報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京へ」

2018-07-25 19:24:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月11日10:00.天候:晴 宮城県仙台市内某所→JR仙台駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 郊外でのBOW調査も終わり、検査入院を経て、ようやく帰京できることになった。
 今、私と高橋は仙台駅に向かうタクシーに乗っている。
 ここまではいいのだが、不思議なのはそのリアシートにはちょこんとリサ・トレヴァーも乗っていること。
 私はついリサとは病院でお別れするものと思っていた。
 だが退院手続きを取っている時、BSAA職員から頼まれたのだ。
 リサを東京まで連れて行ってほしいと。
 何でも日本地区本部に連れて行きたいそうだが、こんな時に中国で比較的大きなバイオハザードが発生し、輸送用ヘリもそちらで優先的に使うことになった為、陸送するしか無くなったのだという。
 それなら装甲車で運べば良いではないかということだが、それもまた中国で使うことになってしまった。
 かといって自衛隊に頼むと高くつく。
 しかもよく見ると、リサは私に懐いているので、私が輸送すれば安全だろうという判断をしたというのだ。
 さすがに夜中のあれを見た以上、1つ返事で受けにくい状態だったのだが……。

 高橋:「先生。いくら報酬が高いからって、こんな危険な仕事引き受けないでくださいよ」
 愛原:「ま、まあいいじゃないか。高野君の話じゃ、まだ探偵の仕事の依頼が来ていないというんだし。当面の生活費は確保しておく必要がある」
 高橋:「どうなっても知りませんよ」
 愛原:「降りるなら降りていいぞ?」
 高橋:「いえ。俺は先生と地獄の果てまでも付いて行く決心はしてますんで」
 愛原:「じゃ、俺の決定に賛成ってことでいいな」
 高橋:「しょうがないですね」

 助手席後ろのシートに座っているリサは、物珍しそうに窓の外を見ていた。

 リサ:「これが車……」

 よっぽど珍しいのか。

 愛原:「そんなに珍しいかい?」
 リサ:「いつも移動はヘリコプターとか、トラックの荷台だったから……」

 荷物扱いだな。
 元は普通の少女だっただろうに、BSAAも微妙かな。
 いや、こうして私に託しているという所は英断かもな。
 そこは旧アンブレラと違うかもしれない。

 愛原:「そうか。じゃあ、今日は東京まで珍しい乗り物で行くことになるよ」
 リサ:「ほんと!?」
 愛原:「ほんとほんと」

 私はリサの頭を撫でて答えた。
 手触りといい、髪質といい、この辺は人間の少女と変わらないのになぁ……。
 こうして私達は、無事に仙台駅のタクシー降り場に到着した。

 愛原:「タクシーチケットで払います」
 運転手:「どうぞ」

 タクシーチケットで払うの久しぶりだなぁ……。
 これはBSAAの職員からもらったものだ。
 リサの輸送を手伝う代わりに、その報酬と交通費は全て負担してくれるそうだ。
 私は運転手から渡されたボールペンで料金を記入した。

 運転手:「ありがとうございました」
 愛原:「どうも」

 私達はタクシーを降りた。

 高橋:「プリウスのリアシートに3人は狭いですよ」
 愛原:「リサがまだ女の子で良かったな」
 高橋:「そういう問題じゃ……」
 愛原:「乗り換え先はタクシーのリアシートよりも広いぞ」
 高橋:「BSAAの奴ら、グリーン車くらい用意してくれなかったんですか」
 愛原:「別にいいだろ。往路みたいな高速バスよりは」
 高橋:「すいません!」

 私達は駅構内に入った。

 リサ:「おお〜!人がいっぱい!」
 愛原:「東北一のターミナル駅だからな。まだ夏休みじゃないから、こんなもんだ」
 リサ:「これだけ人が多いと、一思いに薙ぎ払いたくなっちゃうね〜!」
 愛原:「するなよ!?するなよ!?絶対するなよ!?」
 高橋:「先生、いっそのこと、こいつマジで殺……」
 愛原:「さて、早く乗り場に行こう!」

 私達は駅構内に入ると、上の階へ昇るエスカレーターに乗った。

 高橋:「先生。昔はどこぞの空港で、バイオテロが発生したというじゃありませんか。ここも油断できませんよ?」
 愛原:「未だに地下鉄以外の鉄道駅でそんな話は聞かないから大丈夫だろ。いざとなったら……リサに任せてみよう」
 リサ:「ゾンビくらい一網打尽だよ!」
 高橋:「アホか!……先生、俺が言いたいのは……」
 愛原:「分かってる。俺は常に真剣に考えてるぞ」
 高橋:「さすが先生です」

