報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「一路、東京へ」

2019-10-08 21:09:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月29日15:40.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新富士駅前、新富士駅前です。お降りの際、車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 稲生達を乗せた下山バスが新富士駅の富士山口に到着する。
 マリアとエレーナを除けば、全員が日蓮正宗の信徒であろう。
 バス自体は地元の路線バス会社が運行している臨時便である為、別に信徒でなくても乗車することはできる。

 稲生:「着いたー」

 前扉と中扉両方のドアが開いて、乗客達がぞろぞろと降り始めた。
 既に運賃は支払っている為、降りる時はフリーである。

 エレーナ:「新幹線に乗るのも久しぶりだぜ」
 鈴木:「今度は“のぞみ”や“はやぶさ”に乗せてあげるよ」
 マリア:「ルーシーなら喜んだかもな……」

 駅構内に入る。

 稲生:「キップは1人ずつ持とう」
 鈴木:「指定席ですか?」
 稲生:「一応ね。12号車」
 マリア:「1番前か後ろに乗りたがる勇太にしては珍しい……」
 稲生:「16号車がポツンと指定席ですけど、そこが団体に押さえられていたんですよ」

 元々16号車や13号車から15号車の自由席は、団体客の予約があると埋めてしまう車両だ。
 だからそれらが指定席に変更されていて、しかも全席満席になっていたりするとそのパターンだ。

 マリア:「なるほど」

 改札口に入って、ホームに上がった。
 まだ列車はいないはずだが、早くも通過列車が轟音を立てて本線を通過していった。
 新富士駅の前後は線形が良いので、通過列車は最高速度の285キロで通過して行く。

 エレーナ:「向こうで外人共がはしゃいでいるぜ。観光客丸出しだな」
 稲生:「いや、キミも外国人だからね?」
 マリア:「ルーシーもはしゃいでいたなぁ……」
 稲生:「“のぞみ”より速い“はやぶさ”でしたっけ。今度、“はやぶさ”に乗せてあげたいな」
 マリア:「きっと喜ぶと思うよ」
 エレーナ:「おおっ?稲生氏、ついにマリアンナに飽きてルーシーに?これが本当の乗り換えだぜ」
 鈴木:「このリア充!功徳が止まらなーい!」
 マリア:「オマエらコロす!」
 稲生:「ちちち、違いますよ、マリアさん!もちろん、マリアさんも一緒で!」
 エレーナ:「お?両手に花じゃねーか。私も参加すればハーレムだぜ」
 稲生:「は、ハーレム!?」
 マリア:「エレーナ、オマエ少し黙ってろ」
 エレーナ:「いいじゃんか。どうせ稲生氏、“色欲の悪魔”と契約するんだろ?上手いこと行ったら、ダンテ一門の魔女達、食い漁ることができるぜ?」
 マリア:「エレーナ、マジで黙れ」
 鈴木:「いいなぁ。俺も入門したいなぁ……」
 エレーナ:「何度も言うように、鈴木は素質からっきしゼロだから諦めるんだぜ。ま、『協力者』としてなら、今後も付き合ってやるから安心してくれだぜ」
 鈴木:「ちぇっ……」

 そんなバカ話に花を咲かせていると……。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく1番線に、“こだま”660号、東京行きが到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に止まります。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から7号車と、13号車、14号車、15号車です。この電車は、全車両禁煙です。お煙草を吸われるお客様は、喫煙ルームをご利用ください。……〕

 接近放送が流れて来た。

 稲生:「あー、来た来た」

 名古屋方向からN700系が接近してきた。
 それまで通過した列車と同じ形式である。
 ポイントを渡って副線の上にあるホームに入ってきた。

〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車ありがとうございました。……〕

 元々空いている“こだま”号で、尚且つ名古屋始発ということもあって、尚更空いている。
 先頭車となる16号車には学生の集団が乗っていて、その車両だけ『修学旅行』という表示がしてあった。
 因みにそこの所だけ英訳が無い。

 エレーナ:「マリアンナと似た服着てる奴らが乗ってたな」
 マリア:「これは勇太の卒業したハイスクールのユニフォームがモチーフなんだ。だからしょうがない」

 そう言いながら12号車に乗り込む。
 車両の真ん中辺りの2人席が前後して確保されていた。

 稲生:「ここだな。これはシートピッチが広いから、向かい合わせにするかい?」
 エレーナ:「それもオツだな」

 稲生はペタルを踏んで、座席を向かい合わせにした。
 そんなことしているうちに、後続の列車が追い抜いていく。
 その度に風圧で軽く車両が揺れた。

 エレーナ:「富士山はどっちだ?」
 稲生:「あっち」
 エレーナ:「向こうか」

 稲生は大石寺境内の売店で買った土産物を荷棚の上に置いた。

 稲生:「イリーナ先生へのお土産、これでいいかな」
 マリア:「もう一品欲しい所だな」
 エレーナ:「だったら、酒でも買って行ったら?」
 マリア:「やっぱそうなるよな。ポーリン先生も酒好きなの?」
 エレーナ:「それもあるんだけど、ここ最近は日本の酒を薬の材料に使われることが多いから……」
 マリア:「なるほど」
 稲生:「どういう用法の薬作りに使うのか、聞きたいような聞きたくないような……」

[同日16:09.天候:晴 JR東海道新幹線660A列車12号車内]

 発車の時刻が迫り、ホームに発車ベルが鳴り響く。

〔1番線、“こだま”660号、東京行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕

 発車ベルの後で甲高い客終合図が鳴ると、それでドアが閉まる。
 その後で列車が走り出した。

 稲生:「1番いいのはイオンで買うことだな。あそこなら何でも揃ってる」
 マリア:「行くヒマある?」
 稲生:「どうだろう……。多分うちの両親のことだから、夕食は外で食べるとか言い出すよ」
 エレーナ:「その時に途中寄って買えばいいだろ」
 稲生:「それしか無いか……」
 鈴木:「先輩、今のうちに親に連絡して、どこで夕食にするか聞くんですよ。その後で、お土産を買いたいという相談でもすれば……」
 稲生:「それもそうだな」

 稲生はスマホを取り出して、宗一郎にメールを送った。
コメント (1)
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