報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「女魔王からの贈り物」

2019-10-14 21:03:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間9月30日11:00.天候:晴 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ 魔王城新館]

 魔界共和党参事、坂本の案内でイリーナ組の3人は控え室に通された。
 部屋そのものはイリーナ組貸切であったのだが、隣の部屋も貸し切られていた。
 その入口には黒スーツの上からローブを羽織った男性魔道士が立哨しており、アナスタシア組も呼ばれているのが分かった。
 ダンテ一門の男性魔道士は、イリーナ組とアナスタシア組にしか所属していないからである。
 それだけダンテ一門は、男性が少ない。
 アナスタシア組の男性見習弟子は、主にアナスタシアの護衛や専用車の運転などを務めることが多い。
 部屋の前に立っているのも、警備員代わりであろう。

 稲生:「アナスタシア組も呼ばれていたんですね」
 イリーナ:「やっぱりねぇ。稲生君だけ呼ばれるというのもおかしいとは思ってたんだ」

 3人して1人用のソファに丸いテーブルを囲むようにして座る。
 受付係の女性兵士と同様、こちらのメイドも赤銅色の肌をしていた。
 顔立ちが日本人っぽいところを見ると、こちらは東洋の鬼かもしれない。
 但し、蓬莱山鬼之助みたいな地獄界の獄卒とは違うと思われる。
 日本人の稲生が表彰されるので、日本の鬼を配置したのかもしれない。
 そのメイドが恭しく、お茶出しをしてくる。

 マリア:「勇太以外にも献血者が?」
 イリーナ:「そうとは限らないよ。王家から表彰されるのには、色々な理由があるさ。それは日本の皇室もそうでしょう?」
 稲生:「まあ、そうですね」
 マリア:「あー、まあ、イギリスもそうか……」

 そこへ部屋がノックされる。

 イリーナ:「はぁい、どうぞー」

 ドアを開けて中に入ってきたのは……。

 横田:「横田です。先般の暑気払いにおける大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 マリア:「げ、横田……!」

 マリアはあからさまに嫌な顔をした。

 イリーナ:「なぁに、横田理事?」
 横田:「お時間になりましたので、お迎えに上がりました。どうぞ、こちらへ。クフフフフ……」
 イリーナ:「分かったわ。ほら、行きましょう」
 稲生:「わ、分かりました」
 マリア:「勇太、先に行って」
 稲生:「ええ」

 マリアが1番最後に部屋を出た。

 横田:「あ、そうそう。稲生さん」
 稲生:「な、何だ?」
 横田:「ケンショーレンジャーねぇ、もう解散しましたよ。ブルーは相変わらずの火病ですし、ピンクは臨終、ホワイトは自己中、レッドは孤立、イエロー先生は【お察しください】。セピアやブラック、そしてパープルに至っては既にケンショーレンジャーを脱退していますので」
 稲生:「そうだろうな。しかし、大石寺にあなた達らしき者を見たという証言があるんだけど、何か知らないかい?」
 横田:「さあ……?知っているような、知らないような……」

 横田はトボけた。

 イリーナ:「なに遠回しにワイロを求めているのよ。ダークエルフの生パンティ1枚くらいだったら、後で融通させるわよ」
 横田:「あ、今思い出しました。何でも、新生ケンショーレンジャーを結成する動きがあるようです」
 稲生:「何だって!?」
 横田:「もちろん、イエロー先生のあずかり知らぬ所でしょう。誰が中心となってそのような動きになっているのかは調査中ですが、私個人の見解としてはI東やT田辺りが怪しいように思えます」
 稲生:「それって、顕正会の狂学部じゃん!?」
 横田:「これ以上の情報としては、更にもう1枚頂きたいところです」
 イリーナ:「それは難しいわね。あいにくと着替えを持ってきていないのよ」
 マリア:「私は絶対にお断わりだ!!」
 横田:「それでは、話はこれで終了ということで……」
 イリーナ:「私の占いでは、近日中にダークエルフとエルフが魔の森と北の森との境界線を巡って諍いを起こすわ。それも先にケンカを売るのはダークエルフの方。今のうちに対応しておいた方がいいんじゃない?先陣を切るのは、ダークエルフのとある女の子だから。人間換算年齢にすると17〜18歳くらいの」
 横田:「情報提供、感謝します。エルフ族は黒い方も白い方も美男美女揃いですからねぇ……クフフフフフ……」

