報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「正証寺の支部登山」 当日編 1

2019-10-06 19:09:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月29日07:00.天候:晴 静岡県富士宮市 富士宮富士急ホテル客室]

 ベッド横のアラームが鳴る。
 酔っ払っていても、ちゃんとアラームは仕掛けたようだ。

 エレーナ:「うう……」

 エレーナは手を伸ばしてアラームを止めた。

 エレーナ:「もう朝か。ううーん……」

 大きく伸びをしてベッドから出る。
 隣のベッドにはマリアが寝ていた。

 エレーナ:「おい、マリアンナ。起きろ。朝だぜ」
 マリア:「う……頭痛い……。飲み過ぎた……」
 エレーナ:「だらしのないヤツだぜ。とはいえ、私もちょっとキツいな。よし、特別にこれを譲るぜ」

 エレーナは自分の黒い中折れ帽の中から、薬の入った小袋を取り出した。

 マリア:「帽子の中から出すとは、まるで手品師みたいだな……」
 エレーナ:「さりげなくやることで、却ってウケるんだぜ。さあ、これを飲むんだぜ」
 マリア:「ああ、悪い……」

 マリアは起き上がると、薬を受け取った。
 そして、洗面台の水でエレーナと一緒に飲む。

 マリア:「うえ、苦い……」
 エレーナ:「つーんと来るな。でも正に、『良薬は口に苦し』だぜ。どうだ?一気にスッキリするだろ?」
 マリア:「確かに……」
 エレーナ:「二日酔いを治したら、飯食いに行くぞ」
 マリア:「飯?」
 エレーナ:「忘れたのか?このホテルのレストラン、朝飯が出るんだぜ?しかも食べ放題だぜ?行かない手は無いだろ」
 マリア:「朝の支度をしたら行くよ……」

 マリアはそう言うと、今まで着ていた寝巻を脱いで下着姿になった。

[同日08:00.富士宮市上条 大石寺・報恩坊1階大広間]

 報恩坊にて改めて朝の勤行に参加した正証寺の信徒達。
 この後は大広間にて朝食である。
 昨夜の夕食と同様、弁当が出た。
 御題目三唱して、それから食べ始める。

 稲生:「それにしても昨夜は参ったね」
 鈴木:「まさかボイラー爆発させるとは思わなかったもんなぁ……」
 藤谷春人:「全く。やはり、ケンショーレンジャーのしわざ……」
 藤谷秋彦:「オマエのしわざだ、オマエの!」
 鈴木:「しかしさっき特盛が言ってたんですが、境内に怪しい数人の男達がいたらしいですよ」
 春人:「それは本当か。特盛さんはこの坊に?」
 鈴木:「いや、あいつは別の宿坊の信徒なんで、そこに泊まったはずです。エリと一緒にね」
 稲生:「いいなぁ……」
 鈴木:「いやいや、いくら既婚者っつっても、寝る時は部屋は別々ですよ」
 春人:「それで、怪しい奴らってのはどんな格好してたんだ?」
 鈴木:「特撮戦隊ヒーローのコスプレをしていたそうです」
 春人:「ケンショーレンジャーじゃねーの!?」
 鈴木:「ケンショーレンジャーなんですかねぇ……?」
 春人:「いやいや。だって、大石寺の境内で特撮戦隊ヒーローの恰好だろ?」
 鈴木:「はい」
 春人:「ケンショーレンジャーだろ!?」
 稲生:「でも班長、ケンショーグリーンは理事の仕事で忙しいみたいですし、ブルーは新潟から出られなくなったんでしょう?」
 春人:「万景峰号が出禁になったもんで、帰れなくなったらしいな」
 稲生:「ピンクは臨終したし、セピアとブラックは行方不明、パープルはクビと。……ケンショーレンジャーじゃないんじゃないですかね?」
 春人:「むむ……」
 秋彦:「それに、あれから何年経つ?さすがに奴らも歳を取ったことだろう。会長は相変わらずのしがみつきっぷりだが、もしかしたら、そっちの方は世代交代が進んだかもしれんな」
 春人:「世代交代ねぇ……。もしかしたら、狂学部かな?」
 稲生:「狂学部なら有り得ますね」
 秋彦:「それが境内で目撃されたというならば、油断はできんな。いつでも応戦できるようにしておけ」
 春人:「OK、オヤジ!」(←いつの間にか電ノコと電ドリを用意している)
 稲生:「分かりました」(←いつの間にか魔法の杖を用意している)
 鈴木:「了解です!」(←いつの間にかバールのようなものを用意している)
 秋彦:「……キミ達は教学で対抗するつもりは無いのかね?」

[同日09:00.天候:晴 富士宮富士急ホテル客室]

 エレーナ:「あー、食った食った。ごちそーさん」
 マリア:「本当にエレーナ、よく食べるな……。太っても知らないよ」
 エレーナ:「この体はどうも太らない体質みたいなんだぜ。逆に油断すると、すぐにガリガリになるってことだけどな」
 マリア:「寄生虫に栄養横取りされてるんじゃないの?」
 エレーナ:「人聞きの悪いこと言うんじゃねーぜ。……もっとも、キャサリン先輩の薬にそういうがあるけどな」
 マリア:「やっぱり」

 エレーナの先輩で、ポーリン組でも出世したことで独立したキャサリン。
 今では弟子を取れる身分だが、今のところ弟子は登場していない。
 魔法料理の研究家で、ワンスターホテル1Fのテナントエリアにレストランを構えている。
 独立して間もない頃は魔女の老婆の姿をして、試作した魔法飴を都内の中高生達に配るようなことをしていて、都市伝説化されたこともある。
 その中には失敗作も含まれており、それであの世に送ってしまった少年少女もいる。
 このやり方は他門の魔女でも真似されており、今もしまたそのような魔女が現れたとしても、それはキャサリンではない。

 エレーナ:「私自身は先輩の薬は口にしていないから大丈夫だ」
 マリア:「でも料理は御馳走になってるんでしょ?賄いとして」
 エレーナ:「う……まあ、それはそうだが……」
 マリア:「何気に口にしてるんじゃない?」
 エレーナ:「ま、まあ、こうして無事にいるんだから、多分これからも大丈夫だぜ。多分」
 マリア:「多分はやめろよ……」
 エレーナ:「それより今日はいい天気だから、尚更富士山がよく見えるぜ!」
 マリア:「で、今日はどうするんだ?勇太達は午後まで大石寺にいるみたいだけど……」
 エレーナ:「温泉でマターリだな」
 マリア:「この近くにあるの?」
 エレーナ:「それもフロントで聞くんだぜ。きっと観光客から似たような質問、ほぼ毎日されてるだろうから、答え慣れているはずだぜ」
 マリア:「さすがは同業者」
コメント (1)
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