報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「廃校舎に仕掛けられた罠」

2018-07-18 19:36:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月10日01:00.天候:晴 宮城県仙台市太白区郊外 廃校舎]

 私達は3Fの女子トイレで手に入れたグレモン鍵を手に、階段を下りた。
 相変わらず静かな校舎内だ。
 もっとも、飛び道具も無い状態でゾンビ無双はやりたくないが。

 愛原:「うっ……」

 1階に下りてトイレの方を見たら、トイレの照明は消えていた。
 私達の誰も消灯していないはずなのに……。
 佐藤君が一瞬見たという少女らしき影のせいだろうか。

 愛原:「うん、ピッタリ合う」

 グレモン鍵を差し込むと、ちょうど取っ手が取り付けられたみたいになる。
 ガチャンと下に押し込むと、ドアが開いた。

 高橋:「先生。この先こそが本番です。油断してはいけません」
 愛原:「そうだな」

 階段の先は真っ暗で、ライト無しではとても進めそうにない。
 私達はライトを点灯させて、階段を下りた。
 意外なことに、地下へと下りる階段はコンクリート製になっていた。
 それも、鉄扉を囲んでいたそれと違い、だいぶ古い。
 元々地下へ下りる階段だけは、コンクリート製だったのか。
 そして、階段を下り切った。

 佐藤:「あれっス。俺らが見たのは」

 佐藤君は自分のハンディライトをエレベーターに向けた。
 そう、そこにはエレベーターがあった。

 愛原:「なるほど……」

 見た目は普通のエレベーターだが、これがどうも……。

 愛原:「何か古くね?」
 高橋:「そうですね」

 まるでこの学校が建った頃からあるかのように、そのエレベーターの見た目が古かった。
 ドアが木目調になっていて、触ってみると、どうもそういう化粧板を貼っているようではあったが、本当に木製のような手触りだった。
 そして、階数表示がアナログの針式だ。
 どうやら、地下3階まで下りるらしい。
 ボタンも金属製の出っ張りであった。
 押すとカチカチ鳴ることから、これが本当に呼び出しボタンらしい。
 それにしても……。

 愛原:「何か、元からあったようにも見えるなぁ……?」

 私はライトでエレベーターの周りを照らしてみた。
 すると、ここにも暴走族の落書きみたいなものがあった。

 佐藤:「あ、これ、俺らっス」
 愛原:「『参上』とか『夜露死苦』とか、随分とレトロな落書きだね」
 高橋:「古いギャグやってんじゃねぇぞ、コラ」
 佐藤:「ち、違うんスよ、高橋さん!白鳥のヤツが、『原点回帰だ!ヒャッハー!』しながら書いたんス!」
 愛原:「その『ヒャッハー!』は、お巡りさんがすっ飛んで来るモノを使っていたからじゃないことを祈るよ」

 私は呆れながらボタンを押したが、やっぱりうんともすんとも言わない。
 トイレの照明を点けたかもしれない『仮面の少女』、このエレベーターも動かしてくれないかなぁ……。
 そう思っていると、高橋君が何かを見つけた。

 高橋:「先生、これを見てください」

 高橋がライトで照らした場所は、エレベーターとは反対側。
 そこにレバーが2つあった。
 しかもその横には黄色いペンキで、『EV SW→』と書かれていた。
 EVはエレベーター、SWはスイッチのことだろう。

 愛原:「このエレベーターが起動スイッチだったのか。それにしても動くかなぁ?」
 高橋:「やってみましょう。きっと、このレバー2つを同時に下げるのですね」
 愛原:「あー、何かアクション映画辺りでそういうの出て来るかなぁ……?」

 高橋と佐藤君はそれぞれのレバーの前に立った。

 高橋:「俺と佐藤で動かしますので、先生はエレベーターのボタンを押してください」
 愛原:「ああ。分かった」

 私はエレベーターの前に立った。

 高橋:「よし、行くぞ」
 佐藤:「うっス!」

 2人は同時にガチャンとレバーを下げた。
 すると!