 2階は在来線乗り場。
 新幹線改札口は3階にある。
 私達は更にエスカレーターで3階に上がった。

 愛原:「よく普通車指定席3人横並びの席を確保できたものだ」
 高橋:「もしかしたら奴ら、先生が必ず引き受けると予想していたのかもしれませんね?」
 愛原:「はは、そうかもな」
 高橋:「ナメやがって……!」
 愛原:「ま、旧アンブレラの織り込みに巻き込まれるよりはマシなんじゃない?BSAAは正義の組織だからな。悪の組織に恩を売ったところで、後でロクでもないことになるのがベタな法則だが、正義の組織なら協力しておいても損は無いと思うんだ」
 高橋:「それは俺も同意見です」

 3階に着くと新幹線改札口がある。
 もちろん今は自動改札機がズラッと並んでいる。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう。リサは窓側がいいな?」
 リサ:「うん!」
 高橋:「『うん』じゃなくて、『はい』だろ!」
 リサ:「はい!お兄ちゃん!」
 高橋:「う、うむ。素直でよろしい」

 おやおや、高橋君もリサが妹みたいに思えて来たかなぁ?

 愛原:「自動改札機を通り方は知ってるか?」
 リサ:「んーとね……クランクを拾って来て開けるー」
 愛原:「それは秘密の研究所とか、そこに至る道に仕掛けられたゲートを開ける時にやろうね」

 “バイオハザード”と言えばクランクだ。
 謎解きのアイテムとして欠かせないものだ。
 実写映画が何だか物足りないのは、こういうクランクとかアイテムボックスとかが出てこないからだと私は思う。

 愛原:「こうやって、ここにキップを入れる。するとゲートが開いて、向こうの穴からキップが出て来るから、こうやって通ってキップを取る」
 リサ:「おお〜」

 恐らく普通の人間の少女だった頃は、電車に乗ったことくらいあるだろうに、BOWとして改造されてからはそういう機会も無くなった上、人間だった頃の記憶も消されて、新鮮味のあるものとなっているのだろう。

 高橋:「先生、保安検査場はこの先ですか?」
 愛原:「キミは真人間だった頃の記憶はちゃんとあるよね?」

 高橋が真顔で聞いているのは、彼が比較的表情に乏しい者であり、今の質問は冗談で聞いているものと信じたい。
 私達はエスカレーターで更にホームへと向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「まあ、夜の病院って言ったらホラーだしね」

2018-07-25 10:18:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月11日02:00.天候:雷雨 宮城県仙台市内某所 とある大病院]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。

 愛原:「ん……」

 私はふと夜中に目が覚めた。
 2人用の病室。
 隣のベッドでは高橋君が寝ている。

 愛原:「トイレ……」

 私は高橋君を起こさないよう、そっとベッドから出た。
 そして、廊下に出るのだが……。
 うん、まるであの時の、廃校地下の秘密研究所のような雰囲気だ。
 もっとも、ここは廃病院ではなく、れっきとした現役の病院。
 ゾンビが歩いていたり、リサの元仲間のボスクラスのクリーチャーが歩いていようはずがない。
 いや、当のリサはいるのだが、普段は人間の姿をしている。
 そしてこの時間だから、スヤスヤ寝ていることだろう。
 私は暗い廊下をトイレに向かって進んだ。

 愛原:「ん?真っ暗だ……」

 トイレの中も真っ暗だったので、スイッチはどこだろうかと一瞬探してしまったが何のことはない。
 カチッという音がして、眩しいほどの照明が点いた。
 まあ、人感センサー式のトイレというわけだ。
 私は急いで奥の便器に走った。

 高橋:「先生……」
 愛原:「わっ、びっくりした!」

 突然、トイレの入口の方から声を掛けられた。
 振り向くと、そこには眠そうな顔の高橋がいた。

 愛原:「何だ、高橋君か。びっくりさせるな」
 高橋:「ヒドいじゃないですか。俺は先生と地獄の果てまでもお供しますと言ったはずですよ」
 愛原:「いや、覚えてないし!てか、地獄までは付いてきても、夜中のトイレまで付いて来るな!」
 高橋:「いいえ、先生。あの船の中で俺は言いましたよ」
 愛原:「だから船の中の記憶が無いんだって!」

 いま高橋、さりげなく夜中のトイレまで付いて来るなという私の指示を否定しなかったか?
 まあいい。

 愛原:「早く用を足して戻るぞ」
 高橋:「はい」

 私は便器から離れると洗面所に向かった。
 バシューという音を立てて、センサー水洗式の水が流れる。
 他の誰もいない便器からも、だ……!

