転再開は昼頃からか……。せめて首都高でも復旧してくれれば……)

 ラジオを聞いていると、それもどうやら昼頃のようである。

 敷島:「あ、井辺君。ここにいたのか」
 井辺:「社長。すいません、先に朝食頂いてました」
 敷島:「いや、いいよ。それで、交通機関の復旧はいつだって?」
 井辺:「やはり在来線も首都高も、昼頃になるようです」
 敷島:「そうか。やはりなぁ……。取りあえず、昼まではゆっくりしよう。復旧したらそれで帰ろう。今のところ、シンディからは何の連絡も無いが、何だか心配になってきた」
 井辺:「そうですね。私もそう思います」
 敷島:「井辺君の実家は岩槻だったか」
 井辺:「そうです。復旧したら車を出していいですか」
 敷島:「いいよ。それで一緒に帰ろう」
 井辺:「はい、分かりました」

 台風が通過した後とはいえ、まだ風の強い豊洲地区。
 ビルに目立った被害は無いようだが、とても今の状態では帰れそうになかった。

 エミリー:「いざとなったら、私がお2人を抱えて飛びますので」
 敷島:「それは頼もしい」
 井辺:「いずれ復旧しますから、それを御遠慮しますよ」

 敷島と井辺は、こうして台風を乗り切ったのである。
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