 高橋:「うっ!?」
 佐藤:「わあっ!?」

 ガコンと2人が立っている床が突然開いた。
 それこそ、東京拘置所の死刑台の床のように!

 愛原:「高橋!佐藤君!?」

 私は穴の中を覗き込んだ。
 穴の中は暗闇の奈落の底。
 そして、私も飛び込もうとした時、穴が塞がってしまった。

 愛原:「も、もしかして、これって……!?」

 私はエレベーターを見た。
 すると、エレベーターの針が動いているのが分かった。
 そ、そうか、そういうことか。
 このレバー、1つは本当にエレベーターの起動用で、もう1つは罠だったのか。
 エレベーターのドアが開く。
 照明は電球が1個だけ。
 私は乗る前に、もうちょっとちゃんとした武器が無いか探しに行こうと思った。
 高橋達のことは、もちろん心配だ。
 だが助けに行くのなら、もうちょっと……せめて刃物くらいは持って行った方が良いのではと思ったのだ。
 私は今一度階段を上がった。
 教室には古い机や椅子なんかも置いてあったから、もしかしたら何かあるかもしれない。

 愛原:「うっ!?」

 1階の廊下を歩いていた私を、外から強い光で照らされた。

 警察官A:「やっぱり人がいる!」
 警察官B:「本当か!?」

 それは警察官2人だった。

 警察官B:「ちょっとそこの人!」

 助かった!
 私は急いで警察官の所に走った。
 警察官達とは、割れた窓ガラス越しに話すことになる。
 1人は20代の若い警察官で、階級章を見ると巡査になっていた。
 もう1人は30代の警察官で、そちらは巡査部長であるようだ。

 愛原:「助けてください!大変なことになってるんです!」
 巡査:「ええっ!?」
 巡査部長:「まあ、ちょっと落ち着いて。私達は若者達が騒いでいるという通報があって駆け付けたものです。見たところ……あなたはこの辺りの若者ではなさそうですが……」
 愛原:「そりゃそうでしょ!私は東京から来たんだから!そんなことより、私の助手と仲間が罠にはまって大変なことになったんです!早く助けてください!」
 巡査部長:「いや、あのね!ここがどこだか分かってんの?廃校になった学校で、立入禁止なんだよ!罠だか何だか知らないが、あなたを建造物侵入の現行犯で逮捕することになるよ?」
 愛原:「外にはゾンビ達がいたはずだぞ!?そいつらはどうした!?」
 巡査:「先輩……」
 巡査部長:「うーむ……」

 どうやら警察官2人は、私を頭のおかしい人間と見たようだ。
 何だ、この2人は?
 ゾンビ達を倒して、助けに来てくれたんじゃないのか?
 とうも、校門の外にいたゾンビ達とは会っていない感じだ。

 巡査部長:「とにかく、詳しい話を聞くから学校の外に出て来てくれ」
 愛原:「分かったよ」

 こんなことしてる場合じゃないというのに……。
 私は渋々昇降口へ向かった。
 もしも外にいたはずのゾンビ達がいないというのなら、脱出するのは今だな……。
 いや、待て。
 そのゾンビ達は一体、どこに行ったんだ?
 私がそんなことを考えていると、フッと昇降口の姿見に何かが映った。
 それは、『仮面の少女』。
 私の背後にいた。
 だが、振り向くと誰もいない。
 もう1度鏡を見ると、もうその姿は消えていた。

 巡査:「早く開けてください!」
 巡査部長:「おい、何をしてる!?」

 昇降口のドアをあの警察官達がどんどん叩いている。
 あれ?鍵なんか掛けたっけか?
 あー、そうか。
 もしかしたら、ゾンビの侵入を阻止する為に掛けたかもしれないなぁ……。
 いや、よく覚えてないけど。
 私は内鍵を開けた。
 と、同時に開けて入って来る警察官達。

 愛原:「早くここから逃げましょう!」
 巡査部長:「その前にこんな時間に何をしていたのか説明しろ!」
 愛原:「言ったって信じるわけないでしょ、どうせ……」
 巡査部長:「いいから正直に話すんだ!」

 私と巡査部長が押し問答をしている時だった。

 巡査:「先輩!」

 若い巡査が叫び声を上げた。
 何が起きたと思う?

