報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「未確認アンドロイド」

2018-07-04 19:24:49 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月24日10:42.天候:曇 JR大宮駅]

 日本全国にあるDCJの関係施設が爆弾テロされた事件を受け、敷島は都内の事務所に向かうことにした。
 DCJの施設の次は、その関係先が狙われると踏んだからである。
 アリスはシンディを伴って、科学館の方へ向かった。

〔14番線に、“なすの”270号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。まもなく14番線に、“なすの”270号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 敷島は列車が来るまでの間、事務所に連絡を入れていた。

 敷島:「一海か?お前もニュースを見て知ってると思うけど、DCJの関係施設がテロられた。もしかしたら、次はうちかもしれない。今日のボーカロイドの仕事は全部キャンセルして、事務所に引き上げさせろ。そして、認証できない来訪者は全て断れ。……そうだ。俺からの命令だとマネージャー達に全員伝えておけ」

 ボーカロイド達は日曜日であっても、イベントの仕事などに出ている。
 バックグラウンドである事務員は月金の仕事になる為、ここはメイドロイドを用途変更した一海が活躍していた。

〔「14番線、ご注意ください。“なすの”270号、東京行きの到着です」〕

 敷島:「とにかく、俺も今からそっちに行くから。よろしく頼むぞ」

 敷島が電話を切ると同時に、HIDの眩しいヘッドライトが敷島の前を通過した。

 エミリー:「本日はお休み返上ですか?」
 敷島:「しょうがないだろ。犯行声明が出ていない以上、うちも危ないんだ」

 敷島とエミリーは中間車の自由席に乗り込んだ。
 “やまびこ”は混んでいるが、“なすの”は空いている。
 元々は“やまびこ”の混雑緩和の為に運転されているガス抜き列車である。
 グランクラスはあるが、アテンダントは乗務していないので、単なる席代しか取られない。

 エミリー:「社長、仙台の七海とロイにも連絡を取りました。平賀博士と村上博士は無事です」
 敷島:「それは良かった。東京決戦を戦い抜いた七海なら、上手く平賀先生を守ってくれるだろう。ロイは大丈夫かな?」
 エミリー:「……だと思いますが」

 列車は定刻通りに発車した。
 さっきまで曇っていたのだが、まるでもうすぐ梅雨が明けるかのような強い日差しが車内に入り込んで来た。
 日曜日ということもあって、車内は家族連れで賑わっている。

 敷島:「お気楽なもんだ。全国で11ヶ所も爆弾が爆発したというのに」
 エミリー:「DCJの関係施設に近づかなければ大丈夫と思っているみたいですね」
 敷島:「そういう問題じゃないってのに……」

 これが日本人の平和ボケというものだろう。
 尚、人的被害が出なかったのは科学館と成田営業所のみである。
 但し、成田営業所とは連絡が繋がらなかった。
 電話回線がやられたのか、或いはわざと切っているかのどちらかだろう。
 鳥柴の安否が心配だが、マスコミは成田営業所は無人だったと報じている。
 爆弾テロで被害が出たのは、高層ビルの警備室や防災センターなど、24時間人間が警備をしている所だけだった。
 他にも研究所や工場もあるのだが、そこは科学館と同様、夜間はセキュリティロボットが前面に出て警備に当たっている。

 敷島:「デイジーと通信は?」
 エミリー:「いえ、できません」
 敷島:「くそ!絶対ヤツは動ているはずなんだ」
 エミリー:「お役に立てず、申し訳ありません。ただ……」
 敷島:「ただ?」
 エミリー:「時折、未確認のものがキャッチされます」
 敷島:「それがデイジーじゃないのか?」
 エミリー:「いいえ。以前に登録したデイジーのものではありません」
 敷島:「いやいや、あの後で改造された可能性もあるだろうが。きっとそれがデイジーの反応だ」
 エミリー:「その可能性は低いです」
 敷島:「だから、何で?」
 エミリー:「その反応が出始めたのは、今朝からなのです。もしデイジーの状態が社長の仰る通りでしたら、もっと前からキャッチしているはずです」
 敷島:「今朝から?どういうことなんだ?」
 エミリー:「それも、場所はDCJ成田営業所付近です」
 敷島:「もしかしてデイジーの奴、今は成田営業所にいるのか?」
 エミリー:「……かもしれません」
 敷島:「行き先変更だ。すぐに成田に向かうぞ」
 エミリー:「かしこまりました。すぐに一海に通信を送ります」

