報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「3日目の午後」

2017-09-01 19:19:58 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月13日15:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学]

 大学構内にあるプール。
 そこではボーカロイド達が束の間の休息を取っている。
 本来は水泳部が使うプールなのだが、ボーカロイド達に開放された。
 特に最年少の鏡音リンが1番はしゃいでいる。

 敷島:「皆して都合良く水着を持って来たとは……」
 シンディ:「いつでも急に入った仕事に対応できるようにってことみたいね」
 エミリー:「既にその辺りは学習したようです」
 敷島:「そうか……。まあ、ボーカロイド達はそれでいいとしても……」

 敷島は自分の両脇に立つ秘書達を見た。

 敷島:「何でお前達も水着なのか、説明してもらおうか?」
 エミリー:「急な仕事に対応できるようにする為です」
 シンディ:「同じく」
 敷島:「お前達は関係無い!」
 リン:「しゃちょー!一緒に入ろうYo!?」
 敷島:「総責任者の俺が暢気に入るわけにはいかんよ」
 リン:「えー!?」
 敷島:「レンタルは2時間だけだから、それまで入ってていいってさ」
 リン:「うん、わかった!」
 シンディ:「じゃあ、私達はボーカロイド達を見ていますから」
 敷島:「ああ、よろしく頼む」

 敷島はプールサイドを歩いた。
 すると、更衣室の方から平賀がやってくる。

 平賀:「敷島さん」
 敷島:「ああ、平賀先生。どうも、すいません。何だかうちのボカロ達の為だけに、わざわざ水泳部のプールを貸してくれて……」
 平賀:「たまたまうちの水泳部が合宿中で、ここにはいないんです。ちょうど良かったですよ。学生達も大喜び」

 平賀が指さした所、フェンスの外には人だかりができており、学生達が写真を撮ったりしていた。

 平賀:「別にいいですよね?」
 敷島:「プールをタダで借りておいて、『撮影禁止』なんてケチくさいことは言いませんよ。人間のアイドルじゃないんですから」

 水着に関しても、彼女達のイメージカラー通りである。
 例えばMEIKOは赤のビキニだし、先ほどのリンも黄色が目立つビキニだ。

 平賀:「それにしても懐かしいんですよ、ここは」
 敷島:「そうなんですか?」
 平賀:「七海の耐水性の実験を、このプールでやったんです。真水の中でも泳げることが分かって、その後は海水の耐性実験で海に連れて行きましたけどね」
 敷島:「そうだったんですか。海の中でもOKということになりましたね」
 平賀:「でもさすがに、長時間の潜水は危険だということが分かりましたので、ロイドでありながらダイビングの装備は必要ということが分かりましたよ」
 敷島:「別に呼吸する必要は無いのにねぇ……」

 七海を初めて海に連れて行ったのは、平賀1人だけだったそうだ。

 敷島:「あの時の話、とても面白かったですよ」
 平賀:「いや、今からしたら恥ずかしい逸話ばっかりですよ」

 七海にスイカ割りをやらせてみた。
 目隠しで完全に視界を奪った後、平賀はスイカを小脇に抱えてしまった。
 しかし七海は赤外線カメラでスイカの位置を正確に割り出し、棒をスイカに突き刺して見事に穴を開けた(平賀が抱えていたので、叩き割ることができなかった)。
 平賀が交代してチャレンジしたが、振り下ろした棒はスイカではなく、七海のビキニブラを剥ぎ取ってしまった。
 プチ暴走した七海は、平賀を海の沖の方へ殴り飛ばしてしまった。

 敷島:「プッ、くくくく……はははははははは!」
 平賀:「笑いたかったら、素直に笑ってくださいよ」
 敷島:「いやいや、すいません。日本初のメイドロイドの実験も大変だなぁと」
 平賀:「何でも初物は、作った本人が責任を持って体を張った実験をしませんと」
 敷島:「それがおかげで量産体制にまでなって、今やPepper君並みの普及率じゃないですか。凄い凄い」
 平賀:「さすがに廉価版はポンコツでしたね。反省すべき点です」

 と、そこへ……。

 村上:「よお。今日の実験会場は、ここで良いのかね?」
 敷島:「村上教授!」
 平賀:「村上先生、別に実験ってわけではないですよ。あくまで、敷島エージェンシーさんの福利厚生です」
 敷島:「ボーカロイド達はうちにとって、大切な商品です。彼女らの大敵である熱を取り去ってやることは、とても大事です」
 村上:「人間みたいな熱の取り去り方じゃの。もっとも、それが敷島エージェンシーさんの方針か」
 敷島:「そういうことです。彼女達はロボットとは違う。人間並みのアンドロイドなのです。従って、ある程度の人間扱いをしてやることはとても大事です」
 村上:「うむ、分かった。じゃが、解せぬのはこれなんじゃがのぅ……」

