報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「正証寺の支部登山」 下山編

2019-10-07 19:46:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月28日13:45.天候:曇 静岡県富士宮市上条 大石寺・奉安堂上空]

 エレーナ:「おーおー、稲生氏達があの中にいるのが分かるぜ」

 エレーナとマリアはホウキに乗って、大石寺上空までやってきた。
 尚、ホウキ乗りではないマリアはエレーナの後ろに乗っている。

 マリア:「よくあれがそうだって分かったな?私にはどれも全部同じ建物にしか見えないが……」
 エレーナ:「そりゃあ、知ってるぜ。昔、あれを爆破テロしようとしたんだからなぁ」
 マリア:「あっ、聞いたことある……」

 エレーナが前の肉体を使用していた時だった。
 そしてその時はイリーナとポーリンが表立ってケンカしていた時でもある。
 師匠同士がケンカしているのに、弟子同士が仲良くできるわけがない。
 しかも当時のエレーナはまだ見習で、師匠ポーリンに心服していた時だったから、師匠の敵は自分の敵とばかりにマリアと入門が予定されていた稲生を攻撃対象としていた。
 もちろん今は師匠同士が表向き和解したこともあり、ケンカする理由が無くなった上、エレーナも個人的には稲生のことが気に入っているから、今は仲良くしているが……。
 まだケンカしていた頃、エレーナは稲生が御開扉に参加しているのを知って、奉安堂に爆弾テロをしようとしたことがある。
 ところが、それは意外な者に阻止された。
 妖狐の威吹である。
 妖狐の妖術で完全に姿と気配を消した威吹に、妖刀で背後から体を串刺しにされた。
 変わり身の魔法で何とか命が無くなる前に逃げおおせることができたが、前の体は使い物にならなくなってしまった。
 威吹は別に護法のつもりでエレーナを攻撃したわけではない。
 稲生とは盟約を結んだ仲であった為、エレーナがそれを攻撃しようとしていたのを知って阻止しただけだ。
 結果的に奉安堂も本門戒壇の大御本尊も守られたというわけである。

 エレーナ:「さーて、ここらでリベンジと行くかぁ!」

 エレーナ、中折れ帽の中からTNT爆弾を取り出す。

 マリア:「突き落とすぞ、コラ。てか、魔法使いが化学爆弾持って来るな!」
 エレーナ:「フム。私が攻撃しようとすると、必ず邪魔が入る。やはりこの中にある物は、ただの物ではない」
 マリア:「勇太が中にいるからだろうが!」

 ピカッ!

 エレーナ:「あ?」
 マリア:「!?」

 突然、上空から稲光が光った。
 その直後、2人の魔女に大粒の雨が当たる。

 エレーナ:「うわっ、ゲリラ過ぎる豪雨だぜ!」
 マリア:「エレーナ!オマエのせいだぞ!」

 ピカッ!

 マリア:「早く着陸しろ!落雷するぞ!」
 エレーナ:「ちょっと待て!今、着地点を探す!」

 2人の魔女は、ほうほうの体(てい)で奉安堂を離脱した。

[同日14:10.天候:晴 大石寺奉安堂内部→境内売店]

 執事:「支部総登山を始め、遠ごん各地より深信の当参、願い出により本門戒壇之大御本尊御開扉奉り、【中略】懇ろに申し上げました」

 大導師を務めるべきの御法主上人が今回は出て来られず、代わりに執事職の僧侶が代役を務めた。
 もちろん、大導師の代役が務まるのだから、相当な高僧であることに代わりは無い。

 進行係の僧侶:「退場に先駆けまして、注意事項を申し上げます。……」

 壇上の僧侶達が引き上げてから、信徒達の退場が始まる。

 鈴木:「あれ?今日は御法主上人猊下とは違う人でしたね?」
 稲生:「僕も初めてだ」
 藤谷春人:「あー、それはたまにあることだ。猊下様が例えば法要なんかあったりすると、そちらが優先になるから、欠席されこともたまにある。その為、大石寺にはそういった場合の代役を務められる執事様がいらっしゃるんだ」
 鈴木:「そうなんですか」
 稲生:「猊下様の代役をお勤めになられるんですから、大僧正くらいの地位なんでしょうね」
 春人:「御僧侶の階級までは俺は知らんが、もし日如上人様が御退座されるようなことがあった場合、次の猊下として登座される候補者の中にいるのは間違いない」