 1:ゾンビの集団が襲って来た。
 2:仮面の少女が襲って来た。
 3:全く別のクリーチャーが襲って来た。
 4:BSAAが現れた。
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“私立探偵 愛原学” 「地下への鍵」

2018-07-18 15:14:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月10日00:30.天候:晴 宮城県仙台市太白区郊外 某廃校舎]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 木造の廃校舎というのは表向き。
 どうやらその地下には昔、アメリカ国内は元より、日本国内でも一都市をバイオハザードに陥れた悪の製薬企業アンブレラの秘密研究所がある恐れが出て来た。
 そして助手の高橋君が言うのには、そこに『仮面の少女』が隠れているのだと。
 しかしその地下へ下りる階段に行くには、固く閉ざされた鉄扉を開ける必要があった。
 鉄扉はドアノブ自体が鍵の役割を果たすグレモン錠となっている。
 つまり、ドアノブ型の鍵が外され、それを探して来なければ、そもそもドアが開かないというものだった。
 ボヤボヤしていると、ゾンビ化した高橋の仲間達が校門をブチ破ってここまで来てしまうかもしれない。

 愛原:「どこにあるだろう?」
 佐藤:「鍵関係だから、警備室じゃないスか?」
 高橋:「アホか。こんな廃校にガードマンがいるわけないだろう」
 愛原:「まあまあ。この木造校舎が現役だった頃は、先生や用務員さんが宿直で泊まり込んでいただろうからな。恐らく職員室か宿直室のどっちかにあるだろう」

 という常識が通用するのは、あくまでもこの学校が現役だった場合だ。
 果たしては、今は……。

 高橋:「職員室はどこにあるのでしょう?」
 愛原:「大抵は1階にあるよな」

 私達が廊下を歩き出した時だった。

 佐藤:「あっ!」

 佐藤君が声を上げた。
 彼の視線の先を追うと、何故か電気の点いている箇所があった。
 それはあり得ないはずだ。
 学校にしろ、秘密研究所にしろ、今はどちらも廃止されているわけだから、電気など止められているはずだ。
 にも関わらず、何ゆえ照明が点くのだ?

 愛原:「気を付けろよ。罠かもしれない」
 高橋:「はい!」
 佐藤:「う、うス……」

 私達は電気の点いた部屋に向かった。
 そこは部屋ではなく、女子トイレだった。

 佐藤:「は、入っていいんスかね?俺ら、男っスけど……」
 愛原:「別にいいだろう。どうせ誰もいない」
 高橋:「そうですね」
 愛原:「……ことになっているから」
 佐藤:「何スか、それ!」

 私達は鉄パイプやレンチを手に、唯一照明の点いている女子トイレに入った。
 古い時代の校舎だ。
 トイレは汲み取り式である。
 もう使われていないはずなのに、臭いが未だに残っている。

 愛原:「あっ!」

 中に入って、すぐに気づいた。
 トイレの中、壁に大きく赤い文字で何か書いていた。

 愛原:「『3階へ行け』だって!?」
 高橋:「ますます、あのクソガキのせいかもしれませんね!」

 霧生市のバイオハザードの時、最後に探索したのはアンブレラの研究施設だ。
 その時、『仮面の少女』がそんなことをしていた。

 愛原:「よし。3階へ行ってみよう」

 私達はトイレを出ると3階へ向かった。
 今のところ、校舎内には何もクリーチャーらしき者は襲ってきていないが……。
 この静けさが、却って不気味だ。
 古めかしい木の床がギシギシと嫌な音を立てる。

 愛原:「学校の怪談に、『十三怪談』とか『トイレの花子さん』とかがあってだな、私達は『トイレの花子さん』を追っていることになる」
 佐藤:「マジっすか!?」

 アンブレラの実験台にされた少女の本名は分からないし、何故そうされたのかも分からない。
 だが、元は普通の人間の少女として暮らしていたのに、ある日突然アンブレラに捕まり、『日本人版リサ・トレヴァー』とか『仮面の少女』『トイレの花子さん』となった経緯は如何ばかりか。