 村上が出したのは1枚のチラシ。

 平賀:「『ボーカロイド水着撮影会 参加料:1000円』……何ですか、これ?」
 敷島:「きっとこれはKR団の謀略!?」(;゚Д゚)
 平賀:「いや、KR団は敷島さんが潰したんでしょう!?」
 エミリー:「社長、取りあえず現在の参加者が25名です。従いまして、参加料の徴収が……」
 敷島:「あっ、こら!」
 平賀:「うちの大学で勝手に商売しないでもらえますかぁ〜?敷島さん
 敷島:「……すいません。後でプールのレンタル料払います」
 シンディ:「だからやめとけって言ったのに……。それにこの商売、後でリスクが……」
 ロイ:「大変です、博士!バージョンシリーズの集団が大挙してここに押し寄せて来ています!」
 村上:「何じゃと!?」
 敷島:「し、しまった!このチラシに『人間限定!ロボットはダメぽ』って入れておくの忘れてたーっ!」
 シンディ:「そっち!?」
 平賀:「敷島さん、ちゃんと責任取ってくださいね!」
 村上:「何という集客力じゃ……」
 敷島:「と、取りあえず!」
 シンディ:「御命令下されば、私と姉さんであのクソロボット達、鉄塊にしてきます!」
 エミリー:「社長、御命令を!」
 敷島:「よし、こうなったら俺の責任だ。俺も行くぞ!」
 エミリー:「社長!?」
 村上:「うむ。男として責任を潔く取る。素晴らしいことじゃ。して、どうするかの?」

 敷島は『最後尾』と大きく書かれたプラカードを取った。

 敷島:「これで列整理に行くぞ!エミリーはロープを持て!シンディはポールパーテーションだ!」
 一同:「排除せんのかい!!」

 社長になって日に日に商魂逞しくなって行く敷島だった。
 尚、バージョン軍団はちゃんと参加料1000円を全員が払って行ったという。
 
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“Gynoid Multitype Sisters” 「3日目の昼」

2017-09-01 12:18:02 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月13日08:30.天候:晴 宮城県仙台市太白区 オートキャンプ場付近]

 バージョン4.0A:「ワッショイワッショイワッショイ」
 バージョン4.0B:「ワッショイワッショイワッショイ」
 バージョン4.0C:「ワッショイワッショイワッショイ」

 何かを抱えて行進しているバージョン4.0が3機。
 ずんぐりむっくりした体型にしては人間並みの滑らかな動きと素早さを備えていることから、後期タイプまたは改良型のどちらかだろう。
 ロイはブースター付きのブーツに履き替え、それでこの集団の前に回り込んだ。

 ロイ:「ちょっと失礼します。私は怪しい者ではございません。執事ロイドのロイと申します」

 ロイが回り込むと、バージョン達の動きが止まった。
 名前を名乗っている間にも両目をギラリと光らせたり、スキャンしてくるのが分かる。

 ロイ:「それでその……何をされているのか聞いて来るようにと御主人様から命令されまして……。何をされていたのですか?」
 4.0A:「道ニ迷ッタ女性ヲ助ケテイルノダ」
 4.0B:「バッテリーも切レテイル。ドコカデ充電シタイ」
 4.0C:「損傷モシテイル。修理ガ必要ダ」
 ロイ:「なるほど。それで救助を求めに行くところだったのですね」
 4.0A:「違ウ。コレカラ釜房湖(※)ニ捨テテ来ル所ダ」

 ※宮城県川崎町にあるダム湖。このキャンプ場から直線距離で5kmほど。

 ロイ:「不法投棄はいけませんよ。てか、あなた達言ってることとやってることが違いますけど」

[同日09:00.天候:晴 オートキャンプ場内]

 村上:「おおっ、でかしたでかした」
 ロイ:「あのロボット達の言う通り、損傷が激しいようですが……」

 バージョン達が抱えていたのはレイチェルで間違い無かった。

 村上:「頭部が無事であれば何とでもなる。ここでは応急手当しかできんが、メーカーはどこかだけでも調べるぞ」
 有泉:「教授、それでしたらテレビでやっていましたよ。デイライト・コーポレーション・ジャパンです」
 村上:「おおっ、デイライトさんか。では、すぐそこに電話しよう」
 ロイ:「私が」

 ロイが手を挙げた。

 有泉:「この辺、ケータイの電波って良かったでしたっけ?」
 村上:「オートキャンプ場なんだから、アンテナくらい立ってるじゃろう」
 ロイ:「私も教授の意見に賛成です。しかし、念には念を入れて……」

 ロイはジャック付きの受話器を手にした。
 よくビル内の火災報知器のボタン辺りについている穴に、そのジャックを差し込むと防災センターと通話できるという受話器だ。
 コードの先にジャックが付いている。
 何でこんものがキャンピングカーの中にあるのかは【お察しください】。