 奉安堂の外に出る信徒達。

 鈴木:「あれ?雨が降ったんだ?」
 稲生:「そういえば、外から雷の音とか聞こえたような気がする……」
 春人:「おい、見てみろ。それで空気が澄んだからなのか分からんが、富士山に向かって虹が掛かってるぜ」
 稲生:「本当だ。写真に撮ろう」
 鈴木:「スマホで虹、写りますかね?」
 稲生:「大丈夫じゃないの?」

 稲生と鈴木は富士山に向かって写真を撮った。

 稲生:「あとはマリアさん達と合流するだけだ」
 鈴木:「エレーナの話だと、大石寺まで飛んで来ると言ってましたが……」
 稲生:「さすがは魔法使い。でも、どこにいるんだろう?」
 鈴木:「売店のどこかにいるかもですね」
 春人:「それじゃ稲生君と鈴木君、気をつけて帰ってくれよ?」
 鈴木:「はい、班長。ありがとうございました」

 藤谷は報恩坊へと向かった。
 恐らく、修理工事の様子を見に行ったのだろう。

 鈴木:「俺はエレーナに電話してみます」
 稲生:「うん」

 鈴木は自分のスマホを取り出すと、それでエレーナに掛けた。

 鈴木:「あ、もしもし、エレーナか?御開扉終わった。今どこだ?……ああ、てことは“藤のや”さんだな。今行く」

 電話を切った。

 鈴木:「雨が降って来たので、喫茶店で休んでいるとのことです」
 稲生:「なるほど。それで“藤のや”さんか。あー、そうか。マリアさん達は雨に当たっちゃったのか……」
 鈴木:「キリスト教やイスラム教と違って、仏教は心が広いはずですが、さすがに悪魔信仰者は警戒されましたかね?」
 稲生:「いや、別に悪魔を信仰しているわけじゃないよ。契約しているだけで」

 その時、稲生は昔のエレーナの所業を思い出した。
 そして……。

 エレーナ:「おっ、稲生氏。御苦労様だぜ」
 鈴木:「もしかして、また奉安堂にテロしようとしなかった?」
 エレーナ:「さ、さあ。何のことかさっぱりだぜ」
 マリア:「ウソつけ、この野郎」
 鈴木:「うわ、また外曇ってきた!?」
 マリア:「『ウソつき魔女はとっとと出てけ、この野郎』というブッダの警告だな。早いとこ帰ろう」
 エレーナ:「じゃ、鈴木。代金よろしくだぜ」(^_-)

 エレーナのウインクに……。

 鈴木:「はい、喜んで〜」(´∀`*)

 デレながら財布を出す鈴木だった。

 マリア:「いいよ!私のは自分で出すから!」

 嫌いな男の施しは頑として断るマリアだった。
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“大魔道師の弟子” 「正証寺の支部登山」 当日編 2

2019-10-07 09:17:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月29日10:50.天候:晴 静岡県富士宮市 富士急静岡バス“宮バス”1系統]

〔次は花の湯、花の湯でございます。……〕

 マリア:「ん?ここか?」
 エレーナ:「フロント係の話だと、そうだな」

 マリアは降車ボタンを押す。
 2人はホテルを引き払うと、駅前のロータリーからバスに乗り込んだ。

〔「お待たせ致しました。花の湯でございます」〕

 バスは国道から外れた一本の生活道路の上を走っている。
 小型のコミュニティバスだけに、そういった狭い道を走ることを意識していることが分かる。

 マリア:「ていうかここ、前にも来たことがある。何回か」
 エレーナ:「おー、そうか。常連さんだったか。じゃあ、ここから先は案内よろしくだぜ」
 マリア:「常連ってほどでも無いけどな」

 バスを降りて、目の前の温泉施設に入る。

 マリア:「入る前にここでチケットを買うことになっている」
 エレーナ:「券売機の使い方分かんねーから、マリアンナ、試しに先に買ってみてくれだぜ。2人分」
 マリア:「おい。何さりげなく奢らせようとしてんだ」
 エレーナ:「さすがにバレたか」
 マリア:「勇太がこの前、真夜中に寺に行った時、私はここで待機してたんだ」
 エレーナ:「超敬虔な仏教徒だな。キリストなんか拝んでたら、ソッコーで破門だぜ」
 マリア:「仏教だけ許されているというのが何とも……」
 エレーナ:「魔女狩りの歴史が無いからというのが表向きだが、私は他に理由があるんじゃないかと思ってる」
 マリア:「それは言えてる」
 エレーナ:「うちの先生の話じゃ……あっと、これ以上は言えない」
 マリア:「何だ?」
 エレーナ:「大師匠様に関する秘密をバラす者には……まずは警告が来る」
 マリア:「んん?」
 エレーナ:「マリアンナは……生理の周期が狂ったことが無いか?」
 マリア:「それはあるさ。ってか、みんな何かの拍子にあるだろ?」
 エレーナ:「大師匠様の話をしていて、その秘密に触れようとした時に……警告として狂わされるとか……」
 マリア:「おい、まさか……」
 エレーナ:「いや、結構あるんだぜ、それ。マリアンナはあまり噂話は好きじゃないだろうから、そういう機会も少ないだろうけど」
 マリア:「師匠が話をしてくれる時に聞くだけだな」
 エレーナ:「その程度なら、責任は先生の方に行くから大丈夫だぜ。1番人数の多いアナスタシア組なんか、大師匠様の話をすること自体がタブーとなっているくらいだそうだぜ」
 マリア:「人数が多いと制約も多いんだな」

