[10月7日15:30.天候:雨 東京都千代田区丸の内 JR東京駅八重洲中央口→大丸東京]
稲生達を乗せたタクシーが都心に向かうと、途中で雨が降って来た。
大原タクシーの白塗りゼロ・クラウンが、ワイパーを規則正しく動かす。
稲生:「本当に雨が降って来ましたねぇ……」
イリーナ:「お天気占いは基本中の基本」
マリア:「……ですね」
そして、タクシーは東京駅八重洲中央口のタクシー降り場に到着した。
稲生:「そうか。グランルーフがあるから、雨に濡れないんだ」
大原:「そういうこと。だからこの場合、日本橋口はハズレね。それでは料金の方が……」
するとイリーナがブラックカードを取り出した。
イリーナ:「カード使える?」
大原:「はい。大丈夫です」
イリーナ:「チップもプラスしておくわね」
大原:「チップですか?ありがとうござ……」
この後、大原は嬉し過ぎる悲鳴を上げることになった。
イリーナ:「うちのコ達を助ける協力をしてくれた御礼がまだだったからね。私からしておいたよ。そこはナスっちもポーリン姉さんもスルーしてたから」
最後に降りたイリーナが目を細めたままで言った。
マリア:「アナスタシア組のメンバーは助かりませんでしたし、エレーナは攻撃側で、リリィはまだ正式入門してませんでしたからね。ルーシーはまだイギリスにいたし……」
要するに魔女狩りの被害に遭ったのは、マリアが一応顔と名前だけは知っている程度の仲の者だけだったということだ。
稲生が魔女狩り軍団を追い掛けたのだって、その軍団員が魔女狩りしている所を目撃した稲生に対し、口止め料を出してきて、それを受け取ってしまったからだった。
それを目撃した大原班長が、『邪教徒から御供養をもらうなんて謗法だ!』と指摘したことから、慌てた稲生がその大原タクシーに乗って追い掛けたというのが真相だった。
つまりは元々稲生は同門とはいえ、顔も名前も知らぬ魔女を助けるつもりで追い掛けたわけではないということだ。
あの時はダンテ門流見習魔道士ではなく、日蓮正宗信徒として行動していた為である。
稲生:「というか、アナスタシア先生は加害者側では?」
マリア:「まあね!」
その被害者がマリアだったりする。
イリーナ:「まあまあ。ナスっちはダンテ先生からしっかり怒られたし、結果的に弟子も数人失う罰を受けたわ。そこは稲生君の言う通り、ホトケ様の賞罰かしら?」
大原班長の今頃の功徳は、稲生の謗法行為を清算する手助けをしたことに対してか。
タクシーの運転手は仕事とはいえ謗法行為を手助けしやすく、しかしその清算もしやすい職業でもあるようだ。
そこはバスや電車の運転士も同じか。
稲生:「それで先生、ここからどうされますか?まだ新幹線に乗る時間は少し先ですが……」
イリーナ:「そこのデパートで買い物があるの。そこへ寄らせてくれる?」
稲生:「分かりました。ちょっと荷物だけ先に、コインロッカーに入れて来ます」
イリーナ:「いいよ。マリアも荷物は一緒に入れてもらいなさい」
マリア:「はい」
大丸東京店入口近くのコインロッカーに荷物を入れる稲生とマリア。
今はSuicaやPasmoで支払いができる上、解錠もそれでできる。
緑色のランプが赤に変わったら、ロックされた証。
イリーナ:「勇太君はアルカディア政府から表彰されたけど、マリアにも内助の功があるからね。そこは私が評価してあげるよ」
マリア:「ありがとうございます」
イリーナ:「一緒にいらっしゃい。……勇太君も来る?」
勇太:「え?ええ、よろしければ……」
一瞬嫌な予感がした稲生だったが、イリーナはマリアに新しい服を買ってあげただけだった。
イリーナ:「いつもそのブレザーだけだとアレだからね。一応、私服も持っておきなさい」
稲生:「意外と服装って皆してバラバラですよね」
基本的に魔道士として動く場合はスーツであることが多い稲生。
しかしそれは稲生だけではなく、例えばアナスタシア組の男性魔道士も同じだ。
服装が統一されているのはアナスタシア組くらいのものである。
エレーナもまた黒いベストにスカート、白いブラウスに青いリボンタイを着けているが、これはホテルで働く為の服装。
