報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「さいたま市での一夜」

2019-10-11 21:26:14 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月29日18:12.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅→パレスホテル大宮]

〔まもなく8番線に、普通、高崎行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、15両です。前寄りの5両、11号車から15号車は途中の籠原止まりとなります。グリーン車は、4号車と5号車です。……〕

 大宮駅下り本線ホームに長大編成の中距離電車が入線してくる。
 JR東日本の首都圏中距離電車も、ロングシート主体の車両となってしまった。
 ボックスシートは申し訳程度に存在するのみであり、しかもそのシートピッチは東北地区などのそれよりも狭いが、オリジナルとしてグリーン車は連結されている。

〔「8番線、ご注意ください。18時14分発、高崎線普通列車、高崎行き、長い15両編成での到着です。後から参ります快速や特急はございません。お急ぎのお客様も、この電車をご利用ください。前5両は途中の籠原で切り離しを致します」〕

 駅員が放送している間に列車がホームに停車した。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。……」〕

 ぞろぞろと乗客が各車両から降りて来る。
 その中に稲生とマリアもいた。

 稲生:「あちゃー、雨降って来ちゃったか……」
 マリア:「しょうがない。勇太もローブを着なよ。いい雨除けになるよ?」
 稲生:「いえ、そうは行きません」
 マリア:「ん?」

 稲生達は改札口を出ると、東西自由通路上にあるNEWDAYSに立ち寄った。
 そこでマリアも何点か自分が使用する物を購入していたが、稲生が買ったものは違った。
 それはビニール傘。

 マリア:「傘なんて買わなくても、ローブを着ればいいだろう?」

 マリアが訝しく思っていると、西口から出た稲生はバッと新しい傘を開いた。

 稲生:「いやー、1度やってみたかったんですよ。相合傘」
 マリア:「ああ、そういうこと。でも、別に初めてじゃないだろう?」
 稲生:「覚えていますよ」

 JR北与野駅から歩いて帰ろうとした時、雨に当たってしまった。
 そこで先に稲生家に到着していたマリアが稲生を迎えに行き、そこからまた家に帰る際、一緒に相合傘をした次第である。

 稲生:「だからこそ、今度は僕から誘います」
 マリア:「分かった」

 マリアは大きく頷くと、すぐに稲生の隣に入った。

 稲生:「因みにこの相合傘、鈴木君もエレーナを誘ってみたことがあったそうです」
 マリア:「エレーナのことだから、けんもほろろに断るか、それとも時間料金請求を条件に受けたか……」
 稲生:「それがそのどちらでもなかったみたいです。タダで応じたそうですよ」
 マリア:「ほお!?……だから、雨が降ったんだな」
 稲生:「ところが、鈴木君がやると、どうも上手く行かないんですよ」
 マリア:「どういうこと?」
 稲生:「傘の据わりが悪いというか、鈴木君が納得できる位置に傘を持ってこれないというか……」
 マリア:「……?」

 マリアは少し考えて、それから稲生の傘を持った。

 マリア:「つまり、こういうことだろう?今は私が傘を持っているが、私が持ったんじゃ、確かに違和感がある。それはどうしてかというと……私の方が背が小さいからだ。つまり、相合傘をする場合、傘は身長の高い方が持つべきである」
 稲生:「そういうことです」

 稲生の身長は165cm。
 マリアの身長は160cm。
 昔と比べて稲生の身長は大して変わっていないのだが、マリアの身長は伸びた。
 それでも同じ民族の女性と比べれば、低身長であろう。
 鈴木の身長は163cmなのに対し、エレーナの身長は170cm近くある。
 因みにイリーナが177cm、アナスタシアが175cmといったところ。
 さすがロシア人はデカい。
 つまり、鈴木の方が低身長だった為に、傘は持ってはいけない方の側だったのである。
 エレーナはそれを知っていて、わざと小馬鹿にするつもりで受けたのだろう。

 マリア:「そうなると師匠の場合は無駄にデカいから、相合傘で傘を持ってくれる男を探すのが大変だ」
 稲生:「威吹も結構身長高いように見えて、180cmは無いんですよねぇ……。多分、先生と同じくらい?」

 それでも江戸時代からその身長であったことを考えると、当時の人々に恐れられていたことは納得できる。

 マリア:「あの鬼族はどうだ?」
 稲生:「キノですか。あいつは180cm以上ありますよ。ただ、キノの場合は、栗原さんという先約がいますから」
 マリア:「ああ、あのコか。鈴木と比べれば、まだあのコの方が素質ある」
 稲生:「そりゃ、元幽霊ですから。ん?そういえば今回の支部登山、栗原さんは来なかったな……」
 マリア:「鬼族の嫁になったのなら、もう寺には行けないんじゃないか?」
 稲生:「そうですかねぇ……」

 元幽霊に魔道士、そして訪問者として妖狐や獄卒、魔女がいるエキゾチックな寺院だったりする。

 マリア:「それで、今日のディナー会場は?」
 稲生:「前に行ったパレスホテルのレストランです」
 マリア:「ああ、前にも行った、確かに」
 稲生:「行き慣れた所の方がいいだろうという、父さんの判断です」
 マリア:「妥当だと思う」
 稲生:「ホテルのロビーで待ってるそうですから、そっちへ行きましょう」
 マリア:「分かった」

[同日20:30.天候:雨 さいたま市中央区 稲生家]

 ホテルでの夕食会を終えた稲生家の面々がタクシーで帰宅する。
 父親の宗一郎が財布から現金を出し、運転手に支払っていた。

 稲生佳子:「せっかく帰って来たんだから、何日か泊まって行けばいいのに……」
 稲生勇太:「いやー、支部総登山のついでに寄らせてもらっただけだから……」
 マリア:「またお世話になりまス」

 マリアは勇太の両親の前では、なるべく自動通訳魔法具は使わず、自分で勉強した日本語を話すようにしている。
 しかし、仕事でよく日本語を喋るエレーナと比べると、まだアクセントなどに違和感があった。

 勇太:「あれ?マリアさん宛てに手紙が来ている?」
 マリア:「何だって?」

 マリアへの手紙は全て長野の屋敷に届くようになっているはずだが、一体誰からだろう?

 1:イリーナ
 2:魔の者
 3:ベイカー組ルーシー
 4:アルカディア王国首相・安倍春明
 5:魔界共和党総務担当理事・横田高明
 6:魔界王国アルカディア女王ルーシー・ブラッドプール1世
コメント
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