 アルカディア王国北部にある広大な森のこと。
 ダークエルフが自治権を持つ魔の森は東京都板橋区全域と北区の半分くらいの広さがあり、エルフ族が自治権を持つ北の森は北区の半分と足立区全域の広さである。
 赤羽の部分を境にするのか、王子の部分を境にするのかで争っている。
 王国が提案している東十条ではダメらしい。
 こんな表現が通るのは、アルカディア王国の国土が東京都と形がうり二つだからである。

 イリーナ組のアテンドを横田が行い、アナスタシア組のアテンドは別の理事が行った。
 そして謁見の間に向かうと、玉座にはルーシー・ブラッドプール1世が座っており、その前には安倍春明首相が立ち、ルーシーの横には宮廷魔導師としての肩書きを持つポーリンが立っていた。

 稲生:「うわっ、何か一気に緊張してきた……」
 イリーナ:「立憲君主制立ち上げの為だけに担ぎ上げられた女王様だったんだけど、それでも段々風格は出て来たわねぇ……。さすが元を辿ればルーマニアの貴族だわ」
 稲生:「そうなんですか」

 ルーマニアと言えば、かのドラキュラ伝説で有名だ。
 もちろんそれはただの伝説であったが、やはりその煙が立つ為の火は存在していたわけである。
 稲生はスーツにネクタイを着用していた。
 マリアも今は緑色のブレザーを着用している(一応持って来てはいた)。
 アナスタシア組の面々も、黒スーツや黒いブレザーを着用していた。
 ローブを着用している者とそうでない者がいるが、これはダンテ一門の魔道士として表彰されるのか否かによるものである。
 稲生の場合はルーシーの求めに応じて血液を提供したことによる褒賞ということで、魔道士として何か貢献したというわけではないので、ローブは着用していない。
 中世のヴァンパイア達も、血を提供してくれた人間に何か与えてくれれば火あぶりにならずに済んだものを……。
 え?永遠の命?特別な魔力?だから極端だっつの。

 稲生:「ふーん……」

 ルーシーから下賜された物は、対象者によってバラバラだった。
 稲生はつい勲章がもらえるものと思っていた。
 もちろん、アナスタシア組の中には勲章を下賜された者もいた。
 しかし、稲生が下賜されたのは金杯であった。
 杯の大きさはそこそこだ。

 安倍:「稲生さん、その杯の大きさには意味があるんですよ」

 と、安倍が近くにやってきて説明する。

 稲生:「そうなんですか?」

 因みに他にも金杯を渡された者がいたが、稲生とは大きさが違った。
 尚、銀製の物をもらった者はいない。
 当たり前だ。
 吸血鬼など、西洋の妖怪に対して銀は御法度だ。
 因みにそれは東洋の妖怪にも通じるらしく、妖狐の威吹でさえ、銀製の武器で攻撃された時は、傷の治りが明らかに遅かった。

 安倍:「その杯の容量は400mlです。この数字が何を意味しているか分かりますか?」
 稲生:「! 献血ですね。400ml献血」
 安倍:「そう。毎回、登城する度にルーシーに400ml献血をして頂いたことに関する褒賞ですから、あなたには勲章ではなく、金杯です。そして、その杯の大きさは400mlです」
 稲生:「なるほど。そういうことでしたか」
 安倍:「因みに純金製ですから」
 稲生:「でしょうねぇ……」

 アナスタシア組を見ると、白金や銅でできた杯や勲章をもらった者もいた。
 やはり、銀は無いようだ。
コメント
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