リリアンヌに至っては人間界ですることは無い為か、Tシャツにショートパンツというラフな格好である。
ルーシーも旅先で動きやすい服装をする為か、ラフな服装であった。
そして1期生達はドレスコートなど、如何にも魔法使いの師匠的な服装をしている。
イリーナ:「特に決められているわけじゃないしね。マリアの今の服装だって、勇太君の為に着ているようなものだから」
稲生:「僕の為に本っ当すいません!」
マリア:「私が好きで着ているだけだから。この服装をするとハイスクール時代を思い出して、魔女の本分を忘れずに済むからね。たまたま勇太の学校の制服を見て、それをモチーフにしただけ」
イリーナ:「私としては、そろそろ卒業してもらいたいところだけど……」
稲生:「えっ?」
イリーナ:「ま、そこは時間が解決してくれるかしら」
因みにまだ時間が余っていたせいか、イリーナはマリアを連れてトリンプの店舗に行った。
当然ながら稲生は、外で待ち惚け。
先に出て来たマリアが、
マリア:「勇太、師匠に文句言っていいからね?」
と、自分も新しい下着を買ってもらって何だがという顔で言って来た。
稲生:「どうかしたんですか?」
マリア:「服はともかく、下着まで師匠が買いたがった理由が分かった」
稲生:「何ですか?」
マリア:「今度、大師匠様が来日されるらしい。それで察してもらいたいんだけど……」
稲生:「あー……。つまり、『大師匠様を囲む会』が間違い無く開催されるでしょう、と。僕達は弟子として会場運営でもしていればいいんでしょうけど、二次会が別の意味で盛り上がるというわけですね」
マリア:「そう、別の意味で。それで新しい下着を買ったというわけ。私にもついでに買ってくれたのは、文句言わせない為だな」
稲生:「でしょうねぇ……」
今のところイリーナに直接文句言える下の者はマリアだけである。
イリーナ:「さぁさ、お待たせ。そろそろ新幹線の時間かい?乗り場へ行こうかね」
稲生:「わ、分かりました」
マリア:「あとは勇太がアテンドしてくれますから」
マリアは師匠にそれだけ言うと、稲生の手を握って一緒に歩いた。
稲生達を乗せたタクシーが都心に向かうと、途中で雨が降って来た。
大原タクシーの白塗りゼロ・クラウンが、ワイパーを規則正しく動かす。
稲生:「本当に雨が降って来ましたねぇ……」
イリーナ:「お天気占いは基本中の基本」
マリア:「……ですね」
そして、タクシーは東京駅八重洲中央口のタクシー降り場に到着した。
稲生:「そうか。グランルーフがあるから、雨に濡れないんだ」
大原:「そういうこと。だからこの場合、日本橋口はハズレね。それでは料金の方が……」
するとイリーナがブラックカードを取り出した。
イリーナ:「カード使える?」
大原:「はい。大丈夫です」
イリーナ:「チップもプラスしておくわね」
大原:「チップですか?ありがとうござ……」
この後、大原は嬉し過ぎる悲鳴を上げることになった。
イリーナ:「うちのコ達を助ける協力をしてくれた御礼がまだだったからね。私からしておいたよ。そこはナスっちもポーリン姉さんもスルーしてたから」
最後に降りたイリーナが目を細めたままで言った。
マリア:「アナスタシア組のメンバーは助かりませんでしたし、エレーナは攻撃側で、リリィはまだ正式入門してませんでしたからね。ルーシーはまだイギリスにいたし……」
要するに魔女狩りの被害に遭ったのは、マリアが一応顔と名前だけは知っている程度の仲の者だけだったということだ。
稲生が魔女狩り軍団を追い掛けたのだって、その軍団員が魔女狩りしている所を目撃した稲生に対し、口止め料を出してきて、それを受け取ってしまったからだった。
それを目撃した大原班長が、『邪教徒から御供養をもらうなんて謗法だ!』と指摘したことから、慌てた稲生がその大原タクシーに乗って追い掛けたというのが真相だった。
つまりは元々稲生は同門とはいえ、顔も名前も知らぬ魔女を助けるつもりで追い掛けたわけではないということだ。
あの時はダンテ門流見習魔道士ではなく、日蓮正宗信徒として行動していた為である。
稲生:「というか、アナスタシア先生は加害者側では?」