 愛原:「知っててもびっくりするんだよなぁ。いきなり流れられると」
 高橋:「ああ、分かります」

 センサー水洗式小便器の場合、長時間使用が無くても勝手に水が流れることがある。
 便器によってはその旨表示していることもあるのだが、何しろ流れ方が盛大な為、こういうシンと静まり返っている中で流れ出すと、そういう仕様であると分かっていてもびっくりするものである。

 高橋:「そっちの大便器でも勝手に水が流れることがありましたよ」
 愛原:「ほお?」
 高橋:「センサー式は便利ですけど、その分、ちょっと不気味な所もありますよね」

 だが、そこで私はあることに気づいた。

 愛原:「……おい、高橋」
 高橋:「何でしょうか?」
 愛原:「個室の大便器のは……ボタン式だぞ?」
 高橋:「ええっ!?」
 愛原:「……お前、寝ぼけてたんじゃないのか?」
 高橋:「ですかねぇ……」

 その時だった!
 ザザザーッと音がして、誰もいないはずの大便器の水が流れた。

 愛原:Σ(゚Д゚)
 高橋:(゚Д゚;)

 1番奥の便器だ。
 私達はそーっと個室を覗いてみた。
 ……当然ながら、誰もいない。
 そして、やはりそこの便器も壁のボタンを押して水を流すタイプだった。

 高橋:「せ、先生……?」
 愛原:「さ、病室に戻ろうか。高橋君」

 私は極めて平静を装い、高橋の肩をポンと叩いた。

 高橋:「そ、そうですね」

 ゾンビやクリーチャー相手ならもう慣れているのだが、さすがにこういう目に見えない不可解な現象は慣れていない。
 私達は再び薄暗い廊下に出た。
 と、その時だった。
 近くの階段の上から、男の叫び声がした。

 愛原:「何だ!?」
 高橋:「他のフロアでも、何か出たんじゃないですか?」
 愛原:「ここでは何も出なかった!何も無かったぞ!いいな?高橋君!」
 高橋:「は、はい!」

 ところが止せばいいのに、私と来たら……。

 愛原:「ちょっと見に行ってみようか?」
 高橋:「マジですか?」
 愛原:「もちろん、高橋君も来るよな?『地獄の果てまでもお供する』んだろ?」
 高橋:「た、確かに……」

 私と高橋君は階段を上った。
 この病院は6階建てで、私達がいるのは5階だ。
 だから、最上階で何かあったと見える。
 私達が階段を上り、最初の踊り場まで行こうとした時だった。

 高橋:「!?」

 突然、背後の廊下をサーッと行く者がいたような気がした。

 愛原:「どうした、高橋君?」
 高橋:「気のせいですかね。今、そこの廊下をサーッと何かが行ったような気がするんです」
 愛原:「おいおい、やめてくれよ。もしクリーチャーがいたとしても、叫び声は上から聞こえたんだぞ?」
 高橋:「まあ、そうですよね」
 愛原:「だから早く上に行き……」

 ところが、そんな私達の困惑をよそに、ザッザッザッと廊下を横切って行く者がいた。

 愛原:(・.・;)
 高橋:(・。・)

 しばらく目を点にしていた私達。

 愛原:「今の……何だと思う?」
 高橋:「クリーチャー……ですよね?」
 愛原:「追うぞ!」
 高橋:「はい!」

 幽霊には免疫が無いのでどうしようも無い私達だが、クリーチャー系なら任せとけ!
 当然のことながら、クリーチャーなど見たことも無い人達を次々に驚かせていく。
 だが、そのクリーチャーは脅かすだけで何もしない。

 高橋:「! 先生、あいつ、もしかして……!?」
 愛原:「多分な……」

 色々な姿へと変化していく。
 4足方向のトリケラトプスだの、コモドオオトカゲみたいな形態になったりだの、何だか暴走しているようにも見えるが……。
 最後は病室へと戻って行く。
 部屋に入る直前、リサ・トレヴァーは人間の姿に戻っていた。

 高橋:「テメ、寝てんじゃねぇぞ、コラ!」

 高橋君はリサの病室の前で伸びている黒服の胸倉を掴んで引き起こした。

 愛原:「高橋君。もしかして、リサは夢遊病だったのか?色々と変化しながら廊下を歩き回るとは……」

 ホラーの正体なんて、案外地味なものだよ、うん。
 ……いや、BOWとして改造されたリサを地味だと思う私がおかしいのか?
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