[同日11:02.天候:晴 JR上野駅→京成上野駅]

 敷島達を乗せた新幹線が地下ホームへと降りて行く。
 新幹線でも珍しい地下ホームである。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。山手線、京浜東北線、常磐線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。上野の次は終点、東京です〕

 敷島:「何度も成田営業所に掛けているが、やっぱり繋がらない。鳥柴主任のケータイもダメだ。本当にデイジーはそこにいるのか?」
 エミリー:「断言はできません。あくまでも、僅かに反応があっただけです」
 敷島:「それはマルタイプの反応だったのか?」
 エミリー:「とても近いものです」
 敷島:「今稼働していて、未確認状態のものと言ったらデイジーくらいしかいないだろうが」
 エミリー:「でも断言はできません。敵の陽動である可能性もあります」
 敷島:「シンディには確認取れるか?」
 エミリー:「申し訳ありません。今は地下深くですので、通信が途絶えています」
 敷島:「シンディも同じ反応をキャッチしていればガチなんだが……」
 エミリー:「如何致しますか?成田に向かいますか?それとも予定通り、会社に向かいますか?」
 敷島:「うーむ……」

 もちろん、深く考えているヒマは無かった。
 もう車窓には、地下ホームに煌々と輝くホームの明かりが見えてきたからだ。
 敷島は……。

 1:成田に向かうことにした。
 2:会社に向かうことにした。
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“戦う社長の物語” 「同時多発テロ」

2018-07-04 10:43:25 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月24日02:00.天候:晴 東京都千代田区大手町 第2新東京ビルB1F防災センター]

 警備員A:「ふわぁ〜あ……!おはざーっす……」
 警備員B:「おい、大丈夫か?全然目ェ覚めてねぇぞ?」
 警備員A:「早寝はキツいよ。これからずっと起きてなきゃいけないんだから……」

 仮眠から起きて来た警備員Aはまた大きな欠伸をした。

 警備員B:「お前は明けで帰れるからいいんだよ。俺はサブロクでまた日勤だぞ?」

 警備業界ではよくある話。
 何が『働き方改革』だ。

 警備員B:「とにかく、俺も眠いから早いとこ代わってくれよ?」
 警備員A:「はいよ。何か申し送りある?」
 警備員B:「例の夜間作業が19階でまだ継続中。それから……」

 ズシャッ……ズシャッ……。

 警備員B:「地下3階の駐車場では……」

 ズシャッ……ズシャッ……。

 警備員A:「なあ。何か聞こえないか?」
 警備員B:「え?何が?」
 警備員A:「何か引きずる音……」

 ズシャッ!

 警備員B:「!?」

 その時、防災センターの受付に何者かがやってきた。
 カメラを見ると、黄色いヘルメットに青い作業着を着た者だった。

 警備員A:「こんばんは。夜間作業の方ですか?」

 しかし、作業服にヘルメットを被った者は俯いたままだ。

 警備員A:「あの……」

 Aが男の顔を覗き込もうとした時だった。
 男がバッと顔を上げた。
 その顔は半分が腐乱しており、もう半分は白骨化していた。
 それが防災センターにいた警備員達の最後の記憶だった。
 何故なら、防災センターが大きな爆発に巻き込まれたからだ。

[同日09:00.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 エミリー:「おはようございます。社長」
 敷島:「ああ、おはよう……」

 敷島は眠そうな顔で夫婦の寝室から出て来た。
 今日はキッチンメイドの当番に当たっているエミリーが、敷島とアリスの為に朝食を作っている。

 エミリー:「昨夜はお楽しみでしたか?」
 敷島:「今度、シンディから言ってもらおう。『俺の胸の上にオッパイ乗せて寝るな』ってな。重くてしょうがねぇ」
 エミリー:「それは何とも……」

 敷島が洗面所に行くと、隣の浴室からはシャワーを使う音が聞こえた。
 中からは某ジャイアン並みの歌声が。

 敷島:「あー、うるせっ。アリスのヤツ、相変わらずオンチだな」

 敷島はそう愚痴ると自分は顔を洗ったり、歯を磨いたりと朝の身支度。
 それが終わると着替えて、再びダイニングへ……。

 シンディ:「おはようございます。社長」
 敷島:「おう」

 シンディはトニーを抱き抱えていた。
 今日のナースメイド担当はシンディであるようだ。

 シンディ:「ほら、お坊ちゃま。お父様に御挨拶なさって」
 トニー:「はろー」
 敷島:「はろーじゃないだろ。『おはようございます』だ。言ってごらん」
 トニー:「こにゃにゃちは」
 敷島:「タモリか!絶対、これアリスがノリで仕込んだな。全く」