マリア:「まあね!」
その被害者がマリアだったりする。
イリーナ:「まあまあ。ナスっちはダンテ先生からしっかり怒られたし、結果的に弟子も数人失う罰を受けたわ。そこは稲生君の言う通り、ホトケ様の賞罰かしら?」
大原班長の今頃の功徳は、稲生の謗法行為を清算する手助けをしたことに対してか。
タクシーの運転手は仕事とはいえ謗法行為を手助けしやすく、しかしその清算もしやすい職業でもあるようだ。
そこはバスや電車の運転士も同じか。
稲生:「それで先生、ここからどうされますか?まだ新幹線に乗る時間は少し先ですが……」
イリーナ:「そこのデパートで買い物があるの。そこへ寄らせてくれる?」
稲生:「分かりました。ちょっと荷物だけ先に、コインロッカーに入れて来ます」
イリーナ:「いいよ。マリアも荷物は一緒に入れてもらいなさい」
マリア:「はい」
大丸東京店入口近くのコインロッカーに荷物を入れる稲生とマリア。
今はSuicaやPasmoで支払いができる上、解錠もそれでできる。
緑色のランプが赤に変わったら、ロックされた証。
イリーナ:「勇太君はアルカディア政府から表彰されたけど、マリアにも内助の功があるからね。そこは私が評価してあげるよ」
マリア:「ありがとうございます」
イリーナ:「一緒にいらっしゃい。……勇太君も来る?」
勇太:「え?ええ、よろしければ……」
一瞬嫌な予感がした稲生だったが、イリーナはマリアに新しい服を買ってあげただけだった。
イリーナ:「いつもそのブレザーだけだとアレだからね。一応、私服も持っておきなさい」
稲生:「意外と服装って皆してバラバラですよね」
基本的に魔道士として動く場合はスーツであることが多い稲生。
しかしそれは稲生だけではなく、例えばアナスタシア組の男性魔道士も同じだ。
服装が統一されているのはアナスタシア組くらいのものである。
エレーナもまた黒いベストにスカート、白いブラウスに青いリボンタイを着けているが、これはホテルで働く為の服装。
リリアンヌに至っては人間界ですることは無い為か、Tシャツにショートパンツというラフな格好である。
ルーシーも旅先で動きやすい服装をする為か、ラフな服装であった。
そして1期生達はドレスコートなど、如何にも魔法使いの師匠的な服装をしている。
イリーナ:「特に決められているわけじゃないしね。マリアの今の服装だって、勇太君の為に着ているようなものだから」
稲生:「僕の為に本っ当すいません!」
マリア:「私が好きで着ているだけだから。この服装をするとハイスクール時代を思い出して、魔女の本分を忘れずに済むからね。たまたま勇太の学校の制服を見て、それをモチーフにしただけ」
イリーナ:「私としては、そろそろ卒業してもらいたいところだけど……」
稲生:「えっ?」
イリーナ:「ま、そこは時間が解決してくれるかしら」
因みにまだ時間が余っていたせいか、イリーナはマリアを連れてトリンプの店舗に行った。
当然ながら稲生は、外で待ち惚け。
先に出て来たマリアが、
マリア:「勇太、師匠に文句言っていいからね?」
と、自分も新しい下着を買ってもらって何だがという顔で言って来た。
稲生:「どうかしたんですか?」
マリア:「服はともかく、下着まで師匠が買いたがった理由が分かった」
稲生:「何ですか?」
マリア:「今度、大師匠様が来日されるらしい。それで察してもらいたいんだけど……」
稲生:「あー……。つまり、『大師匠様を囲む会』が間違い無く開催されるでしょう、と。僕達は弟子として会場運営でもしていればいいんでしょうけど、二次会が別の意味で盛り上がるというわけですね」
マリア:「そう、別の意味で。それで新しい下着を買ったというわけ。私にもついでに買ってくれたのは、文句言わせない為だな」
稲生:「でしょうねぇ……」
今のところイリーナに直接文句言える下の者はマリアだけである。
イリーナ:「さぁさ、お待たせ。そろそろ新幹線の時間かい?乗り場へ行こうかね」
稲生:「わ、分かりました」
マリア:「あとは勇太がアテンドしてくれますから」
マリアは師匠にそれだけ言うと、稲生の手を握って一緒に歩いた。