報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「23時以降は青少年育成条例により、翌日朝4時までの外出は禁止されている」

2018-07-15 20:13:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日 時刻不明 天候:雪 太平洋上を航行中の豪華客船“顕正”号]

 仮面の少女:「外に出れば幸せになれるって言ったのに……!そう言ったのに!!」

 愛原:「待つんだ!」

 高橋:「ナメんじゃねぇぜ、化け物が!!」

 高野:「ダクトの中からも来たよ!」

 仮面の少女:「もういい……!もう生きる希望なんて持たない……!全員ここで死ね……!」
 愛原:「違うんだ!それでも俺は……うわああああああっ!!」

[7月9日22:10.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北急行バス“スイート”号車内]

 高橋:「先生……先生!」
 愛原:「うう……うぁっ!」

 私はそこで目が覚めた。
 いつの間にか寝てしまったようだ。
 昼間とはいえ、長距離バスの中は何もすることが無い。
 その為か、つい寝落ちしてしまっていたようだ。

 高橋:「どうしました、先生?悪い夢でも見ましたか?」
 愛原:「そうかもしれないな。少しだけ、船の中の記憶が戻ったよ」
 高橋:「本当ですか!?」
 愛原:「ああ。だが、まだまだ断片的過ぎる。完全に記憶が戻るには、もう少し時間が掛かるかもしれない」
 高橋:「そうですか……」
 愛原:「それより、ここどこだ?」
 高橋:「ああ。もう仙台市内に入りましたよ。もうすぐ着きます」
 愛原:「そうか」

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく仙台駅前、仙台駅前に到着致します。お降りの方は、お忘れ物の無いよう、お支度をお願いします。……」〕

 私は倒していた座席を戻し、カーテンを開けた。
 バスはすっかり深夜帯となった市街地を走行している。
 それにしても、記憶が戻るのはいいのだが、その度に悪夢にうなされるというのは困るなぁ……。
 まあ、その為に今後も通院は必要みたいだけど。
 そんなことを考えていると、バスは『22』と番号の振られた停留所のポールの前に止まった。

 愛原:「やっと着いたな」
 高橋:「ええ」

 私達はバスを降りた。

 愛原:「で、ここからどうやって行くんだ?」

 高橋はバスの進行方向を指さした。
 そこには地下鉄の入口がある。

 高橋:「俺の仲間との待ち合わせ場所まで、あれで行きましょう」
 愛原:「ああ、分かった」

 私達は地下鉄入口の階段を降りた。

[同日22:23.天候:晴 仙台市地下鉄仙台駅・南北線ホーム]

〔1番線に、富沢行き電車が到着します。……〕

 ここの地下鉄もPasmoで乗れるんだな。
 持ち合わせが少ないから助かったよ。
 深夜帯とはいえ平日ということもあり、乗客はそれなりに多いと思う。
 しかし、そこは地方都市。
 やってきた電車は4両編成だ。

〔仙台、仙台。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 私達は電車に乗り込み、開かない反対側のドアの前に立った。

〔2番線から、富沢行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 チャイムのようなメロディのような発車ベルが流れた。

〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ホームドアがあって、その動作は東京メトロや都営地下鉄のそれと変わらない。
 電車が走り出した。

〔次は五橋、五橋です〕
〔The next stop is Itsutsubashi station.〕
〔日蓮正宗仏眼寺へは愛宕橋で、冨士大石寺顕正会仙台会館へは終点富沢でお降りください〕

 愛原:「そういえば高橋君」
 高橋:「何でしょうか?」
 愛原:「地下鉄と言えば、“バイオハザード”の舞台が大都市だった場合、必ずステージとして登場するよな。俺達の時は、霧生電鉄だったか」
 高橋:「そうですね」

 厳密に言えば、霧生電鉄は地下鉄ではない。
 ただ、私達が駆け込んだ駅は高台にあり、駅の入口は地上にあるものの、ホームはトンネルの中という特殊な構造の駅だった。
 もっとも、日本全国探せばそういう駅は他にもある。
 例えばここの地下鉄においては泉中央駅しかり、東西線の八木山動物公園駅や荒井駅がそうである。

 愛原:「ま、ここでは無いだろうけどな」
 高橋:「もしあったとしても、俺は大丈夫ですよ」
 愛原:「武器が無いとなぁ……」
 高橋:「武器が調達できるまで、俺に任せてください」
 愛原:「フフ、本当に期待できるものだから凄いよな」
 高橋:「ありがとうございます」

[同日22:35.天候:晴 仙台市太白区富沢 富沢駅]

 電車が南の終点駅に向かうまでの間、どんどん乗客は減って行く。
 1つ手前の長町南駅で、電車はガラガラの状態になってしまった。
 私はドア横の座席に座ったが、高橋はその横の仕切り板の前に立つだけであった。
 そして、電車は一気に坂を駆け登り、地上に出た。
 車窓には夜景が広がる。
 そのまま更に登り、高架線に入ると、電車は減速する。

〔富沢、富沢、カメイアリーナ仙台前。終点です。お出口は、右側です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います〕

 愛原:「ここに高橋の友達が?」
 高橋:「ええ。駅前のロータリーで待ってるはずです」
 愛原:「そうか」

 電車がホームに止まり、ドアが開く。

〔富沢、富沢、カメイアリーナ仙台前。終点です。1番線の電車は、回送電車です。ご乗車にならないよう、お願い致します〕

 私と高橋は僅かな乗客達と共に電車を降りた。
 ずっと地下を走っていただけに、いきなり高架駅は何だか新鮮だ。

 高橋:「あっ、いたいた。あれです」

 駅を出てロータリーに行くと、これまた走り屋仕様の車が止まっていた。
 東京ではチェイサーに乗る機会があったが、今度はストリームである。

 高橋:「おーい!」
 青年A:「高橋先輩!」
 青年B:「チャス!」

 高橋君と歳は同じくらいか。
 しかし、やはりファッションは高橋君とよく似ている。
 1人は茶髪だし、もう1人は坊主頭だ。

 高橋:「今、東京で俺が世話になってる愛原先生だ」
 愛原:「ど、どうも。東京で探偵やってます、愛原です」
 青年A:「うス!高橋先輩の中学ん時の後輩で、佐藤って言います」
 青年B:「同じく千葉です。よろしくオナシャス」

 見た目はヤンキーっぽいが、いざ話してみると、そんなに性格が悪いって感じでもないみたいだ。

 佐藤:「じゃあ、どうぞ。乗ってください」
 高橋:「おう。先生、どうぞ」
 愛原:「あ、ああ。ありがとう。よろしく」

 それでも私は、少し緊張して車に乗り込んだ。
 何だか、このまま暴走族の抗争場所に連れて行かれるような気がして……。
 高橋の知り合いじゃなければ、絶対このまま逃げ帰っていたことだろう。
コメント (7)
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