 敷島は呆れた感じでテレビのリモコンを取った。

 エミリー:「社長、お待たせしました。朝食でございます」
 敷島:「おっ、ありがとう。早速、食べたいところだが……アリスは何やってる?」
 シンディ:「はい、お坊ちゃま。こちらにお座りになって」
 トニー:「おて!」
 敷島:「その『おすわり』じゃねーよ!……おい、アリス!早いとこ食べようぜ!」
 アリス:「んもー、何よ。うるさいわねぇ……」
 敷島:「って、おまっ!?」

 アリスは全裸で出て来た。
 トニーという息子を1人生んでいるにも関わらず、体型は崩れていない。
 若いうちに生んだので、回復が早かったのか。
 それとも、民族性の違いか。

 トニー:「ままー」
 敷島:「いいから、早く服着てこい!」
 アリス:「バスト93センチ。揉む?」
 敷島:「昨夜、さんざんっぱら揉んだだろーが!」

 アリスが再び脱衣所に行っている間、敷島はテレビを点けた。

〔「……はい、こちら爆弾テロがあった現場です!昨夜2時から3時に掛けて、同時多発テロが……」〕

 敷島:「なんだ?またヨーロッパのどこかか?物騒だなぁ……」
 シンディ:「でも何か、背景の看板が日本語ですよ?」
 敷島:「漢字の羅列だろ?じゃあ、中国かな?」
 シンディ:「いえ、平仮名とカタカナも出てきましたけど……」
 敷島:「ん!?」

〔「……ええ、ではスタジオからもう1度お送り致します。昨夜2時頃、東京都千代田区大手町にあります第2新東京ビルの地下1階で爆弾テロと思われる爆発があり、これを皮切りに首都圏並びに……」〕

 アリス:「第2新東京ビル!?」

 アリスがバタバタと出て来た。
 今度は黒いタンクトップに、ショートパンツをはいている。

 敷島:「知ってるのか?」
 アリス:「知ってるも何も、DCJの本社が入っているビルよ!?」
 敷島:「な、何だってー!?」

〔「……日本全国11ヶ所におきまして、爆弾テロが発生しました。尚、全ての箇所において、(株)デイライト・コーポレーション・ジャパンの関係施設が狙われており、警察ではデイライト・コーポレーション・ジャパンを狙った同時多発テロと見て、捜査を始めています。尚、このテロに対して犯行声明などは出されておらず……」〕

 敷島:「! 科学館は!?科学館は大丈夫なんだろうな!?」

 敷島はチャンネルを変えた。
 日本で11ヶ所も起きた爆弾同時多発テロだ。
 テレビ東京以外どのテレビ局でも特番でこのテロ事件を報じていた。
 そして、その中に科学館を映したチャンネルがあった。

 敷島:「うあ……!」

 真夜中だから通用口から入ったのだろう。
 ここも警備室を中心に、事務室側が半壊させられていた。
 だが、こちらは人的被害は無いという。
 場所が場所だけに、真夜中はセキュリティロボットに任せて人間の警備員は仮眠に入るからである。
 仮眠室がやや離れた場所にあったのが幸いだったようだ。
 但し、セキュリティロボット3機は破壊された。

 敷島:「アルエットや萌は無事のようだな……」
 アリス:「誰よ!?こんなことしたの!」
 敷島:「KR団の生き残りか?……いや、でもな……」

 もしKR団の生き残りが犯人なのだとしたら、DCJもそうだが、まず敷島エージェンシーを狙って来そうなものだ。
 それに、犯行の仕方。

〔「……目撃者や監視カメラの映像によりますと、犯人は全て同じ格好をしています。青い作業服に黄色いヘルメットを被った、何かしらの作業員のような姿で……」〕

 敷島:「ん?黄色いヘルメットに青い作業服……?」
 エミリー:「東北の廃坑で会った、あの人と同じです」
 敷島:「おお、そうだ!……てことは!?」
 シンディ:「デイジーが関わっているってことね」
 
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