 バージョン4.0Aが別の家族連れキャンパーの火起こしを手伝っている。
 右手を火炎放射器に変形させて火を点けていた。

 ロイ:「エミリーさんと似たようなことしないでください」
 4.0A:「!?」

 銃火器を取り外すように国家公安委員会から通達されたマルチタイプ達。
 銃火器の分、更に体を軽量化させることには成功した。
 エミリーの火炎放射器だけは最後まで残っていたが、これも火器の1つであるとして取り外された。
 今では代わりに光線銃のみ取り付けられている。

 ロイ:「ちょっと失礼。背中を……」
 4.0:「ナ、何ヲスル!?」

 ロイは4.0Aの背中の裏蓋を開けた。

 ロイ:「通信機をお借りしますよ」
 4.0A:「コ、コラ!勝手ニ使ウナ!」

 4.0Aが困った事態になっているというのに、BとCは子供達とボール遊びに付き合っていた。
 テロ用途から外れれば、こんなものである。

 ロイ:「あれ、やっぱり電波悪いな。もっと左手挙げて」
 4.0A:「アホか!アンテナは別ダ!」
 ロイ:「感度ヲ上ゲテクレナイト、エミリー様ニ報告スルコトニナルガ良イカ?」
 有泉:「ロイ君、ロイ君。キミもロボット喋りになってる」
 村上:「あー、もしもし。DCJ仙台支社さんですかな?こちら、東京都心大学の村上と申しますがの、実はお宅らが捜索中の……」

 普通にケータイ使えた。

 村上:「……レイチェルとやらをお預かりしておるんですが、お宅らとしてはどのような御対応……且つ私らはどのような対応を今後しておけば良いのかという御相談でお電話差し上げたんですがのぅ……。は?……いや、誰が身代金ぢゃい!」

 誘拐犯と誤解された村上だった。

 村上:「お守り代を頂こうと思っただけじゃぞい!」

 しかも、当たらずも遠からず発言……。

[同日12:00.天候:晴 仙台市青葉区 東北工科大学]

 敷島:「平賀先生!」
 平賀:「あー、敷島さん。急なことでお役に立てず、申し訳ない」
 敷島:「いやいや。レイチェルは無事だったんですか?」
 平賀:「頭部は無事だった上、村上先生が適切に応急処置をしてくれたので修理は可能でした」
 敷島:「それは良かった。後でKAITOを連れて来るから、もう暴走しないように伝えてください」
 平賀:「その不具合はもう直しましたから、大丈夫ですよ」
 敷島:「一体、どうしてああなっちゃったんでしょう?」
 平賀:「ボーカロイドの歌は、人間のみに作用するわけではないということでしょう。まあ、分かり切ってることですが」
 敷島:「そうですか」

 平賀の研究室のすぐ近くから、何か怒声のようなものが聞こえてくる。

 敷島:「何をしてるんですか?うちのエミリーとシンディは?」
 平賀:「エミリーには、レイチェルを捕まえたバージョン達に、その時の状況を聞くよう命令しただけです」

 エミリー:「真面目に答えろ!」

 エミリーは逆さ吊りにしたバージョン4.0Aに電気鞭を振るった。

 4.0A:「アッー、モット〜!モット〜、嬲ッテクダサイ……」
 シンディ:「跪いてアタシの足舐めな!」
 4.0B:「舌ガ無イノデ無理デス、シンディ様ァ……」
 シンディ:「口答えすんなっ!」

 ピシッ!ピシッ!とシンディも電気鞭を振るった。

 4.0B:「アッー!」

 敷島:「あいつら、SMプレイしないと気が済まないのか……」

 ズズズとコーヒーを啜る平賀。

 平賀:「どの個体もドSの設定で製造されてますからねぇ、マルチタイプは」

 そしてそれは、フルモデルチェンジのロリ化8号機のアルエットにも受け継がれているという。

 平賀:「敷島さんが鞭とローソクプレイすると、途端にドMに変わるのにねぇ……」
 敷島:「ええ。……って、先生!読者が誤解するからやめてください!」
 平賀:「この前もエミリーに夜、『この鞭で私を引っ叩いてください』と頼まれたんですって?」
 敷島:「最近はセクサ機能をONにすると、そうなんですよ。シンディも。あいつらも修理した方がいいかもしれませんよ?」
 平賀:「特にその必要性は感じませんが、一応考えておきます」

 エミリー:「女に踏まれて感じてんのか、コラぁ!」
 シンディ:「気持ち悪ーい!」
 4.0C:「アァアァァァァアアアァァァァァ……!!」

 平賀:「敷島さんが電気鞭を持つと、途端にコロッとS女王からM奴隷に変わりますよ?」
 敷島:「いや、いいですって」
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