報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「正証寺の支部登山」 丑寅勤行編

2019-10-05 15:54:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月29日01:30.天候:曇 静岡県富士宮市上条 大石寺報恩坊→客殿]

 坊舎内に鳴り響く“ロッキー”のテーマ。

 稲生:「う……」

 それで稲生は目が覚めた。

 鈴木:「丑寅勤行の時間ですかぁ……」

 鈴木も大欠伸をしながら、布団からゴソゴソと起き出す。

 藤谷春人:「……ってか、うっせーな!オヤジぃ!」
 藤谷秋彦:「この方が元気に起きれていいだろう?」
 春人:「いつも通り、“鳩と少年”にしてくれよ!」
 秋彦:「はっはっはー。少年がトランペットを吹いて鳩が飛び立つシーンは謗法だぞ?」
 春人:「嘘つけぇ!」
 講頭:「御住職様、申し訳ありません。うちの登山部長親子が騒がしくて……」
 御住職:「なに、元気があって良いではないですか」

 稲生と鈴木はそんな講幹部尻目に洗面所へと行く。

 稲生:「眠れた?」
 鈴木:「ほとんど仮眠ですねぇ。ボイラー交換工事手伝わされて、体のあっちこっちが痛いですよ」
 稲生:「藤谷組の営業所が市内にあるのは知ってるけど、たまたまキャンセルになった他の工事現場で使うはずだったボイラーを報恩坊さんに融通するとはね……」
 鈴木:「功徳稼げたの、登山部長だけじゃないっスか」
 田部井:「一応、手伝った我々も『身の供養』として加算されるけどね。赤字なのは実際にボイラーぶっ壊した藤谷班長の方さ」
 春人:「悪かったな!」
 田部井:「一応、パチと競馬は控えた方がいいっスよ?」
 春人:「最近仕事がウハウハでそれどころじゃねーよ」
 田部井:「でもこの前、Facebookで先週の日曜日、『新潟競馬場でケンショーレンジャーのケンショーブルーを折伏しました』ってありましたよ?」
 春人:「だから、折伏だって。仕事が忙しい中にも、折伏はきちんとやってだなぁ……」
 田部井:「わざわざ競馬場で?」
 春人:「うるせーな!」
 稲生:「ケンショーブルーって新潟の人なんですね」
 春人:「在日だよ、在日。あのファビョりぶりと女の犯し方を見りゃ分かんだろ」
 稲生:「なるほど……」

[同日03:30.天候:雨 大石寺客殿]

 勤行も唱題に入る中、外では比較的強い雨が降っている。
 木造建築なだけに強い雨が降ると、それが屋根を叩き付ける音が中に響き渡るのだが、それをかき消すかのように大きな声で唱題が行われている。
 1時半に起きた信徒達の寝不足をかき消すかのようだ。

 藤谷春人:「南無妙……
 藤谷秋彦:(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
 春人:「うおっ!?……法蓮華経、南無妙法蓮……
 秋彦:(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
 春人:「ふぉっ!?……南無妙法蓮華経、南無妙……」
 田部井:(ぶっちゃけ、この親子はそのまま寝てて良かったと思う。……と。後でツイッターしておこう)
 稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……(早く一人前になって、マリアさんと結婚したいです!)」
 鈴木:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……(エレーナが俺の彼女になってくれますように!)」

[同日同時刻 天候:雨 JR富士宮駅前 富士宮富士急ホテル客室]

 エレーナ:「……はっ!?この、悪魔め!」

 エレーナは自らに迫る『瘴気』を手持ちの魔法の杖で祓った。

 エレーナ:「ったく、油断も隙も無ぇ……」

 2人は既にベッドで就寝していた。
 尚、ゴミ箱やテーブルの上は、ビールやチューハイの空き缶、そしておつまみの空き容器が山積みになっている。

 エレーナ:(ちょっとトイレ……)

 エレーナはホテル備え付けの寝巻を着ているが、それが乱れていたので直しながらバスルームへ向かった。

 エレーナ:(鈴木のヤツ、この時間帯にお祈りがあるとか言ってたな……。奴らにとってはありがたい御経も、私らにとっては呪いでしか無いんだが……。マリアンナの所にも、多分稲生氏の呪いが来てるっぽいけど、それは放っておこう)

 欧米諸国から見て、日本人の宗教観は魔女にも匹敵する特殊性らしい。

[同日04:00.天候:曇 大石寺報恩坊]

 丑寅勤行も終わり、客殿から報恩坊へと戻る正証寺の面々。

 鈴木:「俺の祈り、叶うかなぁ?」
 稲生:「『祈りとして叶わざるは無し』って言うからね。きっと叶うよ」
 田部井:「しかし、妙観講さんでは『その人の願いを叶えてしまうと、却って不幸な結果を招くことになると御本尊様が判断された場合、あえて叶えないこともある』なんて指導をしているらしいよ?」
 鈴木:「ええっ!?」
 田部井:「その代わり、ちゃんと代替案はあるそうだ」
 鈴木:「そうなんですか?」
 田部井:「カントクの場合、恋愛運・結婚運は全く叶わない代わり、仕事運と健康運は向上した。これは、『女と関わるとロクなことが無い人生バッドエンドパターンしか用意されていない為、それはどうあっても叶えてやることはできない。その代わり、健康運と仕事運の向上を持って大願成就としよう』ということらしい」
 鈴木:「ひえー……」
 稲生:「ぼ、僕の場はどうなんだろ……」
 春人:「お前ら、ダベってないで、さっさと戻って寝れ。また、朝の勤行があるぞ?」
 鈴木:「あれ?『丑寅勤行は猊下様の大導師で行われる朝の勤行だから、それを改めて行うと猊下様を否定することになり、罪障を積む』んじゃなかったでしたっけ?」
 秋彦:「坊の御住職様が朝の勤行を7時から行われるのに、信徒がグースカ寝てるわけにはいかないだろう?ああ?」
 鈴木:「信仰は根性とガッツなんですねぇ……」
 稲生:「あくまでこれは仏道修行の一環なんだから、慰安旅行じゃなく、合宿だと思った方がいい」
 鈴木:「……分かりました。報恩坊の朝勤行も形態は丑寅勤行と同じだから、そこでまた成就させたい願い事を願ってもいいんですよね?」
 秋彦:「それはOKだ」
 稲生:「よし!またエレーナのことを御祈念しよう!」
 鈴木:「それは本当に叶えてくれる対象なのかなぁ……」

[同日同時刻 天候:曇 富士宮富士急ホテル客室]

 エレーナ:(また寒気した!鈴木の野郎、魔女にも匹敵する強い呪い掛けてやがんな!後でぶっころ!)
コメント (1)
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