 愛原:「3階だ……うっ」

 3階まで階段を登り切り、そこからトイレの方を見ると、やはりそこも電気が点いていた。

 愛原:「……もしかしたら、地下に行く前に、ここで『花子さん』と遭遇するかもしれんぞ?」
 佐藤:「ええっ?」
 高橋:「そいつは好都合です。ここで俺達をナメやがったクソガキに、痛い目見せてやりますよ」

 私達は慎重に3階の女子トイレに向かった。
 そして、ドアを開ける。
 ギギギィィィと、これまた嫌な音を立てて開く木製のドア。
 トイレの中は1階と全く同じ構造だった。
 天井に灯るは、たった2個の電球。
 壁には、何の落書きも無い。

 高橋:「先生、確か『トイレの花子さん』は、奥から2番目の個室にいるんでしたよね?」
 愛原:「……らしいな」

 霧生市のアンブレラ研究所ではどうだったかな……?

 愛原:「開けても、多分何も出てこないだろう」
 高橋:「そうなんですか!?」
 愛原:「ああ。だが、油断は禁物だ」

 私はそう言って、ドアをノックした。
 怪談では外から3回ノックすると、中からも3回ノックの音が返されるということだが……。

 愛原:「あれ?」

 全く反応が無かった。
 もう1度叩いてみたが、やっぱり反応が無い。

 高橋:「先生?」
 愛原:「……逆に何か潜んでるかもしれんな」
 佐藤:「ちょっと何言ってるか分かんないス」
 高橋:「じゃ、お前が開けろ」
 佐藤:「ええっ!?」
 高橋:「先生の御見解にケチを付けやがった罰だ」
 愛原:「いや、別にいいよ!」

 高橋は佐藤君にドアを開けさせた。
 個室のドアは外側に開けるタイプである。
 佐藤君は震える手で、ドアを開けた。
 鉄パイプとレンチで身構える私達。
 だが、中には誰もいなかった。

 高橋:「……誰もいませんね」
 愛原:「そ、そうか?」

 私は天井や床、そして便器の中まで調べようとして気づいた。

 愛原:「あった!グレモン鍵!」
 高橋:「さすがは先生!」

 何でこれが、こんなトイレの中にあったのか?

 愛原:「もしかして、これを私達に見つけさせる為に、わざわざこんなことをしたのか?」
 高橋:「なるほど。それじゃ、これは俺達に対する挑戦状ですね?」
 愛原:「何でそうなる?とにかく、これで地下室へ行けるようになるぞ。早いとこ……」
 佐藤:「だ、誰だっ!?」

 その時、トイレの出口に目をやった佐藤君が叫んだ。

 愛原:「どうした!?」
 佐藤:「今、廊下を誰かが全力ダッシュして行きました!!」
 愛原:「なにっ!?」

 私達はトイレから出て廊下の外を見た。
 だが、月明かりの差し込む薄暗い廊下に人の気配は無かった。

 高橋:「キサマ、先生に嘘を付くとはいい度胸……」
 愛原:「いや、違うだろ!……佐藤君は何を見たんだい?」
 佐藤:「廊下が暗かったんで、よく分からなかったんスけど……。多分、女の子っス。女の子のスカートから下の足2本が、向こうへ走って行ったんです!」
 高橋:「足だけの妖怪!?」
 愛原:「そ、そうなのかな?上半身は暗くて見えなかっただけだろう?」
 佐藤:「多分……」
 愛原:「スカートから下はどんな感じだった?」
 佐藤:「いや、ほんとマジ一瞬だけだったんで……。ただ、黒っぽいスカートに黒いソックス履いて……そう、何か中学生っぽい感じだったかもです」
 高橋:「先生!?」
 愛原:「『仮面の少女』か……!?」

 彼女は私達の動向を監視している。
 トイレの照明を点けたのも、このグレモン鍵を置いて行ったのも、やはり彼女だったのか……。
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