[同日12:00.天候:曇 富士宮市 大石寺境内・“藤のや”]

 稲生:「あとはお昼を食べて、御開扉か……。結構あっという間だね」
 鈴木:「顕正会の行事も、なかなか時間が経つのは早かったですね。意外とこういう信仰行事は時間が短く感じられるのかもしれません」

 多くの信徒が往来する売店を歩く。
 浅草の浅草寺には及ばないが、大石寺にも仲見世商店街は存在し、そこを歩いているわけである。

 鈴木:「うん。それにしても、肝心の昼飯は弁当出ないんですね」
 稲生:「うちの支部はそうなんだ。報恩坊さんは、むしろ昼だけ出る」
 鈴木:「その事情を知っている先輩も凄いですよ。で、どこでお昼にします?」
 稲生:「作者のブログによると、ここがいいらしい」

 稲生と鈴木は飲食店の1つ、“藤のや”という喫茶店に入った。

 女将:「いらっしゃい」
 稲生:「こんにちは」

 昼時ということもあって、店内は賑わっている。
 窓際にはテレビも点いていた。

 女将:「こちらへどうぞ」
 稲生:「すいません」

 稲生と鈴木は空いている4人席に誘導された。

 稲生:「喫茶店なだけに、軽食が多いな」
 鈴木:「朝からハンバーグ弁当食わされた身としては、むしろ昼は軽食でいいって気がします」
 稲生:「昨日の夕食が鮭弁当だっただけに、何か違和感あるね」
 鈴木:「朝と夜のメニュー、間違えたんじゃないスか?」
 稲生:「……かもしれないな。どちらもワサビ漬けが入っていた所はブレてないと思うけど」
 鈴木:「先輩は何にします?」
 稲生:「僕はホットドッグでいいや。それとアイスコーヒー」
 鈴木:「俺はカレーとアイスコーヒーにします」

 2人は食べたいもの、飲みたいものを注文した。
 アイスコーヒーだけ先に来る。

 鈴木:「班長は来られないんですね」
 稲生:「来れるわけないさ。今度は水道管壊したんだから」

 女子トイレの水が流れなくなった為、藤谷が『土建屋の俺に任せてくんな!』とばかりに修理作業に入ったのだが、何故か勢い良く水が噴き出す結果を招いてしまった。
 父親にして家業の建設業を営む藤谷秋彦登山部長からは、説教の上、地元の水道工事業者を手配するハメになり、恐らく昼は抜きであろうと思われる。

 稲生:「三門の改修工事、藤谷組も入札に参加したみたいけど、ものの見事に落ちたみたいだから」
 鈴木:「登山部長はともかく、うちの班長が現場監督にでもなったら、三門の形が変わっていると思います」
 稲生:「キリスト教会みたいな感じにならないだけマシかもしれないけどね」
 鈴木:「そうなったら最悪ですよ」
 稲生:「ところで、特盛さんと沢尻さんがいないみたいけど……」
 鈴木:「あいつらは別の店で食ってると思いますよ」
 稲生:「そうか」
 鈴木:「特盛は飯大盛りが注文できる店でないと行かないので、こういうお洒落なカフェには来ないと思います」
 稲生:「見た感じ、吉野家で特盛頼んで食べてそうだもんね」
 鈴木:「もしかして車でも出して、街の方に食べに行ったかもしれません。特に国道沿いなら、そういうロードサイドの店が一杯ありますから」
 稲生:「なるほどね」
 鈴木:「因みに、エレーナ達とはどこで合流します?」
 稲生:「そこなんだよね。さっき電話したら、温泉施設にいるみたいなんだ。バスの営業所の近くね」
 鈴木:「俺達、帰りは新幹線ですよね?」
 稲生:「大石寺の第二ターミナルから、バスに乗って新富士駅まで行こうと思ってるんだけど……。どうしようね?」
 鈴木:「俺がまた後でエレーナに電話してみますよ」
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